単一の顧客像(SCV):詳細にパーソナライズされた体験の実現

現代のマーケティングでは、テクノロジープラットフォームやデータソースにこれまで以上に容易にアクセスすることができます。しかし、手段やデータが多ければ良いというものではありません。 これらは、顧客のニーズと行動を総合的に把握するために、まとまりのある統一された方法で統合する必要があります。

そのために、多くのデータを単一のソースに統合し、活用するための戦略があり、それをもとに、顧客にシームレスで魅力的な体験をチャネルまたいで提供することができます。それは、単一の顧客像(SCV)と呼ばれるものです。

単一の顧客像は、統一された顧客像や360度の顧客像と呼ばれることもあり、それにより、複数の顧客接点をまたぐカスタマージャーニーを明確かつ総合的に把握することができます。

このブログでは、次の項目について解説します。

単一の顧客像とは?

単一の顧客像とは、顧客や見込み客に関するあらゆる情報を収集し、単一の情報源に統合する方法です。単一の顧客像があれば、顧客のモバイル活動、小売店舗への訪問、オンラインショッピング履歴などのデータソースからデータを引き出し、カスタマージャーニーマップに組み込み、カスタマージャーニーの次のステップをカスタマイズすることができます。

単一の顧客像の利点

単一の顧客像を活用することで、時間、労力、コストを削減し、統一性のないアプローチでは頻繁に直面する問題の多くを避けることができます。

シームレスなマルチチャネルのユーザーエクスペリエンス

顧客は、1週間のうちに、時には1日のうちに、複数の異なるチャネル、プラットフォーム、コンテキストなどで、企業やそのメッセージに接触することがあります。マルチチャネルアプローチは、これらの顧客接点のそれぞれで、顧客とタイムリーで適切な、そしてカスタマイズされた体験を提供することを目指すものです。

このアプローチには、データの品質、タイムリーなデータの調整、特定のチャネルへの過剰投資や過小投資、データセットがほかのチャネルとの関連性に与える影響の把握、データストリームの変化の把握などの課題があります。

しかし、単一の顧客像があれば心配はいりません。単一の顧客像は、これらの課題を予測し、実際に解決することで、シームレスなユーザーエクスペリエンスを実現します。

あらゆるチャネルでパーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを実現

今日のデジタルファースト、モバイルファーストの顧客は、基本的に、容易さ、スピード、便利さを期待しています。製品やサービスのパーソナライゼーションは、顧客体験をより強力で、関連性があり、記憶に残るものにします。それがシームレスに提供されれば、ブランドロイヤリティを大幅に高めることができます。

顧客の観点から言えば、お気に入りのストリーミングサービスにサインインすると、すぐに視聴できるよう厳選されたビデオのリストが用意されていたり、ソーシャルメディアに参加すると、好きな種類のコンテンツが提供されたりするような体験です。これを実現するために、マーケターはリアルタイムの大量のデータを必要とします。 単一の顧客像を活用すれば、あらゆるデータポイントを自動的に単一の洗練された顧客像に統合することで、こうした最新のパーソナライゼーションが可能になり、それぞれの顧客に最適化されたオファーを提供することができます。

より優れた利用者データ

あらゆるチャネルからデータを収集することは、より詳細で微妙な違いを表現できる顧客像を構築することを意味します。単一の顧客像のアプローチで収集したデータは、重複がなくクリーンです。 また、データは分断、分離されておらず、顧客の全体像の中で文脈化されるため、よりアクセスしやすく有用です。マーケターは、より優れた利用者データを保持することで、より賢明な意思決定をおこなうことができます。

オーディエンスセグメンテーションの向上

単一の顧客像のアプローチは、オーディエンスのセグメンテーションを向上させます。効果的なメッセージングと製品の位置付けには、興味を抱いた利用者に向けて取り組みをおこなう必要がありますが、そのためにはオーディエンスの正確なセグメンテーションがが不可欠です。 単一の顧客像は、デモグラフィック情報にもとづいて購入者のニーズや欲求をよりよく把握し、サービスや製品のカスタマイズを可能にするものです。

ペルソナごとのバイヤージャーニーの明確な把握

カスタマージャーニーを明確に把握すれば、顧客接点の機会を逃したり、見落としたりすることはありません。カスタマージャーニーをマッピングすることで、顧客の悩みややり取りの機会を明らかにすることができますが、コンバージョンなどを監視したり放棄の理由を把握することは難しい場合があります。 単一の顧客像は、ほかの関連データにもとづいて、カスタマージャーニーの把握しにくい部分にインサイトを提供することで、この課題を解消します。

カスタマーサービスのゲームチェンジャー

カスタマーサービスに連絡することを好む人はあまりいません。一般的に、やり取りに長い時間がかかり、苛立たしい経験をします。しかし、カスタマーサービスはライフサイクルマーケティングの重要な一部です。 詳細で微妙な違いを表現できる単一の顧客像を活用することで、顧客ごとにカスタマイズされた優れた体験を提供することができます。

マーケティング部門は、単一の顧客像を活用することで、あらゆるチャネルでスムーズで魅力的な、パーソナライズされた顧客体験を構築し、真のニーズや嗜好を満たす製品やサービスの提供に役立つインサイトを得ることができます。

単一の顧客像の構築方法

単一の顧客像を構築することは、さまざまなチャネルからのデータを統合し、インテリジェントにまとめ、顧客とそのジャーニーを包括的かつ統一的に把握するプロセスを構築することを意味します。

データの収集と整理

できるだけ多くの質の高いデータソースを集め、整理します。データは多ければ多いほど役に立ちます。デモグラフィック情報、嗜好、購入履歴などのデータソースを集め、 デモグラフィックやカスタマージャーニーに沿ってデータを整理します。

CDPでIDを解決

CDP(顧客データプラットフォーム)は、1stパーティデータを収集、統合し、統一された顧客像にまとめます。CDPは、組織内のほかのソフトウェアプラットフォームから1stパーティデータを収集し、マーケターが理想的な顧客体験を構築するのをサポートします。

共有と戦略化

顧客プロファイルは、組織全体でアクセスできるようにし、その利用方法について明確な戦略を確立します。

単一の顧客像の導入の一般的なハードル

単一の顧客像の導入には、不完全なデータや低品質のデータ、データ利用を妨げる規制要件など、いくつかの共通するハードルがあります。

分断されたデータ

分断されたデータとは、孤立した、または少数のソースから引き出された情報であり、ほかのデータポイントからの視点やインサイトがないため、偏った不正確な結果をもたらします。優れたCDPは、データを統合し、ほかのデータセットのコンテキストに組み込み有用性を保ちます。

コンプライアンス

データプライバシー法は、データ利用方法についていつでも同意したり取り消したりできる権利を顧客に与えるため、マーケターにとっては減速要因となる可能性があります。単一の顧客像の優れたシステムは、このようなコンプライアンス要件に対応するように構築されており、扱えるパラメータの範囲を明確に示すことで、顧客とマーケターの信頼関係を確保することができます。

レガシーシステム

レガシーシステムは、単一の顧客像の構築の障害になることがあります。たとえば、インサイトを不明瞭にし、情報が分断され、質の高いデータとそうでないデータの区別がつかなくなることがります。CRM(顧客関係管理)ソリューションやMDM(マスターデータ管理)ソリューションの中には、企業が単一の顧客像を構築するのに役立つものもありますが、その顧客像をほかのシステムで利用したり、インサイトやアクションにつなげることに苦慮しています。

アクショナビリティ

CDPは、単一の顧客像の構築しかできず、ほかの場所からそのデータにアクセスすることができないほかのテクノロジーよりも優れた選択肢です。単一の顧客像が機能するようにシステムを最新化することは、組織にとって極めて有益なことであり、より正確で実用的なカスタマージャーニーマップの構築に役立ちます。

単一の顧客像をマーケティングに活用する方法

単一の顧客像は強力なコンセプトですが、マーケティング部門の日々の活動にどのように適用できるでしょうか?ここでは、単一の顧客像の有効性を示す一般的なユースケースをいくつか紹介します。

  1. パーソナライズされたコンテンツ:ショッピング中に顧客向けのパーソナライズされたコンテンツを送信し、時間や場所に応じた割引を提供することができます。
  2. 商品レコメンデーション:マーケターは、デモグラフィックデータ、嗜好、購買習慣などの組み合わせから、顧客のニーズとウォンツを把握することで商品レコメンデーションをカスタマイズできます。
  3. よりターゲットを絞った施策:マーケターは、より関連性の高い顧客接点を構築し、クロスセルやアップセルの機会を開拓でます。
  4. 顧客ライフサイクルマーケティング:マーケターは、詳細な顧客セグメント情報にもとづいて施策をカスタマイズできます。

単一の顧客像に関するFAQ

単一の顧客像は、どのような種類のデータを使用しますか?

単一の顧客像に含まれるデータには、次のようなものがあります。

単一の顧客像、統合された顧客像、360度の顧客像の違いは何ですか?

違いはありません。単一の顧客像、統合された顧客像、360度の顧客像などの用語は、同じ概念を表す同義語です。つまり、顧客データを統合プロファイルにまとめ、より優れたインサイトとパーソナライズを実現する必要があるということです。

単一の顧客像の構築を始める

Get started with your single customer view

マーケティング部門は、単一の顧客像を活用することで、あらゆるチャネルでスムーズで魅力的な、パーソナライズされた顧客体験を構築し、真のニーズや嗜好を満たす製品やサービスの提供に役立つインサイトを得ることができます。

アドビでは、Adobe Real-Time CDPにより、単一の顧客像の構築を支援します。データの監査と優先順位付けや各部門の連携から着手し、組織全体でシステムを調査し、アップグレードが必要なものを確認します。 強力なCDPの基盤の上に戦略を構築し、豊かで整った単一の顧客像の利点を享受してください。

この概要動画で、CDPがいかにシームレスなプロセスであるかをご確認ください。