メールのパーソナライゼーションを強化する方法
メールマーケティングに求められる顧客体験管理(CXM)
前回の記事で、顧客体験管理(CXM)を実践する上でのポイントや、実際に提供されている顧客体験、優れた顧客体験を提供するまでのロードマップについてご説明しました。今回はAdobe Campaignを中心としたAdobe Experience Cloudを活用してメールのパーソナライゼーションを強化する方法をご紹介します。
もくじ
- メールにおけるパーソナライゼーションの種類
- 実現するためのアーキテクチャー
- Adobe Campaignの設定手順
- CXMの高度化の実現
メールにおけるパーソナライゼーションの種類
まずは、メールにおけるパーソナライゼーションの種類を把握しましょう。行動・属性データにもとづいて、メールを配信するタイミングやメールの件名および本文のパーソナライゼーションが可能ですが、大別すると以下の7種類になります。
- 氏名や会員属性などのパーソナライゼーションフィールドの動的な挿入
- 誕生日や会員ランク、ステージなどのCRMデータにもとづくメールの配信
- 来店やアクセス元などのエリア情報にもとづくパーソナライゼーション
- 会員登録や資料請求、注文などのトランザクションにもとづくメールの配信
- カート放棄などのWebサイト上の行動にもとづくトリガーメールの配信
- メール本文内の掲載商品/記事のレコメンデーション枠の挿入
- メール配信時間帯のパーソナライゼーション
メールマーケティングにおいて実現可能な様々なパーソナライゼーション施策のうち、自社のメールマーケティングにおいては現状どんなパーソナライゼーションが実施できていて、何が実施できていないか、どのパーソナライゼーション施策が自社にとってビジネスインパクトが大きそうかを検討し、A/Bテストによる効果検証を行っていきましょう。
実現するためのアーキテクチャー
前項でご紹介したメールにおけるパーソナライゼーションを実現するためのアーキテクチャーについて、Adobe Experience CloudにおけるAdobe CampaignとAdobe Analytics, Adobe Targetの3つのソリューションで実現する場合のアーキテクチャーをご紹介します。
Adobe Target
レコメンデーションやジオターゲティングなどのパーソナライズエンジンとして利用
Adobe Analytics
Adobe Targetによるパーソナライゼーション情報やWebサイト上の様々な情報をAdobe Campaignへ連携するためのデータ管理基盤として利用
Adobe Campaign
行動・属性に関する各種データを統合・集計し、複数のワークフローを管理することで、様々なマーケティングオートメーション施策を実行する顧客体験管理基盤として利用
氏名や会員属性などのパーソナライゼーションフィールドの動的な挿入や、会員登録や注文などのトランザクションにもとづくメールの配信などはAdobe Campaignのみでも可能ですが、メール本文内の掲載商品/記事のレコメンデーション枠の挿入や来店やアクセス元などのエリア情報にもとづくパーソナライゼーション、カート放棄などのWebサイト上の行動にもとづく高度なトリガーメールの配信を実現する上では、Adobe AnalyticsやAdobe Targetのようなデータ収集・管理基盤およびパーソナライズエンジンが必要になります。
Adobe Campaignの設定手順
今回は、カート放棄などのWebサイト上の行動にもとづいてメール本文内の掲載商品/記事のレコメンデーション枠の挿入したトリガーメールを配信するための設定方法をご紹介します。
Adobe CampaignとAdobe Analytics, Adobe Targetの3つのソリューションを活用してメールのパーソナライゼーションを実現する上でのワークフローとしては、レコメンドデータを取り込むためのワークフローと、レコメンドメールを送信するためのワークフローが必要になります。
Adobe Analyticsで計測したAdobe Targetのレコメンドデータを利用することで、会員毎にパーソナライズされたレコメンドメールを配信します。
Adobe Analyticsからのレコメンドデータ取り込みワークフロー
レコメンドメール送信ワークフロー
STEP1~3: Adobe Analyticsからのファイルを取得し、フィールドを更新する
30分毎や1時間毎にSFTPからのレコメンドデータに関するファイルを取得します。
STEP1: Adobe Analyticsからのファイルを取得する
ファイル取得においては、Adobe Campaignサーバ(SFTP)の利用が便利です。
Adobe Analyticsから配信されたcsvファイルを取得します。
STEP2: Adobe Analyticsからのファイルを読み込む
取得したファイルから、会員IDや商品ID、日付などのデータを読み込みます。
STEP3: データを更新する
会員IDをキーとして、取得した各データをフィールドに反映(更新)します。
STEP4~6: 更新されたデータをもとにレコメンドメールを配信する
スケジュールされたタイミングで対象者へレコメンドメールを配信します。
STEP4: 配信スケジュールを設定する
レコメンドメールを配信するスケジュールを設定します。
STEP5: 対象者を抽出し、必要データを取得する
レコメンドメールを配信可能な会員のレコメンド商品データを取得します。
STEP6: メールコンテンツを設定し、メールを配信する
パーソナライゼーションフィールドを挿入し、メールコンテンツを設定します。
CXMの高度化の実現
このように、メールにおいて実現可能な7種類のパーソナライゼーションを推進することで、お客様ひとりひとりに対して、適切なタイミングで適切なメッセージ且つお客様にとって関連性の高い情報を配信できるようになります。これは、メールの開封率やクリック率を高めるだけでなく、ブランドに対する信頼構築につながり、お客様との長期的なコミュニケーションを実現します。
パーソナライゼーションの目的は、ブランドが顧客の期待を理解し、その期待に応え続けることで、より多くの顧客との長期的な関係性を築くことにあります。
プライバシーに配慮し、同意のもとでなるべく多くの顧客の声を集め、収集した顧客の声をもとに自ブランドが提供すべき顧客体験を明確にした上で、パーソナライゼーションによる顧客体験管理(CXM)の高度化を推進していきましょう。