ヘッドレスeコマースの完全ガイド
本記事では、ヘッドレスeコマースができること、その重要性、そしてそれがもたらす利点をご紹介致します。
もくじ
- ヘッドレスeコマースが登場した理由
- ヘッドレスeコマースとは何か?
- 従来のeコマースプラットフォームとの違い
- ヘッドレスeコマースの利点
- ヘッドレスeコマースの仕組み
- ヘッドレスeコマースの実例
- Adobe Commerceのヘッドレスコマース
- ヘッドレスeコマースが自社に適しているかどうかを判断する方法
- ヘッドレスeコマースの始めよう
ヘッドレスeコマースが登場した理由
この新しいデジタル化が進む社会において、企業は迅速かつ柔軟に顧客の期待に応えられるために、新たなテクノロジーに投資しています。
これには、シームレスでパーソナライズされた顧客の購買行動をサポートするeコマースの新たな仕組み、すなわち、ヘッドレスアーキテクチャによる強力なeコマース基盤の構築も含まれます。
現在eコマースストアでは、顧客が商品閲覧し、カートからチェックアウトまでの直線的なパスだけを辿ることはほぼありません。購入までの道のりには、ソーシャルメディアプラットフォーム、モバイルアプリ、オンラインマーケットプレイス、さらには拡張現実(AR)、モノのインターネット(IoT)デバイス、車載コンピュータなど、インターネットを利用したさまざまなタッチポイントでの情報が購入者と接点となります。
一方で、買い物客は、ウェブストアを訪れることなくても、商品やサービスを購入することができます。ヘッドレスECとは、このような全ての体験を可能にするものです。
B2C と B2B の両マーチャントにとって、あらゆるデバイス、タッチポイント、チャネルで一貫性のある、インテリジェントで有意義な体験を提供することは非常にチャレンジングなことです。現段階ではB2Cの顧客は、数多くのデジタルコンテンツを利用して いるため、商取引の競争は激しく、B2B企業は、パーソナライズされたお勧め商品やライブ予測検索などの顧客中心のデジタルコマース機能に投資して、同じようなショッピング体験を実現し始めたばかりであるというのが実情です。一方、多くの企業は、デジタル化に伴う柔軟性、スピード、スケールに対応できない、レガシーなコマース・プラットフォームに縛られ、多くの制約を受けています。
そこで登場するのが、ヘッドレスeコマースです。販売へのマルチチャネル・アプローチをサポートするために設計されたヘッドレスeコマースは、B2B および B2C のマーチャントが、顧客がどこで取引しようと、リッチで適切な体験を実現します。本稿では、ヘッドレスeコマースとは何か、何ができるか、なぜ重要か、どのような利点があるか、そして実際のところどうなのかを実際の例を挙げて、深く掘り下げて説明します。
ヘッドレスeコマースとは何か?
ヘッドレスeコマースとは、オンラインストアのフロントエンドを、販売、ウェブサイトセキュリティ、データプロセス、ビジネスロジックを管理する運用バックエンド層から切り離す(デタッチする)コマースアーキテクチャのことを指します。バックエンドはフロントエンド「ヘッド(頭部)」がない状態であり、これが「ヘッドレス」の語源となっています。
頭を切り離された体は何もできませんが、コマースプラットフォームがヘッドレスになれば、より速く、より柔軟で、より機能的になります。バックエンドは、フロントエンドに縛られることなく、コマースの重要な機能をすべて実行し、新しい革新的な機能を試すことができるのです。また、バックエンドのインフラに影響を与えることなく、完全にカスタマイズされたブランディングされたデジタル・ストアフロントを作成し、印象的な体験を各チャネルに提供することができます。
ヘッドレス・アーキテクチャは、タッチポイント・ネットワーク全体にコマース機能を組み込みます。タッチポイントは、コマース・プラットフォームのバックエンドに接続するための「ヘッド」であると考えてください。マーチャントは、これらのヘッドのいずれに対しても、アプリのような体験をすばやく作成し、提供することができます。スマートウォッチ、モバイルアプリ、Amazon Alexaのような音声インターフェイスのいずれでも、買い物客はより速く、よりパーソナライズされた、一貫した体験を、どこで、どのようにでも得ることができます。
これは、多くの企業、特に従来のオールインワンのモノリスプラットフォームのストレスに耐えている企業が傾倒しているコマースアーキテクチャですが、だからといって、すべての企業にとって最適なアプローチであるとは限りません。
従来のeコマースプラットフォームとの違い
デジタルコマースの黎明期、ゼロからウェブストアを構築するリソースや才能がない企業がウェブサイトを立ち上げるには、従来のeコマース・プラットフォームが最適かつ唯一の選択肢でした。フロントエンドとバックエンドのレイヤーが統合されたフルスタック・ソフトウェア・ソリューションを購入することになります。
フルスタックプラットフォームでは、デジタルストアフロントを立ち上げるのは簡単ですが、コマース機能のカスタマイズ、新機能の迅速な実装、新しいテクノロジーの適用、消費者との接点拡大などの機能が制限されることになります。ちょっとした変更でも、フロントエンドとバックエンドを同時に見直さなければなりません。また、サードパーティ製の拡張機能を追加して機能を拡張したり、API(Application Program Interface)を利用してネイティブ・モバイル・アプリケーションのような特定のタッチポイントを拡張することはできますが、従来のプラットフォームには、デジタルファーストの消費者との取引で成功するためにコマースリーダーが必要とするパーソナライゼーション、コンテンツテスト、分析の機能がない場合がほとんどです。
上の表からわかるように、従来の eコマース・プラットフォームでオンラインストアをホスティングすることには、明確な利点があるのです。eコマースを始めたばかりの中堅・中小企業は、一般的にカスタム・アプリケーションを必要としないため、ヘッドレス・フレームワークを構築・維持することは予算的にもリソース的にも不利になります。フルスタックソリューションは運用コストが低く、テンプレート化されたサイトデザインシステム、シンプルなダッシュボード、プラグアンドプレイ機能を備えているため、比較的簡単に使用することができます。しかし、ビジネスが成長するにつれ、モノリスもそれに合わせて成長しなければならず、その時点で扱いにくくなり、速度も低下し、拡張が困難になる可能性があります。
従来のeコマースプラットフォームを使用して、パーソナライズに対する消費者の要求に幅広く対応する場合、開発者はデータベースのコードを変更し、フロントエンドのプラットフォームを改良しなければならず、長期にわたる更新はより複雑で時間とコストがかかるものになりかねません。また、アップデートは時間とともに複雑化し、時間とコストがかかるようになります。この時点で、ヘッドレスアーキテクチャに移行することが、ビジネスにとってより良い方法となるかもしれません。
ヘッドレスeコマースの利点
プラットフォームとサービスの導入は負担が大きいように感じますが、一度にヘッドレス化を進める必要はありません。オンラインカタログ、ショッピングカート、価格設定オプションなどのコア機能から始めて、ヘッドレスアプローチを使用してそれらを分離することができます。これにより、バックエンドに干渉したりコマースエンジンを変更したりすることなく、ストアフロントのエクスペリエンスを変更することができます。他のサービスも順次切り離して実装していくことができます。その間に、ヘッドレスeコマースがもたらすメリットを享受することができます。
・カスタマイズで競争力を維持
ヘッドレスでは、フロントエンドのクリエイティビティは自由自在です。魅力的なユーザーエクスペリエンスを迅速に構築し、新しい機能や特徴を試してみることができます。統合機能はもはやパッケージ化されていないため、ヘッドレスでは、コマースプラットフォームを最適化し、収益に影響を与えるために必要なソフトウェアソリューションのみを購入する柔軟性も備えています。デジタル化の成熟度に合わせて、プラットフォームの使い勝手を向上させるために必要なツールを社内チームに用意することができます。
・チームへの権限付与
ヘッドレスプラットフォームを使用すると、マーケティングおよびマーチャンダイジングチームはITの制約を受けることなく、統合済みの使いやすいツールによって開発者への依存を軽減することができます。顧客向けのフロントエンドは、最新のマーケティングキャンペーンやプロモーションを反映するために簡単に更新できるため、新しい顧客体験を開始するのに手間がかかりません。
・一貫した体験の提供
ヘッドレスeコマースでは、タッチポイント全体で共通のデータセットを保持しておくことができます。このようにして、顧客は一貫した体験を得ることができ、中断したところからショッピングを再開することができます。
・変化し続けるテクノロジーに追いつく
ヘッドレスeコマースにより、企業はユーザーの嗜好や超高速で変化するテクノロジーに対応することが可能になります。例えば、iOSの最新バージョンに素早く対応するために、システム全体を開発しなおす必要はありません。ヘッドレスは、顧客、ビジネス、市場のニーズに応じて新しいデジタル機能を導入し、試すことができる柔軟性を備えています。
・ヘッドレスは、ITリーダーにもユニークな利点をもたらす
ヘッドレスeコマースの分離型アーキテクチャとあらかじめ組み込まれた連携機能により、サービスの更新が容易かつ迅速になり、IT チームの負担が軽減されます。ヘッドレスはまた、シングルログインによる共通のユーザーエクスペリエンスとユーザーインターフェイス、およびサービスのアップデートやリリースで発生した問題を解決するサポート組織全体で、運用効率を高めることができます。おそらく最大の利点は、APIを通じてコマース・プラットフォームとシームレスに統合できることです。これによりITリーダーは、それぞれの個別のビジネスニーズに対して最も適切な技術的決定を下すことができる柔軟性を手に入れることができます。
ヘッドレスeコマースの仕組み
ヘッドレスECとは、ウェブストアのフロントエンドとバックエンドのコマース機能やロジスティクスをきれいに分離したものであることは、もう十分にご理解いただけたと思います。そして、より迅速な展開、より優れた差別化された顧客体験、よりシームレスなクロスチャネル対応など、そのメリットについてもよくご理解いただけたと思います。では、ヘッドレスECがどのように機能するのか、具体的に説明しましょう。
ヘッドレスECストアのフロントエンドとバックエンドは互いに独立して動作しているかもしれませんが、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)の助けを借りて常に通信している状態です。この方法でAPIを使用すると、新しいフロントエンドのリリースやカスタマイズがバックエンドに与える依存性を排除することができ、両者を同時に開発、デプロイ、管理する必要がありません。このアプローチにより、フロントエンドの開発チームは、カスタマーエクスペリエンスを完全にコントロールすることが可能になります。
APIは、eコマースシステムの2つの部分を独立して機能させるだけでなく、オムニチャネル・シナリオを強化し、あらゆるシステム、アプリケーション、IoTデバイスのコマースを可能にします。開発者は、API を使用して、顧客とのタッチポイント間で情報や体験を送信します。API は、フロントエンドのユーザー・インターフェースから信号を受け取り、バックエンドに送信し、フロントエンドで期待される体験に変換する新しい情報を返します。APIは、オンラインショッピング、ディナーの予約、旅行の予約など、顧客のリクエストを受け、何をしたいのかをシステムに伝え、レスポンスを返すメッセンジャーだと考えてください。顧客と接するタッチポイントでは、デジタル・ショッピング体験の簡素化されたバージョンが見られますが、バックエンドでは、ショッパー・エクスペリエンスを構成する複雑さとテクノロジーが存分に発揮されているのです。
APIによって、このインタラクティブな体験を実現させるために必要な情報を実に滑らかに連携させています。アプリケーション、データベース、デバイスはすべてAPIによってリンクされ、今日の世界を動かすグローバルなウェブ接続を作り出しています。アプリケーションの技術や体験プラットフォームに関係なく、開発者はAPIを使用して、消費者のタッチポイント間で情報とブランド体験を迅速かつ確実に伝達することができます。
ヘッドレス e コマースでの API の使用は、コンテンツウェブサイトをウェブストアに拡張しようとしているブランドにとって特に適切なものです。API はあらゆるコンテンツ管理ソリューション(CMS)とシームレスに統合されるため、完全に新しいウェブサイトを作成してコンテンツを移行するよりも、コマースエンジンを構築してから既存の CMS に接続する方がはるかに簡単です。
ヘッドレスeコマースの実例
では、企業がヘッドレスアーキテクチャでコマースエンジンを実現、運用しているかを見てみましょう。
Sazerac
サゼラック・ハウスは、ニューオーリンズにある5万平方フィートの蒸留所で、ツアー、展示、テイスティングを提供しています。同社のウェブサイトは、ヘッドレス・アーキテクチャがeコマースに与えた影響を示す典型的な例といえるでしょう。訪問者を実際の店舗に誘導するだけでなく、コマースを組み込んだリッチなコンテンツによって、没入感のあるブランド体験を提供しているのです。
伝統的な商品ページの枠を超え、シームレスで統一された顧客体験を構築しています。地元の顧客はカーブサイド・ピックアップができ、世界中の顧客はオンライン・ギフト・ショップで注文することができ、またサゼラックは、バーチャル体験の開始や、イベント期間中に顧客が様々な商品を購入する機会を新たに提供するなど、自由に挑戦することができます。
Eコマースの直接的な売上は、Eコマースの価値を示す最も目に見える指標に過ぎません。ヘッドレス化により、サゼラックハウスはオムニチャネルの消費者と深い関係を築き、消費者と小売業者の両方がアクセスできるコンテンツでブランドエクイティを強化し、デジタル影響力の拡大によりオフラインの売上を増加させ続けることができるのです。
Buffalo Trace
ヘッドレスによって、企業は顧客の嗜好や市場、世界の急速な変化にできるだけ早く適応することができます。それはまさに、COVID-19の大流行が始まったときにバッファロー・トレース・ディスティラリーが行ったことです。現地での蒸留所見学で知られるサゼラックハウス系列のバッファロー・トレースでは、ロックダウンの制限に適応する必要がありました。ヘッドレスアーキテクチャにより、バーチャルツアーにコマースを機能的に追加することが可能になり、最初の1年で5万人以上の訪問者が蒸溜所のバーチャルツアーを楽しみました。現地で見学するのと同じように、様々なオンラインギフトショップで買い物をしたり、商品を購入したりしたそうです。
Pentair
世界的な水処理企業であるペンテアには、さまざまな顧客がいます。B2B、B2C、そして請負業者など、さまざまな顧客を抱えています。ヘッドレス化以前は、北米だけで35のウェブサイトを運営していました。消費者ペルソナの区別がほとんどなく、顧客は自分のニーズに合った情報を見つけるのに苦労していました。B2Cのお客様がB2Bの購入パスにいることがよくありました(その逆も然り)。
Pentairはヘッドレスアーキテクチャの助けを借りて、B2B、B2C、および業者のためのさまざまなコマース体験を1つのグローバルウェブサイトに統合しました。包括的なナビゲーションと明確なカスタマージャーニーにより、ペンテェアはペルソナごとにジャーニーを変え、顧客を誘導・教育する深いコンテンツ体験とコマースを組み合わせて、シームレスな購買体験を提供できるようになりました。
Olam Group
オラムグループは、食品素材、繊維、飼料を世界中の何千もの顧客に供給することを使命とする食品・農業関連ビジネスのリーディングカンパニーとして、60カ国で複数のeコマースサイトで事業を展開しています。同社のウェブサイトは、単に購買ポータルとして機能するだけでなく、顧客との関係を育み、新しい購買者を惹きつけるための豊富なコンテンツが含まれています。つまり、地域や製品ラインの成長に合わせて新しいコマースサイトを立ち上げ、異なる通貨や言語にも柔軟に対応できる拡張性が必要なのです。ヘッドレスはこのような機能を提供します。
最近では、オラムは初の消費者向け直販ブランドである Re-Foods を立ち上げ、B2C 分野に進出しました。同社は、バックエンドを単一のプラットフォームで運用しながら、顧客のエクスペリエンスをカスタマイズすることができます。シームレスなB2C中心の顧客体験を作り出すことで、コンバージョン率を大幅に上げ、ショッピングカートの放棄率を60%から30%以下にまで減少させたのです。
TiVo
TiVoは、革新的でシンプルなコンテンツディスカバリー体験に対する消費者の欲求を満たすために、TiVo Stream 4Kを発表しました。しかし、そのためには、バックエンドのコマースプラットフォームを見直す必要がありました。ヘッドレスは、TiVoのストリーミングデバイスのような新しいタッチポイントにコマース機能を迅速に追加するための鍵になります。
ヘッドレス・アーキテクチャにより、TiVo はウェブやモバイルのストアフロントと同期した一貫したコマース・エクスペリエンスをデジタル・ストアフロントに自由に提供できるようになりました。ヘッドレスへの移行により、ターゲットとするオーディエンスにカスタムディールやオファーでアップセルを行う能力が向上しました。また、顧客はストリーミング・デバイスのインターフェイスで直接購入できるようになりました。
Adobe Commerceのヘッドレスコマース
Adobe Commerce(旧 Magento Commerce)は、B2B および B2C のマーチャント向けに、ヘッドレス API ベースのコマースプラットフォームを提供しています。常に API ファーストで、GraphQL を使用して必要なデータのみを転送するため、企業はパーソナライズされた顧客体験を構築し続けることができる。この基盤により、お客様は最善の機能を利用したり、独自の拡張機能を構築したり、サードパーティの拡張機能を使用して独自のショッピング体験を提供することができます。
アドビは近年、マーチャントがコマース機能をAPIとして利用し、Adobe Experience ManagerやPWA StudioなどのフロントエンドをWebストアデザインに利用できるヘッドレスデジタルコマースアプリケーションとしてAdobe Commerceを提供し、成功を収めています。アドビを利用する場合、ストアフロントのお客様は、しばしばコマース実装の市場投入時間を大幅に短縮することができるというメリットを得られます。
アドビは、市場のヘッドレスeコマースセグメントにおいて顧客の間で強い支持を得ており、顧客は(IDCによると)、アドビコマース上に独自のストアフロントを構築できるように、ヘッドレスeコマースに多額の投資を行っています。
Adobe Commerceは、複数の販売ルート、ハイブリッド販売モデル(B2BとB2C)、複雑なカタログ、多くのプロモーションキャンペーン、マルチサイトまたはマルチカタログの要件を持つ組織に適しています。アドビのヘッドレスインフラストラクチャは、Adobe Experience Manager(CMS)、Adobe Analytics、Adobe Marketo Engageなどの他のアドビツールや、サードパーティのeコマースサービスの豊富なマーケットプレイスとも統合されています。
Adobe CommerceはMagent1の時代からヘッドレスコマースを実現するための取り組みをしており、現在も進化し続けています。そのアプローチは多くのデータや機能をAPIで呼び出しを可能とするだけでなく、新機能をコアと切り離したモジュール化構造へと進んでおり、いわゆるコンポーザブルなアプリケーション(コンポーザブルコマース)へと進化し続けています。
ヘッドレスeコマースが自社に適しているかどうかを判断する方法
ヘッドレスECの利点はご理解いただけたと思いますが、ECコンポーネントの構築にかかる追加コストと複雑さを比較検討することは、もっと注意を払うべきでしょう。
ほとんどの企業は、将来の成長をサポートし、デジタルの進化に対応できるようなプラットフォームを必要としています。そのためには、柔軟性があり、市場投入までの時間が短く、総所有コストが低いことが必要です。中には、大量の複雑さと技術的負荷を軽減する、強力で有能な開発者チームを持つ企業もあります。しかし、ヘッドレスプラットフォームの機能を組み合わせるために必要な技術的スキルや予算がない企業もあります。このため、利用可能な人材とリソースに基づいて、各戦略のトレードオフを検討する必要があります。特に、カスタム・アプリケーションを必要としない中小企業では、モノリシック・プラットフォームが現在のコマースニーズに適していると感じるかもしれません(少なくとも現時点では)。
以下の5つの指標から、貴社がヘッドレスeコマースへ移行する準備が整っているかどうかを判断することができます。
- いつでもどんなテクノロジーでも、カスタムフロントエンドを構築したい
従来のeコマース・プラットフォームでは、ベンダーのインターフェースに縛られるため、真に差別化され、ブランド化されたショッピング体験を構築することはできません。他のブランドの体験を彷彿とさせるような、一般的な要素が常に含まれているのです。ヘッドレスを使えば、バックエンドに影響を与えることなく、フロントエンド全体を再構築することができます。同様に、顧客ニーズの変化にも迅速に対応することができます。例えば、新しいコマースシステムを購入したり構築したりするのではなく、バックエンドのユーザーインターフェイスを置き換えることも可能です。また、開発者のチームがあれば、新しいシステムを習得する必要がなく、彼らが知っているツールを自由に使うことができるため、市場投入までの時間を短縮することができます。
- スケーラビリティを向上したい
ヘッドレスAPIは、効率性を念頭に置いて設計されています。必要なデータのみを転送するため、遅延がほとんどなく、パフォーマンスが最適化されます。ウェブトラフィックが増加し、購入が急増しても、ヘッドレス eコマースなら対応可能です。ショッピングのピーク時にウェブストアがクラッシュする心配はありません。また、ビジネスが拡大しても、新しいコマース・プラットフォームで一からやり直す必要はありません。ヘッドレスは、規模を拡大するための機能を提供し、同時に顧客の体験をパーソナライズすることができます。
- 迅速なイノベーションを望んでいる
ARスマートグラス、スマート衣料、インターネット対応家電、インテリジェントインプラントデバイスなど、新しいタッチポイントはすでに目前に迫っています。ヘッドレス・アーキテクチャは、それらすべてにおいてコマース機能を実現するためにビジネスをセットアップします。マーチャントは、新しいテクノロジーに迅速に対応し、新しい収益源を迅速に追加し、競合他社に先駆けて新しい体験を導入し、購買者の行動の進化に適応するための準備を整えることができるのです。
- すべてのタッチポイントで一貫性を確保したい
APIとバックエンドのコマースサービスは排他的ではありません。技術に関係なく、同じものがすべてのタッチポイントと通信します。ヘッドレスアーキテクチャを活用することで、顧客がどこで買い物をしようと、同じショッピングカート、支払い方法、チェックアウトプロセスで一貫したエクスペリエンスが得られるようになります。
- コンテンツとコマースを統合したい
ヘッドレスは、既存のCMSを持つ企業が企業サイトにコマース機能を追加し、迅速に販売を開始することを可能にします。その仕組みは次の通りです。ヘッドレスCMSは、ヘッドレスeコマースのバックエンドと同様に、アセットやパーソナライゼーションなどのコンテンツ操作をストアフロントのユーザー・インターフェースから切り離すことができます。ヘッドレスCMSがヘッドレスECプラットフォームと連携することで、顧客体験は行動や期待により合致し、顧客はよりテーラーメイドなショッピング体験ができ、正しい商品情報とコンテンツが正しいタイミングで配信されるようになります。また、CMSとコマースストアの連携により、商品ページ以外での販売や、サイト間での商品検索を最適化する機会も増えます。
上記のようなポイントを指標として、ヘッドレスコマースが貴社に適しているかを判断してみてください。
ヘッドレス eコマースを始めよう
テクノロジーは常に革新的です。ヘッドレス e コマースでは、新しいチャネルやタッチポイントにコマース機能を追加して、遅れを取らないようにする方法があります。ヘッドレスアーキテクチャには柔軟性と俊敏性が組み込まれているため、顧客体験とインターフェースを迅速にカスタマイズすることができます。デジタルトランスフォーメーションの中で求められる柔軟性や俊敏性を実現するプラットフォームとしては最適なアーキテクチャであると考えます。
参考に以下の他記事もご覧ください。
【参考記事】
製品機能:ヘッドレスコマース https://business.adobe.com/jp/products/magento/headless-commerce.html
実装プレイブック:ヘッドレスAdobe Commerceアーキテクチャ https://experienceleague.adobe.com/docs/commerce-operations/implementation-playbook/architecture/headless/adobe-commerce.html?lang=ja
ガイド:ヘッドレスコマース(英語)https://business.adobe.com/resources/headless-commerce-primer-growing-merchants.html