カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップは、企業と顧客の間のコミュニケーションを強化して、顧客の意思決定プロセスに価値のあるインサイトを提供します。カスタマージャーニーマップによる包括的な理解は、顧客が購入に至るまでのステップをマッピングすることで、競合他社と一線を画すのに役立ちます。
このガイドの内容:
- カスタマージャーニーマップとは?
- カスタマージャーニーマップとマーケティングファネルの違い
- カスタマージャーニーマップの例
- カスタマージャーニーマップの利点
- カスタマージャーニーマップの作成方法
- カスタマージャーニーマップの多様な活用方法
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、顧客と企業の関係全体にわたる接点を視覚的に表したものです。顧客がインタラクションの各段階で取る行動の概略を示し、次の点で企業をサポートします。
- 行動の予測
- ニーズの先取り
- 効果的な直接対応
カスタマージャーニーマップを適切に構築すれば、顧客の立場で物事を見ることができ、次のことに焦点を当てることができます。
- 企業との最初のエンゲージメント
- コンバージョンポイントと購入
- 企業とのさらなるインタラクション
顧客の立場から自社ブランドを見ることで、顧客体験のギャップと機会を特定し、顧客満足度とロイヤルティの強化につなげることができます。
カスタマージャーニーマップとマーケティングファネルの違い

カスタマージャーニーマップとマーケティングファネルはよく似ていて、いずれも段階により顧客の進捗を可視化しますが、目的や観点が大きくことなります。
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焦点:
- マーケティングファネルはビジネス中心で、コンバージョンに向けて見込み顧客がどのように移動するか(例:販売に向けてリードを導く)に焦点を当てます。
- カスタマージャーニーマップは顧客中心で、インタラクションの各段階における顧客の感情や課題、アクションを強調します。
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スコープ:
- マーケティングファネルはジャーニーを直線的なステージ(認知、検討、購入など)に簡素化します。
- カスタマージャーニーマップは、購入後のインタラクション(オンボーディングやロイヤリティ、アドボカシーなど)を含む、非線形の行動を考慮して構成されます。
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補完的な役割:
- マーケティングファネルは見込み顧客を誘導するようにキャンペーンの設計をサポートします。
- カスタマージャーニーマップは、ファネル全体で進捗を妨げる可能性のある、体験のギャップを特定します。
カスタマージャーニーマップの例。
カスタマージャーニーマップは、複雑なマルチチャネル環境をまたいで顧客インタラクションを把握できるので、企業に合わせてカスタマイズしたロードマップとして機能します。具体的な業界の例を以下に示します。
B2B

例:SaaS/PaaS
- 認知:あるFortune 500企業のCMOが、Gartnerレポートと、IT意思決定者をターゲットとしたLinkedInのスポンサー投稿を通じて御社のSaaSプラットフォームを知ります。
- 検討:同企業のチームは、ホワイトペーパーをダウンロードし、このソリューションを既存のテックスタックと統合する方法を紹介する御社のライブウェビナーに参加します。
- 購入:同企業CIOは、デモのスケジュールの設定、ベンダー審査の実施、調達部門を通じた価格交渉を行います。
- サポート:御社は、専用のエンタープライズオンボーディング、四半期ごとのビジネスレビュー、24時間年中無休の技術サポートを提供して、顧客が適応および満足できるようにします。
- 購入後:契約更新時、御社のアカウントマネージャーはデータ主導のROIインサイトを示し、企業全体でのライセンスアップグレードを提案します。
課題:大企業のクライアントでは、調達プロセスに長い期間がかかり、ROIの証明を要することが多くあります。
解決策:検討と購入のステージでは、ROI計算ツール、業界の導入事例、顧客に合わせたエグゼクティブブリーフィングなどを提供します。
デジタルコマース

例:大企業のオンラインマーケットプレイス
- 認知:ある世界的な小売りチェーン企業のバイヤーは、一括購入の割引を宣伝するLinkedInキャンペーンを通じて、御社のB2Bマーケットプレイスを見つけます。
- 検討:同企業はベンダーの比較、製品仕様のレビューを実施し、営業担当者に連絡してパーソナライズされた見積もりを依頼します。
- 購入:同企業は、請求オプションを用意し、合理化された、企業にとって使いやすいチェックアウトシステムを使用して一括注文を行います。
- 購入後:御社のチームは、リアルタイムの発送状況確認機能の提供、配送追跡番号と調達システムとの統合、フィードバックアンケートによるフォローアップなどを実施します。
課題:同企業のバイヤーは、社内システムとのシームレスな統合と、発送における物流の透明性を必要としています。
解決策:企業アカウント向けの調達プラットフォームとライブ注文追跡ツールのAPI統合を提供します。
B2C

例:グローバルなオムニチャネルのカスタマージャーニーマップ
- 認知:顧客は、幅広いデモグラフィックをターゲットとした国内でのTVキャンペーン、プレミアムな屋外広告、プログラミングによるディスプレイ広告を通じて御社のブランドを知ります。
- 検討:顧客は、製品をオンラインで調べ、ARアプリを使用して自宅に商品を置いたらどうなるかを視覚的に確認し、実店舗での相談を予約します。
- 購入:顧客は、ロイヤルティアカウントからパーソナライズされた割引を使用して、旗艦店舗やモバイルアプリで購入を完了します。
- 購入後:各顧客に合わせたお礼のメールや、限定商品の発売の情報を顧客に送り、ライブチャットやAIを活用したアシスタントにより購入後のサポートを提供します。
課題:オンラインと実店舗の体験に一貫性がありません。
解決策:統合顧客データプラットフォームを導入して、あらゆるチャネルをまたいで在庫、料金、ロイヤルティプログラムを同期させます。
金融機関

例:リテールバンク
- 認知:顧客は、ターゲットを絞ったディスプレイ広告、教育ウェビナー、大規模なイベント(経済フォーラムなど)との提携を通じて、御社の金融サービスを見つけます。
- 検討:顧客は、webサイトで貯蓄口座や投資などの商品をチェックしたり、教育コンテンツを読んだり、オンライン計算ツールを使用してニーズを評価したりします。一部の顧客は、バーチャル相談会を予約したり、地元の支店を訪問してパーソナライズされたアドバイスを受けることもあります。
- 購入:顧客は、モバイルアプリ、webサイト、実店舗などで口座を開設したり、ローンを申請したり、投資商品に新規登録したりします。また、カスタマイズだれたオファーやプロモーション料金を利用することもできます。
- 購入後:顧客には、選択した商品の特典を詳しく説明したウェルカムメールが届きます。顧客は、アカウントのアクティビティに関するモバイルアプリ通知を設定したり、継続的な金融教育リソースにアクセスしたりできます。担当のリレーションシップマネージャーのパーソナライズされたフォローアップにより、長期的な満足が保証されます。
課題:顧客は、オンラインと対面でのインタラクションの間に齟齬を感じたり、複雑な商品オファーに戸惑うことがあります。
解決策:AIを活用したレコメンデーションにより商品発見プロセスを簡素化し、デジタルプラットフォームと支店をまたいで顧客データを統合して一貫性のある体験を実現します。
教育機関
例:大学
- 認知:入学希望者は、ターゲットを絞ったソーシャルメディア広告、教育フェアへの参加、友人からの推薦などよりあなたの教育機関を見つけます。また、検索エンジンを使用してプログラムを探している際に、あなたの教育機関のwebサイトを見つけることもあります。
- 検討:学生はwebサイトにアクセスして学位プログラムを調べ、パンフレットをダウンロードし、オープンキャンパスやウェビナーに参加します。一部の学生は、Q&Aセッションを通じて教員とエンゲージしたり、ソーシャルメディアで在学生とつながり情報を得ます。
- 購入(登録):学生はオンラインで申請し、必要な書類をアップロードし、受験料を支払います。学生には、適切なタイミングで応募状況や、経済的支援オプションに関する最新情報のメールが送られます。
- 購入後(エンゲージメント):合格後、学生はインタラクティブなオリエンテーションプログラムを通じてオンボーディングされます。また、学生ポータルにアクセスして、コースへの登録、大学のリソース、アドバイザーのサポートを利用できます。
課題:学生は、応募プロセスを面倒に感じたり、プログラム内容が明確でないと感じることがあります。
解決策:パーソナライズされたメールワークフロー、リアルタイムのサポートを提供するチャットボット、バーチャルツアーなどを活用して、意思決定プロセスを簡素化し、申請体験を強化します。
カスタマージャーニーマップの利点
オムニチャネルマーケティングを実現して顧客体験を向上
カスタマージャーニーマップは顧客が複数のチャネルをまたいでどのようにエンゲージしているか、その全体像を提供すると同時に、体験の妨げとなっているつまづきのポイントを特定します。これらのギャップを解決して顧客接点を調整することで、企業は一貫性のあるメッセージとインタラクションを実現するオムニチャネルマーケティング戦略を構築できます。
オーディエンスに関する理解の深化
企業はジャーニーマップによって得られた顧客のモチベーション、ニーズ、課題などに関する深いインサイトを活用して、関連性を最大化できるようにメッセージやインタラクションを調整できます。このアプローチによって信頼関係を構築し、長期的な満足度を育成します。
顧客中心文化の促進
ジャーニーマップは部門をまたいでチームの足並みを揃え、卓越した顧客体験を届けるという共通の焦点を育みます。一元的な参照元として機能し、共同作業とより適切な意思決定を促します。
オンボーディング、アップセル、マーケティング施策の最適化
カスタマージャーニーマップでは、重要な購入ステージに注力し、企業がオンボーディング、アップセル、マーケティング施策を最適化できるようにします。キャンペーンを改善し、顧客のニーズにより密接に関連させる機会を特定します。
コンバージョン率の向上
カスタマージャーニーマップにより、コンバージョンを遅らせたり妨げたりする障害が明らかになるため、企業は顧客の課題を積極的に解決して意思決定にかかる時間を短縮できます。
カスタマージャーニーマップの作成方法
カスタマージャーニーマップを作成する際には、顧客体験を把握し、改善の余地がある機会を特定するという、順を追ったアプローチを取ります。このガイドは、購入プロセス、ユーザーのアクション、感情、課題、ソリューションといった、重要なコンポーネントを統合します。
ステップ1:明確な目標の設定
最初に、ジャーニーマップの目的を定義し、包括的なビジネス目標との整合性を確保します。マーケティング部門、営業部門、製品設計部門など、部門横断型のチームを連携して多様な観点を集め、全体像を構築します。
- 例: ある小売企業は、カート放棄の削減を目指して、チェックアウトプロセスにおけるつまづきポイントを解明するという目標を設定します。
- 重要な質問: このジャーニーマップでは、具体的にどのような成果の実現を目指しているか?
ステップ2:顧客のペルソナの作成
デモグラフィック、行動、モチベーション、課題などに基づいて、オーディエンスを詳細なペルソナにセグメント化します。顧客アンケート、分析、フィードバックなどのデータソースをつなぎ合わせて、これらのペルソナが実際の顧客体験を反映するようにします。
- 例: あるeコマース企業は、常連客、初回利用者、予算重視の顧客向けにペルソナを作成します。
- 重要な質問: 各顧客ペルソナの主な目標、課題、好みは何か?
ステップ3:課題の特定
オンライン、オフライン、サードパーティプラットフォームなどの顧客が企業とやり取りするあらゆる顧客接点をマッピングします。これらの顧客接点は、認知から購入後のエンゲージメントに至るまで、ジャーニー全体に広がっています。
- 例: ある金融サービス企業は、webサイトの計算ツール、支店への訪問、カスタマーサポートチャットなどの主な顧客接点を特定します。
- 重要な質問: 顧客は、ジャーニーのそれぞれの各段階のどこでエンゲージしているか?
ステップ4:課題と感情の分析
各顧客接点について、潜在的なつまづきや成功の瞬間を評価します。ジャーニーの様々なステージで、混乱、苛立ち、興奮などの顧客が感じるであろう感情を検討します。
- 例: あるSaaSプロバイダーは、顧客がオンボーディングに苦労していることが、顧客ライフサイクルの早い段階で不満につながっていると気づきます。
- 重要な質問: 各ステージにおいて、進捗を妨げる課題や感情にはどのようなものがあるか?
ステップ5:カスタマージャーニーのマップ化
ターゲットペルソナについて、ステップ、アクション、感情、顧客接点を可視化します。フローチャート、ジャーニーマッピングソフトウェア、ホワイトボードなど利用して、チームがジャーニーにアクセスできるようにします。
- 例: ある大学は、発見から登録に至るあらゆるステージの詳細を示す、留学生のジャーニーをマッピングします。
- 重要な質問: 顧客は各ステージでどのようなステップをたどり、どのように感じているか?
ステップ6:検証と調整
ジャーニーを1ステップずつシミュレーションしたり、実際の顧客でテストしたりして、顧客の立場になって考えます。フィードバックを集めて盲点を発見、仮説を検証、反復可能な改善を行います。
- 例: ある小売ブランドは、モバイルアプリのナビゲーションが分かりにくいため、コンバージョン率が15%も減少していたことをテストで発見しました。
- 重要な質問: ジャーニーを改善し、顧客の期待に沿うには、どのような調整が必要か?
カスタマージャーニーマップの多様な活用方法
Adobe Journey Optimizerは顧客の行動に対するリアルタイムのインサイトを提供し、これらのインサイトを、統合顧客プロファイルに統合します。Adobe Customer Journey Analyticsでれあれば、顧客のアクションの全体像を把握することができ、十分な情報を入手したうえで決断を下すことができます。
次のステップ:
- Adobe Journey Optimizern についてガイド付きツアーで詳しく見る
- Adobe Journey Analyticsに関する 動画を視聴 してツールを実際の動作を確認する