クリック率5倍を達成、パーソルテンプスタッフの「自動化+One to One」メール施策実現までの道

2025年10月16日、シティホール&ギャラリー 五反田にて、Adobe Marketo Engageのユーザー200名が集結した「Marketers Forum - Adobe Marketo Engage User Group Day」を開催しました。

ユーザーの皆様にご登壇いただいたセッションの中から、本稿ではパーソルテンプスタッフ株式会社の加藤道乃氏と美谷脇笑里氏による「B2C事例セッション:快適な仕事探しを提供するために。One to Oneへの挑戦」の模様をお届けします。

国内最大級の求人情報を登録スタッフに届ける

パーソルテンプスタッフは、人材派遣、紹介予定派遣、人材紹介、アウトソーシングなど、人材と仕事に関するあらゆるソリューションを提供する総合人材サービス企業です。パーソルグループ全体で年間約54万件以上という業界最大級の求人数が強みであり、長期就業スタッフ数は約13万3000人、取引社数は約5万2000社にのぼります。

多様な雇用形態、職種、業界に対応しており、未経験から可能な仕事など、様々な求人を扱っている点が特徴。また、「派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2025」において、総合満足度は7年連続1位、継続就業意向度も3年連続1位(派遣の働き方研究所「派遣会社に関する満足度調査」)に選ばれるなど、高い信頼を得ています。

加藤道乃氏と美谷脇笑里氏が所属するスタッフマーケティング部は、同社のDX推進本部に属しており、登録している人材(以下、スタッフ)の求職活動を支援しています。美谷脇氏は、「スタッフ向け対応を行う我々が企業向けや社内向けのDX部門とも連携することで、スタッフがより便利に仕事情報を受け取れる。安心して就業できる。という循環型のサイクルをつくることを目指しています」と説明します。

パーソルテンプスタッフ株式会社

DX推進本部 スタッフマーケティング部

美谷脇 笑里氏

スタッフマーケティング部は、スタッフに最適な求人情報を提供するなど就業につなげる支援を行っており、その中でAdobe Marketo Engageを活用されています。

スタッフマーケティング部が業務を進める上での大きな課題は、メール配信の煩雑さでした。求人検索サイト「ジョブチェキ」で仕事検索やエントリーを行うスタッフに対して、エントリーを促進するための重要な施策であるメール配信が、大きな負担となっていたのです。

従来、同部のメール配信業務は次のように行われていました。まず、Adobe Marketo Engageに、メール配信が可能な数十万人分のスタッフ情報を連携します。住所や最寄り駅といった基本情報をはじめ、希望職種や希望勤務地、時間給や年収などの待遇、希望の時間や期間、職務経験やスキルなどの項目を、毎日基幹システムから取り込んでいます。

次に配信先をセグメンテーションし、仕事情報メールを作成し配信。平日約40種類、土日/祝日は10~15種類のメールを全て手作業で作成していたと言います。「仕事情報は日々入荷と終了が発生するため、作成したメールは当日中に配信しきる必要があり、使い回しができませんでした」(加藤氏)。

 手作業の運用が限界に

同社の実際の業務では、表計算ソフトのテンプレートが使われていました。まず作成者が配信先のテーマに沿った求人をテンプレートに盛り込み、キャッチコピーを加工修正します。整えられた情報はテンプレートによってAdobe Marketo Engageに対応する形式に加工され、別担当者によるテストメールのチェックを経て配信が決定されるという、すべてが手作業の運用でした。加藤氏は「待遇と内容のバランスが良いといった、複合的な条件を満たす求人をピックアップすることは、AIでは難しいという認識でした」と語ります。

仕事情報メールには、登録情報をベースにしたものと、スタッフのサイト閲覧情報をベースにした2種類があります。登録情報ベースは広く配信できる半面、情報が更新されていないと的外れな情報が届くリスクがあります。一方の閲覧情報ベースは、スタッフの現在の興味関心に沿った配信が可能という大きな長所がありましたが、閲覧情報を取得できないスタッフには送ることができないという問題がありました。

スタッフの反応は、閲覧情報ベースのほうが圧倒的に良好で、クリック率は登録情報ベースの約3~4倍、エントリーや就業にもつながっていました。そのため、閲覧情報ベースのメールを増やしたいと考えましたが、メールの使い回しができない制約から、必要なメール通数を内製でまかなうことは不可能であり、外部の協力会社に委託して運用で乗り切っていたと言います。

しかし、閲覧情報ベースのメールも、あくまで作成者が「この求人を見ていたならこっちの求人にも興味があるはず」という推測が含まれるので、真のニーズとズレが生じる可能性があること、また、作成者によってクオリティが異なるという属人化の懸念もありました。

また、ここがゴールではなく、パーソナライズをさらに進め、個々のスタッフに最適化されたOne to Oneの仕事情報メールを実現し、エンゲージメントを高めたいとも考えていました。

加藤氏は、「ただ、当時の運用方法でOne to Oneを実現するのは、何よりも工数的に無理でした。これ以上工数を積めば、大きなミスに繋がる状態になっていました」と、人の手による運用が限界に達していたことを明かします。

パーソルテンプスタッフ株式会社

DX推進本部 スタッフマーケティング部

加藤 道乃氏

すべてはスタッフの快適な仕事探しのために

そんな中、加藤氏と美谷脇氏は、隣の組織であるオンラインマーケティング部からヒントを得ます。同部は自社サイトと求人サイトの改善をメインに担当しており、Adobe Targetを導入して成果をあげていました。

このレコメンド機能をAdobe Marketo Engageに連携させられないかと考え、検討を開始。これが、「手作業から自動化へ、グループへの配信から個人への配信へ」というOne to Oneへの挑戦のスタートとなりました。

具体的には、スタッフのジョブチェキ閲覧情報と、基幹システムのスタッフ情報、求人情報に基づき、Adobe Targetがレコメンド求人をピックアップする連携の仕組みを構築。

Adobe Marketo Engageは、Webhook経由でアクティブなスタッフIDをAdobe Targetへ送信し、対応するレコメンド情報を受け取ります。受領したレコメンド情報は、Adobe Marketo Engage内の各スタッフのフィールドに書き込まれ、パーソナライズされたメールの自動作成・配信が可能になりました。

結果は非常に良好で、他の仕事情報メールと比較してクリック率は約5倍、エントリー率も約2倍と反応が大きく向上。「One to Oneのレコメンドメールが、“刺さっている”証拠だと考えています」と加藤氏は評価します。さらに、Adobe Marketo Engage経由で獲得できたエントリー数は前年対比で110%、就業者数は106%にアップという成果に繋がりました。

ただ、このプロジェクトは順風満帆というわけではなかったとも言います。システム連携について技術的な知識が不足しており、また、複数社が関わるプロジェクトも初めてであったことから、関係者間のコミュニケーションの壁にも直面したそうです。

「発注者である私たちが知識に乏しかったことで、情報の伝達不足や、意図が伝わらず手戻りする事態がたびたび発生しました。この経験から、『私たちの当たり前は当たり前じゃない』と肝に銘じ、可視化や綿密なコミュニケーションで認識の統一を図る努力を続けました」(加藤氏)

同社では、今回の成果はあくまで初めの一歩であると考えています。「今後は、スタッフの方が欲しい情報を、欲しいタイミング、欲しい手段で受け取れる体制を目指しています」と展望。

すでにチャネルの多様化として、ショートメールでのレコメンド情報の自動配信を開始しており、現在はLINEとの連携も進めています。「すべての施策はスタッフに快適に仕事探しをしてもらうため。そして、今後もテンプスタッフを信頼して選んでもらえるよう、邁進していきます」と加藤氏は語り、講演は終了しました。