プルデンシャル社の生成AIを活用したコンテンツサプライチェーン構築への挑戦
8月20日、アドビにて「Adobe User Meet Up with Prudential Global Executive~コンテンツサプライチェーンの実現はプルデンシャル社の顧客体験をどのように変えたのか~」と題したイベントが開催されました。
本イベントでは、グローバル保険/金融サービス企業のプルデンシャル ファイナンシャルより、マーケティングテクノロジー部門のバイスプレジデントを務めるリリー レイモンド氏をお迎えし、生成AIを活用し、マーケティングの俊敏性と一貫性をいかに両立させているかを深掘りしました。
プロダクト中心から顧客中心のマーケティングへシフト
全世界で約4万人の社員と、5000万人を超える顧客を抱えているプルデンシャル ファイナンシャル。今年創業150年を迎えた同社は、先進的な技術の活用でグローバルをリードしています。
そんな同社がマーケティングテクノロジーの変革に乗り出した契機として、「より顧客を理解し、データに基づくパーソナライズされた体験をアジャイルに提供していく。そこで顧客中心の考え方をさらに強化する取り組みをスタートさせたのです」とレイモンド氏は語りました。
まず、マーケティングにおけるビジョンを再定義し、経営陣とのビジネスゴールの整備、CMOやセールス、リーガル、コンプライアンスなどのパートナーとの連携、さらにマーケティングチームのスキルアップなど「人」に関する変革を実施。また、部門ごとのプラットフォームを変革し、Adobe customer data Platform導入によるデータの一元化を図ったと言います。
「効率性や市場への迅速な対応を実現するためのアプローチとして『AGILE PODS』の実践を進めました。さらに、限られた人的リソースで継続的に最適化を図りながら大量のコンテンツ制作を実現するため、自動化、パーソナライゼーション、マーケティングとセールスの連携をキーワードにコンテンツサプライチェーンの見直しをしました」(レイモンド氏)
「責任あるAI」を実現するため、ガードレールを徹底
これらの変革を踏まえ、Adobe Marketo Engageを活用したメールの自動化による工数の大幅制限、ホールセラー向けポータルの最適化など、パーソナライゼーションの向上を同社は実現。
「一定の成果を上げたところで、さらに進化させたモダンマーケティングを実践するため、AIの活用を見据え、アプローチとして早期のパートナーエンゲージメント、厳格なベンダー評価、ユースケースの明確化を進めていきました」とレイモンド氏は話します。
さらに、法的規制が厳しい金融業界にあたって、レイモンド氏が強調したのが「責任あるAI」の重要性です。同社では、ガードレールの備えとして、以下の4つを徹底していると言います。
- 目的に最適なモデルの使用
- ブランドの真正性を保護
- AIによる人間の生成を禁止
- 常に人間による監督を実施
以上の観点から、アドビのAdobe fireflyについて「非常に信頼できます」と高く評価。Adobe fireflyにコンプライアンスチェックを担うサービスなどを組み合わせ、AIを搭載したコンテンツサプライチェーンを再構築されました。
その成果として、「コンテンツ作成にかかる時間の25%の節約を実現し、編集スピードが3~4倍に向上。webサイトでは135%のエンゲージメントを達成し、セールスの効率性、市場への展開スピードも加速しています」とレイモンド氏。
コンプライアンスチームからも、「AIを活用して開示文言を確認し、業務効率や精度をより高めることができた」と評価する声が挙がっていると言います。
最後に、リリー氏は「今後のマーケティングの未来を考える上で、何が次に来るのでしょうか」と呼びかけ、webやソーシャルでのサーチから、LLMでのサーチへのシフトを挙げました。同社でも保険商品に関して、LLMを介したレコメンデーションを求める消費者が増えているといいます。
同社では、AIの進化に備え、エージェントAIの試験的導入の他、生成AIを活用したブランドコンシェルジュ、デジタルツインなどの取り組みを進めています。
「パーソナルエージェントというデジタル同僚とやり取りをしながら、ビジネスを展開していく世界はもう目の前に来ています」とレイモンド氏は未来の展望を語り、事例セッションが終了しました。
AIOへのアプローチについてもテストケースを実践
次に行われたQ&Aセッションでは、レイモンド氏とプラブネが登壇。参加者からの質問に対し、様々な角度から対話が行われました。その中から一部を紹介します。
Q.セキュリティの問題から生成AIの活用が進んでいません。講演にあった人事面やコンプライアンスから整備を進める上で、パートナーとどのようにして協力体制を構築していったのか、詳しくうかがえますか?
レイモンド氏:相手を早い段階で巻き込み、技術的な議論に参加してもらい、ツールがデータをどう使い、どんなモデルで、どのように学習しているのかを理解してもらうかが大事です。
また、スモールスタートをおすすめします。特にマーケティングは比較的安全な領域であり、小規模な試験運用から開始すると良いでしょう。チャネルを絞り、AIで生成したテキストをそのままキャンペーンに流用せず、コンプライアンス審査にかけるプロセスも重要です。
Q .御社のような 「AIトランスフォーメーション」に近い取り組みを、組織の中でどう実行していくべきか。ある程度、専門知識が必要になってくる中で、実際にオペレーションを担う人材の変革をどう進めてきたのか、詳しくうかがえますか?
レイモンド氏:まずはメンバーのスキルアップとトレーニング、そして「小さく始める」ことが大切です。当社では、最初はAdobe Fireflyを使って、画像生成から始めました。そもそも当社ではアドビのソリューションをほぼすべて利用していたため、Adobe Firefly導入についても、受け入れやすかったことが大きいです。
「小さく始める」理由として、ブランドの保護と安全性の証明も重要なポイントです。当社では会社全体を統括するAI担当委員会を設けており、法務、リスク、コンプライアンス、プライバシー、技術の担当者が参加しています。すべてのAIアプリやAIツールは、これら委員会を通過しなければならない仕組みを構築しています。
プラブネ:AI導入に対して否定的な意見やアレルギーのような拒否反応はありますか? 全社員が基本的には前向きに捉えているのでしょうか?
レイモンド氏:現場で実際にAIを使うチームの人々は、実際に使い始めると、彼らが最大の支持者になってくれました。信頼を築くために何度も丁寧に対話を重ねる必要があると思います。
そしてイベント終了後には、参加者の皆様とレイモンド氏、アドビのスタッフによるネットワーキングを実施。戦略的なAIの活用などについて、参加者同士で話し合い、交流を深めるシーンが各所で見られました。
Adobe User Meet Upは今後も開催される予定です。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。