ビジネスの成長を支える商品調達
コマースビジネスにおいて、自社に適した商品調達の方法を見出すことは、容易なことではありません。製造企業との取引や展示会への参加など、選択肢は多様化しており、それぞれに長所と短所があります。例えば、利益率が低いという欠点がある一方で、新しいビジネスや商品をいち早く市場に投入できるという利点があるかもしれません。
最適なサプライヤーを選出するためには、そうした利点と欠点を比較する必要があります。ビジネス目標の達成に向けて、最適な戦略を見出す方法を把握していれば、商品の調達が容易になります。
本記事では、商品調達の概要、一般的な方法、成功させるためのノウハウを解説します。
商品調達とは?
商品調達とは、企業が商品の仕入れ先を見つけるためのプロセスです。製造企業、卸売企業、ドロップシッピング企業、職人、展示会はすべて、リセラー(再販業者や販売代理店)の仕入れ先候補となります。
商品調達プロセスでは、まず、商品の調査をおこないます。リセラーは、仕入れる商品、その主な特徴、最適な仕入れ拠点を把握する必要があります。続いて、サプライヤーを選定し、価格を比較します。サプライヤーを決定したら、審査と交渉を通じてコスト効率を向上し、品質を確保します。
商品調達の方法
サプライヤーを選定して商品を調達するには、いくつかの方法があります。最適な調達方法は、ビジネスの内容と拡大戦略に応じて異なります。
ドロップシッピング
ドロップシッピングでは、外部のドロップシッピング企業がリセラーの注文処理をおこないます。デジタルコマース 業界では、ドロップシッピング企業が商品の調達と販売をおこなうため、リセラーは在庫を管理する必要がありません。これにより、リセラーはコマースビジネスの他の業務に専念できるようになります。
ドロップシッピングの利点:
- 低コスト: ドロップシッピングは、予算が限られている企業や、倉庫スペースを節約する必要がある企業にとって、低コストの優れたオプションとなります。在庫を事前に確保しておく必要はありません。これは、大規模な企業にとっても利点となります。多額の予算を費やすことなく、新商品を試験販売できるからです
- 規模の拡大が容易: ドロップシッピングでは、間接費や商品管理の要件がないため、調達規模を容易に拡大できます。リセラーは、注文と支払いの管理のみをおこないます。ドロップシッピング企業が十分な在庫を確保していれば、消費者の需要に対応できます。また、ひとつのドロップシッピング企業だけに縛られることなく、複数のパートナーと提携してビジネスを拡大できます
- ビジネスの迅速な立ち上げ: ドロップシッピング企業が在庫と配送を管理するため、リセラーがやるべきことは、顧客を獲得し、注文方法を決定するだけです。コマースビジネスを始める前に、倉庫を借りたり、在庫を確保する必要はありません
このように、ドロップシッピングを導入すれば、リセラーは時間を大幅に節約できます。しかし、いくつかの欠点もあります。
ドロップシッピングの欠点:
- 利益率の低下: ドロップシッピング企業は、商品の価格と配送料に手数料とコストを上乗せし、利益を生み出します。リセラーは、ドロップシッピング企業に対して、在庫管理と注文処理にかかる料金を支払います。これは、リセラーの利益率に影響を与えます
- 管理権限の制限: ドロップシッピング企業が在庫を管理する場合、リセラーは在庫および商品の品質を管理する権限が制限されます。また、リセラーは実際の商品を確認しないため、カスタマーサービスの対応が複雑になる可能性があります
- 競合他社との差別化が困難: ドロップシッピングを利用してノーブランド商品を販売する場合、類似商品を販売している他社との差別化を図ることは容易ではありません。ドロップシッピング企業は、他社に対しても類似商品を調達する可能性があるため、競争力を維持することが困難になります
卸売
卸売とは、小売企業がサプライヤーから商品を大量に仕入れることです。十分な在庫を確保し、大規模な販売をすばやく展開するのに適しています。
卸売の利点:
- ビジネスの迅速な立ち上げ: 小売企業は、卸売企業から大量の商品を仕入れることで、新事業の立ち上げや新商品の販売を迅速化できます
- 利益率の向上: 卸売企業から商品を大量に仕入れることで、割引を受けることができます。そのため、卸売企業との交渉や発注量に応じて、20%から60%の利益率を確保できます
- 最小限の調査: 通常、卸売企業から仕入れる商品は既に市場に定着しているため、小売企業は、商品に関する詳細な調査をおこなう必要はありません
卸売の欠点:
- 初期費用が高い: 卸売企業を利用する場合、割引価格で商品を大量に仕入れることができる一方で、発注時または商品を受領してから30日以内に、商品の合計金額を支払う必要があります
- 競合他社との差別化が困難: 特定の商品を扱う卸売企業が限られている場合、競合他社と同じ商品を販売せざるを得ないことがあります
- 経験が必要: 卸売企業と提携して商品を調達するには、適切な価格でタイミングよく取引するための専門知識が必要です
製造企業
製造企業は、小売企業のビジネス設計にもとづいて、専門家が独自の商品を開発するなど、よりパーソナライズされた商品調達オプションを提供できます。自社に最適な製造企業を選定し、商品調達のサポートを受けることができるため、新商品や既存商品の新たなバリエーションを開発したい場合に適しています。
製造企業から商品を調達する方法には、ふたつのタイプがあります。ひとつ目は、PB(プライベートブランド)商品、つまり自社独自の商品を開発する方法です。
ふたつ目は、既存の商品に企業名やロゴを添付する、ホワイトラベルと呼ばれる手法です。PB商品の開発では、商品を調達する前に設計と試作がおこなわれるため、ROIを生み出すまでに時間がかかります。一方、ホワイトラベル手法では、商品の設計と試作への投資が不要になります。
製造企業の利点:
- 品質と在庫の管理: 製造企業から商品を調達する場合、商品の品質をより詳細に管理し、市場に投入する前に原材料や最終成果物を確認できます
- 独自商品の開発: PB商品の開発を依頼すれば、他社が真似できない独自の商品を販売できます。製造企業は、商品の独自性を保証し、小売企業のビジョンに対応します
製造企業の欠点:
- 商品設計が困難: 独自の商品を開発することは、容易なことではありません。既存の課題を解決し、現在市場で販売されている類似商品よりも優れた性能を発揮することが求められます。製造企業は、支払われる対価に応じて、小売企業のさまざまな要望に応えることができます。しかし、売上につながる商品を設計するのは、小売企業の責任です
- 初期投資が高い: 商品の設計と試作にコストがかかる可能性があります。商品の複雑さによっては、市場に投入するまでに、複数の開発工程が必要となる場合もあります。そのため、販売を開始する前のさまざまな調整に、多額の投資をおこなうことになります
- 経験が必要: 製造企業から商品を調達する場合、商品の設計、原材料、費用などのアイデアを創出する必要があるため、そうした分野における経験が求められます。また、ビジネスの成果を最大化するために、経験豊富な製造企業と提携する必要があります
手作り商品
手作り商品とは、一つひとつ手作業で作られた商品です。デジタルコマースで手作り商品を販売するには、経験と情熱が必要です。また、手作り商品の製造を職人に依頼することもできます。
手作り商品の利点:
- 品質と在庫の管理: 商品を一つひとつ手作業で製造することで、品質を最大限に管理できます。また、在庫を管理しやすくなり、無駄を省くことができます
- 独自商品の開発: 独自の高品質な商品を開発すれば、競争他社との明確な差別化につながります
手作り商品の欠点:
- 時間がかかる: 商品を一つひとつ手作りするには、膨大な時間がかかります。そのため、大量の商品を販売して売上を迅速に向上させたい場合は、最適な選択肢であるとは言えません
- 市場への投入が遅い: 商品を製造する前に材料や設備を整える必要があるため、販売が遅れる可能性があります。また、十分な在庫を確保するまでに時間がかかります
- 規模の拡大が困難: 小売企業にとって、当初の計画よりも受注数が多い、過剰な在庫が発生した、といった事態はつきものです。しかし、手作り商品の生産量を柔軟に調整することは、容易ではありません
展示会
展示会では、リセラー、ドロップシッピング企業、卸売企業、製造企業が一堂に会し、最新の商品を調査し、取引について交渉できます。
展示会の利点:
- 品質の管理: 商品を調達する前にその性能や品質を検証できるため、高品質の商品を見つけ出し、不適合な商品を排除できます。さまざまなサプライヤーの幅広い商品を試すことができるのは、展示会だけです
- 迅速な交渉: サプライヤーと対面で交渉できるため、電子メールなどでやり取りする手間を省けます。また、価格と在庫についてリアルタイムで話し合い、1回の接触で関係を構築できます
展示会の欠点:
- 競合他社との差別化が困難: 展示会では、多くの企業が商品を調達するために集まります。そのため、他社との差別化に役立つ特別な商品を見つけ出すことが難しい場合があります
- コストの増大: 展示会に参加するには、交通費と参加費用がかかるため、コストの増大につながります
商品調達に役立つ7つのアプリ
商品調達アプリを利用すれば、商品の検索、購入、販売が容易になります。コーヒー豆からユニークなプリントコンテンツに至るまで、調達したい商品を検証、選定、購入するのに役立ちます。
ビジネスニーズや商品の種類に応じて、複数のアプリを併用することも可能です。ここからは、さまざまな業界における商品調達に役立つ、おすすめのアプリを7つ紹介します。
Dripshipper
Dripshipperは、コーヒーが好きな個人やビジネスオーナーが、独自のコーヒー豆を販売できるようにサポートする、コーヒー豆の卸売企業です。
会員は、月額30ドルを支払うことで、コーヒー豆の調達と配送を委託できます。調達したい豆を選択し、自社のロゴをアップロードしてラベルをカスタマイズすることで、独自のパッケージを作成できます。ホールビーンの場合、シングルオリジンコーヒー、シングルサーブのコーヒーカプセル、カフェインレスコーヒー、カスタムコーヒーを選ぶことができます。
Dripshipperでは、コーヒー豆を焙煎した日に出荷するため、優れた鮮度を実現しています。
Handshake
Handshakeは、衣料品、キャンドル、文房具、フレグランス、ホーム用品などのさまざまな商品を調達するのに役立つ、無料で利用できる卸売マーケットプレイスアプリです。
操作しやすいプラットフォームで、米国のサプライヤーが提供する150,000品目以上の商品を検索できます。Shopifyによって構築および運用されており、審査に合格したサプライヤーから、検品済みの商品を調達できます。
Printify
Printifyは、独自のプリントオンデマンド商品を販売できるドロップシッピングサービスです。
無料プランでは、注文ごとの従量課金制を採用しており、Tシャツ、パーカー、トートバッグ、マグカップ、ウォールステッカー、ポスター、ビーチタオル、ペット用ベッド、ノートなど、さまざまなオリジナル商品を制作できます。有料プランは月額29ドルで、全商品を20%割引で購入できるため、利益率を向上できます。
DSers
DSersは、腕時計、衣料品、電子機器、ジュエリーなど、ほぼあらゆる分野の商品を取り扱うドロップシッピングアプリです。
アカウント登録は無料で、予算や業種を問わず、商品を選定してビジネスを容易に立ち上げることができます。また、各商品のパフォーマンスに関するデータを収集し、売上状況についてより詳細に把握できます。
Creativehub
Creativehubは、優れたアート作品の調達と販売をサポートする、無料でダウンロードできるアプリです。ユニークなコンテンポラリーアートを販売するために、自身がアーティストになる必要はありません。
各作品について、小売価格(最低販売価格)と売上予測を確認できます。また、ストック画像や重版に限定されません。一部の作品は限定版であり、需要が高いため、価格も上がります。国際配送料は固定されているため、配送コストに悩まされることなく、世界中に商品を販売できます。
Printful
Printfulは、衣料品、アクセサリー、ホーム用品、装飾品など、独自の商品を制作および販売するのに役立つプリントオンデマンドサービスです。
ステッカー、添付文書、ラベルなど、自社のニーズに合わせて商品のさまざまな要素をカスタマイズできます。また、商品を実際に調達して販売する前に、サンプルを割引価格で購入して試すことができます。
Lulu
Luluは、書籍とカレンダーに特化した、プリントオンデマンド商品の調達に役立つアプリです。
このアプリでは、設定や手数料不要で商品を包括的に管理できます。書籍の表紙、紙のタイプ、製本手法などを選ぶことができます。また、Luluのサイトにおけるストアの開設、自社のコマースサイトでの商品販売、Amazonなどの主要なリテールプラットフォームを介した書籍の販売も可能です。
商品調達のヒント
商品調達に関するベストプラクティスを把握することで、利益率を高め、商品の品質をより詳細に管理できます。実践を通じて学ぶことは、数多くあります。ここでは、その準備を整えるためのヒントを解説します。
業界の動向と消費者ニーズを調査
優れた商品調達は、調査から始まります。業界の傾向と消費者ニーズを調査することで、どのような商品に投資すべきかを判断できます。調査票を作成し、顧客からフィードバックを収集して、他社の施策を把握しましょう。
顧客や見込み客の意見は、ビジネスの成果を最大化するために、最初に着手すべき商品や独自の強みを特定するのに役立ちます。
サプライヤーを探す前に適切な商品を選定
小売企業が陥りやすい間違いのひとつは、まずサプライヤーを決定し、そのサプライヤーに商品を選定してもらうことです。確かに、サプライヤーと良好な関係を築くことは重要です。一部のサプライヤーは、ビジネス戦略に役立つアイデアを提案してくれるでしょう。しかし、まず着手すべきことは、自社のブランドを確立することです。
サプライヤーを探す前に、販売したい商品や、市場における需要の高い商品を明確にする必要があります。これにより、ビジネスの方向性を維持し、期待通りの成長を実現できます。
サプライヤーからサンプルを入手
商品を購入する前にサンプルを入手することで、サプライヤーとの取引の流れ、包装、配送日数、商品の品質を把握できます。その際、商品の使用感、価格、納品に要する期間を確認しましょう。品質が低い、自社の基準を満たしていない、価格が高すぎる、納期が遅いなど、自社のニーズに対応できていない場合は、別のサプライヤーを検討しましょう。
可能であれば複数のサプライヤーと提携する
商品調達の経験がない場合、複数のサプライヤーと提携することで、ワークフローが複雑化する可能性があります。しかし、各サプライヤーとの関係を強化することで、リスクとコストの両方を削減できます。
- 複数のサプライヤーと関係を構築および維持することで、在庫不足や納期の遅延に柔軟に対応できます
- 世界規模で事業を展開する場合、複数のサプライヤーと提携すれば、配送コストの削減や関税の回避に役立ちます
- 複数のサプライヤーから商品を調達し、数ヶ月後に価格を比較することもできます。これにより、コストが高すぎるサプライヤーや、同じ商品を低価格で提供しているサプライヤーを見つけ出し、最適なサプライヤーを選定してコストを削減できます
提携すべきサプライヤーの数について、明確な答えはありません。しかし、商品調達の選択肢が多ければ多いほど、リードタイムの短縮、一貫性のある価格の維持、顧客満足度の向上を実現できる可能性は高まります。
サプライヤーを審査
サプライヤーを審査し、時間とコストをかける価値があるかどうかを見極めましょう。最善の方法は、サプライヤーを実際に利用している他社に問い合わせることです。他社の事例をもとに、サプライヤーがタイムリーなコミュニケーションを通じて、優れた価値を提供しているかどうかを判断できます。
コマースビジネスをさらに進化させましょう
自社のコマースビジネスに最適な商品調達の方法を判断するのは、容易なことではありません。本記事を通じて、それぞれの方法の利点と欠点、商品調達に役立つアプリについて把握し、自社のビジネスニーズに対応する方法を見つけましょう。
自社のコマースモデルに適した商品調達手段を選定したら、ビジネスを開始するための準備を整えましょう。Adobe Commerce なら、商品調達とオンラインストア管理の両方に対応できます。フルフィルメント、在庫管理、スケーラブルな決済方法、分析など、商品調達に関するあらゆる業務を単一の基盤で管理できます。