モバイル分析

モバイル分析とは、モバイルアプリケーションやモバイルデバイスにおける、顧客の行動を監視および分析することです。

ポイント

あらゆる企業戦略において、モバイルの重要度が増しています。企業はビジネス戦略を策定する際、モバイルを含むオムニチャネルのアプローチを導入する必要があります。

モバイルアプリの利用者は、比較的価値が高いか、関心が高い傾向があります。

モバイルアプリ分析を利用することで、顧客がコンバージョンに至った理由や、企業と接点を持ち続けている理由をより詳細に把握できるようになります。

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モバイル分析に関する様々な疑問に、Maria Laura Lapointが回答します。Mariaは、Adobe Analyticsのプロダクトマーケティングマネージャーです。以前は、ペルーの大手ITアウトソーシングプロバイダーでアカウントマネージャーを務めていました。現在は、モバイルや音声アシスタント分析など、新興テクノロジーの市場開拓戦略の策定に注力しています。

もくじ

  • モバイル分析とは何ですか?
  • モバイル分析は、企業のより大きな展望とどのように結びつきますか?
  • モバイル分析では、特定の顧客に関するどのような情報を確認できますか?
  • なぜモバイル分析が重要なのですか?
  • webサイトと違うモバイル特有の重要な指標には、どのようなものがありますか?
  • コホート分析と分析には、どのような関係性がありますか?
  • モバイル分析には、どのような役割の担当者が関与しますか?
  • モバイルアプリ分析を利用する際に、陥りやすい失敗は何ですか?
  • モバイル分析はどのように進化してきましたか?

モバイル分析とは何ですか?

モバイル分析では、モバイルアプリがどのように利用されているのかを測定します。企業はモバイルアプリの行動分析データをリアルタイムに追跡することで、顧客体験を評価し、調整することができます。

現在は、多くの企業がオムニチャネルの観点から問題に取り組んでいます。こうした企業の目的はエンゲージメント全体を促進することです。各チャネルを個別に把握するのではなく、あらゆるデジタルチャネルを総体として捉えています。それにより得ることのできる、より包括的な顧客像を利用して、あらゆる接点をまたいで顧客体験を最適化しています。

モバイル分析は、企業のより大きな展望とどのように結びつきますか?

モバイル分析はエンゲージメントと認知度の向上に役立ちますが、顧客は最終的に様々な顧客接点でコンバージョンに至ります。チャネルやモバイル分析のデータを別々に測定していては、実際の効果を見ることができません。あらゆるチャネルをまたいで顧客生涯価値を測定することで、チャネルを別々に測定するよりも、利用者の行動をより効果的に測定できます。

モバイルアプリの分析と、webや電子メール、ソーシャルなどの分析とを組み合わせることで、アプリ内では顧客がコンバージョンや購入に至らなかった場合でも、モバイルアプリの利用が最終的なコンバージョンに影響していたかどうかを確認できます。

一部の企業は、webの顧客とモバイルの顧客を区別していません。企業がweb分析を使用するか、モバイル分析を使用するかは、モバイルアプリのエクスペリエンスを通じてどのような目標を達成したいのかによって決まります。例えば、サブスクリプションのメンバーシップを提供している企業の場合は、モバイルアプリを利用して既存の顧客とつながり、カスタマイズした顧客体験を提供します。その一方で、webサイトはリードジェネレーションに使用します。このようなケースでは、成果はチャネルごとに別々に定義されます。各チャネルの目標が異なるからです。

モバイル分析は、製品エクスペリエンスの問題解決にも役立ちます。例えば、分析結果から、顧客はアプリを起動してから次に何をしたらよいのかがわからず、アプリを終了していることが判明する場合もあります。モバイル分析で顧客の行動を追跡しているので、問題を特定し、解決策を導き出すことができます。また、最も収益性が高いオーディエンスや関心を示しているオーディエンスがアプリをどのように使用しているのかを確認し、ローカライゼーションやパーソナライゼーションなどを通じて、そうした顧客体験の改善に注力することもできます。

モバイル分析では、特定の顧客に関するどのような情報を確認できますか?

モバイルアプリの利用者は、関心やロイヤルティが最も高く、高価値な顧客であることが多いため、より多くの売上を生み出します。通常、ファネルの下部に位置しており、製品やサービスを探している顧客ではなく、既知の顧客です。その意味では、モバイルアプリは顧客と長期的な関係を築き、その関係をもとに優れた成果を生み出すために役立つプラットフォームと言えます。

モバイル分析ツールを使用すれば、購入頻度が高い顧客の使用パターンを明らかにして、特定の行動を促す顧客体験を構築できます。

なぜモバイル分析が重要なのですか?

一般的にモバイル利用者はファネルの下部に位置しているので、モバイル分析のデータを測定することで、デジタルプロパティ内で優れた顧客体験を提供するのに役立ちます。これは、顧客がコンバージョンに至っている場所や、離脱している場所を把握する助けになります。最も高い関心を示しているオーディエンス向けの顧客体験を最適化することで、エンゲージメントと売上を高めることができます。

一部の企業では、モバイルがwebサイトと競合すると考え、モバイルに片手間で対応していることもあります。そのような姿勢では、モバイル分析に十分な注意を払っているとは言えません。取り組むべきことは、顧客が期待している場所でやり取りをおこなうことです。モバイルでもwebサイトでも、可能な限り最適な顧客体験を提供するべきです。モバイルに優先的に対応するか、最低でもwebと同様に扱わないと、必然的に顧客体験の質が低下して、顧客が価値を見出すのが困難になり、企業がモバイルアプリへの投資を回収するのも難しくなります。

モバイルアプリ体験や提供している様々な顧客体験を測定していないと、顧客側で何が起こっているのかを把握せずに意思決定を下すことになります。顧客とどのように関わっているのかを把握することが重要です。そのために、モバイルアプリ分析が役立ちます。

webサイトと違うモバイル特有の重要な指標には、どのようなものがありますか?

オムニチャネル戦略を導入した企業は、webサイトとは違うモバイルアプリ特有の指標を使用しない傾向があります。あらゆるプラットフォームの成果を平等に測定する必要があるためです。成果を追跡するモバイル特有の方法としては、webで使用されるページビューではなく、イベントを基準にするというものがあります。イベントとは、起動やコンバージョン、特定のボタンのクリックなど、顧客によるアクションのことを指します。

イベントを追跡することで、プロダクトマネージャーとアナリストは、必要な行動分析を柔軟に測定できます。

ただし、プロダクトマネージャーが顧客を理解するのに役立つモバイルアプリ特有のイベントが多数あります。例えば、1日あたりのアクティブユーザー(DAU)や1ヶ月あたりのアクティブユーザー(MAU)、顧客がアプリを利用する頻度などです。例えば、今日アプリを操作した利用者は、1日あたりのアクティブユーザーとしてカウントされますが、アプリを1日に何度も操作した利用者と、1日に1回操作した利用者は、別種の利用者としてカウントされます。プッシュ通知をオンにしている顧客の数を調べ、利用者の行動の理解に活かすこともできます。

セッションは、ひとりの顧客のエンゲージメントの度合いを把握するのに役立ちます。ひとりの顧客が1日に多数のセッションを発生させる場合があるためです。こうした指標からエンゲージメントを把握することができます。顧客あたりの平均売上や平均取引額など、売上関連の指標も測定できます。

リテンション分析はモバイルでは少し異なります。アプリを起動した顧客の数と、それから1ヶ月後に再度起動した顧客の割合を確認できます。モバイルアプリでは、リテンション率が注目されます。リテンション率だけでなく、顧客の行動の推移も測定できます。顧客がアプリを起動する頻度や、アプリに戻ってくる頻度のほか、コンバージョンに至った顧客数も追跡できます。

モバイルアプリには、アプリがクラッシュする頻度などのパフォーマンス指標もあります。しかし、ほとんどの場合は、ビジネスの成功指標はモバイルアプリ固有ではなく、全体を対象にしたものを使用した方がよいでしょう。

コホート分析と分析には、どのような関係性がありますか?

コホート分析では、再アクセス行動の推移や、セグメントの再アクセス行動を把握できます。どの顧客がどのような理由で再アクセスしているのかを把握できます。コホート分析後に再アクセスしている顧客のセグメントを作成してから、再アクセスしていない顧客のセグメントも作成し、それらの行動が異なる理由を明らかにすることができます。

まず、分析する顧客のグループを定義する必要があります。その後、目標とする特定の顧客行動や、特定の再アクセス行動を定義します。例えば、Androidデバイスでモバイルアプリを起動し、オンライン注文をおこなった顧客を分析するとします。

コホート分析を使用すれば、様々なレベルのエンゲージメントを比較できます。再アクセスしたり購入したりしている顧客を確認できるので、そうした顧客のセグメントを作成してから、コンバージョンに至っていない顧客と比較できます。何が違うのか、どのようなデータがそうした顧客の行動に違いを生んでいるのかを把握できます。

例えば、電子メールを受け取っていた、実施中のテストグループに入っていた、キャンペーンの対象だった、クーポンを取得していたなどの理由を確認できます。コンバージョンに至った理由が明らかになれば、学んだことを、エンゲージメントを示していないオーディエンスに応用できます。

モバイル分析には、どのような役割の担当者が関与しますか?

プロダクトマネージャーが製品体験の責任者を務める傾向があります。そして、分析データのレポート作成と分析ソリューションの使用方法を熟知しているアナリストと、追跡する必要がある測定対象を調整する開発者で構成されるチームを編成します。プロダクトマネージャーはアナリストと連携し、レポートで成功が適切に定義されているか確認します。

モバイルアプリ分析を利用する際に、陥りやすい失敗は何ですか?

企業は、複数のデバイスやチャネルをまたいで顧客を追跡しないという失敗を犯す場合があります。カスタマージャーニー全体を通じて正確な顧客像を把握することが重要です。あるデバイスでの顧客の行動と、別のデバイスでの行動が異なる場合は、別々の顧客体験を提供している可能性があり、そうであれば統一性が欠けているからです。複数のデバイスを追跡すれば、ユーザーエクスペリエンスと獲得コストを最適化できます。また、複数のデバイスで顧客を追跡しないと、顧客数が不正確にもなります。

企業は、モバイルアプリ利用者に最適な顧客体験を提供するために、A/Bテストも実施する必要があります。

モバイル分析はどのように進化してきましたか?

モバイル分析の歴史は約10年です。当初、人々はモバイルが重要なチャネルになるかどうかについて懐疑的でした。今から5~6年前になると、モバイルが最重要チャネルになるという認識が広がりました。しかし、今から2~3年前に、重要なのはオムニチャネルの顧客体験であり、モバイル専用やモバイルファーストの顧客体験ではないという認識に変わりました。

インターネットの利用に制限がある地域では、スマートフォンが顧客の主要なアクセスポイントになる傾向があります。そのような地域では、モバイルファーストの戦略が重要になります。

その後、スマートフォンの登場によって、誰もがモバイルアセットを主要なチャネルとして活用するようになりました。2016年には、モバイルのトラフィックがデスクトップPCのトラフィックを初めて上回りました。

参照トピック