【Adobe Summit 2023 Report】デジタルとリアルの両面で顧客体験を向上させる施策を展開

Adobe Summit 2023では、さまざまな業界向けに、製品やソリューション、事例について取り上げる数多くのセッションが開催されました。その中で、通信業界向けのセッションでは、米国最大のモバイル通信事業者であるベライゾンワイヤレスの事例が注目を集めました。

もくじ

  • オムニチャネルで顧客の行動を把握し、同意を得た顧客情報に基づいてパーソナライズ施策を進める
  • リアルとデジタルを連携させることで、没入感のある体験を提供

オムニチャネルで顧客の行動を把握し、同意を得た顧客情報に基づいてパーソナライズ施策を進める

ベライゾンワイヤレスは、全米にショップ網を展開し、リアルな対面販売も行いますが、My Verizonアプリを中心としたデジタルチャネルによる回線やデバイスの販売も加速。オムニチャネルで顧客の行動を把握し、同意を得た顧客情報に基づいてパーソナライズ施策を進めています。Adobe Summit 2023において、2人の幹部が講演し、同社のパーソナライズ施策の方向性と現状についてシェアしてくれました。

デジタルマーケティング部門のシニアバイスプレジデント Diana Zaccardi氏は、「現代の消費者は、商品やサービスの購入にあたってスピード、シンプルさ、手軽さ、便利さを求めています。そして、できるだけ早く、言うなれば今すぐ欲しいと考えています。 “欲しいもの”への関心は日々低下してしまうため、企業もタイミングを逃すわけにはいきません」と話します。「さらに、もっとパーソナライズしてほしいと考える消費者は多く、そうした声にもこたえる必要があります」。

同社は通信事業者であり、顧客のプライバシー情報を扱うにあたって米連邦通信委員会(FCC)の通達内容を遵守する必要があります。一方、顧客側はパーソナライズした“自分のためだけ” の提案やサービスを求めます。同社は、顧客からプライバシー情報をパーソナライズに使用する同意を取るだけでなく、さまざまなセキュリティ施策と組み合わせて少しでもパーソナライズを前に進めようとしています。

現在、同社の回線数は約7400万。回線ごとに、複数のモデルと予測があり、複数のキャンペーンも走っています。それらを掛け合わせると20億以上のパーソナライズが日々行われることになります。モデルは日時/週次/月次で見直し、顧客の反応を見ながらパーソナライズを最適化しています。

カスタマーエクスペリエンス担当シニアバイスプレジデント Sasha Lucas氏は、「既存顧客になる前の見込み顧客」に対してもパーソナライズを行っていますが、既存顧客に対してはかなり高度なパーソナライズを実現できています。また、AIを使ってインサイトを得られれば、そのデータをすべて取り込んでモデルを作成するなど、モデルそのものもブラッシュアップしています」と話します。

かなり精緻に相手のニーズに合わせた形でオファーすることも可能になりました。メッセージの送り方だけでも、HTMLメール、テキストメール、SMS、郵送ダイレクトメール、アプリへのプッシュ通知など、さまざまなチャネルの中から最適なものを使っています。

リアルとデジタルを連携させることで、没入感のある体験を提供

とはいえ、消費者は複数のチャネルを活用しており、規定されたジャーニーのとおりに行動することはまずありません。ジャーニーの途中からスタートすることは頻繁にあり、ジャーニーの先に進んだり戻ったりすることもあります。デジタルとリアルの間を行き来する顧客が大半で、オムニチャネルの行動をベースにパーソナライズ施策を展開するにあたっては、テクノロジーを適切に活用して顧客行動を注意深く観察する必要が出てきます。

Zaccardi氏は、「パーソナライゼーションは、デジタルエコシステムにおける私たちの最優先事項のひとつです。」と話します。オムニチャネルにおけるパーソナライゼーションを考えるにあたって、同氏は複数の事例を紹介し、「私はZARAが好きなのですが、それはZARAがオムニチャネルにおいて私が期待しているすべてのニーズを充たしてくれるためです。ウィンドウショッピングとデジタルショッピングを、QRコードとGPSアルゴリズムを使って融合させる手法はすばらしいと感じます」と話します。

ベライゾンワイヤレスも、顧客体験をさらに高めるために、リアル店舗における商品の受け渡しの選択肢を増やしました。営業時間内に店頭に行く時間のない顧客のために、店頭にロッカーを用意。顧客は、アプリ上のコードをスキャンすることで、購入した商品をロッカーから取り出して持って帰ることができます。これは、顧客の“すぐに欲しい”というニーズを受けてスタートした取り組みです。また、郵送による下取りにあたっても、運送業者の店頭でコードをスキャンし、古いデバイスを渡せば即座に発送するプロセスを実現しました。

「リテールのジャーニーについては、デジタルを前提として販売プロセスを最適化することを意識しています。リアルとデジタルを連携させることで、没入感のある体験を提供することができます」(Lucas氏)

最近では、AR/VRを使ってルータの設置場所を遠隔からアドバイスするサービスが好評です。これらのリアルな体験も、すべて履歴として蓄積することで、次なるパーソナライズ施策に生かすことができます。

Lucas氏は、「私たちはテクノロジーを活用し、常に最適化を続けています。カスタマージャーニー全体を考え、あらゆるチャネルにおいて、どのようなポイントでどのような施策を取れば優れた体験を提供できるのかについて深く考えた上で、実行するのです。そして、その結果を受けてまた最適化するというサイクルを回しています」と話しています。

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