Adobe Commerceにおける、AIを活用したeコマースマーチャンダイジングのパーソナライゼーション
eコマースマーチャンダイジングを成功させるには、関連性があり、文脈に沿った体験を提供することが重要です。
買い物客として実店舗に入ると、その店舗に入った他の顧客と同じような体験をすることは誰でも知っています。ある展示に高い関心を抱いたり、気に入った商品の感触を確かめたり、自分に関係ある部分を探したりすることもあります。しかし、根本的には、商品の選択、配置、プロモーションなどのマーチャンダイジングの要素は、その店舗のすべての顧客にとって一定です。
デジタルの世界では、顧客に期待はまったく異なります。お気に入りのストリーミングサービスにログインすると、表示される番組や映画は、ユーザーの好みに合わせて厳選されたものであることを私たちは知っています。Amazonのようなeコマースマーケットプレイスにログインすると、ニーズに合ったレコメンデーションがすぐに表示されます。私たちは、買い物をする際にもNetflixのようなパーソナライゼーションを期待するようになりました。実際、ジェネレーションZの84%が、お気に入りのブランドは自分を個人として大切にしてくれると述べています。これはB2Bの購買やB2Cのショッピングにも共通しており、顧客は自身の状況や嗜好に合った商品の発見体験を求めています。
eコマースのマーチャンダイジングをこのレベルまでパーソナライズすることは不可能のように感じられるかもしれませんが、適切なAIツールを活用すれば、大規模に展開および管理することが可能であり、平均注文額(AOV)やコンバージョン率などの重要な指標に大きな好影響をもたらします。
パーソナライズすべきこと - 商品の発見体験の分解
サイト検索
カテゴリー閲覧
商品レコメンデーション
サイト内検索、カテゴリー閲覧、製品推奨など、サイト全体にわたってパーソナライズされたマーチャンダイジングは、コンバージョン率を高めるために非常に重要です。
何をパーソナライズすべきかへの端的な答えは、すべて です。顧客のトラフィックデータを見ると、webサイトを訪問した顧客の40%強が、直接検索バーにアクセスしていることが分かります。残りの約60%の顧客は、カテゴリーページを閲覧することから購入プロセスを開始しています。また、多くの顧客が商品レコメンデーションを通じて商品を見つけていることも分かっており、eコマースの売上の約30%がこの経路から生み出されています。
つまり、優れた企業は、検索、カテゴリー閲覧、レコメンデーションを個別に捉えるのではなく、統合されたエクスペリエンスの柱として捉えています。Adobe Commerceは、それぞれの重要性を踏まえ、行動データを活用して、検索結果、カテゴリー閲覧、商品レコメンデーションを通じて商品の発見をパーソナライズする、使いやすいAIを活用したツールを提供しています。これにより、顧客がどのように商品を見つけて購入するかに関わらず対応できます。各要素と、AIツールをどのように活用してパーソナライズされたマーチャンダイジングを実現するかを見ていきましょう。
インテリジェントなカテゴリーマーチャンダイジングによる閲覧体験のカスタマイズ
マーチャンダイザーは、手作業で商品の販売促進、埋め込み、ピン留め、非表示などを行うことで、カテゴリーページの最適化を図ることがよくあります。こうした取り組みは重要であり、売れ筋商品を顧客に提示することでコンバージョン率の向上につながりますが、完全に手作業で行う場合、いくつかのデメリットがあります。
- 手作業によるマーチャンダイジングは、その名の通り手作業です。 商品の販売促進、埋め込み、ピン留め、非表示には、時間と労力、そして各商品のデータに対する慎重な分析が必要です。実際、マーチャンダイジングチームのほぼ60%が、手作業のマーチャンダイジング活動に少なくとも週20時間を費やしています。
- このアプローチは拡張できません。 膨大なカタログがある場合、手作業のマーチャンダイジングは多くの問題を抱えています。カテゴリーが数百から数千もある場合、商品の表示と非表示を管理するのは、終わりの見えない作業に思えるでしょう。
- パーソナライゼーションにはなっていません。 手作業でマーチャンダイジングを行った後でも、ほとんどのカテゴリー閲覧ページは静的です。つまり、どの顧客に対しても同じであり、商品の販売、閲覧、カートへの追加などのサイトでの行動やエンゲージメントの傾向が変わっても変更されません。
インテリジェントなカテゴリマーチャンダイジング の導入により、Adobe Commerceには、各顧客との関連性やコンバージョン率を高めるために、各カテゴリページの商品を自動的に再ランク付けするAIツールが実装されました。
インテリジェントなカテゴリマーチャンダイジングは、AIを活用して、各顧客との関連性とコンバージョン率を高めるために、各カテゴリページの商品を自動的に再ランク付けします。
その仕組みを見てみましょう。
Adobe Commerce Live Searchでは、AIによる再ランキングアルゴリズムとして、「Recommended for You(おすすめ)」、「Most Viewed(最も閲覧されたもの)」、「Most Purchased(最も購入されたもの)」、「Most Added to Cart(最もカートに追加されたもの)」、「Trending(トレンド)」の5つのセットから選択できます。
AIを活用して5種類のランキングタイプから選択できます。
これらの再ランキングルールを、単一のサブカテゴリーからストア全体(ルートレベルのすべてのカテゴリーページ)まで、カテゴリーツリーの任意のレベルに直接適用できます。
単一のサブカテゴリーからストア全体までのカテゴリーツリーの任意のレベルで商品をマーチャンダイジングできます。
AIを活用してこれらのルールを作成すると、Adobe Senseiにより買い物客のデータと類似性が適用され、買い物客が閲覧する際に最も関連性の高い結果が即座に表示されます。買い物客は、ページを離れたり購入を中止することなく、すぐに欲しい商品を見つけることができます。この仕組みを理解するために2つの例を見てみましょう。
例:
- 衣料品の小売業者は、季節ごとに新商品を発売するので、「新商品」ページに「Trending」アルゴリズムを設定できます。これにより、購入頻度の高い新商品が最初に表示され、そうした人気新商品がコンバージョンにつながります。
- B2Bの工具会社は、「Recommended for You」アルゴリズムを「工具」の親カテゴリーに配置できます。これにより、特定の会社の工具しか購入しない購入者が工具カテゴリーを閲覧すると、その会社のアイテムから、この購入者の購入行動に最も関連性の高い最初が表示されます。つまり、関連性が向上し、購入者が購入したいアイテムを見つけやすくなります。
Adobe Commerceを活用したマーチャンダイジングでは、AIを活用した自動カテゴリーマーチャンダイジングのルールを設定し、次に手作業でのピン留め、販売促進、非表示などの操作を行って結果を絞り込むことができます。セッション中のカテゴリマーチャンダイジングは大規模に実施され、検索、コンバージョン、収益は最適化されます。
インテリジェントなライブサーチ結果最適化によるサイト検索のパーソナライズ
カテゴリ閲覧ページと同様に、検索結果も多くの場合、静的なものです。検索は、テキストとして最も関連性の高い(つまり、使用された検索語句に最も近い)結果を返しますが、顧客や商品のコンテクストは考慮されません。しかし、絞り込まれた検索結果は、コンバージョン率と売上に対して大きな影響を与える可能性があります。
ライブサーチに組み込まれたインテリジェントな検索結果最適化機能には、インテリジェントなカテゴリーマーチャンダイジングのAIを活用したランキング機能が反映されていますが、カテゴリーを基準とするのではなく、特定のクエリに対してルールを設定することができます。ライブサーチは、テキストの関連性とAIを活用した最適化を組み合わせて、検索者が非常に関連性の高い商品を発見できるように、商品の再ランク付けを行います。
インテリジェントなライブサーチ結果の最適化でも、同様のインターフェイスが提供され、特定の検索クエリに基づいてルールを設定できます。
例えば、通信会社が「電話」を含む検索クエリに「Recommended for You」アルゴリズムを設定し、ある顧客が以前にSamsungのデバイスしか購入していなければ、その顧客が「スマートフォン」または「電話」で検索すると、Samsungのスマートフォンが他のブランドのものよりも上位に表示され、検索体験の関連性が向上します。
AIを活用したライブサーチの再ランキングにより、サイトを検索する各顧客に最適化された検索体験を提供できます。
Adobe Senseiによる商品レコメンデーションで最適な商品を推奨
商品レコメンデーションは、商品発見のパズルの最後のピースであり、サイトでパーソナライズされたマーチャンダイジングを導入する最も基本的な方法の1つです。関連性の高い商品をレコメンデーションすることは、顧客のニーズを理解していることを示す優れた方法であり、クロスセルやアップセルを通じてカート内の商品価値を高めることにもつながります。実際、オンラインショッピングでは、カスタマイズされた商品レコメンデーションにより、カート内の平均商品数が68%増加しました。Adobe Commerceの商品レコメンデーションようなAIを活用したツールを利用することで、初めての顧客でもロイヤルカスタマーでも、あらゆる顧客にパーソナライズされたレコメンデーションを提供することが可能になります。
Adobe Commerceにおける商品レコメンデーション単位の例
商品レコメンデーションをマーチャンダイザーにとって便利なツールにするために、Adobe Commerceの管理画面から直接アクセスできるようにしました。直感的なユーザーエクスペリエンスにより、マーチャンダイザーはページタイプを選択し、レコメンデーションタイプを選択して、アクティベートすることができます。
シンプルなワークフローにより、マーチャンダイザーが主導して商品レコメンデーションを作成できます。
商品レコメンデーションはページタイプをまたいで機能するため、様々な用途で使用できます。例えば、次のような例が挙げられます。
- ホームページの「ベストセラー」:ホームページの「ベストセラー」というタイトルのセクションで、「Most Purchased」レコメンデーションタイプを使用すると、顧客が企業を知った時点で、すぐに売れ筋商品を紹介することができます。
- カテゴリーページの「おすすめ」:カテゴリーページで、「Recommended for You」レコメンデーションタイプを使用すると、商品レコメンデーション機能に顧客の親和性情報が適用されて、特定のカテゴリー内でその特定の顧客に最も関連性の高い商品が提示されます。例えば、その顧客が「ヘッドフォン」カテゴリーにいて、以前にBoseを閲覧したことがある場合、Boseのアイテムが最初におすすめされます。
- 商品詳細ページ:「他におすすめする商品」:商品詳細ページの「他におすすめする商品というタイトルのセクションで、「Visual Similarity(視覚的類似性)」レコメンデーションタイプを使用すると、アドビの視覚テクノロジーを活用して、外観が類似している商品を表示することができます。
- チェックアウトページの「他に購入した商品」:商品詳細ページでの「他に購入した商品」というタイトルのセクションで、「Bought this, bought that(あれもこれも購入)」レコメンデーションタイプを使用すると、クロスセルとアップセルを促進し、カート内のアイテム数を増やすことができます。
これらに限らず、AIを活用した商品レコメンデーションを導入したい場所であれば、Adobe Commerceが対応します。
カテゴリー、検索、レコメンデーションのパーソナライゼーション始める
これらの強力な機能はすべて、SaaSベースの拡張機能のライブサーチ(インテリジェントなカテゴリーマーチャンダイジングおよびインテリジェントなライブサーチ結果最適化)および商品レコメンデーションとして、Adobe Commerceに含まれています。拡張機能をダウンロードして設定すると、ストアフロントページにタグ付けされ、顧客の行動を分析する準備が即座に整います。ストアフロントにコードを手動で追加する必要はありません。
Adobe Commerceのライブサーチと商品レコメンデーションを今すぐ始めて、AIを活用したパーソナライズされたマーチャンダイジングと体験を構築しましょう。
Rohan Bhattは、アドビのシニアプロダクトマーケティングマネージャーです。パーソナライズされたコマース体験を専門としています。アドビに入社する前は、テクノロジーおよび決済分野のコンサルティングに5年以上携わり、世界的なテクノロジー企業数社に、製品および市場開拓戦略に関するアドバイスを提供していました。Rohanは、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAとデザインイノベーションの修士号を取得しています。