リモートチーム管理と期待値の設定
リモートチームを管理することは、あらゆるレベルの経営陣にとって不可欠なスキルです。しかし、従業員がオフィス環境で身につけたスキルをデジタル環境でも発揮できるようにするのは、容易なことではありません。リモートチームの管理では、独自の課題に対応する必要があります。
本記事では、既存のスキルを活かしながら、リモートチームを効果的に管理する方法を解説します。
リモートチームとは?
リモートチームとは、さまざまな場所やタイムゾーンから共同作業をおこなう従業員のグループを指します。 チームメンバーは、複数の都市、国、大陸をまたいで協力し合い、コミュニケーションを図ります。
在宅勤務を導入し、リモートチームを管理することは、容易なことではありません。従来のオフィス型管理に固執している場合は、なおさら困難になるでしょう。リモートチームには独自のニーズと課題があるため、それらに応じた対策が必要です。
これらの課題を克服できれば、企業と従業員は大きなメリットを得ることができます。
- 英国の2021年の国勢調査では、在宅勤務者の78%が、家族や友人と過ごしたり、趣味や運動に費やしたりする時間が増えたため、在宅勤務によってワークライフバランスが改善されたと回答しています
- 在宅勤務は、企業にもメリットをもたらします。Owl Labsの調査では、回答者の75%が、在宅勤務が可能であれば、離職する可能性が低くなると述べています。これは、企業が、新たな人材の採用、オンボーディング、研修など、従業員の離職に伴うコストを削減できることを意味します
在宅勤務の課題
在宅勤務は多くのメリットをもたらす一方で、企業、管理職、従業員それぞれに特有の課題もあります。
集中力の維持と時間の管理が困難
自宅では、やらなければならないことが数多くあります。多くの在宅勤務者は、子どもや家族の世話に追われています。家事は、集中力を低下させる主な要因のひとつです。また、多くの在宅勤務者は、仕事専用の部屋を確保しておらず、リビングなどで業務をおこなっています。
実際、Joblistの調査によると、TVの視聴、料理、雑用は、在宅勤務者の集中力を低下させる最大の要因となっています。自宅では、さまざまなことに気を取られるため、在宅勤務者が業務に集中し続けることが困難になる可能性があります。
コミュニケーションの分断
在宅勤務では、従業員間のコミュニケーションが分断しやすくなります。多くの企業では、電子メール、インスタントメッセージ、電話など、複数のコミュニケーションツールを使用しているため、コミュニケーションで混乱が生じやすくなっています。また、リモート環境では、他の従業員に直接質問することができないため、単純な質問であっても、回答を得ることが難しくなります。
技術的な課題
安定したインターネット接続と信頼性の高いハードウェアは、在宅勤務の基盤となります。オフィスでは、従業員はビジネス向けの優れたインターネットサービスを利用し、技術部門のサポートを受けることができます。一方、自宅のWi-Fiや携帯電話の電波は安定性に欠けている可能性があり、技術的なサポートを受けるのが困難な場合があります。
ビジネス関係の構築が困難
オフィスでは、他の従業員や管理職との関係構築が容易です。管理職の部屋を訪れるだけで、助言やサポートを容易に受けることができます。一方、リモート環境ではこうした対面によるコミュニケーションができないため、管理職は、従業員がどのような業務を進めているのか把握できない場合があります。従業員もまた、管理職が自身の状況を把握していないと感じるかもしれません。
社会的孤立
一部の従業員は、対面でのやり取りがないことで、孤立してしまう可能性があります。冗談を言ったり、他の従業員とランチしたりできない環境は、外向的な人にとっては特につらいことです。内向的な人でさえ、自分がどこにも所属していないように感じるかもしれません。職場で非公式な関係を築けることは、オフィス勤務の利点のひとつです。こうした関係の欠如は、チームのパフォーマンスに影響を与え、生産性を損なう可能性があります。
在宅勤務に対する従業員の期待値の設定方法
在宅勤務の課題に対処するための第一歩は、期待値を早期に設定することです。従業員に明確なガイドラインを提供することで、在宅勤務に伴う課題を課題を軽減できます。既に在宅勤務を導入している場合でも、期待値を設定することでメリットを得られます。
勤務時間の明確化
あらゆる従業員がオフィスに出社する場合、勤務時間の管理は単純です。しかし、タイムゾーンが異なる複数の従業員が在宅勤務する場合は、より複雑になります。従業員は、午前9時から午後5時など、特定の時間帯に勤務することが求められているかどうかを把握する必要があります。
従業員が複数のタイムゾーンに分散しているチームの場合、管理職のタイムゾーンに合わせて勤務する必要があるのか、非同期作業をスムーズにおこなえるかどうかを明確にします。また、勤務時間を記録する必要があるかどうかを確認し、必要な場合はその方法を把握する必要があります。
コミュニケーションガイドラインの策定
コミュニケーションツールは数多くあるため、明確なガイダンスを策定することが重要です。従業員は、使用するツールのリストと、その使用方法に関する詳細なポリシーを必要としています。
例えば、緊急性の高いコミュニケーションとそうでないコミュニケーションを区別します。これにより、緊急性の高いコミュニケーションはインスタントメッセージを利用し、すぐに返信する必要がない場合は電子メールを利用する、といった明確なルールを設定できます。また、ビデオ会議ソフトウェアの利用に関する基本的なルールを設定しましょう。例えば、メンバー全員がデフォルトでカメラをオンにする必要があるかどうかを明確にします。
目標と指標の定義
リモートチームを成功に導く方法のひとつは、メンバー全員に明確な目標を設定することです。そのためには、パフォーマンスを評価するための指標とKPIをチームで共有する必要があります。現実的なスケジュールで達成可能な目標を全員に提示し、従業員のモチベーションを維持しましょう。
仕事用スペースの確保
自宅に仕事専用のスペースを確保することは、気が散る要素を排除する最善の方法のひとつです。外部モニター、スタンディングデスク、シッティングデスク、デスクチェアの適切な使用について、チームにガイダンスを提供しましょう。こうした設備の導入に対する企業の経済的支援について、従業員に周知することも重要です。例えば、企業は、必要な機器を支給したり、資金を提供したりできます。
リモートチームの管理方法
期待値を明確に定義したら、リモートチームが業務を適切に遂行できるような仕組みを構築しましょう。ここでは、リモートチーム管理の課題に対応するためのベストプラクティスをいくつか紹介します。
1. 従業員の時間管理のサポート
チームのスケジュール設定を促進することで、従業員の適切な時間管理をサポートできます。毎日同じ時間枠を確保することで、従業員は重要な業務を予定どおりに進めることができます。チームメンバーが複数のタイムゾーンに分散している場合は、スケジュールを明確にすることが特に重要となります。
時間を効果的に管理するもうひとつの方法は、時間追跡ソフトウェアを導入することです。各業務の所要時間を追跡することで、従業員は自身の習慣をより深く把握し、業務効率を向上できます。
2. 複数のコミュニケーション手段の提供
電子メールとインスタントメッセージは最も一般的なコミュニケーションツールですが、他のオプションを提供することも重要です。例えば、ビデオ通話は従業員の孤立感を軽減するのに役立ちます。また、電子メールやインスタントメッセージでは認識できない従業員の健康状態を、視覚的に確認することもできます。
メッセージやコメントのやり取りが可能なプロジェクト管理ツールを使用すれば、アプリ内でコミュニケーションできるため、タブやプログラムを切り替える時間を節約できます。これらのコミュニケーションオプションを提供することで、さまざまなワークフロー、タイムゾーン、不測の事態に対応できます。
3. テクニカルサポートの提供
テクノロジーの信頼性の低下に対処するには、十分なテクニカルサポートを提供することが重要です。これは、チームメンバー全員が同じツール(プロジェクト管理、クラウドストレージ、生産性向上ソフトウェアなど)を利用できるようにするのと同様に、容易に実現できます。また、従業員が自宅で使用するPC、外部モニター、Wi-Fiルーターを提供する必要が生じる場合もあります。
ソフトウェアやハードウェアに問題が発生した場合に備えて、在宅勤務者がIT部門のサポートを受けられるようにすることも重要です。在宅勤務者はさまざまなツールを使用するため、継続的なトレーニングと教育リソースを提供する必要があります。
4. 定期的なミーティングとコミュニケーション
従業員間のつながりを強化し、足並みを揃えるためには、定期的なミーティングを実施することが重要です。これには、毎日のスタンドアップミーティングや1対1の面談が含まれます。これらを定期的かつ一貫しておこなうことで、従業員は必要なサポートを受けることができ、企業が自身の課題を無視することなく、真摯に対応してくれることを実感できます。
5. 社会的交流の場の構築
孤立との戦いは、管理職がリモート環境で直面する最大の課題かもしれません。ハイブリッド型の働き方は、従業員間のつながりを維持する効果的な方法のひとつです。ハイブリッド環境では、従業員は必要なときにオフィスに出社し、他の従業員と直接会うことができます。例えば、アドビでは、ハイブリッド型の働き方を標準としているため、従業員はオンラインまたはオフィスでミーティングに参加できます。
もちろん、デジタル環境でも信頼関係を築くことは可能です。多くの企業は、オンラインイベントを開催するためのクリエイティブな方法を生み出しています。指定した時間に在宅勤務者に物品を届けることが容易になったため、企業は、バーチャルでの食事会、料理教室、映画鑑賞会を企画できるようになっています。チームメンバーが近隣に居住している場合は、現地で交流会を開催し、グループ活動や共同作業を促進することもできます。
リモートチーム管理を強化しましょう
リモートチームをしっかりと管理できなければ、さまざまな課題に直面する可能性があります。そうした課題に対処し、リモートチームを効果的に管理するには、新たなスキルセットを習得する必要があります。
リモートチームを適切に統率できているかどうかを確認するために、チームメンバー向けのガイドラインを策定しましょう。期待値を明確にすることは、リモートチーム管理を成功させるための出発点となります。
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