VMI:利点、リスク、ベストプラクティスを徹底解説

Vendor managed inventory

一般的に在庫管理は、小売事業者によるニーズの予測にもとづいています。しかしそれでは、精度が不安定になります。仕入れが多すぎると、コストが増大します。その一方で、仕入れが少なすぎると、売上を逃すことになります。VMI(ベンダー主導の在庫管理)では、たとえ小売事業者の倉庫に在庫があったとしても、サプライヤーまたはベンダーが在庫を管理することで、こうした問題を解決できます。

本記事では、VMIの利点と、どのように導入するのかを解説します。

VMIとは?

VMIでは、ベンダーと小売事業者の間でパートナーシップを締結し、ベンダーが小売事業者の在庫を管理します。 つまり、買い手(小売事業者)ではなく、売り手(ベンダー)が在庫を管理する在庫管理システムです。

ベンダーが在庫水準を確認し、在庫の補充が必要かどうか判断するため、小売事業者は在庫を多めに確保しておく必要がなくなります。

VMIの目的は、小売事業者とベンダー双方において、在庫に関連するコストを削減することです。ベンダーが在庫を管理する場合、必要な場合にのみ在庫を補充することで、過剰在庫や小売事業者のコストを減らすことができます。また、ビジネスパターンをより的確に予測できるため、ベンダーは業務を合理化できます。

VMIの仕組み

VMIと他の在庫管理システムの違いは、主に3つあります。

VMIは、ベンダーと小売事業者間の緊密なコミュニケーションを軸として展開されます。まず、双方が成功指標を設定し、パートナーシップの条件について合意する必要があります。

続いて、ベンダーは小売事業者に対して、商品の供給を開始します。このプロセス全体を通して、小売事業者は最新の在庫データをベンダーに提供し、ベンダーが在庫水準と購買傾向を追跡できるようにします。このデータなくして、VMIは成り立ちません。

ベンダーは、小売事業者から共有されたデータを利用して、必要に応じて商品を供給します。これにより、小売事業者の負担が軽減されます。また、ベンダーは、生産期間、供給の遅延、推定リードタイムを熟知しています。在庫が補充されるタイミングと量を把握していれば、VMIのコストを削減できます。

小売事業者は、どこかのタイミングで供給された商品の支払いをおこないます。支払いのタイムラインは、ベンダーとの契約にもとづいて決定されます。契約内容は、小売事業者ごとに異なります。商品の到着後に支払う場合もあれば、商品の販売後に支払うこともあります。

例えば、ペットショップがVMIを導入し、ドッグフードの在庫を管理するとします。ペットショップは、特定のブランドからドッグフードを仕入れています。そのブランドの在庫管理者は、ペットショップから売上データを定期的に収集し、両者の指標と目標にもとづいて、在庫を補充するタイミングと量を判断します。

VMIは特に、複数のベンダーからさまざまな商品を仕入れている場合に役立ちます。小売事業者にとって、幅広い商品を管理することは手間がかかります。在庫管理をベンダーに委託することは、両者にとって望ましい方法なのです。

VMIの利点

VMIは、ベンダーと小売事業者の双方に多くの利点をもたらします。間接費の削減、予測の向上、小売事業者のリスク低減など、一部の利点はすぐに効果を実感できます。

コストの削減

VMIの主な利点は、サプライチェーンのあらゆる面でコストを削減できることです。ベンダーが在庫を管理するため、小売事業者は在庫計画に要する時間を短縮できます。また、無駄な仕入れを削減し、在庫を過剰に保有する必要がなくなります。これにより、維持費を削減できます。多くの場合、小売事業者は仕入れた商品が実際に販売されてから、ベンダーに対して支払いをおこないます。そのため、小売事業者は他のビジネスニーズにより多くの資金を回すことができます。

一方、複数の小売事業者の在庫をまとめて管理することは、ベンダーのコスト削減にもつながります。ベンダーは、在庫の補充スケジュールをより的確に予測できるようになり、プロセスを合理化することが可能になります。

リスクの低減

ベンダーが直接、小売事業者の在庫を管理することで、過剰な仕入れや在庫不足といったリスクを減らすことができます。ベンダーは、商品の回転率に関するリスクを引き受けることになります。

予測の向上

小売事業者とベンダーが継続的にデータを共有することで、より一貫性のある方法で、タイミングよく在庫を補充することができます。他のサプライチェーン管理システムは、大まかな予測にもとづいています。一方、VMIを利用すれば、リアルタイムの売上データをもとに、より戦略的な発注が可能になります。

また、ベンダーは複数の小売事業者からデータを収集して分析し、地域ごとにその傾向を把握して、在庫計画を立てることができます。

ベンダーとの関係の強化

VMIは、小売事業者とベンダーの間の共生関係です。あらゆるプロセスがスムーズに進んでいる場合、両者の関係がより強固なものとなります。小売事業者は、安心して商品の供給をベンダーに任せられるようになります。一方ベンダーのほうも、長期的なビジネス予測を向上させることができます。

VMIを導入するには、入念な戦略が不可欠です。多くの小売事業者は、手間のかかるオンボーディングプロセスを何度も繰り返さないようにするために、ベンダーに対するロイヤルティがより高くなります。

在庫水準の管理

在庫水準の管理は、小売事業者が常に 頭を悩ませている課題のひとつです。 販売する商品が増えるほど、そのプロセスは複雑化します。

VMIを導入すれば、小売事業者はそうした悩みから解放されます。在庫水準の追跡や発注に費やしていた時間を、その他のタスクに割り当てることができるようになり、チームの生産性が高まります。

また、VMIは、在庫の適正化にも役立ちます。ベンダーは、データにもとづく長期的な計画を策定し、複数の小売事業者に対する供給を一元管理することで、より効率的に商品を供給できるようになります。

人為的ミスの抑制

人為的ミスは、さまざまな面で在庫管理を複雑化させる原因となります。ある部門が特定の商品を見落とす、トレーニング責任者が計算を誤る、過大評価/過小評価するといったミスは、コストの増大につながる可能性があります。入力ミスをしただけでも、その影響は甚大です。

VMIでは、ベンダーが発注に対する責任を負うため、小売事業者は仕入れのミスを心配する必要がなくなります。ベンダー側で発生した人為的ミスは、ベンダーが解決する必要があるからです。

VMIの潜在的な課題

新しいシステムの導入には、混乱がつきものです。早い段階で潜在的な課題を把握することで、そうした混乱に備えることができます。

データ分析能力の欠如

ベンダーは、小売事業者の在庫データを把握する必要があります。それができなければ、ビジネス全体が瞬く間に破綻してしまいます。ベンダーが小売事業者から提供されたデータを分析し、商品を発注するタイミングを把握できるかどうかが、VMIの成功を左右します。ベンダーは、在庫データを把握する責任を負いますが、小売事業者もまた、VMIのパートナーシップを検討する際に、ベンダーのデータ分析能力を考慮する必要があります。

在庫の変化

小売事業者は、新商品の投入や既存商品の廃止を検討する際、ベンダーとしっかりとコミュニケーションする必要があります。

特に新商品を投入する場合、ベンダーが需要を予測するためのデータがないため、困難を伴います。小売事業者はベンダーと緊密に連携し、新商品の販売状況を報告する必要があります。

同様に、商品の販売を終了する場合は、ベンダーが発注する前にその旨を通知する必要があります。在庫を過剰に保有することは、コストの増大につながるだけでなく、保管スペースを圧迫することになります。

動きの遅い在庫

再入荷の必要がないぐらい在庫の動きが遅くても、在庫データに販売が記録され再入荷されてしまい、過剰在庫となることがあります。VMIを活用すれば、そうした事態を回避することができます。ターゲット市場や売上履歴を入念に検証することで、商品を戦略的に選択しましょう。

需要の急増

需要の予期せぬ急増が発生した場合、ベンダーの予測に影響を与え、在庫を補充するタイミングを適切に判断できなくなる恐れがあります。その場合、在庫量が一時的に低下する可能性があります。ベンダーがどの程度素早く在庫を補充できるかどうかは、ベンダーの柔軟性にかかっています。

需要の急増が発生するのは稀であり、全体的な売上目標に大きな影響を与えることはほとんどありません。しかし、ベンダーを選定する際は、ベンダーがそうした事態に柔軟に対応できるかどうか話し合うことが重要です。

コミュニケーションの不足

VMIが失敗する主な要因のひとつは、ベンダーと小売事業者が適切なコミュニケーションを取れていないことです。両者がオープンな意思疎通を図り、助け合うことで、潜在的な課題のほとんどを解決できます。

ベンダーは、VMIにおいて多くの責任を負います。しかし、両者の関係の維持において、小売事業者の責任が免除されるわけではありません。ベンダーと頻繁にコミュニケーションを取り、正確かつ最新のデータを提供することが重要です。

VMI software dashboard

VMIのベストプラクティス

コミュニケーションは、VMIを成功に導くうえで最も重要な要素のひとつです。しかし、成功の秘訣はほかにもあります。制限と支払いルールを事前に設定する、目標と成功指標を明確にする、十分なデータをベンダーに定期的に提供する、あらゆる変更についてベンダーに通知するなど、VMIのベストプラクティスを実践する必要があります。

1.制限と支払いルールを設定する

まず、適切な制限を書面で設定する必要があります。一定の期間にどの程度の在庫を保持するのか、利用できる保管スペースはどれくらいかなど、上限を設けることが重要です。また、小売事業者は、商品の到着時に支払うのか、商品の販売後に支払うのかを決定するとともに、売れ残った在庫の返品ポリシーを策定する必要があります。

ベンダーは、管理対象となる在庫を把握する必要があります。双方に不要なコストが発生しないようにするために、契約を締結する前にあらゆる費用を明確にしなければなりません。

2.目標と成功指標を策定する

長期的な目標と、成果を測定するための指標を策定します。ベンダーと小売事業者が協力し合うためには、共通の目標が必要です。また、一時的な問題が発生した場合、双方の足並みを揃えることで、継続的な連携を図ることができます。

ベンダーと小売事業者は、VMI契約が両者にどのような利点をもたらし、それを支えるためのデータ基盤を構築することで、関係者の誰もが成果を上げることができることを理解している必要があります。

3.十分なデータを定期的に提供する

ベンダーと小売事業者の間のデータのやり取りなくして、VMIは成立しません。小売事業者は、在庫水準や売上など、ベンダーが在庫を適切に管理するために必要な、あらゆるデータを提供しなければなりません。

共有するデータは多ければ多いほど良いですが、データの漏洩やベンダーの管理ミスなど、不測の事態からデータを保護する体制を整えておく必要があります。ベンダーとの契約に秘密保持契約条項を追加することで、こうしたリスクを回避できます。専有データがある場合は、ベンダーの業務に支障をきたす場合を除いて、原則として共有しないようにすることが推奨されます。

4.ベンダーに正確かつ最新の情報を提供する

常に最新の情報をベンダーに提供するには、リアルタイムのデータを自動的に提供する仕組みを構築することが、最善の方法であると言えます。既存のシステムがデータのリアルタイム配信に対応しておらず、予算の都合でシステムのアップグレードが難しい場合は、できる限りリアルタイムに近いタイミングでデータを共有する必要があります。そのためには、データを定期的に配信するようスケジュールしておくことが重要です。

また、売上や在庫水準に影響を与える可能性がある、ビジネス上の変更について、ベンダーと話し合う必要があります。シーズンごとの変動、需要の急増、回転率の低い商品、新しい競合他社、セールスチャネルの追加などは、在庫ニーズに影響を与えます。これらの変更について、できる限り早い段階でベンダーと協議することが重要です。

VMIを始めましょう

VMIを導入すれば、コストとリスクを低減し、在庫水準の予測と管理を強化できます。人為的エラーを減らし、ベンダーとの関係を向上させることができます。

VMIを成功させるための第一歩は、サードパーティのロジスティクスシステムとシームレスに統合できる、コマースツールを導入することです。また、収集したデータと提供したデータを包括的に管理することも、スムーズな在庫管理に欠かせません。

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