Experience Makers Live 2021:ニューノーマルにおけるブランドの重要性

屋内, テーブル, キッチン が含まれている画像 自動的に生成された説明

ヤマハでは中期経営計画で、ブランドを経営の中心に置き、個性輝く企業になるといったビジョンを打ち出しています。この目標は、ヤマハが顧客にとってなくてはならないものになった時に達成できると考え、ブランドを一段高めることに注力しています。非財務目標として、インターブランド社の「コーポレートブランド価値」を中期経営計画中に1.3倍にするという目標を設定。現在、良好に推移しているといいます。

大村氏は今注力すべきブランド課題が3つある、と指摘します。ひとつ目は社内における「志」の部分です。ブランドの目指す姿、顧客への約束を具体的かつ明確にする必要があります。そして社外においてはまず「一貫性」。あらゆる顧客接点で一貫性のあるブランドストーリーが感じられ、記憶されるブランドになることが求められます。さらに「愛着度」に注力しブランドが提供する機能的、情緒的価値により、顧客が絆を感じてくれることが重要になってきます。

この「愛着度」について、コロナ禍により演奏できなくなった方との絆をつくるために、ヤマハが実際に展開したサービスが遠隔でもセッションができる「SYNCROOM」です。音楽セッションは電話会議以上に遅延が許されませんが、ヤマハのネットワーク技術がこの低遅延システムを実現しました。

また「Distance Viewing」では迫力あるライブパフォーマンスを忠実に記録し、そのパフォーマンスをステージ上に音声を交えてバーチャルに再現します。リアルな等身大映像を本番さながらの照明演出とともに、遠隔からライブを楽しむことができます。「こういったコンテンツを使い、ニューノーマル時代において顧客とつながり続ける取り組みを続けています」と大村氏は話します。

社内向けのキーワードである「志」に関する取り組みとして挙げられるのが、顧客への約束を示すブランドプロミスであり、ヤマハはそれを「Make Waves」と規定しています。ヤマハはメーカーであることもあり、製品やサービスを強調しすぎる、歴史があるため古くさい印象を持たれる傾向があると認識しており、それをブランドプロミスで刷新しようとしています。「ヤマハがあるからこそ、音楽でMake Waves(心震える瞬間)を作り出せる」ブランドになっていきたいと考えています。

それを実現するために、ヤマハはBrand Driversとして3つの価値観(「内なる思いを表出し、インパクトを与える」/「個人として成長する」/「より広い世界とつながる」)をお客さまに提供し続けようと制定しています。またそれらの根拠として、先進的なイノベーションやプレーヤーへの情熱、音・音楽における影響力をBrand Truthsとしてヤマハならではの強みとして活動しています。

具体的な取り組みとして、ビジュアルコミュニケーションにおいてスタイルガイド、いわゆるクリエイティブガイドラインを作り直しました。「ロゴ」、「WAVE(ヤマハのビジュアルアイデンティティのコア)」、「カラー」、「フォント」、「写真」の5つの要素を1冊の”バイブル”にまとめています。中でもビジュアルアイデンティティのコアとなる4つのWaveイメージです(下図)。人が作り出す音と音楽、そして聞く人にもたらす様々な感情をビジュアル化したもので、これらに基づいてマーケティング担当者がクリエイティブをつくっていきます。

絵と文字の加工写真 低い精度で自動的に生成された説明

これにより、一つひとつは魅力的だが一貫性が無かった状態から、一目見た瞬間に「ヤマハ」と伝わるコミュニケーションに刷新され、お客さまの中にブランドが積み上がっていくように変わりました。

このコロナ禍の今だからこそ、ブランドの力が改めて問われていると気付かされたセッションでした。