【イベントレポート】生成AIがマーケティング業務を変える、アドビ自身の取り組みとレノボ社の挑戦


デジタルマーケティングの現場における生成AIの可能性について、実際にアドビがどのように活用しているのかの事例を交えながら、アドビプロフェッショナルサービスのメンバーがインサイトを共有しました。本記事では、その内容の概要をお伝えします。

アドビにおけるマーケティングの現状と課題

アドビは年間10億ドル以上のマーケティング予算を使い、40以上の言語で年間10億通以上のメールを送信するグローバル企業です。しかし、この規模の組織でも、マーケティングには多くの課題がありました。

主な課題

  1. 大規模なテストと仮説検証の難しさ
  2. タイムリーなコンテンツ更新の制約
  3. パーソナライゼーションの限界
  4. コンテンツ作成における時間の増大
  5. グローバル展開における言語対応の複雑さ
  6. コンテンツ分析の不足

アドビ自身もマーケティングにおいて多くの課題を抱えていた。

生成AIへのアプローチと導入戦略の三本柱

アドビは、これらの課題に対する解決策として生成AIの戦略的活用に取り組みました。主に、クリエイター業務の負担軽減とコンテンツ不足の解消が狙いです。

  1. 人材戦略

    1. 生成AIに特化した知識を持つ人材の育成
    2. マーケティングとクリエイティブチームの協働
    3. 新しいスキルセットの獲得
  2. プロセス改革

    1. ワークフローの最適化
    2. 詳細なブランドガイドラインの策定
    3. 継続的な見直しと更新
    4. レビュープロセスの再定義
  3. テクノロジーの統合

    1. 既存システムへのAI機能の組み込み
    2. セキュリティとコンプライアンスの確保
    3. 人間の関与の維持

具体的な成果

アドビのマーケティングが抱えていた上記の課題に対して、生成AIの導入により以下の改善が実現しました。

レノボ社の事例

レノボ社は、180のグローバル市場で事業を展開する大手ITメーカーです。同社のマーケティング部門は、エンドツーエンドのパーソナライゼーションを実現することをミッションとしています。

同社が直面していた最大の課題は、コンテンツ制作の複雑さでした。単一のブランドキャンペーンでも、380もの異なるコンテンツバリエーションが必要でした。26のシリーズと80の展開国を考えると、コンテンツ制作は膨大な作業となっていました。

アドビのベータプログラムを通じて、同社は二つの主要テーマに取り組みました。

  1. ブランドガイドラインとチャネルガイドラインの統合
  2. 生成されたコンテンツの評価

特に注目すべきは、従来の一般的なブランドガイドラインから、各ペルソナセグメント別の詳細なガイドラインへと進化した点です。この詳細化により、生成AIは各セグメントに最適化されたコンテンツを自動的に作成できるようになりました。

また、アセット単位での詳細な評価が可能になり、マーケターとクリエイターが共同でキャンペーンの戦略を立案できるようになりました。

同社のマーケティング担当者は、この取り組みを「自分たちの考え方に挑戦するもの」と表現し、これまでの経験と勘に頼るマーケティングから、データに基づいた科学的なアプローチへの転換を示唆しています。

この事例は、生成AIがグローバル企業のマーケティング戦略をいかに変革できるかを明確に示す重要な実証となりました。

技術そのものより、いかに戦略的に活用するか?

最後に、生成AI導入の成功には組織全体のコミットメントが重要です。経営陣のリーダーシップ、段階的な導入、全社的な教育プログラムがあってこそ、個人ではなく組織単位での生成AI導入が成功します。

生成AIは、マーケティングにおける創造性と効率性を向上させる可能性を持っています。しかし、技術そのものよりも、それをいかに戦略的に活用するかが重要となります。

本記事では概要のみ紹介となりましたが、さらに詳しい内容をご興味がある場合は、ぜひアドビプロフェッショナルサービスにお問い合わせください。

アドビプロフェッショナルサービス プリンシパルテクニカルアーキテクトの木村。Adobe GenStudio for Performance Marketingの日本におけるGo To Marketの一翼を担う。

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