営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて Vol.3

本記事は、2022 Adobe Marketo Engage Champion であるGLナビゲーション 神田氏の実体験を基に、『営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて』として連載記事を寄稿いただきました。

営業とマーケティングの壁は永遠のテーマですが、営業とマーケティングの協働がデジタルマーケティングを推進するために必要となっています。マーケティング部門の皆さんはもちろんのこと、対面する営業部の皆さんにもぜひ本ブログをおすすめください。

もくじ

  • 営業DX組織を構築する上でぶつかる3つの壁とは?(前編)
  • DX推進の壁1.そもそも数字の見方が分からない
  • DX推進の壁2.セールスがデータ入力をしない
  • まとめ
  • 本記事の執筆者

営業DX組織を構築する上でぶつかる3つの壁とは?(前編)

営業DXの推進を始めて結果が少しずつ出るようになりました。しかしその後は頭打ち。ただ何がボトルネックか分からない状況がしばらく続きました。そして、数字をベースに課題を改善するためにはさらにデータの取得が必要であることに気がつきました。

取得すべきデータ数も多く、工数がかかってしまう……。そんな状況に対し、弊社ではデータ取得方法の工夫やデータの取得自体を自動化することでさらに成長するための基盤を構築しました。

連載第3回と第4回では、営業DXを運用する上でぶつかりやすい壁について、前編と後編に分けてお届けします。

DX推進の壁1.そもそも数字の見方が分からない

データ入力の話に入る前に、そもそも数字の見方がわからないという壁について触れます。

営業部長が自分の思い込みで数字を見る

いざ営業DXを推進してみると、数字の見方が分からないという壁にぶつかりました。

営業部長の私は、昭和営業のスタイルが頭に染み込んでいたため、データを事実として受け入れるということに最初は苦労しました。データの結果をあるがままに受け入れる努力が必要であり、自分の思い込みではなく、フラットにデータを見る姿勢が求められます。

顧客を主語にした因果関係であることが出発点で、データの裏にある顧客のインサイトにフォーカスすることが重要です。例えば、ある施策を実施したことで数字に変化があったとしましょう。

その施策で顧客にどのような変化があったのか、顧客がどのように思ったから数字が改善したのかを深掘りしていきます。一つひとつ深掘りして得られたインサイトが会社の集合知になり、再現性を持った営業組織につながります。

メンバーが数字の見方が分からない

また、セールスメンバーにもデータの見方を教える必要があります。営業部長が経験した営業の流れを、メンバーが実践できるように育成します。その際、連載第2回「ポイント4.顧客の『カテゴライズ』が重要」で触れたように、案件を個別に振り返るのではなくカテゴリーで振り返るようにしました。

カテゴリーごとの仮説とアプローチの検証、データドリブンで振り返ることを反復しました。弊社では、トークスクリプトよりも、データの見方を徹底するくらい重視しています。

セールスメンバー全員の成功・失敗体験を集めたナレッジベース「集合知」を構築し、集合知の情報から仮説立てと施策実行・検証を繰り返すことでノウハウを高い水準に進化させてきました。

弊社では現在、単なる数値としてのデータ蓄積ではなく、5つのフレームワークを通じたデータ分析・インサイト取得により、ビジネスに貢献する情報資産として利活用しています。

テーブル 自動的に生成された説明
(集合知を組織浸透させるためのデータ分析フレームワーク)

DX推進の壁2.セールスがデータ入力をしない

GLナビゲーションではSalesforceを、売上を伸ばすための羅針盤として活用しています。つまりSalesforceの項目を入力すればするほど売上が向上する仕組みです。

しかし、弊社でも導入当初はセールスメンバーがデータを正しく入力してくれないという壁にぶつかりました。強制するとセールスメンバーが疲弊して営業活動に支障が出ますし、一方、データドリブンに施策を振り返るにはデータ入力が必須になるというジレンマです。

そこで弊社では、「売上に寄与する」「入力負荷を最大限省く」の2点を項目設計で重視することで、この問題に対応しました。

売上の現状見込みの管理や売上見込み、顧客への対応状況の管理を目的に設定されることが多くありますが、記入欄が多いとうまく運用が回らず、売上の増加に結びつけることは難しくなります。

ポイント(1)分析で活用するデータのみを取得

GLナビゲーションでは、Salesforceの入力項目は基本的に「後で分析するためのデータを取る」ことを目的としています。

徹底したデータ化、数値化を進めるために「項目はチェックボックスだけにする」「数字を入力するだけ」「なるべくフリーのテキストを入れず文章量を減らす」という設定をしています。属人的で表記揺れが多発するフリーテキストをなるべく省き、受注につながるキーアクションを設計して、「できた/できない」を「Yes/No」で判断できるように設計しています。

また、受注につながる「キーアクション」を設計、入力やチェックボックスにチェックを入れる作業を通じてキーアクションが実行できているかどうかをセールスメンバーが確認するプロセスにすることで、売上が伸びるような行動提案を促す設計になっています。

ポイント(2)ステージ設計は「顧客を主語に置く」

自分たちのステータスを管理するためではなく、あくまでも顧客を主語に置いたステージ設計にすることが大事です。顧客に満足してもらうことをゴールにしたカスタマージャーニーの設計がすごく重要になります。

例えば、ステージ定義を「初回アポイントが取れた」ではなく、「顧客は自社の課題が明確であり、GLナビゲーションからの提案が課題解決につながることに同意した状態で、アポイント日程を確定した」といった、顧客を起点とした定義にしています。

そうすることで、セールスメンバーが独りよがりに営業プロセスを進めるのではなく、各ステージごとに顧客がメリットを感じるアクションが必ず実施されるような設計にしています。

このような入力項目にすることで、セールスメンバーが受注確度を上げるために何をするべきかが明確になり、案件が停滞した際の相談の精度も高まります。

まとめ

今回の連載第3回(前編)では、得られたデータとフラットに向き合うこと、セールスメンバーがデータを入力しやすい設計にすることの重要性についてお届けしました。

次回は、連載第4回(後編)として、「営業DXの改善が進まない」という壁について焦点を合わせてお届けします。

本記事の執筆者

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/customer-success-glnavigation