データに裏付けられたB2Bコマースのパーソナライゼーション戦略
B2Bでは、eコマースのパーソナライゼーションが普及しています。B2B企業の74%が、2023年には自社のwebサイトが売上の50%以上を生み出すと予測しています。
eコマースの導入の拡大に伴い、B2Bマーチャントは、新しい販売方法の導入を検討するだけでなく、商品の検索からフルフィルメントに至るまで、高度にパーソナライズされた顧客に対する顧客の期待に応える必要があります。
この記事では、B2Bコマースにおけるパーソナライゼーションの概要、重要である理由、戦略について解説します。
- B2Bコマースパーソナライゼーションが不可欠な理由
- B2Bコマースパーソナライゼーションとは?
- B2BパーソナライゼーションとB2Cパーソナライゼーションの比較
- パーソナライゼーションに効果的なデータ管理が必要な理由
- 企業が投資しているB2Bコマースパーソナライゼーション戦略
- B2Bコマースパーソナライゼーションの今後の展望
B2Bコマースパーソナライゼーションが不可欠な理由
eコマースのトレンドは常に変化していますが、パーソナライゼーションは依然として重要な要素であり続けています。商品の説明と価格を提示するだけでは、購入者の期待に応えることはできません。
B2Bコマースにおけるパーソナライゼーションは、基本的なものから包括的なものへと移行しています。企業は、eコマースサイトで収集したデータを軽視することはなくなり、積極的に活用し始めています。
マーケティング部門とセールス部門は、このデータを使用して、eコマースサイトでの購入者の行動を把握し、顧客の購入履歴、興味、ニーズに関するリアルタイムのインサイトを獲得できます。購入者が最近ログインしたか、商品を検索したか、カテゴリを閲覧したかを問わず、データを使用して戦略を洗練させ、次のような方法でB2Bコマース体験をパーソナライズできます。
- 購入の前後に購入者にメッセージを自動送信
- 購入者が探しているものや使用する検索語句を分析
- 類似の購入者の購入品を提示
- 売上が増加または減少しているカテゴリを特定し、市場調査よりもはるかに迅速に顧客の好みやニーズを予測
B2Bコマース パーソナライゼーションとは?
効果的なB2Bコマース パーソナライゼーションは、セグメント化から始まります。すなわち、共通の特性に基づいて、顧客をグループ化します。セグメント化には、次のような方法があります。
- 業界別: 顧客の業界に応じてセグメント化できます。これにより、適切な顧客に関連するコンテンツを提示できます
- 組織ベース: 大規模な顧客企業については、高度なパーソナライゼーションが重要です。ここでは、限定商品を提示する、頻繁にリピート購入されている商品を特別価格で提供する、といった手法を使用できます。
- 役割ベース: B2B企業による購入では、多くの場合、様々な視点を持つ複数の関係者が関与します。エンジニアやCTOが、パーソナライズされたメールキャンペーンを通じて技術資料やホワイトペーパーを受け取るなど、各エクスペリエンスがユーザーの優先課題と一致している必要があります。
- バイヤーズジャーニーの段階ベース:顧客がバイヤーズジャーニーのどの段階にいるのかを把握することが、顧客の意図を理解する鍵となります。例えば、6ヶ月間購入していない顧客がいる場合、リエンゲージメントキャンペーンを実行して、顧客を取り戻すことができます。
各アプローチの重要性は、購入サイクル全体を通じて変化します。Forresterの調査によると、特定のニーズを対象としたパーソナライゼーション(業界固有の商品の表示など)は、認知段階で導入するのが最善策です。組織ベースのパーソナライゼーション(カスタマイズされた価格設定など)は、顧客が購入に近づいたときや販売後に大きな効果を発揮します。
B2BパーソナライゼーションとB2Cパーソナライゼーションの比較
B2Bコマースパーソナライゼーションは、B2Cパーソナライゼーションとは目的が異なります。B2C企業は、自発的な購入を促すことを目的としています。一方、B2B企業の購入では、多くの場合、複数の調査、承認、交渉が伴います。
そのため、B2Bマーチャントは、コマースパーソナライゼーションの取り組みにおいて、調達プロセスの合理化、顧客の教育、決定までの時間の短縮に専念する必要があります。B2B販売者は、企業や業界だけでなく、購買組織内での役割に基づいて、登録ユーザーをセグメント化する必要があります。
パーソナライゼーションは、B2B顧客の購入体験を向上させる上で重要な役割を果たします。例えば、パッケージメーカーのSealed Airは、顧客が交渉済み価格を表示するために、ログインを要求するようにプラットフォームをカスタマイズしています。さらに、プラットフォームで表示される商品を、顧客組織による購入が承認された商品のみに制限することで、関連性とコンプライアンスを確保しています。ログインを通じて、類似の顧客プロファイルの購入傾向に基づいて、レコメンデーションを強調表示することで、クロスセルの機会を促進することもできます。
業界別のパーソナライゼーションも同様に重要です。例えば、モーターメーカーが、倉庫のコンベアベルトシステムの製造企業と、自動車メーカーに売り込む場合、各企業の独自のニーズに最適な商品やコンテンツを提供する必要があります。
このような詳細なパーソナライゼーションは、オンライン体験だけでなく、マーケティング施策、顧客とのコミュニケーション、その他のチャネルに影響を与え、あらゆる接点をまたいで、一貫性のあるユニークな顧客体験を生み出すのに役立ちます。
「eコマースサイトのデータを活用して、バイヤーズプロセスをパーソナライズできます。webサイトを自己完結型のサイロとして扱うのではなく、一貫性のあるパーソナライズされた顧客体験を購入者に提供する、マルチチャネルのバイヤーズジャーニーの一部としてみなすことができます」
Ed Kennedy
アドビ、プリンシパルプロダクトマーケティングマネージャー
パーソナライゼーションに効果的なデータ管理が必要な理由
eコマースでは、行動、トランザクション、財務、運用、サードパーティなど、あらゆる訪問者に関する膨大なデータが生成されます。これがパーソナライゼーションの基盤となります。
そのため、多くの企業が自社のeコマースサイトから行動データやトランザクションデータを収集しています。しかしその一方で、それらのコマースデータと、バックエンドシステムに格納されている情報(在庫、注文状況、商品情報、価格変更、顧客またはアカウントの注文履歴など)を組み合わせて、より高度なパーソナライゼーションを実現している企業はほとんどありません。これにより、高度なB2Bコマースパーソナライゼーションが妨げられ、高まり続ける顧客の期待に応えることができなくなります。

こうした様々なソースから収集したeコマースデータを活性化させるのは、簡単なことではありません。多くの場合、データは分断されており、制約があります。そのため、ソフトウェアやアプリケーションをまたいで情報を共有および使用して、購入者の全体像を把握することは困難です(しかし、不可能ではありません)。
アドビの「2023 B2B Commerce Growth Strategies Survey(2023年B2Bコマース成長戦略調査)」では、B2B企業が現在データをどのように使用しているのかを明らかにしています。企業の4分の3近く(72%)が、eコマースストアフロントをまたいで行動データとトランザクションデータを収集しており、68%がそのデータを使用して、何らかの形でwebサイト全体でパーソナライゼーションを推進しています。しかし、マーケティング、マーチャンダイジング、電子メールなどの他のシステムでパーソナライゼーションを推進するためにデータを使用しているB2B企業は、少なくなっています。

「一般的に、企業は自社のeコマースサイトにおける顧客データの価値を過小評価しています。B2Bコマースサイトは、マーケティング、セールス、運用に関するデータの宝庫ですが、多くの企業は十分に活用できていません。
様々な市場やセグメントの多くのユーザーから発せられるデジタルシグナルは、マーケティング分析の改善、売上につなげるためのメッセージの自動送信、セールス担当者に対する、購入の準備ができている顧客の通知に役立ちます」
Ed Kennedy
アドビ、プリンシパルプロダクトマーケティングマネージャー
企業が投資しているB2Bコマースパーソナライゼーション戦略
アドビの調査によると、B2Bコマース企業の63%が、新しいパーソナライゼーション機能を追加することで、ユーザーエクスペリエンスの向上に投資しています。その一方で、中小企業の40%が、パーソナライゼーションが大きな課題になると回答しています。
アドビは、B2B企業にとって最も効果的なコマースパーソナライゼーション戦術を明らかにするために、調査を実施しました。

調査の結果、次の3つの戦術が高いパフォーマンスを発揮していることが明らかになりました。
第1位:サイト検索のパーソナライゼーション
多くのB2Bマーチャント(58%)が、パーソナライズされた検索結果を使用して大きな成果を上げています。訪問者の40%が、コマースサイトにアクセスして商品を検索する主な方法として、オンサイト検索を使用しています。そのため、検索機能への投資は特に重要です。
Wakefieldの調査によると、買い物客の75%が、商品を見つけるのに時間がかかりすぎると、別のサイトに移動すると回答しています。大規模な商品カタログを提供している場合、B2Bコマースパーソナライゼーションを実装する際に、検索機能を最重要課題の1つとして掲げる必要があります。
高度な検索ソリューションは、テキストの関連性を保証するだけでなく、AIを使用して検索結果を再度ランク付けし、顧客の行動に基づいてパーソナライズします。
検索クエリデータは、顧客がどのように商品を検索しているか、特定のカテゴリを見つけるためにどのような単語を選択しているか、自社では取り扱っていない商品を探しているかどうかを把握するのにも役立ちます。収集したすべてのデータは、商品ラインの開発とマーチャンダイジングの最適化に使用できます。
第2位:支払い/配送オプションのパーソナライゼーション
B2Bマーチャントの56%が、パーソナライズされた支払い/配送オプションを使用して、大きな成果を上げています。
顧客企業に合わせてパーソナライズされた支払い/フルフィルメントオプションを提供することは、バイヤーズジャーニーにおける摩擦を排除し、eコマースのコンバージョン率を高めるための鍵となります。具体的には、口座振り込み、クレジットカード、即時決済などの決済オプションの提供や、顧客が求めている新しい支払いオプションの追加などが挙げられます。
また、顧客が注文した商品を複数の倉庫や配送日に分割配送できるようにします。B2Bマーチャントが新しい市場に進出する場合、現地に適した支払いオプション、フルフィルメント、注文管理に基づいて、webサイトをカスタマイズする必要もあるでしょう。
第3位:商品レコメンデーションのパーソナライゼーション
B2Bマーチャントのほぼ半数(48%)が、パーソナライズされた商品レコメンデーションを使用して大きな成果を上げています。さらに、B2B顧客の66%が、B2B体験においても、B2C体験と同等またはそれ以上のパーソナライゼーションを期待しています。つまり、商品レコメンデーションの実装は、こうした期待に応えるための重要な戦略となり得ます。
商品レコメンデーションは、コンバージョン率だけでなく、平均注文額も向上できることが実証されています。B2Bマーチャントは、信頼と価値に基づいた、長期的な顧客関係の構築に重点を置く必要があります。そのため、レコメンデーションブロックに表示される商品は、自社への追加投資が購入者にどのような利益をもたらすのかを、明確に示す必要があります。
例えば、顧客が高額な商品を閲覧している際に、導入プロセスを短縮し、全体的なコストを削減できる付属品を含め、「よく一緒に購入される商品」のレコメンデーションブロックを表示できます。
商品レコメンデーションでは、行動、人気、項目、買い物客に基づく指標など、様々なランキングアルゴリズムを使用することもできます。
以下に、これらの戦略をB2Bシナリオに適用する方法の例をいくつか示します。
- 組織内の他の購入者が頻繁に購入する商品を、購入者に提示する
- 購入者が最近閲覧した商品を提示して、過去に購入に至らなかったものの、再度関心を示す可能性が高い商品を想起させる
- よく一緒に購入される商品を提示する(例:ペイントローラーとペンキ)
- 視覚的に類似した商品や、類似した属性を持つ商品を提示して、顧客により多くの最適な商品を提供する
- 特定の業界内で注目されているトレンド商品を強調表示する
パーソナライズされた検索結果と同様に、商品レコメンデーションでは、顧客固有のカタログや価格を考慮する必要があります。適切に実行すれば、商品レコメンデーションは大きな成功につながります。
特定の顧客グループや企業向けの共有カタログを定義することで、それらの買い物客がアクセスできる商品のみを推奨できます。推奨されるすべての商品には、顧客固有の適切な価格も反映されます。商品レコメンデーションに使用される言語も変更する必要があります。例えば、B2B企業の購入者には、「他のユーザーは、こちらの商品も購入しています」ではなく、「貴社の他のユーザーは、こちらの商品も購入しています」というテキストを表示する必要があります。
大規模企業がパーソナライゼーションを牽引
より多くのリソースを持つ大規模企業は、パーソナライゼーションでより多くの成果を上げています。
一方、小規模企業は、一部のB2Bコマースパーソナライゼーション機能の導入が急務となっています。これには、パーソナライズされた支払い/配送オプション(投資を計画している割合は、小規模企業が15.8%、大規模企業が3.6%)、パーソナライズされた商品カテゴリページ(小規模企業が15.8%、大規模企業が1.2%)が含まれます。

B2Bコマースパーソナライゼーションの今後の展望
B2B購入者向けにパーソナライズされたカスタマージャーニーを構築するには、考慮すべき点がたくさんあります。上記で解説した戦略は、優れた出発点となります。顧客が求めているものを理解し、様々な戦略を実装するのに役立ちます。
B2Bマーチャントは、パーソナライゼーションをB2Bのコンテキストに適応させ続ける必要があります。B2Cとは異なり、B2Bで重要なのは、購入者の個人的な好みに対応するのではなく、購入者が効率的に業務を進められるようにすることです。マーチャントは、購入者の役割や業種に合わせて、コンテンツとオプションを調整する必要があります。
B2Bコマースパーソナライゼーション機能をすぐに使用できる、フルスタックのソリューションを使用すれば、パーソナライゼーションの導入がはるかに簡単になります。Adobe Commerceは、顧客固有の価格表、商品レコメンデーション、サイト検索、高度な見積もりサポートなど、強力なB2Bツールを提供します。
Adobe Experience Cloud製品スイートとAdobe Experience Platformのネイティブ統合により、高度な顧客セグメンテーションとオムニチャネルのパーソナライゼーションを実現できます。
Adobe CommerceがB2Bビジネスにどのように役立つのか、アドビの担当者までお問い合わせください。
アドビの調査結果とB2Bコマースの専門家の見解を確認するには、「2023 B2B Commerce Growth Strategies Survey(2023年B2Bコマース成長戦略調査)」をダウンロードしてください。
Joe Hansonは、10年以上にわたってB2Bマーケターおよびストーリーテラーとして活躍しています。アドビのシニアコンテンツストラテジストとして、業界のトレンドから、Adobe Commerceの最新のイノベーションに至るまで、デジタルコマースのあらゆる要素に焦点を当てています。
Maria Gureevaは、Adobe Commerceのソリューションアカウントマネージャーです。2022年初頭にアドビに入社して以来、英国、アイルランド、中東、南アフリカの顧客が、業界トップクラスのデジタル体験を通じて、eコマースで成功できるように支援しています。Mariaは特に、パーソナライゼーション、AI、消費者の嗜好傾向に興味を持っています。