ゲーム業界のIPビジネスを支えるアドビのテクノロジー

電話をしている女性 低い精度で自動的に生成された説明

かつては、ゲームソフトという“モノ”を販売することで利益を上げていたゲーム業界。しかし、オンラインゲームが主流となった今は、いかにコンテンツに課金してくれる有償会員を増やし、長く継続してプレイし続けてもらえるかによって、利益が大きく増減するビジネスモデルへと変化しています。

そこで今回は、7月8日に配信したExperience Makers Industry Webinar「なぜリテンションビジネスがゲーム業界にとって『カギ』となるのか?」(登壇者:アドビ株式会社 マニッシュ プラブネ、阿部成行)の講演内容である、ゲーム業界におけるリテンションビジネスの重要性と、プレイヤーのデジタル体験を支える魅力的なコンテンツの管理手法についてご紹介いたします。

もくじ

  • なぜゲーム業界でリテンションが大切なのか
  • 魅力的なコンテンツ作りのためにアドビができること
  • ゲーム業界のOOMを実現するアドビのソリューション群

なぜゲーム業界でリテンションが大切なのか

ゲーム業界の歴史を振り返ってみると、1999年のi-mode※1の登場による「月額300円」のようなサブスクリプション型の課金体系がもたらされるとともに、プレイヤー同士でのコミュニケーションなど双方向の新しい体験が生まれました。その後、2007年にはiPhone※2が登場。アプリケーションのエコシステムが発達し、5G回線によってどこでもハイクオリティなコンテンツが楽しめるようになりました。このように技術の進化が激しい中、ゲーム業界ではAR/VRに加え、昨今、話題のメタバースにも関心を寄せなければなりません。

とはいえ、ビジネスで大切なのはゲームというコンテンツそのものだけではないのです。フィリップ コトラーの『コトラーのマーケティング5.0』では、「Next Tech(=次の技術)」と「New CX(=新しい顧客体験)」が重要であると訴えています。いくら技術の進化を取り入れたすばらしいコンテンツを作ったとしても、お客様の趣味/嗜好を知らずに一律な顧客体験を提供しているだけでは、ビジネスがうまくいかないことを示しています。

このNew CXの実現に向けて、お客様の趣味/嗜好を正しく理解する際に大切なのが、データです。お客様の属性データと行動データを掛け合わせて分析しながら、それぞれのセグメンテーションに合わせたコンテンツを配信していき、お客様のエンゲージメントを高めていくことがとても重要になります。

顧客の属性データと行動データを合わせて分析し、コンテンツを配信する図

魅力的なコンテンツ作りのためにアドビができること

ゲームのプレイヤーであるお客様にご満足いただける良い顧客体験を作っていくには、当然ながら魅力的なコンテンツが必要です。

アドビの調査結果を見ても、消費者の71%が、「適切な時間とチャネルで提供される関連コンテンツがブランドの信頼性を向上させる」と回答しており、この傾向は特にZ世代とミレニアル世代で高く、77%にも到達しています。これらの世代はSNSなどで高度にレコメンドされたコンテンツに触れる体験を日常的に行っていることもあり、自分が欲しいタイミングで最適なコンテンツを提供されるのが当たり前だと感じているからではないでしょうか。

こうした魅力的なコンテンツは、「Adobe Creative Cloud」を活用して、日々生み出されています。中でもゲーム開発の現場でもよくご利用いただいているのが、3Dビジュアライゼーションツールの「Adobe Substance 3D」です。このファミリーに新しく加わる「Adobe Substance 3D Modeler」は、今はベータ版としてWindows※3版が公開されています。この「Adobe Substance 3D Modeler」の特徴は、PCとVR空間の作業を行き来できる点です。直感的に形を把握できるため、コンセプトアートやプロトタイプなどのイメージを素早く形成する作業をVR側で行うことができます。メタバースの中でみんなとモノ作りを行うような世界観も、このようなところから広がっていくのではないかと想像しています。

もう一つお伝えしたいのが「NFT」、ブロックチェーンに関連した技術です。例えばゲームのIPコンテンツをデジタルデータとしてグローバルで展開する場合、懸念されるのがコピーや改ざんによる悪用です。NFTの技術を使ったとしても、そのコンテンツが本物かどうかまでは見抜くことができません。そこで、そうした悪意のあるフェイクコンテンツに対抗するために、アドビではコンテンツ制作プロセスの中で、「このコンテンツは本物である」という情報を付与するアプローチを取ることにしました。それが今回「Adobe Photoshop」に実装された「コンテンツクレデンシャル」という機能です。

このコンテンツクレデンシャル機能を使えば、そのコンテンツの帰属情報や制作履歴を付与するとともに、仮想通貨ウォレットのアドレスとリンクさせることもできます。これにより、万一ブランド公式のコンテンツが侵害された場合に対抗する手段として活用いただくことが可能になります。

次に、顧客体験を支えるコンテンツ管理のあるべき姿について見ていきましょう。

先述の通り、企業はプレイヤーが望むあらゆる接点で、プレイヤーが期待する以上のコンテンツ、あるいは各プレイヤーにとってふさわしいコンテンツを、タイムリーに提供していくことが求められています。しかも、同時にブランド毀損に対するリスクヘッジもしなければなりません。さらに、それをグローバルで展開するとなると、テクノロジーの力なしにコンテンツ管理を行うのは不可能です。

ちなみにアドビではwebサイトをはじめとする顧客接点が40を超えています。webサイトだけでも69サイトを、それぞれ34言語で展開しています。これらのコンテンツをユーザーごとに最適化して届けているため、1日あたりのデータ量だけでも20TBを超える規模になっています。これほど膨大な量のアセットをどのように管理しているのでしょうか。

よく見られるケースとしては、webサイトやメールなど、チャネルごとにコンテンツをバラバラに管理されているというものです。ゲーム業界であれば、タイトルごとに担当者が異なり、それぞれが独立してコンテンツを制作されているケースも散見されます。しかし、このようにサイロ化された状態で複数のコンテンツ管理システムを使い分けていては、無駄も多く、人的ミスも増加します。

そこでアドビでは「Adobe Experience Manager」という単一のコンテンツ管理システムにコンテンツを集約し、そこにあるコンテンツを再利用しながら、複数のチャネルへと展開しています。もちろん「Adobe Experience Manager」は、アドビの提供するクリエイティブツールと連携できるので、コンテンツの制作から統制、活用まで、コンテンツライフサイクルをフルサポートしながら、効率的なプロセスを実現することが可能です。

Adobe Experience Manager概要図

ゲーム業界のOOMを実現するアドビのソリューション群

最後に改めて、良い顧客体験を作るためのデータ活用に話を戻します。

昨今のゲームでは、体験版をプレイしてもらうためのプロモーションだけでなく、プレイ中の行動データをもとにしたリテンションによる有償会員化が重要であることをお伝えしました。これは言い換えれば、ゲームソフトを買ってもらったら終わりというファネル型のマーケティングではなく、継続的なプレイの中でアップセル/クロスセルを重ねていく“無限ループ型”のマーケティングが必要であることを意味しています。

無限ループ型のマーケティング図

また別の角度で見ると、オンラインからオフラインへの誘導が重視されたO2O(Online to Offline)、オンラインとオフラインの統合を志向したOMO(Online Merges with Offline)の時代は終わり、今やオンライン、オフライン、メタバースの3つのデータの統合的な分析/理解が求められる“OOM”とも言うべき時代に入っています。

様々なゲーム機器やモバイルアプリから取得したデータ、webサイトやメールなど自社が有する多くの接点で得られたファーストパーティデータ、そしてセカンドパーティデータやサードパーティデータなど、あらゆるデータを統合する基盤としてアドビが提供しているのが「Adobe Experience Platform」というリアルタイムCDPプラットフォームです。この「Adobe Experience Platform」をベースに、アドビのデザインツールやコンテンツ基盤、さらには配信基盤を組み合わせることで、個々のプレイヤーに最適なコンテンツを効率よく届けることができるのです。

デジタルコミュニケーションを構成するソリューション図

良い顧客体験を実現するカギとなるのは、このようなコンテンツやデータの器を用意することではなく、コンテンツライフサイクルを業務プロセスとして設計し、組織として永続的に回していく視点を持つことです。アドビではグローバルで様々なお客様に業務プロセスの設計とシステムの導入支援を行ってきた実績とノウハウがありますので、ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせいただけると幸いです。

オンデマンドウェビナー

本稿の Experience Makers Industry Webinar「なぜリテンションビジネスがゲーム業界にとって『カギ』となるのか?」をオンデマンドにてご視聴いただけます。ぜひご覧ください。

※1:i-modeは、株式会社NTTドコモの登録商標です。

※2:iPhoneは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。iPhoneの商標はアイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。

※3:Windowsは、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。