採用マーケティングとは?デジタルを活用した効果的な採用活動をご紹介

「採用マーケティング」とは、マーケティングの概念を採用活動に適用した考え方のことで、人材獲得競争が激化するなか、新しい採用の概念として注目されています。データやテクノロジーを活用して採用ターゲットのニーズを解明したうえで、プロセス全体を検証し、候補者との適切なコミュニケーションを通じて、より効果的な採用活動につなげます。

今までの採用活動は、オフライン(説明会やOB訪問などのイベントやカタログ・パンフレットなどの紙媒体)が中心でしたが、デジタルを活用すること、あらゆるチャネルでの就活活動体験の最適化とその効果、状況を可視化、PDCAしていくことで効果的な就職・転職活動につながります。「エンゲージメント」を軸に企業と就職活動者・入社内定者(個人)とのミスマッチを減らし、両者にとって良い効果をもたらせる、これからの採用活動です。

目次

  • 最初に
  • 採用市場の変化
  • 採用活動に応用可能なマーケティング手法
  • 求職者の興味内容を把握し最適なコミュニケーションを図るために
  • 採用マーケティングの成功事例
  • まとめ

最初に

アドビでは、「採用マーケティング」に関するセミナー動画と資料を公開しております。こちらも併せてご活用ください。

wWebセミナー:候補者とのエンゲージメントを実現する採用マーケティング

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採用市場の変化

新卒採用

新卒採用市場において最も影響が大きい出来事は、2021年からの経団連の採用ルールの廃止ではないでしょうか。近年の傾向であった就職活動の長期化がさらに進むことが予想され、従来のインターンシップから就職説明会、そしてエントリー、面接に至るフローがより複雑になることが考えられます。その一方で、一部の優秀な学生への内定の集中、獲得競争の激化が続く傾向にあるため、応募をしてから就職先を決めるまでの「短期決戦」の重要性は今後も変わらないと予想されます。

そのような動きの中で、学生が本格的に就職活動を始める前に企業側から積極的に情報提供を行い、また、各学生の活動状況や興味を持っている内容にあわせた情報を提供していく必要性はどんどん高まっていくと考えられています。更に、その情報提供は学生にとって普段使いなれたSNS、メール、ウェブなどのチャネルを選択する必要性も出てきました。

それに加えて、学生はこれまでのような大手志向の価値観からのシフトが起こり、企業側も画一的ではないユニークな人材を求める傾向にあり、それぞれの価値観が多様化する傾向にあることが、より一層優秀な学生を確保することを難しくしているようです。

Consulting service

(図1) 新卒採用市場に関する環境認識

転職市場

人材の流動化が進み転職希望者が増加する、また事業側からの即戦力人材採用の期待が高まる中で、採用担当者の負担が増えるのと同時に、転職サイトや転職エージェントを経由して入社する方のコストが増加している傾向にあります。

また、求職者は新卒市場における学生と同じように、労働に対する多様な価値観を持つようになってきていると言われており、「自己成長」「給与」「ワークライフバランス」といった、それぞれの候補者が重視する点について理解した上で、各企業の魅力をコミュニケーションしていく必要があります。中途採用に関するイベント、社員紹介(リファーラル採用)、ダイレクトリクルーティングなど、活動が盛んになっている一方で、優秀な方ほど現場でも重要な仕事を任されており、その転職のタイミングは限られたものになります。そのタイミングを逃さぬよう、企業として接点を持ち続け、エンゲージメントを向上し、「その時」に選ばれる存在になることが重要です。

採用活動に応用可能なマーケティング手法

企業認知からオファーまでのカスタマージャーニーを設計する

上記のような採用市場の変化により、企業側からの画一的なアプローチは効果が限定的になってきているのではないでしょうか。実はこの動きは、一般的なマーケティング活動においても同様の流れが起きています。1日に目にする広告の数が5000に上るとも言われており、従来のテレビCM等によるマスマーケティングだけに偏った広告効果が薄れてきており、その代わりに「顧客体験」が重視されはじめています。

その中で近年注目されているのが、「カスタマージャーニー」や「ファネル分析」です。自社が提供する商品やサービスの購買プロセスをいくつかのステージに分類し、顧客1人1人がそのプロセス内のどのステージに位置しているかを把握し、企業が営業・マーケティング活動を行う中でどのように次のステージに進んでいってもらうか、という発想で現状の分析を行っています。

これを採用活動に当てはめると、入社までの採用ステージは「自社の認知」「自社への興味」「応募」「選考」「オファー(内定)」「内定承諾」といったものに大まかに分類が出来るのではないでしょうか(こちらでの説明は省略しますが入社後のファネルも作成することができます)。

(図2) アドビが定義する採用ファネル

求職者一人ひとりの活動状況を可視化する

一般的なマーケティング活動では、このカスタマージャーニーやファネル分析のために、顧客一人ひとりの行動状況を蓄積していきます。具体的な情報で言うと、「ウェブサイトで製品情報を見た」「製品資料を請求した」「メールを開封した」「展示会に参加した」「セミナーに参加した」「営業担当が電話をかけてアポイントを取得した」「営業が訪問した」といったものです。

これを採用活動に当てはめると、「自社にエントリーした」「ウェブサイトで先輩社員のインタビューを見た」「インターンシップ募集メールを開封した」「会社説明会に参加した」「OB訪問・社員とランチに行った」「面接をした」といったものが行動情報にあたります。

行動情報の蓄積において、オンラインで得られる情報は非常に有益になってきます。オフラインでの活動の分析は、出席や欠席のようなデータを除くと肌感覚によるものが多く、「興味を持って話を聞いていた」「積極的にディスカッションに参加していた」といった主観的な情報が中心になってしまいがちです。一方で、オンラインであれば、メール開封、閲覧ページ数やウェブ訪問日数、さらには見ているメールやウェブサイトのコンテンツの内容(例えば福利厚生や先輩社員の「一日の働き方」ページ、社長メッセージ等)といったデータの取得も可能ですので、自社への熱量や理解度を把握する情報として活用しやすいものとなります。

これらの情報を蓄積し一元的に管理していくことにより、学生や求職者がどういった内容に興味を持っているのか、どれくらい活発に活動しているのかを把握することができます。これをマクロな観点から分析していくと、採用状況全体を俯瞰したデータに基づいた採用活動のPDCAを回すことができますし、ミクロな観点で見ると優秀な学生や求職者に対して適切なタイミングと適切なチャネル(メールor電話or郵送物といったようなもの)でのフォローができるようになります。

求職者の興味内容を把握し最適なコミュニケーションを図るために

デジタルを活用した1to1コミュニケーションを設計する

学生や求職者の興味や志向が多様化した今、それぞれの学生や求職者へ最適な情報を提供していくことが重要ではありますが、どのような情報提供を行っていけばよいのでしょうか。

仮に候補者が数名~数十名程度であれば、人事担当者がそれぞれの候補者に対してメールや対面でのコミュニケーションを行うことでそれぞれの候補者へ最適な情報を提供していくことができます。しかしながら、新卒採用であれば数百人から数千人、大企業であれば数万人がおのおののタイミングでエントリーしたり、中途採用においてもイベントへの参加、オファーを辞退された方など、過去検討して頂いた方々のデータがどんどん蓄積していく中でいずれ人的なアプローチの限界が訪れます。

そうなった際に、一括の情報提供だけでなく、理解度や志向性にあわせたコミュニケーションを実現するにはテクノロジーを活用したアプローチが重要になってきます。

下図のように、例えば営業職志望なのか技術職志望なのか、成長重視なのか働きやすさ重視なのか、といった分類を行っていくと、それぞれの興味にあわせて提供すべき情報が異なってきます。その情報を取得し、あらかじめ想定しておいたシナリオをベースにメールやウェブサイトを通じて情報を提供していくことで、人的工数を抑えながらニーズにあった情報提供が可能になります。これらは、マネジメント職、ミドル層、スタッフ層などの職務階層や、日系企業・外資系企業勤務者などの現在の仕事のバックグラウンドによるセグメントも可能です。

(図3) 候補者のタイプ別にコミュニケーションを図る

1to1コミュニケーションを実現するためのツールの活用

これらを実現するために、先進的な企業では複数のツールを使いこなしています。その中でもキーとなるツールをご紹介します。

CMS(コンテンツ管理)ツール

ウェブサイトを作成し管理することのできるツールで、採用ページを作成する上では必須のツールです。コーディングが不要なものが数多く用意されているので、専門的な知識が必要なく簡単にウェブページを追加していくことが可能です。パートナー企業に運用を委託することもできますし、また、自社で運用可能な使いやすいツールを導入することで、柔軟にカスタマージャーニーにあわせたコンテンツの追加を可能します。

ATS(採用管理)ツール

こちらも急速に導入が進んでいるツールで、応募から採用に至るまでの情報を管理するためのデータベースとして活動履歴の管理を行っていくことが可能です。具体的には、「求人票の管理」「応募者情報管理」「選考管理」「内定者管理」「スケジュール調整」「ダッシュボードによる可視化」といったことが行えます。採用担当者はATSの画面を見ながら採用活動を行っていくことになります。

MA(マーケティングオートメーション)

「デジタル採用」「採用マーケティング」を実現するために注目を集めているのがマーケティングオートメーションです。認知から応募そして内定・入社に至る採用活動をマーケティングオートメーションのプロセスに落とし込むことで、そのプロセスにあわせた学生や求職者とのコミュニケーションを最適化・自動化していくことが可能です。

採用マーケティングの成功事例

候補者の興味を引くためには、それぞれの方の志向に合わせた情報提供が必要です。社長・リーダーの経歴や思想、事業内容、ビジネス状況、今後の戦略・展望、入社後任せる業務、キャリアパス、給与や福利厚生などの待遇面、社内カルチャー等、自社のアピールには多様な切り口があります。

しかしながら、就職活動や転職活動が本格化してから情報提供を行ったとしても、うまく自社の魅力を伝えきれず、他社の選考を進めてしまう、ということが起こりうるのではないでしょうか。

特に、中途採用において、今すぐに転職したいと考える人は、市場全体でみるとそこまで多くはありません。前述の通り、数年に一度の転職検討のタイミングを逃さずに察知することが重要です。すぐには入社する予定はないが、ゆくゆくは就職や転職を考えている方々に「入社するとしたらここにしよう」と明確に思ってもらえるような関係が築ければ理想的ではないでしょうか。

ここでは、採用マーケティングの考え方を基に、アドビのMAであるMarketo Engageを活用して求職者との良好な関係構築を実現された2社の事例をご紹介します。

応募後の選考者数を50%引き上げた小学館集英社プロダクション

人気キャラクターのライセンス管理やカレンダー制作、イベント運営などを行うメディア事業と、幼児教室や通信教育、保育や公教育などの教育事業を担うエデュケーション事業の大きく2つの事業を展開している株式会社小学館集英社プロダクション。採用活動において候補者の選考辞退率の高さに苦戦していた同社が、現在は応募→選考実施率と内定承諾率を大きく向上させています。

当初求人広告から流入してきた候補者に対して電話やメールで採用説明会などのイベントの案内を送っていたものの、実際にイベント・選考に参加する数は20%程。辞退理由も把握しづらいため改善すべき点も見えず、採用活動が停滞してしまっていました。何か手を打たなくてはと考え目をつけたのが、ウェブページとMarketo Engageを活用し、適切なアピール内容を候補者一人一人に届ける「採用マーケティング」でした。

従来の説明会・イベントを通して自社への理解を深めてもらうスタンスを改め、応募段階の候補者一人一人に適切なコンテンツを発信する。そのためにweb上の行動やプロフィールから志向性を汲み取り、自社の何をアピールすれば興味を持ってもらえるかという観点でのメッセージング体制を構築しました。Marketo Engageを導入して候補者に寄り添った情報提供を行った結果、翌年の選考者数を50%UP、かつ選考からの内定・入社者数も45%向上させる成果を出すことに成功。今後は翌年の採用活動に向け、早い段階からじっくりコンテンツ発信をしていくことで採用数の向上も図ります。

エントリーシート提出数昨対比60%UPを実現した村田製作所

セラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーとして、エレクトロニクス産業のイノベーションを先導してきた株式会社村田製作所。海外売上比率90%超というグローバル規模の成長を続ける同社では、7年前からMarketo Engageを活用した採用マーケティングが行われています。

Marketo Engage導入前の課題はエントリー数の増加とエントリーシート未提出による候補者の離脱。そこで同社はデジタルマーケティングの思想を採用活動に応用し、動画やSNSを駆使した候補者情報の取得と、Marketo Engageを活用した候補者向けメッセージの出し分けを実施することにしました。特に、エントリーをしたもののエントリーシートが未提出の候補者に対しては、提出期限のリマインドメールを送るなど一人一人の状況に合わせたメッセージング体制を構築。その結果として、エントリー数昨対比10%UP、エントリーシート提出数60%UPという目覚ましい成果に繋がっています。

新規エントリー数の増加だけでなく、一度興味を示した候補者をしっかりフォローし、入社までのプロセスへ推し進めていくことで、採用課題の解決に繋がった事例です。

まとめ

学生や求職者の価値観が多様化する中で、デジタルを活用してオンライン・オフライン両方のコミュニケーションを実現することが、優秀な人材を確保し会社を成長させていくことに繋がっていくのではないでしょうか。そのためにも上手にITツールを使いこなしていくことで採用活動の効率化を図っていきましょう。

アドビではより詳細に採用マーケティングの手法についてご紹介したセミナー動画と資料をご用意しております。是非一度ご覧ください。

wWebセミナー:候補者とのエンゲージメントを実現する採用マーケティング

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次のステップ

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