WBS(作業分解構造図)とは?種類や作成するメリットなどをわかりやすく解説

Professionals organizing a work breakdown structure

WBS(作業分解構造図)とは、プロジェクトを小規模なタスクに分割することで管理しやすくする手法です。ビジネスにおける複雑なプロジェクトをより効果的に管理するために、その詳細や作成方法について知りたい方も多いのではないでしょうか。

この記事では、WBSの概要や特徴、種類、作成するメリットなどを解説します。さらに、WBSの作成方法や具体例、作成/管理のポイントなども紹介するので、ぜひご覧ください。

目次

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WBS(作業分解構造図)とは?

WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造図)とは、プロジェクトを小規模なコンポーネントまたはタスクに分割して管理しやすくするプロジェクト管理手法です。プロジェクト全体を視覚的に分解することで、計画、調整、進行状況の追跡が容易になります。

またWBSでは、各タスクとそれに関連する成果物の関係がわかるように、各タスクに一意のIDを割り当て、階層構造内に配置することも特徴です。

以下では、WBSと作業分解スケジュールとの違いや、カンバン方式との違いについて見ていきましょう。

WBS(作業分解構造図)と作業分解スケジュールの違い

プロジェクト管理手法に精通している方であれば、WBS(作業分解構造図)だけでなく、作業分解スケジュールという言葉も耳にしたことがあるでしょう。両者は密接に関連していますが、役割に違いがあります。

作業分解スケジュールとは、WBS内の各タスクの期間と順序を時系列で表したものです。一方でWBSは、プロジェクト全体をより小さく管理しやすいコンポーネントやタスクに階層的に分解したものです。つまり、作業分解スケジュールはWBSを構成する要素の一つといえるでしょう。

WBS(作業分解構造図)とカンバン方式の違い

カンバン方式とは、メンバーのタスク状況をチーム全体で共有するためのプロジェクト管理手法です。カンバン方式の具体例として、1つのボードを「作業前」「作業中」「作業終了」の3つに区切り、タスクごとの進捗を視覚的に管理することが挙げられます。

この方法では、個人のタスクを「カンバンカード」としてカード化し、進捗状況に合わせて「作業前」や「作業終了」などのいずれかのゾーンに貼ることで、各チームメンバーのタスクの進捗を効率的に把握することが可能です。

WBS(作業分解構造図)は、あくまで作業項目を洗い出す手法であり、タスクの進捗状況を管理するカンバン方式とは違いがあります。

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WBS(作業分解構造図)の特徴

WBS(作業分解構造図)の細かい内容は、既存のワークフローやチームの規模、プロジェクトの種類によって異なりますが、基本的には以下のような特徴があります。

階層構造

WBS(作業分解構造図)では、プロジェクトを管理しやすくするために、小規模なコンポーネントへ階層的に分解するという特徴があります。

階層の上位レベルはプロジェクトのおもな成果物を表示し、下位レベルでは各成果物をより小さく管理しやすいタスクに分解します。一般的に、WBSの階層は3つのレベルに分けられることが多い傾向です。

上位レベルの「レベル1」では、プロジェクトのおもな成果物(基本目標)を示します。例えば、webサイトのリニューアルに際してWBSを作成する場合は「刷新したwebサイト」がレベル1に該当します。

また、下位の「レベル2」は、レベル1に対する従属関係のタスクで構成されることが特徴です。前述のwebサイトのリニューアルの例でいうと、ロゴのリニューアルやガイドラインの見直しなどのタスクが当てはまります。

さらに下位の「レベル3」になると、最も詳細なサブタスクで構成されます。前述の例でいうと、ブランドカラーの選択やUXデザイナーの割り当てなどのタスクが該当します。

一意のID

WBS(作業分解構造図)では、各コンポーネントに一意のID(番号やコードなど)を割り当て、プロジェクトを追跡、監視、制御することが一般的です。

一意のIDの例として、プロジェクト管理ツールの一つである「WBSコード」が挙げられます。WBSコードを利用すれば、進行中のタスクや未着手のタスクなどを容易に把握できるようになり、リソース管理の効率化などにも役立つでしょう。

スコープの定義

プロジェクトスコープを定義し、プロジェクト目標の達成に必要なすべてのタスクを識別できるようにすることも、WBS(作業分解構造図)の特徴です。

スコープ(作業範囲)を定義することにより、タスクや成果物の詳細がわかるので、予算や時間、人的リソースなどを把握しやすくなります。その結果、プロジェクトマネージャー(PM)はプロジェクトを効果的に計画、調整、管理できます。

視覚的な表示

WBS(作業分解構造図)では、ツリーダイアグラムなどの視覚的要素を使用して、管理しやすくすることが一般的です。

ツリーダイアグラムとは、階層構造を表すのに適した図で、情報の関連性や順序を示す際に使われます。ツリー分析、階層図、系統図などとも呼ばれ、経営計画ツールとしても活用されています。

このような図を活用することで、プロジェクトの進行状況を把握しやすくなるうえ、チームメンバーに情報を伝達する際も役立つでしょう。

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WBS(作業分解構造図)の種類

次に、WBS(作業分解構造図)の種類ごとの特徴について解説します。

成果物ベースのWBS(作業分解構造図)

成果物ベースのWBS(作業分解構造図)とは、個々のタスクまたはプロジェクトスコープの一部に焦点を当てたものを指します。プロジェクト達成に必要な目標の成果物が明確であることが多い、短期のプロジェクトで用いられる傾向です。

また、成果物ベースのWBSは、プロジェクトの全体像や中間成果物の関連性などを把握するのに役立ちます。ただし、複数の部門が関わるプロジェクトや、長期間のプロジェクトには適さないケースがあります。

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フェーズベースのWBS(作業分解構造図)

フェーズベースのWBS(作業分解構造図)とは、タイムラインごとにプロジェクトを分割するものを指します。特定の成果物をゴールとして設定しないような、中長期のプロジェクトで用いられることが一般的です。

WBSをフェーズベースで作成するので、タスクを詳細に定義しやすいメリットがあります。一方で、粒度が細かすぎたり粗すぎたりすると、プロジェクト管理に支障をきたすおそれもあります。タスクを設定する際は、適切な粒度を見極めることが重要です。

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WBS(作業分解構造図)を作成するメリット

WBS(作業分解構造図)を作成するメリットとして、プロジェクトスコープの明確化や、タスクの特定を行えることなどがあります。

以下では、それぞれのメリットの詳細について解説します。

プロジェクトスコープの明確化

WBS(作業分解構造図)によって、成果物や目標などを含むプロジェクトスコープを明確にできます。特に、成果物ベースのWBSにおいてメリットが大きいといえるでしょう。

また、作業を細分化して構造に落とし込むので、作業の抜け漏れを防止できるのもポイントです。プロジェクトの計画段階で、作業の抜け漏れや重複を防止できれば、後戻りやトラブルの抑止にもつながります。

タスクの特定

WBS(作業分解構成図)の作成に際し、タスクを特定することで適切な担当者を割り当てることが可能になります。プロジェクトメンバーのスキルに応じた人材配置を行えるほか、責任の所在を明確にできるでしょう。

また、プロジェクト完遂までに要するコストや時間を予測しやすくなるので、工数見積もりをスムーズに行えるメリットもあります。

プロジェクトの効果的な計画と進捗管理

WBS(作業分解構造図)により、前述したタスクの特定に加えて、タスク同士の関連性の把握なども行えます。これにより、プロジェクト実行にあたり、効果的な計画と進捗管理を実現できるメリットが見込まれます。

例えば、ガントチャートですべてのタスクを可視化した場合、進捗の遅れなどを即座に把握できるようになり、適切な対処が可能です。なお、ガントチャートとは、プロジェクトを視覚的に表現する効果的な手法の一つです。

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WBS(作業分解構造図)の作成方法

ここでは、WBS(作業分解構造図)の作成方法について、順を追って解説します。

  1. プロジェクトの定義
    プロジェクトの目標や目的、スコープを定義します。プロジェクトの定義が曖昧だと、あらかじめ決めたスコープを超える「スコープクリープ」が発生し、プロジェクトの遅延などを招くおそれもあるので注意が必要です。

  2. プロジェクトの境界の設定
    プロジェクトスコープに含まれるものと、含まれないものを明確に定義するために、おもな境界を決定します。これには、プロジェクトを成功させるために遵守する必要がある、重要な期日も含まれます。

  3. プロジェクトの成果物またはフェーズの決定
    プロジェクトを明確に定義したら、成果物またはフェーズを決定します。それと同時に「誰が」「いつまでに」完了する必要があるのかも定めます。

  4. 上位レベルの要素の定義
    プロジェクトスコープを完了するために必要な成果物をまとめた「上位レベルの要素」について定義します。

  5. 上位レベルの要素の分解
    上位レベルの各要素を、一意の下位レベルの成果物に分解します。各要素を最小単位のタスクまで分解し、それぞれのタスクをできる限り簡素化します。

  6. WBS辞書の作成
    WBSの各要素に含まれるタスクの詳細について説明した「WBS辞書」というドキュメントを作成します。WBS辞書には、予算、目標、境界、リスク、プロジェクトオーナー、条件など、プロジェクトに関する情報を包括的に記載します。

  7. チームメンバーの決定
    プロジェクトのチームと関係者を明確にします。これにより、プロジェクトの関係者全員が、プロジェクトスコープや各タスクの担当者、タスク間の依存関係を把握できます。

  8. ガントチャートのスケジュールの作成
    ガントチャートでスケジュールを作成し、タスクの依存関係とプロジェクトの目標を容易に把握できるようにします。

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WBS(作業分解構造図)の例

WBS(作業分解構造図)には、様々な形式があります。ここでは、例を4つ紹介します。

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WBS(作業分解構造図)の作成や管理を行うときのポイント

ここからは、WBS(作業分解構造図)の作成や管理を行うときのポイントについて見ていきましょう。

複数人で作成する

WBS(作業分解構造図)を作成するうえで、本来組み込むべき作業工程の漏れなどを防ぐために、複数人でリストアップを行うことが大切です。

例えば、IT系のプロジェクトの場合、PMといったリーダー職のほか、実際に作業に取り組む担当者を交えて打ち合わせを行いましょう。作業の抜け漏れに加えて、所要時間が適切な設定であるかなども確認しておくと安心です。

なお、主観的なWBSとならないように、関係者のレビューを取り入れつつ、ブラッシュアップすることも不可欠です。

タスクの粒度や優先順位を整理する

WBS(作業分解構造図)の構造化に向けて、タスクの粒度や優先順位を整理しましょう。粒度にばらつきがあると、ツリー構造がいびつになる可能性が高くなります。

また、プロジェクトの流れを踏まえて、効率的に進行できるようにタスクの順序を整理していくこともポイントです。

構造化するタスクの関係性に注意する

タスクを構造化する際は、階層の上位レベルと下位レベルが適切な関係性であるかを確認しましょう。また、同じ階層のタスクの業務負担が同程度であることにも留意が必要です。

もしもWBS(作業分解構造図)で階層が浅い作業がある場合は、タスクの洗い出しが不十分な可能性があります。必要に応じて見直すとよいでしょう。

タスクごとに担当者を割り当てる

責任の所在を明らかにするため、1タスクにつき1人の担当者を割り当てることが一般的です。1つのタスクに2人以上を割り当てる際は、各メンバーが取り組む内容を明確にしておきましょう。

また、特定のメンバーに負担が偏らないようにすることも重要です。負担が偏ると、プロジェクトの進捗が遅れたり、成果物の品質が損なわれたりするおそれがあります。

テンプレートやツールを使う

WBS(作業分解構造図)の作成/管理を効率的に行うには、テンプレートやツールを活用するのがポイントです。

例えば、作業を一元管理できるツールを使えば、プロジェクトテンプレートなどを活用でき、WBSの作成/管理における効率化を図れます。自社のニーズに見合ったツールを選定することで、導入効果をさらに高められるでしょう。

修正や改善を適宜行う

実際にプロジェクトを進行すると、WBS(作業分解構造図)を作成した段階では予期できなかった作業が発生したり、トラブルが起きたりするケースがあります。必要に応じて、WBSを適宜修正し、実態に即したものにすることがポイントです。

また、テンプレートにフィードバックできる内容があれば随時改善し、次回以降のプロジェクトの業務効率向上につなげましょう。

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WBS(作業分解構造図)ツールの選定のコツ

優れたWBS(作業分解構造図)は、プロジェクトを管理しやすいコンポーネントに分割することで、従業員への負担を軽減しつつ、スムーズなプロジェクトの進行に役立ちます。

WBSを導入する準備ができたら、現在のプロジェクト管理手法を見直し、自社に最適なツールを選定しましょう。

実際にツールを選定する際は、ガントチャート機能などを含め、自社のニーズに適した機能が搭載されているかを確認することが大切です。また、導入実績が豊富なツールを選ぶことで、高い導入効果も見込まれます。

なお、WBSツールの円滑な導入/運用を実現するために、サポート体制が充実しているかという点もチェックしておきましょう。

Adobe Workfrontでプロジェクト管理を簡素化

優れた顧客体験を提供するには、優れた作業管理ソリューションが不可欠です。アドビの「Adobe Workfront」なら、1つの基盤を利用して、戦略立案からクリエイティブ作業、配信に至るまでの複雑なワークフローを適切に整理できます。

Adobe Workfrontは、組織をまたいだ共同作業を促進し、作業進捗の的確な管理が可能なので、WBS(作業分解構造図)の作成や管理に役立つでしょう。

また、リクエストキューの一元管理により、優先順位にもとづいて各作業を進行するので、プロジェクトを効率的に管理できることも特徴です。

プランは、自社のニーズに合わせて「Select」「Prime」「Ultimate」の3つから選択可能です。導入/運用に向けた各種サービスとサポートも整っていますので、ぜひ導入をご検討ください。

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ツールを活用してWBS(作業分解構造図)の作成と管理を効率化

WBS(作業分解構成図)を作成するメリットとして、プロジェクトスコープが明確になったり、プロジェクトの進捗管理に役立ったりすることが挙げられます。

その作成や管理の効果を高めるためにも、タスクの粒度や優先順位を整理する、テンプレートやツールを使うといったポイントを押さえておきましょう。

WBSの作成や管理に役立つツールを導入したいという方は、ぜひアドビの「Adobe Workfront」をご検討ください。Adobe Workfrontなら、複雑なワークフローを一元的に管理できるほか、リクエストキューの活用による効率化なども図れます。

自社のニーズに合わせたプラン選択が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

(公開日:2023/4/24)