顧客の全体像を四次元として捉える
あらゆる角度から眺めた顧客の全体像の構築は、マーケティングの至高の目標とされている。しかし、多くの企業が現在利用しているテクノロジーで達成することはほぼ不可能だ。
仮に達成できたとしても、その全体像は瞬間ごとのスナップショットに過ぎず、顧客ニーズを真に反映しているとは言えない可能性が高い。
それでも私たちは、顧客理解の新たな時代に乗り出し、顧客インテリジェンスの効果と使いやすさを高めようとしている。
新たな時代では、企業は全次元的かつリアルタイムな顧客プロファイルを得ることができ、そこには、顧客の状況や感情に関する情報までもが含まれている。
データの可用性をさらに高めることにより、企業は過去から学び、その価値を現在に伝え、未来予測の精度を高めることができる。
私たちは既に、顧客像を四次元として捉えるべき時代に入っている。四次元の顧客像は、これまで「360度の顧客像」として知られてきた、あらゆる角度から構築した顧客像を凌ぐものだ。
それは、多数のチャネルをまたぐ顧客行動を追うだけでなく、あらゆる瞬間、あらゆる場所にいる顧客のコンテクストを把握するのに役立つからだ。
こうしたコンテクストを得ることで、企業は瞬間ごとのインタラクションを促進できるだけでなく、最善のエクスペリエンスを予測して提供し、顧客の一歩先を行くことができる。
四次元の顧客像を獲得するには、それ相応のインフラが必要になる。企業のCIOは、他の経営陣と協力しながら、あらゆる機会を生かして四次元の顧客像の構築を先導するのに最適な立場にある。では、その始め方を以下にご紹介しよう。
1.あらゆる従業員が顧客体験に責任を持つ体制を構築
今日、顧客体験は特定の部門が管理するものではなく、あらゆる部門が関わるべきものになっている。しかし多くの企業では、顧客体験に関する業務が複数の利害関係者、通常は最高マーケティング責任者や最高デジタル責任者、最高体験責任者などに分割して委任され、責任が希薄化し、曖昧になっているのだ。
その結果、顧客データの断片化が進み、縦割りの組織によって別個に保管されている状態にある。
CIOは、テクノロジーのビジョンを設定し、その下にあらゆる部門を統合して、組織ごとに分かれて所有されているデータを集約することによって、企業全体の包括的な目標の達成に貢献できる体制を整えるべきだ。
CIOは、他の経営陣と協力してチームを参加させ、包括的な事業ビジョンを設定できる立場にある。その背景には、強力な推進力としてのテクノロジーがある。
トップダウンによる一方的な命令を下すのではない。社内の全従業員がひとつのビジョンを共有し、ひとつの戦略の下で作業できるようにするということだ。経営のトップ層が部門を超えて協力し合うことは、縦割り組織の弊害を突き崩す鍵になる。
2.適切なアーキテクチャを導入
顧客データの収集を担ってきたシステムの多くは、顧客体験に関する今日の課題に対処できない。その結果、あらゆる企業の3分1は、カスタマージャーニーを驚くほど追跡できていないのだ。
これが、顧客の興味関心と関連性のない反復的なメッセージや、顧客ニーズに合わないエクスペリエンスの提供につながっている。
例えば、いまあなたが空港に降り立ち、ロストバゲージの知らせを受けたとする。そのとき、航空会社から次の旅行の予約を誘う電子メールが送られてきたとしたら、どうだろうか。まさに、逆効果である。
四次元の顧客像をほんとうに構築するためには、企業がアクセスできるあらゆるデータを保管、標準化、活用できる、オープンで使いやすい仕組みを整備しなければならない。
そのためには、まず社内の異なるシステムごとに分かれて保管されている情報を統合し、あらゆる部門が利用できるようにすることが必要だ。CRMに保管されているトランザクションのデータは、パズルのワンピースに過ぎない。
顧客行動や財務、組織管理、顧客の感情に関するデータまでを含めて総合的に活用できるようにすれば、顧客を見る新たな視点が見つかる。
次に、データを適切に管理できているかどうかを確認しよう。例えば、データ形式を標準化し、同じ言語を使用するようにすれば、すばやく活用できるようになる。
CRMシステムのデータをERPシステムのデータと同じ方法で分類し、他のデータも同様に整理する。この作業には、データの個人情報保護規制への準拠も含まれる。
あらゆるデータを統合し、適切に管理することで、企業は状況に即した完全な顧客像をリアルタイムで得るために必要な仕組みを手に入れることができる。
3.人工知能(AI)を活用して意思決定を迅速化
人工知能とマシンラーニング(機械学習)を活用すれば、必要なデータを迅速に見つけ出し、意思決定の自動化を推進できる。顧客に最適なエクスペリエンスをリアルタイムに届けるためには、1秒の違いが大きな差となって表れる。
企業は1日に膨大なデジタルインタラクションをおこなっているが、人工知能やアルゴリズムが最善の顧客体験を完全に予測できるようにはならないだろう。
そこで重要になってくるのが、領域の指定だ。それは、計算能力の問題だけではなく、ビジネスチャンスの微妙なニュアンスを特定し、解決するためにデータサイエンスを応用するという意味である。
領域に関する知識とデータサイエンスを組み合わせれば、季節ごとに変動するオンライン店舗の顧客定着率を把握したい、B2Bソフトウェア企業が特定のオーディエンスセグメントを失っている理由を突き止めたいなど、事業や顧客関係に関する重要な課題解決に大いに役立つ。
また、適切な人工知能を導入すれば、より多くのデータを取り込んでリアルタイムに顧客とやり取りするためのプロセスを自動化でき、オーディエンスセグメントごとにスマートな対応が取れる。
例えば、人工知能によって広告予算を最適化するためのネクストベストオファーを提示させたり、異なるランディングページで提供するエクスペリエンスのための、インテリジェントな画像タグ付けや、画像選択の合理化なども可能になる。
4.顧客をあらゆる企業活動の中心に位置づけ
顧客体験を中心にあらゆる企業活動を進めることで、ビジネスは成功へと近づく。顧客の愛着とロイヤルティを獲得する秘訣は、商品の内容や価格設定などから、顧客体験の価値向上へと移行しているのだ。エクスペリエンスを重視した、説得力のある企業事例は増えている。
アドビがForresterに依頼した最近の調査によれば、顧客体験に投資している企業は、そうでない企業に比べて収益成長率が1.4倍、顧客定着率が1.7倍、顧客生涯価値が1.6倍も高い。
あらゆる企業が優れた顧客体験の構築へと向かう中で、他社をリードしているか、他社に遅れているか、その中間の段階にあるかは、企業ごとに異なる。
しかし、テクノロジーの明確なビジョンを持つCIOなら、顧客データを企業組織のあらゆるシステムと連携させる戦略を適切に推進できるだろう。
そして、あらゆるデータを駆使してコンテクストに富んだ顧客の4D像を構築し、単純な顧客中心主義から真の意味で顧客を満足させられる企業へと移行できるに違いない。
最善の顧客体験のために不可欠となる、顧客の全体像を構築するためのテクノロジーに関心があるなら、Adobe Experience PlatformとOpen Data Initiativeについて参照してみて欲しい。
この記事は、readwrite.comに掲載された記事の抄訳です。
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### エクスペリエンス投資がビジネスに及ぼすインパクト優れた顧客体験が競合差別化要因になると気付いている企業は、それを実現すべくエクスペリエンス投資に注力しています。その投資はどのような経営価値をもたらすか、企業調査とForresterのモデルから導出します。