アメリカの通信事業が挑むパーソナライズ戦略とは
昨今、社会全体でデジタル化が進む中でお客さまが期待しているのは、連続性を維持し、自身の好みに合わせてカスタマイズされている体験です。特にパーソナライズされた体験は必須です。今回は通信業界にフォーカスを絞り、アメリカの通信事業のユースケースのご紹介を交えながら、アドビの考えるパーソナライゼーション戦略についてご紹介します。
もくじ
- 大規模なパーソナライゼーションにはデータ、コンテンツ、組織、テクノロジーの変革が必要
- パーソナライズされた体験を提供するために
- Verizon:大規模パーソナライズで顧客体験を最適化
- T-Mobile:コンテンツおよび社内体制を整理しパーソナライゼーションを促進
- パーソナライゼーションの取り組みはスモールスタートで
大規模なパーソナライゼーションにはデータ、コンテンツ、組織、テクノロジーの変革が必要
大規模なオーディエンスにユニークな体験を提供することは、簡単ではありません。しかし、パーソナライゼーションによって情報の検索や意思決定が容易になり、時間が短縮されたとお客さまが感じていることを考えると、顧客体験管理(CXM)の中でもパーソナライゼーションへの取り組みは必要不可欠です。パーソナライゼーションにおいて最も大切なことは「人間的なつながり」を築くことを忘れないこと。機械的だと感じる顧客体験はお客さまの共感を生むことはできません。
通信業界、特にスマートフォンなどを所有しているお客さまへの適切な情報提供においては、契約形態、所有するデバイス、契約年数、保有台数、年齢、家族構成などによってお客さまが求める情報がそれぞれ違い、提供すべき情報も多岐に渡ります。成熟している市場の中で、マスに向けたコミュニケーションだけではお客さまの満足度を高めることは難しく、お客さま一人あたりの価値を高めるためにもよりパーソナルな情報提供を行い、そのブランド自体に共感しファンになっていただくようなコミュニケーション設計が求められています。
そのような成熟した市場の中で鍵を握るのが、パーソナライゼーション戦略です。大規模なパーソナライゼーションを実現するには、データ戦略、コンテンツ戦略、組織体制、テクノロジーの変革が必要であり、それらは複雑に、互いに影響を及ぼします。
パーソナライズされた体験を提供するために
パーソナライズ戦略を効果的に実現するためには、まず、顧客データにリアルタイムでアクセスできることが必要です。それぞれのお客さまを識別し、カスタマージャーニーにおけるそのお客さまのコンテクストを理解し、パーソナライズされた コンテンツを共有し、適切なチャネルで適切なコンテンツを提供していく必要があります。
しかし、多くの組織で断片化したデータがさまざまなツールやサイロ化したチームに分散しています。このような断絶がある場合、質の高いクロスチャネルの顧客データにアクセスし、顧客行動を分析することはほぼ不可能です。また、お客さま一人ひとりを明確かつ完全に把握することができなければ、タッチポイント間で連携し、パーソナライズされた体験を提供することは不可能です。
このように、お客さまのニーズを正確に捉えてより良い顧客体験を提供するためには、データにリアルタイムでアクセスできればいいという問題ではありません。データの断絶をできる限り無くし、データガバナンスを整えていくことが重要です。
アドビの過去の調査でもクロスチャネルのコミュニケーションによってブランド信頼度がより高まるという報告があります。特に通信業界の場合、お客さまのタッチポイントは複数にまたがっていますし、オンライン上でもリアル店舗と同様の顧客体験を求めるお客さまの声は増えていると聞きます。今までは店舗やコールセンターでの顧客体験をよくすることに集中してきましたが、今後はリアルを含めてオウンドメディアやソーシャルメディアなど、クロスチャネルで一人ひとりのお客さまに適切な情報を提供していくためのデータ活用が求められていきます。
Verizon:大規模パーソナライズで顧客体験を最適化
アメリカに本社がある大手通信会社のベライゾン コミュニケーションズの一部門であるVerizon Business Groupは、データドリブンなマーケティングの実現に向けて営業チームとコールセンター、そして顧客データ管理を統合する、全社的な取り組みを3年前に開始しました。当時の課題は大きく2つあり、1つ目はサイロ化で、顧客データは20~30のシステムに分散し、連携が取れていなかったこと、2つ目は顧客解像度が粗く正しいタイミングで正しいアクションをとり、正しいオファーを行うためには、顧客データの一元化は避けて通ることができなかったことです。
データドリブンマーケティングの実現に向けてVerizon Business Group はAdobe Experience Platformを使い、サイロ化したデータを統合。8,000万レコード、12億のデータは、より効果的なダイナミック広告やEメール配信のパーソナライズに大きな役割を果たすことにつながりました。また、これまで取引があった50~60社のITベンダーを棚卸しし、同社が掲げる指針に向けた技術革新に貢献する3、4社のキーパートナーに絞り込んだといいます。
また、彼らはコールセンターにおけるお客さまとの通話に代表されるオフラインの非構造データの活用についても注目していると語っており、オンライン・オフラインを含むお客さまに関するデータをすべて取り込み、最適な顧客体験を提供するための挑戦を続けています。
T-Mobile:コンテンツおよび社内体制を整理しパーソナライゼーションを促進
T-Mobileはお客さまの現状を把握し、お客さまが最も必要とされるものを提供することを目的とし、4つの顧客提供価値の実現を目指しました。それは、1つ目はお客さまがどこにいてもリアルタイムに対応することができること、2つ目はオンライン・オフラインを超えた顧客満足の実現、3つ目はお客さま一人ひとりの文脈に寄り添ったジャーニーの提供、そして4つ目はライフタイムバリューの育成とサポートです。これらを実現するために、T-MobileではAdobe Experience Manager Sitesのサイロ化されたアーキテクチャや社内の体制を整理し、3つの取り組みを行いました。3つの取り組みを行いました。
1つ目はクロスファンクショナルチームによるアラインの強化です。Product Ownerを中心としたコンテンツ管理のコアチームを構成し、分析、最適化、SEOなど他のチームと効率的にアラインすることができるようになりました。
2つ目はAdobe Experience Manager Sitesの活用を高度化したことです。コアコンポーネントを拡張したブランド依存ではないコンポーネントを実装し、スタイルシステムと組み合わせることで様々なブランドで利用できるようにしました。エクスペリエンスフラグメントを活用し、コンテンツの作成および管理しています。
3つ目はエクスペリエンスフラグメントとAdobe TargetのVisual Experience Composer (VEC)を利用することでパーソナライゼーションの量産化を実現しました。Adobe Targetとエクスペリエンスフラグメントを組み合わせることで今まで技術者が行っていた設定をビジネスユーザーが実行できるようになり、技術者はより複雑なA/Bテストなどにフォーカスする環境が整い、パーソナライゼーション戦略をより促進できるようになりました。
パーソナライゼーションの取り組みはスモールスタートで
顧客体験を向上するためのパーソナライゼーションにどのように取り組むべきか、企業によって戦略も戦術も様々です。ただし、パーソナライゼーションにおいて最も大切なことは「人間的なつながり」を築くことを忘れないことです。顧客データはパーソナライゼーションを取り組むにあたり大切な要素ではありますが、顧客体験とはお客さまとのコミュニケーションが成立した上でさらに満足を感じていただけるかという点を考えると顧客体験向上のための一つの手段でしかありません。お客さまとの長期的な関係性を構築していくためにもまずは目の前のお客さまを理解した上でデータをどのように活用していくか検討する必要があります。
Forresterの調査では、成功している企業は優れた顧客体験の創出に注力し、ビジネス指標とROIを向上させていることが明らかになっています。パーソナライゼーションを高度化し、より良い顧客体験の提供によって事業成長を促進していきましょう。
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