営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて Vol.2
本記事は、2022 Adobe Marketo Engage Champion である GLナビゲーション 神田氏の実体験を基に、『営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて』として連載記事を寄稿いただきました。
営業とマーケティングの壁は永遠のテーマですが、営業とマーケティングの協働がデジタルマーケティングを推進するために必要となっています。マーケティング部門の皆さんはもちろんのこと、対面する営業部門の皆さんにもぜひ本ブログをおすすめください。
もくじ
- 「いざ、DX推進!」導入を通じて感じた重要ポイント
- ポイント1.システムにオペレーションを合わせる
- ポイント2.データドリブンな意思決定を行う組織は因果関係で会話する
- ポイント3.昭和営業は横に広げる、THE MODEL営業は縦に深掘る
- ポイント4.顧客の「カテゴライズ」が重要
- ポイント5.マネジメントの重点をプロセスフィードバックへ変わる
- まとめ
- 本記事の著者
「いざ、DX推進!」導入を通じて感じた重要ポイント
第1回では営業DXを始めようと思ったきっかけを紹介させていただきました。 いざ、営業DX推進の導入を進めてみると、導入初期に様々な気づきがありました。そこで第2回では、導入初期に感じた「昭和営業」との違いについて、5つのポイントをお伝えします。
ポイント1.システムにオペレーションを合わせる
まず、営業DXの導入時に実際にあった私の失敗談からお伝えします。当時、SFA(営業支援システム)が良いということを聞いた社長兼営業部長の私は、数百万円の費用をかけ、まったく使いこなすことができないまま、SFAを解約した過去があります。
当時を振り返ると、我々の業務を効率化するためにどんなツールが良いのかという視点に立っていましたが業務に合わせてツールを活用することが難しく、頓挫しました。
今でこそ理解できていますが、導入するツールに合わせて業務を変えなければいけなかったのです。システムの話ではなく、どのようなオペレーションを組むかが大事なのです。
ポイント2.データドリブンな意思決定を行う組織は因果関係で会話する
営業DXを推進する上で、弊社ではTHE MODEL型の営業組織に体制を変更しました。THE MODEL型の営業組織の肝は「営業活動の分業化」です。そこで、自社の営業プロセスを明確化し、MQL(Marketing Qualified Lead)・SQL(Sales Qualified Lead)の設計と定義を行いました。簡単に説明すると、マーケティングチームが創出するホットな見込み顧客の定義とインサイドセールスがニーズを確認し、セールスに引き渡すに値する見込み顧客の定義を定めます。
その結果、各営業プロセスにどれくらいの顧客が滞留しているのか、次のステージのコンバージョンレートがどれくらいかといったプロセス全体の流れを把握できるようになりました。
課題が浮き彫りになり、課題を探す時間よりも課題解決や売上予測に多くの時間を使えるようになりました。そして、スコアリング機能により営業の勘と経験ではなく、データとして顧客ニーズや確度を正確に把握できるようになりました。
このようなオペレーションを全部数字化していった際に起こったのが、「数字の見方が分からない」という問題です。この数字が何を意味しているのか、相関関係、因果関係を理解することの重要性に気がつきました。
属人的な勘と経験に頼る組織は相関関係で会話を行い、データドリブンな意思決定ができる組織は因果関係で会話を行うということに気づきました。データドリブンな意思決定を行うには、実体験を基に「原因と結果になる関係」を見つけ出し、数字ベースで会話を行う必要があります。
ポイント3.昭和営業は横に広げる、THE MODEL営業は縦に深掘る
昭和営業はニーズの発掘から受注までのシナリオを横に広げて展開します。セールスシナリオのようなものが存在していて、そのセールスシナリオを自分の中でうまく組み立てながら商談を展開していきます。
ところがTHE MODEL型営業の場合、顧客から特定の反応が返ってきた場合、なぜその反応をしたのか深掘っていき、ニーズ(反応)ごとにケースを分類して勝利の方程式を作っていきます。線ではなく点を見るアプローチです。ケースごとに、とにかく深掘りしていきます。
データを基に深掘りをすることの効果が、思い込みから脱却できる点です。昭和営業スタイルで正しいと思って信じきっていたことが実は間違った解釈だったことも多々ありました。
ポイント4.顧客の「カテゴライズ」が重要
営業の場合、どうしても1対1のカスタマイズ志向があるため、フルカスタマイズした営業プロセスの考え方を持ちがちです。そうではなく、マーケティング的な発想で顧客をカテゴリー化して考えるアプローチが求められます。一方、マーケティングはデータに基づいてどの領域が一番収益貢献が高いのか把握します。
弊社の場合、注力テーマに合致しているSIerかそうでないか、コンサルファームなのか、エンドユーザーなのかという顧客属性と、従業員数でセグメントを分けた分析を行っています。エンドユーザーはもちろん、SIerやコンサルファーム(プライム)の中でも従業員1000名以上の大企業が売上貢献度と決定率が共に高い結果となっています。
生産性が高く売上貢献度が高い領域を「Tier1(優先度1)」と置いており、マーケティングチームは、これらの領域に対して優先して営業リソースを投下することを考えています。
ポイント5.マネジメントの重点をプロセスフィードバックへ変わる
営業DXを推進する過程で、マネジメントスタイルを変える必要性にも気がつきました。
データによる事実ベースで議論ができるようになったことで、因果関係と相関関係を区別することの重要性については触れました。いわゆる「昭和営業」では感覚による相関関係の話が中心になりがちですが、相関は事実としてデータに表れるので、「なぜこうなっているのか」という因果の仮説をメンバーと考えることができるようになっているのです。
結果主義のマネジメントは昭和営業にありがちですが、結果に対してフィードバックするのではなく、プロセスの中のインサイトに対してフィードバックしていくマネジメントスタイルに変化していったのです。メンバーに対しても情報共有の重要性・必要性を明文化し、プロセスに関して相談することの大切さを説いています。
まとめ
今回は、営業DXを推進する過程で従来のスタイルと大きく異なるポイントをご紹介しました。
DX推進の入り口とも言える「システムにオペレーションを合わせる」は、私のように従来の営業スタイルに慣れた方にとっては、少し窮屈に感じて抵抗感があるかもしれません。しかし成果を出しているグローバルな営業スタイルに合わせたほうがメリットが大きいのは確かです。繰り返しになりますが、システムではなく、どのようなオペレーションを組むかが大事です。
連載第3回は、営業DX体制を構築し、運用改善を進める具体的な流れについてお届けする予定です。
本記事の著者
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