AI/MLを活用してユーザー向けにパーソナライズされたコンテンツを作成する方法
パーソナライズされた顧客体験を提供する場の必要性
様々な企業においてDXの推進が叫ばれるなか、デジタルマーケティングにおけるDXとして重要視されているのが、パーソナライズされた顧客体験の提供です。
企業がデジタル時代を生き抜くためには、高度にパーソナライズされたコミュニケーションを提供する顧客体験管理(CXM)を重要戦略のひとつとして捉えた上で、顧客のニーズを把握し、適切にパーソナライズされたコンテンツを継続的に配信することが求められています。
顧客のニーズに沿った高品質なレコメンデーションをリアルタイムに提供
高度にパーソナライズされたコンテンツとはどのようなものでしょうか。最初に思い浮かぶECサイトの商品ページなどで実施している「この商品を閲覧している人はこの商品も閲覧しています」のようなレコメンデーションは、現在では大半のサイトで提供されているレコメンデーションであり、これだけではブランドの顧客体験としての差別化要因にはなりません。現在求められているのは、「先週店舗で購入されたトップスと一緒に合わせていただきたいボトムスはこちらです」や、「お好みの色や価格帯に合致したシューズはこちらです」といった、来訪者のニーズに沿った高品質なレコメンデーションです。また、これらの高度なレコメンデーションをリアルタイムに提供できることが重要です。商品に対する購買意欲が高い状態であるのは来店中(WEBサイトであれば同一訪問中)であり、来店(訪問)から時間が経過した後にレコメンドをしたのでは、既に購買意欲が低下しており、レコメンデーション施策のCVRが低下してしまいます。
このような来訪者のニーズに沿ったレコメンデーションを実施するためには、より多くの顧客ニーズを吸い上げる必要があります。性別や年齢などの会員属性だけでなく、WEB上でのアンケートによる興味関心情報や、検索キーワードや絞り込み条件などを含む行動履歴データ、すべてのチャネルにおける購買履歴データなどを統合し、レコメンデーションに活用する必要があります。
また、これらの統合されたデータはAI(人工知能)/ML(機械学習)のさらなる活用シーンを生み出します。豊富なデータをもとにAI(人工知能)/ML(機械学習)を活用することで、”低価格商品にしか興味がないユーザー群”の予測や、”新商品への関心が強いユーザー群”の予測が可能になり、レコメンデーションの精度を大幅に向上することができます。
Adobe TargetのRecommendationsを利用することで、このような多種多様な条件に合わせたアイテムのレコメンデーションを簡単に作成することができ、来訪者ひとりひとりのニーズに合わせたレコメンデーションを実現できます。
また、Adobe TargetのRecommendationsを利用する場合、用意すべきコンテンツはシンプルな静的ページで問題ありません。レコメンデーションなどの動的なエリアについては、すべてAdobe Target側でカスタマイズ、最適化することができます。
Recommendationsで利用することができるアルゴリズムの詳細についてはこちらをご覧ください。
また、Adobe Real-Time Customer Data Platform(リアルタイムCDP)を利用することで、すべてのチャネルにおける購買履歴や行動履歴のデータを統合した上で、”低価格商品にしか興味がないユーザー群”の予測や、”新商品への関心が強いユーザー群”の予測が可能になります。
Adobe Real-Time Customer Data Platformでは、顧客AIによって傾向スコアリングモデルを利用し、コンバージョンやチャーンの傾向スコアを予測することができます。
クロスデバイス、クロスチャネルのカスタマージャーニーに沿ったパーソナライズ
現在、ブランドと顧客の接点は広告、メール、WEBサイト、アプリ、店舗、コールセンター、ソーシャルなど、数多くのチャネルが存在します。これまでのパーソナライゼーションは個人の判定にCookieを使用しているケースが多い状況でしたが、Cookieに依存すると、PCとスマートフォン、スマートフォンとアプリ、ChromeブラウザとSafariブラウザなど、チャネルやブラウザが異なるだけで別の人として判定されてしまい、一貫性のある顧客体験を提供することができません。パーソナライゼーションにおいては、Cookieに依存せず、会員IDやメールアドレス(ハッシュ化されたメールアドレス)などの個人識別子も活用し、どのデバイスでブランドと接触しても一貫性のある体験を提供する必要があります。
パーソナライズされたコンテンツを作成する上では、ログイン状態であれば会員IDやメールアドレスをキーにしたレコメンデーションを、非ログイン状態であればCookieをキーにしたレコメンデーションを、などログイン状態を考慮に入れた最適化が必要であり、パーソナライゼーションの精度向上のためには、ログイン状態を維持あるいはログイン頻度を高める取り組みも重要になります。
Adobe TargetのRecommendationsでは、Cookieをキーとしたレコメンデーション以外に、会員IDやメールアドレス(ハッシュ化されたメールアドレス)をキーとしたレコメンデーションも実現することができるため、来訪者のログイン状態を考慮に入れた最適化が実現できます。
また、Adobe Real-Time Customer Data Platform(リアルタイムCDP)を利用することで、デバイスやチャネルをまたいだカスタマージャーニーにもとづくセグメントを作成し、Adobe Targetへセグメント情報を連携できるため、オフラインでの購買履歴など、クロスチャネルのセグメント情報にもとづいたレコメンデーションが可能になります。
パーソナライズされたレコメンデーションを数か月ではなく数週間で簡単に実装
これらのパーソナライズされたコンテンツの配信を実現する上では、数多くのステップが存在します。
1. パーソナライズされたコンテンツのUXを定義する
2. 提供したいUXに対して必要となるデータを定義し、収集する
3. 収集したデータをもとにセグメントを作成する
4. セグメント毎のレコメンデーションの配信設定をする
5. AI(人工知能)/ML(機械学習)を活用し、セグメントを拡張および精緻化する
6. AI(人工知能)/ML(機械学習)を活用したセグメントをレコメンデーションへ適用する
スピーディーに成果をあげるためには、上記のすべてのステップの実装が完了した後にコンテンツを公開するのではなく、ステップ4にてベースとなるレコメンデーションが配信できる状態になった時点で公開し、その後ステップ5, 6で追加する施策毎にA/Bテストをしながら勝ちパターンを段階的にリリースしていくことをおすすめします。
レコメンデーションのアルゴリズムのA/Bテストをすることで、デザイン上は同一であってもCVRが5%~10%上昇するケースが数多くあります。
高品質なレコメンデーションをメールやプッシュ通知などのコミュニケーション施策にも活用
顧客のニーズに沿った高度なレコメンデーションが可能になった後は、そのレコメンデーションデータをWEBサイトやアプリ上での利用だけでなく、メールやプッシュ通知施策にも活用することで、より一貫性のある体験の提供が可能になります。
Adobe Targetの場合、Adobe Targetが出力したレコメンデーションデータを即座にAdobe Analyticsにて計測し、1時間に1回など、同データをAdobe CampaignなどのMAツールへ連携することにより、メールやプッシュ通知においてもレコメンデーションデータを活用することができるようになります。
また、プッシュ通知の場合、メールと比較して配信できる情報量が少ないため、プッシュ通知経由でパーソナライズされたコンテンツへ誘導することで、プッシュ通知においても高度にパーソナライズされた顧客体験を提供することができます。
上記のように、ひとりひとりの顧客の声および行動をもとに精度の高いパーソナライズされた体験を提供するためには、旧来の性別や年代といったセグメントを利用したルールベースのターゲティングに依存せず、AI(人工知能)/ML(機械学習)を活用した予測にもとづくパーソナライズが重要になります。
今回ご案内しましたように、Adobe TargetやAdobe Real-Time Customer Data Platform(リアルタイムCDP)に搭載されているようなAI(人工知能)/ML(機械学習)を活用することで、コンテクストに即した一貫性のある魅力的且つパーソナライズされたコンテンツを作成することができます。企業がデジタル時代を生き抜くために、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供する取り組みをスタートし、デジタルを通じて顧客と意味のある会話をおこなうことで、ブランドロイヤルティを構築していくことをおすすめいたします。