顧客体験管理(CXM)による5つのパーソナライゼーションのユースケース for Retail

パーソナライズされた顧客体験の提供が当たり前の時代に

先日の Adobe Summitでも多くのユースケースが紹介されましたが、昨今のCOVID-19をきっかけとして、多くのブランドがロイヤリティプログラムの導入やオムニチャネルの顧客体験の創出など、デジタルを介した顧客とのつながりを強化する施策を推進しています。

この背景には、デジタルネイティブな若年層を中心に、日常的にAmazonでの買い物を行い、且つ何らかのサブスクリプションのサービスを利用しているケースが増加した結果、サービスを利用している中で、自身が興味のあるコンテンツがレコメンドされること、つまりはパーソナライズされた体験を提供されることが当たり前になってきている点が挙げられます。

デジタル上の体験に関しては、パーソナライズされることが当たり前になってきているため、Amazonやサブスクリプションのサービスではない様々なブランドのサービスに対しても、パーソナライゼズされた体験の提供を期待する顧客が多くなっており、関連性の低いコンテンツばかりを提供しているブランドとは、自然と縁遠くなる可能性が高くなっています。

そのため、顧客が期待したタイミングで、最適なチャネルで、期待以上のコンテンツを配信できるかどうかが、ブランドがデジタルネイティブな顧客との関係性を構築する上での生命線となっています。

それでは、ブランドが顧客の声をもとに実現できるパーソナライゼーションの様々なユースケースを見ていきましょう。

ユースケース1: 顧客の行動にもとづいたメールの配信時間帯の最適化

多くのブランドにおいては、1週間に3〜7回程度メルマガ会員向けにメルマガを配信していますが、その多くのメルマガは配信する時間帯が固定化されており、パーソナライズされていません。

そのため、平日の日中が勤務時間の会員に対する16時など勤務時間内のメール配信や、土日は朝と夜以外はメールを見ないという会員に対する土日の12時台のメール配信などをしているケースが多々あり、メールの開封率、クリック率、クリック後のCVRを下げる結果となっています。

この問題は、顧客の行動をもとに曜日毎に最適な配信時間を予測し、配信時間をパーソナライズすることで解決することができます。

具体的には、顧客ひとりひとりの曜日毎のアクセスの多い時間帯や購買に至った時間帯、メールをクリックした時間帯などのデータをもとにAI(人工知能)/ML(機械学習)を用いて曜日毎の配信時間帯のスコアを生成し、最もスコアの高い時間帯にメールを配信するようMA(マーケティングオートメーション)ツールのワークフローを設定します。

実際に国内ECサイトで時間固定の配信と時間を最適化した配信をA/Bテストしたところ、メールのクリック率が10%以上上昇、クリック後のCVRは50%以上上昇しました。

ユースケース2: 閲覧した商品の在庫が残りわずかになったことをお知らせするメール

パーソナライゼーション施策としてカート放棄メールを配信しているブランドは多くありますが、カート放棄メールと合わせて、過去に閲覧した商品の在庫が残りわずかになったことをお知らせするメールも自動で配信することで、購入を迷っている方に対するリマインドと合わせて、まもなく在庫切れとなり購入できなくなってしまうことのお知らせによる買い忘れの防止を図ることができます。

商品を購入しようか迷っている顧客は、類似する他の商品を検索し、他のサイトでの比較を含め購入商品を吟味します。その際には、ブランドをまたいで比較することも多く、一度サイトから離脱することが多々あります。

そのため、商品をカートへ投入するところまでは進んでいない購入を迷っている顧客に対して、検討中の商品がまもなく完売してしまうという情報をメールでお知らせすることは施策として効果的なだけでなく、顧客にとっても有益な情報を得られる良い体験といえます。

実際に国内ECサイトで実施したところ、クリック率はカート放棄メールを上回る非常に高い結果となりました。

この施策の実現のためには、在庫情報を含むリアルタイムな商品閲覧データの計測がポイントになります。

MAツールを活用し、商品在庫がN点以下となった商品を過去に閲覧し、購入していない会員に対して、当該商品の在庫が残りわずかになったことをお知らせしましょう。

ユースケース3: トップページのパーソナライゼーション

ロイヤリティの高い顧客が訪れやすいページがブランドのWebサイトにおけるトップページですが、トップページがパーソナライズされておらず、画一的なページとなっているサイトがまだまだ多いのではないでしょうか。

商品のレコメンド枠や閲覧履歴枠を上部に表示することも効果的ですが、合わせて顧客がどのカテゴリに興味があるかを予測した上で、関連性の高い特集やカテゴリページをレコメンドした枠を上部に表示するパーソナライゼーション施策も高い効果が期待できます。

トップページにおいて重要なのは、利便性としての商品の探しやすさと、面白さとしての未知の情報の提供です。

商品の探しやすさは適切なナビゲーションやレコメンド枠の設置などにより実現できますが、面白さという観点は人によって面白いかどうかの基準が異なるため、いたずらに新着コンテンツを並べるだけでなく、顧客にとって関連性が高い未読のコンテンツや新着アイテムを訴求することが重要です。

このパーソナライゼーションにおいては、顧客が何に興味をもっているか、ブランドに対して何を期待しているかの予測を精度高く、なるべく多くの顧客に対して適用することがポイントです。

欲しいものが決まっているわけではないものの、素敵な商品があれば購入しようかとECサイトへ訪問する顧客を考えてみてください。

この場合、新着アイテムに興味があるのか、セールアイテムに興味があるのか、人気ランキングに興味があるのか、コーディネートに興味があるのか、といった顧客の期待を予測したパーソナライゼーションは、顧客の満足度を高めるだけでなく、WebサイトのCVRも大きく向上することができる施策といえます。

このパーソナライゼーションにおいては、Webアンケートによる興味関心の情報や、実際の検索を含む回遊行動、購買行動のデータが必要になります。

これらのデータをもとに、スコアリングやAI/MLを活用した予測を行い、トップページのなるべく多くの領域をパーソナライズします。

実際に国内ECサイトでトップページのパーソナライゼーションを実施したところ、トップページ経由のRPVが5%以上向上しました。

ユースケース4: 実店舗での購買後のパーソナライゼーションメール

実店舗で商品を購入する際、店舗内には欲しいカラーやサイズの商品の在庫がないことや、購入しようか迷ったものの、予算やこの後の予定の関係上荷物になることなどを理由に、購入しなかったものの気になった商品があるケースが多々あります。

実店舗での購買データをもとにお送りするサンクスメール内に、クロスセル促進のための商品レコメンド枠を設けることで、店舗での購入をためらった商品や、店舗内では見つけられなかった関連商品をご案内することができます。

この場合、実際の購入商品をもとに購入相関のレコメンドデータを生成し、セットアップ商品など一緒に購入されやすい商品をレコメンドするのが効果的です。

実際に国内ECサイトで配信したところ、購入直後のメールであるにも関わらず、クリック率は通常メルマガの4倍以上となるなど、高い効果をあげています。

ユースケース5: シークレットセールにおけるパーソナライゼーション

事前エントリーが必要なシークレットセールを開催する上でも、重要になるのがパーソナライゼーションです。

シークレットセールのような顧客の購買意欲を高められるキャンペーン施策の際には、エントリー時に興味のあるカテゴリなどパーソナライゼーションにとって有用な簡単なアンケート項目をいくつか設けたとしても、フォームからの離脱につながらずにエントリーいただける可能性が高くなります。

この事前エントリーの際に得た興味関心の情報をもとに、シークレットセール期間中に配信するメールやWebサイト、アプリ内のパーソナライゼーションを行うことで、エントリーした顧客ひとりあたりの購入点数および来訪頻度を高め、売上の最大化を図ることができます。

具体的には、開催期間中に配信するメールでは、アンケート回答内容やこれまでの購買履歴データをもとに予めカテゴリを絞った商品レコメンド枠を設け、Webサイトやアプリ上では、エントリーした会員の来訪時に会場へご案内するためのポップアップを表示しつつ、ポップアップ内でアンケート回答や行動履歴にもとづく商品レコメンドを実施したり、会場ページ内でも興味関心のあるカテゴリの商品棚をページ上部に表示したりするなど、顧客との関連性が高い導線を設計します。

より多くの顧客との長期的な関係性を築くために

このように、パーソナライゼーションは実店舗を巻き込んだあらゆるチャネルにおいて実施すべきであり、パーソナライゼーションの目的は、顧客の期待をブランドが理解し、その期待に応え続けることで、より多くの顧客との長期的な関係性を築くことにあります。

顧客の行動や購買、興味関心データを収集するブランドには、顧客にとって有益な情報を提供する、つまりはパーソナライズされた優れた体験を提供する責任があります。

プライバシーに配慮し、同意のもとでなるべく多くの顧客の声を集め、収集した顧客の声をもとに自ブランドが提供すべき顧客体験を明確にした上で、パーソナライゼーションによる顧客体験管理(CXM)の高度化を推進していきましょう。