Adobe Experience Makers Live 2022:デジタルエクスペリエンスの先進事例とメタバース時代の消費者との向き合い方

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顧客体験の重要性が日々高まり、企業におけるデジタルマーケターの役割がかつてなく大きなものになる中、アドビは2020年からExperience Maker Award受賞者やAdobe Marketo Engage Championが最新のデジタルエクスペリエンスソリューション活用事例を紹介する「Adobe Experience Makers Live」を開催しています。3年ぶりに対面での開催となった今年は、南青山のジャズクラブ、ブルーノート東京で行われました。北米における”The Experience Maker of the Year”を受賞したVerizon Business Groupマイク シンガリ氏とニティン アフージャ氏の特別講演と、PwCコンサルティング合同会社の馬渕 邦美氏をお迎えした、メタバースをテーマとしたパネルディスカッションを中心にその様子をご紹介します。

Experience Makerとは?

「Experience Maker」とはどのような人たちなのでしょう? 私たちアドビは、圧倒的な顧客中心思考を貫き、常識に囚われることなく、創意工夫と大胆な行動力で素晴らしい顧客体験を届け、企業と顧客の関係性を変革し、事業成長を牽引する方々と考えています。

司会進行役のアドビDXインターナショナルマーケティング本部 執行役員 本部長 祖谷 考克によるExperience Makers Live 2022の概要紹介に続き、アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 専務執行役員 事業本部長の松山 敏夫が登壇。コロナ禍を経てWebやSNSでの商品の認知、情報収集が増えている一方で、商品の購入に関しては引き続き店頭も多く、企業にとってはオムニチャネルで顧客体験を向上する必要性が高まっていると話しました。

20超のシステムをExperience Platformで統合。顧客体験を最適化

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Verizon Business Groupは、アメリカに本社を置く大手通信事業者であるベライゾン コミュニケーションズの一部門で、2万2,000名の従業員を擁し、150カ国で事業を展開しています。グローバル企業から中堅中小企業、政府機関まで幅広い顧客に、高度な通信 / ネットワーキング、クラウドコンピューティング等のB to Bサービスを提供。フォーチュン500銘柄の99%と取引があるといいます。

同社がデータドリブンなマーケティングの実現に向け、営業チームとコールセンター、そして顧客データ管理を統合する、全社的な取り組みを開始したのは3年前のことです。当時の課題を、Marketing Technology Directorのニティン アフージャ氏はこう説明します。

「まずサイロ化の課題がありました。当時、当社の顧客データは20~30のシステムに分散し、その連携が取れていませんでした。もう一つは顧客解像度に関する課題です。ひとつ目の課題とも関連していますが、正しいタイミングで正しいアクションをとり、正しいオファーを行うためには、顧客データの一元化は避けて通ることができない課題でした。」

アフージャ氏とそのチームはAdobe Experience Platformを使い、サイロ化したデータを統合。8,000万レコード、12億のデータは、より効果的なダイナミック広告やEメール配信のパーソナライズに大きな役割を果たすことにつながりました。

Marketing Science & CRM VPのマイク シンガリ氏はその取り組みをこう説明します。

「我々のチームには、ニティンのようなエンジニアとクリエイティブのスタッフが所属しています。私たちは2025年までにデジタルファースト / デジタルオンリーを実現するという目標を掲げていますが、その実現に向け、250以上のモデルをAdobe Marketo Engageで作成し、ユーザーエクスペリエンスの最適化に取り組んでいます」

モデレーター役を務めたアドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 シニアマネージャー マニッシュ プラブネの「最大のチャレンジは?」という質問への回答のひとつとしてシンガリ氏が挙げたのは予算の確保でした。このあたりは北米でも日本でも、Experience Makerの悩みに違いはないようです。

「そのためには、プロジェクトの意義を経営層に理解してもらうことが、なにより重要です。私たちは既存顧客の分析に特化することで、その成果を可視化しました。新規顧客まで含めてしまうと、効果検証が難しくなるだけでなく、今であれば個人情報の保護という新たな課題も生じてしまいます。また予算との兼ね合いという観点では、既存システムを一気に入れ替えるよりも、足りない部分を埋めていくという発想も大切になります」

なおサイロ化の解消に関連し、同社はこれまで取引があった50~60社のITベンダーを棚卸しし、同社が掲げる指針に向けた技術革新に貢献する3、4社のキーパートナーに絞り込んだといいます。

一方、テクノロジーの側面でニティン氏が注目するのは、コールセンターにおける顧客との通話に代表されるオフラインの非構造データの活用です。音声データのテキスト化、非構造化データの活用はすでに現実のものになりつつあるようです。

また「次の5年間の顧客体験の変化で貴社が最も楽しみにしていることは?」という質問に、シンガリ氏が挙げたのは①デジタルエクスペリエンスの進化、②デジタルオンリーと常時接続、③セルフサービスBIによるインサイト洞察の簡素化という3つのキーワードでした。

「デジタル体験の進化という観点では、メタバースは避けて通れないテーマです。また、常時接続の観点からは、自宅や移動中の車の中からも、オフィスと同じ顧客体験が得られるモバイルファーストが重要なキーワードになるはずです。」

Adobe Marketo EngageとAdobe Experience Platformのシナジーは今日、1,000を超えるプログラム、オファーを持つVerizon Business Groupの顧客へのベストプラクティス提案やコンバーション率(CVR)向上に大きな役割を果たしています。

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セッションの最後にマニッシュが投げかけた「日本企業の多くが直面する業務の簡素化へのアドバイスは?」という質問に対し、シンガリ氏は「企業が掲げる目標を前提に、定例会議の廃止など、その実現に向けた優先順位を常に考え続けることが重要」と回答。同じくテクノロジー面における日本企業へのアドバイスを求められたアフージャ氏は以下のように答えました。

「挑戦には失敗のリスクもあります。私がアドバイスしたいのは、新テクノロジーに対してはリスクを取ってチャレンジすべきという点です、なぜなら、こうした新テクノロジーは常に失敗を通して学ぶことがエコシステムの進化において、常に重要な意味を持つからです。ぜひ、皆さんには失敗を恐れることなくチャレンジして欲しいですね。」

普及型VRレンズ登場で生まれるビジネスオポチユニティ

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Adobe Experience Makers Live 2022のトリを飾る「メタバース」をテーマにしたパネルディスカッションのパネラーは、2022年3月に一般社団法人Metaverse Japanを立ち上げたPwC コンサルティング合同会社 パートナー 執行役員の馬渕 邦美氏とアドビのマニッシュ プラブネです。

ディスカッション冒頭、ご来場のExperience Makersの方々にメタバースへの取り組みを挙手でうかがったところ、やはり多くの企業がすでにメタバースへの対応を開始しているようでした。

例えば、ソフトバンク株式会社様の場合、グループ企業が展開するメタバースプラットフォームに出店し、アバターに着せるアパレル商品が順調に売り上げを伸ばしているといいます。一方、技術商社である株式会社マクニカ様の場合、すでに2年前にアバターによるバーチャル展示会システムを構築。現実世界から収集したデータを使い仮想空間上に再現するデジタルツインについても、製造業のスマートファクトリーの実現など、すでにビジネスベースの検討を開始しているといいます。

では、すでに多くの企業が注目を開始するメタバースの現在地はどこにあるのでしょう。馬渕氏はこう説明します。

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「まず押さえておきたいのは、コロナ禍に伴うデジタル化の進展です。PC、スマートフォンを介して同僚や取引先とつながり、夜は自宅でNetflixを見ながらお酒を飲む。そして子どもたちは3Dゲームに熱中する。すでに人々の意識はデジタルに移行しつつある段階だと思います。そして2030年には6Gの提供も始まります。おそらく、まもなく登場するメタバースデバイスは、スマートフォンに匹敵する革新製品にもなり得るでしょう。」

一方、マニッシュが投げかけたのは、メタバースへの一方的な期待が高まり続けることへの懸念でした。それに対し、馬渕氏はこう答えます。

「もちろんデジタルツインが現実そのものを再現するのは、まだ先の話です。しかし、良し悪しは別として、メタバースに没入する人は必ず出てきます。スマートフォンが出てきた10年前もそうでした。当時、『自分はガラケーがいい』と言っていた人はどうなりました? それと同じことがメタバースでも起こると私は考えています。」

Metaverse Japanのロードマップが、重要なゲームチェンジャーとして位置づけるのは、2025、26年に市場に投入される見通しの普及型VRグラスです。これを馬渕氏はiPhone登場になぞらえます。

「まず普及するのはゲーム分野のメタバースになりますが、Web3のインターオペラビリティに関するテクノロジーはアバターのスムーズな移行を可能にするはずです。次の段階が、製造工程のシミュレーションへの応用です。製造ラインの組み換えに必要なコストを考えてもその普及は急速に進むと考えられます。そうなるとオフィスや公共分野のコミュニケーションバースも立ち上がるでしょう。特に教育分野はとてつもない可能性があると私は見ています。これが2030年までの動きです。この間にビジネスのオポチユニティがあると考えられます。」

ではグローバルに目を向け、特にアメリカのメタバース普及状況はどうでしょうか? モデレーターの祖谷の問いかけに馬渕氏はこう答えます。

「現時点では日米に大きな違いがあるとは考えていません。しかし、アメリカはMeta社をはじめ巨大企業の積極投資が進むとともに、メタバース標準化団体が立ち上がり、グローバルな戦いはすでに始まっています。このまま日本が手をこまねいているとWeb2.0の敗北の繰り返しになります。当時外資企業に勤めていた私は、なすすべなくWeb2.0の主導権を米国企業に握られる状況を目の当たりにして非常に悔しい思いをしました。それが『まだ少し早いのでは?』という今のタイミングでMetaverse Japanを立ち上げた理由です。日本には漫画、アニメという世界に冠たるIPがあります。Metaverse Japanでは、日本だからこそできるルールメイキングや世界への情報発信を行いたいと考えています。現在110社が参加し、『バーチャルライフとメタバース』『Web3、NFTとメタバース』『デジタルツイン』という3テーマのWGもスタートします」。興味をお持ちの皆さまにはぜひご参加いただきたいと考えています」

モデレーターの祖谷が最後に投げかけたのは、メタバースが顧客の生活をどのように変革し、Experience Makerはなにを意識すべきなのかという問いかけでした。

「メタバース、Web3のモメンタムをリードするのは、3Dゲームネイティブ世代である20代ですが、その世代については興味深い話が一つあります。3D没入を通し、本来なら感じるはずがない味覚や触覚を刺激されるファントムセンスがそれです。一種の錯覚といえますが、もしかすると、新しいデバイス、体験を通して人類は進化しているのかもしれません。こうした変化をいかにビジネスに取り込んでいくかは、やはり重要な課題になると思います。」

スマートフォンの台頭に匹敵するような大きな変化がまもなく訪れるという馬渕氏。Experience Makerにとって、それは避けて通ることが出来ない新たな課題になるはず。一方で、コミュニケーションのフォーマットがどのように変化しても、つねに顧客の期待値を越えた体験を届けることがExperience Makerの役割です。私たちアドビは、優れたツール開発を通し、常にその取り組みを支援し続けたいと考えています。

なお、2022年9月29日(木)にオンライン開催された Adobe Experience Makers Live 2022のセッションの一部をご視聴いただけます。ぜひご覧ください。