【リーダー対談】ヤッホーブルーイング×マルケト ~ (前編)お客様を幸せにするためにできること
※写真左からヤッホーブルーイング よなよなエール広め隊(広報部⾨) 根来⽒、同 i・通販団(EC部⾨) 家住⽒、マルケト ⼩関
これからのマーケティングやマーケターのあり⽅について斬り込む「Tomorrow's Marketer」。今回は弊社のバイスプレジデント ⼩関 貴志が、株式会社ヤッホーブルーイングのi・通販団(EC部⾨)のユニットディレクターを務める家住 泰裕⽒にお話を伺いました。
ヤッホーブルーイングのビールは、「よなよなエール」「東京ブラック」「水曜日のネコ」「インドの青鬼」などユニークなネーミングやおしゃれなパッケージが目を引きますが、そのビールの種類も一般的なビールとは異なる"エールビール"だということをご存知でしょうか。
⽇本でビールといえば、ゴクゴク飲めて喉越しを楽しむ"ラガービール"が⼤半を占めますが、世界には実は100種類以上ものビールがあるようです。
そんな⽇本のビール市場にバラエティを提供し、新しいビール⽂化を創りたいというミッションを掲げるヤッホーブルーイング。そのミッションを達成するために⼤切にしているものとは。
もくじ
- お客様の喜びがダイレクトに伝わるクラフトビール業界
- 多くのファンを⽣み出すためのヤッホー流おもてなし
- お客様の願いを全部叶えてあげたい
お客様の喜びがダイレクトに伝わるクラフトビール業界
⼩関:これまでのキャリアを含め、現在の役割について教えていただけますでしょうか。
家住⽒:新卒でリクルートHRマーケティング(現 リクルートジョブズ)に⼊社して、プッシュ営業を2〜3年やっていました。その後、会社を辞めてどうしてもやってみたかった語学留学をするためにカナダのバンクーバーへ⾏きました。1年後帰国し、何か英語を使った仕事がないかと探しているときに、ヤッホーブルーイングが流通営業とECと輸出の担当者を募集していまして。輸出の仕事ができればと応募したのですが、⼊ってみると「君はネットをやってくれ」と⾔われたんです。
6年前くらいの⼊社当時、私はインターネットの知識もさほどなく、そもそもECでの買い物体験もなかったくらいで、本当にゼロからのスタートでした。
しかし、幸いなことに、当時の弊社ECは楽天市場の優れたショップに与えられる "ショップ・オブ・ザ・イヤー"に6年連続で受賞中で、すでに⼤好評のお店だったことや、横のつながりで⽀援していただけたこともあり、今までずっと恵まれた環境でやってこれたと思っています。
そんな流れで、昨年度からEC部⾨の責任者として、楽天市場・Amazon・⾃社通販サイト「よなよなの⾥」を統括しています。ちなみに企業⽂化としてフラットなコミュニケーションがとれるよう、社内ではヤタロ―というニックネームで呼ばれていますね。
⼩関:ヤッホーさんを選ばれたのは、何か理由があったのですか。
家住⽒:社⻑も含めて喧々諤々と意⾒が⾔い合える社⾵にすごく共感したのと、英語が使えそうだという点に引っかかったからです。たいそうなビジョンがあったわけではありませんが、やっていくうちに、横のつながりが深くて、お客様の喜びがダイレクトに伝わるというクラフトビール業界の⾯⽩さに強く惹かれていきました。
⼩関:なるほど。やはりもともとビールがお好きな⽅が集まっているのですか。
家住⽒:そうですね、基本的にビールが⼤好きな⼈が多いです。私は弊社で⼀番お酒が弱いですが......。味は⼤好きなんですけど、量が飲めなくて(笑)。
⼩関:実は私もあまり飲める⽅ではないのですが(笑)。ちなみに、そんな⼈にもオススメのビールはありますか。
家住⽒:⼊り⼝としては「よなよなエール」がいいと思います。ホップの⾹りがしっかりあるのに、きつすぎないですし、普通のビールとの違いを楽しんでいただけると思います。
⼩関:お酒が弱くても商品への愛がありますよね。それは、なぜですか。
家住⽒:クラフトビールのビアフェスに出店したときに、ビールが⼤好きなお客様がすごく喜んで楽しんでくださっている光景を⽬の当たりにしているからですね。クラフトビールの世界は、ブルワー(ビールを醸造する職⼈)とお客様との距離が、本当に近いんです。ブルワーの話を実際に聞いたお客様はさらに楽しいし、美味しく感じるという幸せな場がそこにはあって。これまで私はBtoBの仕事しかしてこなかったので、初めて⾃分の商品がお客様を楽しませていることがダイレクトに伝わってきました。
私は、ビールという飲み物を売っているだけではなく、"ビールを楽しむ時間を売っている"と⾃負しております。
⼩関:よく⾔われる"モノからコトへ"というのを創業時からずっと体現していらっしゃるということなんでしょうね。
多くのファンを⽣み出すためのヤッホー流おもてなし
⼩関:新しいビール⽂化を創るために、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
家住⽒:うちは⼤⼿企業と違って広告費が⼤量にあるわけではないので、クラフトビールの美味しさ・楽しさ・奥深さをお客様に伝えて、弊社のビールづくりに対する情熱やミッションに共感してもらい、ヤッホーブルーイングファンのみなさんと⼀緒にプロモーションを広げていくという戦略をとりました。
その中でEC部⾨は、サービスとコンテンツを通して、お客様との接点を設け、"いかに多くのファンをつくれるか"ということに主眼を置いて取り組んでいます。
⼩関:お客様にはファンになってもらってから販売につなげるイメージでしょうか。それとも⼀度購⼊していただいたお客様に、ファンになっていただくイメージでしょうか。
家住⽒:やはり最初は送料無料といった機能⾯が強いと思うので、どちらかといえば後者ですね。購⼊後の体験を通じて、エンゲージメントを⾼める施策をしっかりとやっています。
⼩関:なるほど。その施策を考える際に、例えばどんなことを⼼がけていらっしゃいますか。
家住⽒:今はコンビニやスーパーなど流通が広がってきており、「よなよなエール」を⼀度飲んだ⽅が検索して⼊ってきてくれるので、バラエティを提供できるよう4種類の⼈気ビールを詰め合わせた「よなよなエール お試しセット」をご⽤意しています。強く記憶に残してもらいたくて、箱を開けたらヤッホーブルーイングのブランドの図柄が全部広がるような仕掛けを加えていたり、さらに「エールビール⼊⾨書」というクラフトビールの楽しみ⽅を解説したオリジナル冊⼦を同梱しているんです。そうして私たちのパッションが伝わることで、ECでもまた購⼊していただきたいですし、近所の店舗で購⼊して、お酒好きな仲間の⽅たちと⼀緒に楽しんでいただければと思っています。
⼩関:ヤッホーさんは、⾃社のファンやアンバサダーの⽅々のクチコミの活性化や共創的な取り組みを重視している活動を表彰する「アンバサダープログラムアワード2017」を受賞されていますが、どんな点が評価されたとお考えですか。
家住⽒:ヤッホーブルーイング全体の⽴体的なファンづくりの施策をご評価いただいたのかなと思っています。"囲い込む"という表現は好きではないのですが、定期購⼊のお客様を⼤切な優良顧客としておもてなしするために、会員の⽅だけに向けた「限定会報誌」をプレゼントしたり、「よなよなエールの超宴」などのファンイベントを先⾏でご予約いただけるようにしたり、⼀般販売していない会員限定商品の購⼊ができる「会員限定ストア」をご⽤意したり、様々な取り組みをしています。
お客様の願いを全部叶えてあげたい
⼩関:だからオンラインだけで完結させるのではなく、オフラインのイベントや、メディアとデジタルの組み合わせが⾮常に素晴らしいと思うのですが、それらのアイデアはどういったところから⽣まれたのですか。
家住⽒:定期購⼊サービス「よなよな⽉の⽣活」(当時は「よなよなの⾥ 年間契約」)をスタートさせたのは10年前なのですが、当時はまだVIP特典もなく、商品ラインアップも少なかったので、今のように1本単位で⾃由に組み合わせを選べたわけでもなく、「よなよなエール」が24⽸のうち半分を占めていました。
私が⼊社した6年前の契約数を調べてみると、それでも毎年⾼い成⻑率で契約数が伸びていることがわかったんですね。そこで、なぜこんなにヘビーにご購⼊いただいているのか気になり、アンケートをとってみたんです。
すると「ヤッホーブルーイングのクラフトビールやそれに合う料理が楽しめる飲⾷店(YONA YONA BEER WORKSとして実現)ができるなら本当に楽しみ!絶対に⾏きます」とか「よなよなエールが⼤好きなので、これのTシャツが欲しい」といった、様々なご期待をいただいて。単純に"アンケートの声を全部実現してあげたいな"と思ったのがVIP特典を作り始めたきっかけでした。
それ以降、1年に1回、必ず顧客アンケートをとるようにして、お客様の声にちゃんと⽿を傾けながらサービス開発につなげるということを繰り返してきた結果、継続率が⾼まり、新規のお客様の流⼊もどんどん⼤きくなっていきました。⼩関:⼀⾒、当たり前のことかもしれませんが、それを本当に愚直にやり続けるというのがすごいですよね。
家住⽒:ありがとうございます。結果としてオンラインとオフラインが融合した、お客様が⾏き来しやすい環境になっているのかなと思います。
後編では、ヤッホーブルーイングがファンのコミュニティづくりをどのように⾏っているのか、現在に⾄るまでの軌跡と、今後のさらなる成⻑に向けた取り組みについて、詳しくご紹介していきます。