オンラインストアの繁忙期に備える5つのP:アクセス数増加に備えてインフラストラクチャを準備するためのガイド

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通常のホリデーシーズンから業界特有の繁忙期に至るまで、ピークシーズンに成功を収めるには、まずオンラインストアのインフラストラクチャがパフォーマンスを発揮できるよう備える必要があります。ビジネスへの影響度は様々ですが、ピークシーズンの準備はECサイトから始めましょう。

本記事では、Adobe Experience Cloud Blog(英語)より、ピークシーズンに対応できるパフォーマンスを備えるために、5つのポイントをご紹介します。ご紹介する内容は大規模な対応が求められるものではありませんが、ピーク時のアクセス数の増加に合わせてスムーズに拡張できるよう、優先度を高くしておく必要があります。

ピークシーズンが始まる少なくとも3か月前には作業を開始し、準備万端にしておくことをお勧めします。パートナーやシステムインテグレーター(SI)と協業している場合は、この記事を参考に、ピークシーズンに向けたサイトの準備計画について話し合ってください。

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1. Predict:アクセス数と注文数の予測

個人的な趣味であれば直感による推測でも問題はありませんが、企業にとって1年で最も重要な時期の計画には、データに基づくアプローチが必要です。対応すべきピークシーズンのアクセス数について正確な予測をするために、4つの主要なベンチマーク指標があります。

この4つのデータを収集したら、まずサイトアクセス数の日平均と週平均に、算出済みの昨年のピークシーズンの増加率を加味して次のピークシーズンの予測値を算出します。また、これらの指標はAdobe Commerceを導入すれば、Business Intelligence(MBI)機能で確認できます。その上で全体の前年比増加率を使い、この割合を昨年のピークシーズンの数字に適用して、上記で算出された予測値を検証します。数字が合意できない場合は、チームで話し合って差分を推測してください。また、2つの数字に大きな開きがある場合は、多い方のトラフィック量で計画すると確実です。

必要なリソースを予測する別の方法として、典型的なピーク販売時間を特定し、それがインフラストラクチャにかける負荷(メモリ、CPU、ディスク容量など)を確認することもできます。これらの指標を3倍にすると、ピーク時の高いトラフィックを処理するために必要なリソースの概算として、妥当な値が算出されます。リソースがこの値に満たない場合、ピーク時の需要に対応するには、サイトに追加のリソースが必要になるかもしれません。

もちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってオンラインストアが既に受けている影響や、ピークシーズンのアクセスのレベルが昨年のピーク時とまったく異なる可能性を考慮することも忘れないでください。

2. PUT:リソースのテスト実施

今年のピークシーズンに向けて予測したリソースモデルを使ってインフラストラクチャの負荷テストを行い、見込まれるトラフィックにサイトが耐えられるかを検証します。このプロセスの最初のステップとして、Adobe Commerceサイトで負荷テストに関するアドビの推奨事項を確認しておくとよいでしょう。

多くの場合、このテストでいくつかの不備が明らかになります。こうした不備を文書化するとともに組織内で共有し、問題に対処するための共通のアクションプランを策定できるプロセスを確立するようにしてください。パートナーやSIと協業している場合には、こうした所見を共有するか、アクションプランの策定時に情報を盛り込むよう依頼します。

3. Prepare:計画的なサイトの準備

サーバーやデータベースの容量を増やす

サイトの負荷テストが完了して、追加容量が必要な箇所が決まったら、次にそれらのニーズを満たす方法を計画します。トラフィックの増加が予想される期間に対応するため、容量の柔軟性が必要になるかもしれません。ただし、日頃から負荷が高い状態で運用しているサイトの場合は、これを機に容量を増やすことでピークシーズンのニーズを満たすとともに、自社の成長に合わせて余裕を持たせることもできるようになります。パンデミックの中、消費者行動の多くが恒久的に変化したため、ここ1年ほどのwebトラフィックやトランザクションの増加は今後も続くと見た方がよいでしょう。

加えて、負荷テストで明らかになったリソース要件を満たすには、Web Nodesの追加を検討するとよいかもしれません。アドビのクラウドインフラストラクチャをお使いのAdobe Commerceのお客様は、ナレッジベースの記事でご説明しているように、一時的なサーバー増設による容量の拡張をご依頼いただけます。Adobe Commerceをご契約中の方で、CPUやディスクサイズ、メモリの恒久的な拡張をご検討中の場合は、アドビ カスタマーサクセス担当(CSM)にお問い合わせください。

コンテンツ配信ネットワークを使用する

負荷テストで明らかになったピークシーズンのパフォーマンスのニーズを満たすには、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を利用する方法もあります。CDNによってキャッシュが強化され、静的メディアファイル、HTML、JS、スタイルシートなどのグローバルなキャッシュネットワークが生成されることで負荷が軽減され、応答時間が改善します。CDNには多くのオプションがありますが、Adobe Commerceをお使いのお客様はFastly CDNをご利用いただけます。

キャッシュ設定を更新する

キャッシュ設定を改善してサーバーへのヒット数を減らすことで、インフラストラクチャのニーズの解決を図ることもできます。キャッシュ管理のベストプラクティスと併せて、Adobe Commerceサイトを高速化できるフルページキャッシュもぜひご活用ください。

4. Practice:良いルーティーンの実践

ECサイトの高速化に向けて画像を最適化する

画像は販売プロセスに不可欠な要素ですが、適切に管理しなければ読み込みが遅くなり、サイトのパフォーマンスにも影響するため、マイナスにしかならない場合があります。アドビでは、WebSafeに対応した72 dpiの画像を使用することを推奨しています。詳細は製品画像のサイズ変更をご確認ください。

最新のece-toolsパッケージに更新する

貴社のクラウド環境でece-toolsの最新バージョンを使用して、デプロイツールの拡張機能を利用できるようにしてください。最近のリリースでは、ローカル開発体験が改善されています。静的コンテンツのデプロイが最大400%高速化され、マーチャントの生産性を高めるセルフサービス機能も追加されています。最近の改善に関する詳細は、ece-toolsのリリースノートをご確認ください。

デプロイメントを負担にしない

ホリデーシーズンには、訪問者が中断されることなく買い物できるようにすることが重要ですが、この期間に本番環境を変更する必要が生じる可能性もあります。こうしたデプロイ時に、顧客のダウンタイムがゼロになるようにプロジェクトを構成できることをご存知でしょうか。優れたクラウドインフラストラクチャ管理を実践する最善の方法の1つは、ダウンタイムのないデプロイメントを実現できるよう、Adobe Commerceを構成することです。これらの構成のベストプラクティスを活用することで、デプロイのルーティーンにかかわらず、顧客は稼働中のサイトを利用できます。

ECサイトをバックアップする

バックアップを適切に管理することで、時間のかかる環境のロールバックをしなくて済みます。スナップショットを利用すると特定の環境をバックアップしていつでも復元できるため、デプロイ時に何か問題が発生した場合に、時間とコストを節約できます。Adobe Commerce環境は読み取り専用のファイルとしてデプロイされるため、スナップショットの復元により、すぐに環境が復元されます。スナップショットの作成と使用について詳しくは、Adobe Commerceデベロッパーガイドを参照してください。

パフォーマンスをモニタリングする

高機能のモニタリングツールを使って、常にパフォーマンスを注視しましょう。サイトパフォーマンスをモニタリングするツールやプロセスには多くの選択肢があるため、貴社に合った方法を選択してください。Adobe Commerceのクラウド版のお客様は、New Relicなどのサービスを利用して、サイトのパフォーマンスをモニタリングすることをお勧めします。

さらに、Observation for Adobe CommerceのNew Relic Nerdletもご利用いただけるようになりました。このアプリケーションでは、サイト全体のパフォーマンスのスナップショットをすばやく取得できるほか、さらに掘り下げて、潜在的なパフォーマンスの問題に関する詳細を得ることもできます。

アドビチームと連絡を取り合う

Adobe Commerceアカウントにログインし、「アカウント設定」に記載されている連絡先情報をご確認いただくことをお勧めします。また、あらかじめ貴社で技術関連をご担当の代表連絡先に関する情報をアドビのカスタマーサクセス担当にお知らせください。ソリューションパートナーと協業している場合は、貴社側の休暇期間中のサポート計画について話し合い、予想外の事態の発生時にも全員が計画を実行できるようにしておきましょう。これらの手順を踏むことで、セキュリティや技術上の問題が発生した場合でも、アドビからお客様のご担当者にすぐにご連絡ができるようになります。

5. Protect:サイトと顧客データの保護

Adobe Commerceの最新版にアップグレードする

ハッカーはますます高度化しているため、特にピークシーズンに向けてはAdobe Commerceを使用するマーチャントが最新版を実行していることが不可欠です。ハッカーは企業が繁忙期に気を取られていることを把握しており、この時期を狙って特に大規模な詐欺をしかけてきます。Adobe Commerceの最新版にアップグレードしていない場合は、ピークシーズン前にアップグレードしておくことを推奨します

最新版でなくても、セキュリティを維持する

Adobe Commerceの最新版を使用していない企業でも、セキュリティパッチを適用することで最新のセキュリティ動向に対応できます。セキュリティパッチが公開され次第、インストールすることを推奨します。Magento Quality Packageは、パッチへのアクセスや適用に役立つため、サイトを最新の状態に保つことができます。

セキュリティセンターでは、最新のセキュリティパッチやベストプラクティスをご確認いただけます。

Adobe Commerce Security Scanを利用する

Security Scanツールを利用すると、プログレッシブwebアプリ(PWA)を含むすべてのAdobe Commerceサイトをモニタリングして、既知のセキュリティリスクやマルウェアを検出できます。このツールにより21,000以上のセキュリティテストが実行されるため、オンラインストアのセキュリティの状況に関する洞察をリアルタイムで取得できます。セキュリティチェックを毎日または毎週、自動で実行することもできます。セキュリティスキャンの出力では特定された問題が一覧表示され、それらの問題を解決するためのベストプラクティスガイダンスが表示されます。

ピークシーズンに向けたサイトの準備に関するコンテンツをお探しですか?今後公開予定の「繁忙期のパフォーマンス計画」シリーズのパート2もご覧ください。