ジャーニーマッピング:ビッグデータは忘れがたい顧客体験をいかに作り上げるか
ジャーニーマッピングは、単なるスクリーン上の顧客とのやり取りを超越した、顧客体験中心のマーケティングを可能にします。ジャーニーマッピングを使用すれば、企業はエンタープライズレベルの巨大なデータを取得し、それを利用して、顧客ごとに詳細にターゲティングされたやり取りを自動化できます。
Adobe Analyticsのグループ商品マネージャーを務めるBen Gainesは、「既にマーケターの多くが知っているように、キャンペーンのために想定したカスタマージャーニーは、実際に顧客に提供される一連のメッセージとかけ離れてしまう場合がよくあります。この問題を解決するために、ジャーニーマッピングは顧客体験を計画、調整し、最適化する機能をマーケターに提供します」と述べています。
ジャーニーマッピングを成功させるには、その時々の条件を最大限に活かし、商品やサービスの購入に至るカスタマージャーニーの各段階で、顧客の関心を引くことが必要になります。
ジャーニーマッピングを成功させるには、その時々の条件を最大限に活かし、商品やサービスの購入に至るカスタマージャーニーの各段階で、顧客の関心を引くことが必要になります。
Adobe Marketing Cloudの商品マーケティングディレクターを務めるAdam Justisは、「顧客関係とは、単なる孤立したやり取りではないことを誰もが知っています。それは連続したやり取りであり、複数のチャネルやデバイス、部門をまたいでも、連続的が保たれていくものです」と語ります。
アドビの商品シニアディレクターを務めるSteve Hammondは、「ジャーニーマッピングと自然言語処理を駆使すれば、こちらが想定したプロセスを顧客が通るかどうかに影響する要因を、システムが自動的に評価し、顧客がジャーニーから脱落した理由などを特定できます」と述べています。
データとの格闘
カスタマージャーニーのマッピングと管理の両方に共通する最大の障害は、社内の組織ごとにデータが個別に管理されているため、顧客とのやり取りを断片的にしか捉えることができない点です。ジャーニーマッピングを支えるコンセプトは、最大限のデータインサイトを活用することです。そのためには、データから得られるインサイトにもとづいて効果的なカスタマージャーニーマップを作る以前の問題として、まず、あらゆるデータに一元的にアクセスできる環境整備が必要になります。
ジャーニーマッピングで最初に求められるのは、顧客とのやり取りに関するデータを選別できる能力です。Gainesは、「このプロセスを実行するには、まず、どのようなデータが入手可能であり、それを効果的にまとめるにはどうすればよいかを理解する必要があります。現在、ひと握りの世界的なトップ企業を除き、企業が所有しているのは、カスタマージャーニーの断片化されたデータばかりです」と述べます。
拡張現実(AR)がジャーニーマッピングの重要な役割を発揮
カスタマージャーニーには、オンラインとオフラインを問わず、複数のデバイスにおけるやり取りが含まれます。ジャーニーマッピングの目的は、マーケターが顧客体験に関するあらゆるデータを駆使して、顧客を高精度にターゲティングし、コンバージョンを高めることです。
Gainesは、「究極的な目標は、あらゆるチャネルをまたいでジャーニーを効果的にマッピングすることです」と語っています。 業界をリードしている企業は、スマートデータをARなどの画期的なテクノロジーと組み合せることにより、ジャーニーマッピングをさらに一歩進め、顧客のジャーニーを導こうとしています。L’Orealは、カスタマージャーニーマッピングを駆使して売上を伸ばした企業のひとつです。
Harvard Business Review (HBR)の記事によれば、同社の戦略は、顧客による商品の試用を1年間で2億5,000万件も実現しました。この取り組みで中心的な役割を果たしたのが、Makeup Geniusというアプリです。リから1年で1,400万ダウンロードを達成しています。
L’OrealのMakeup Geniusアプリでは、ユーザーが商品をバーチャルに試用し、その結果をSNSで知人と容易に共有できます。
Makeup Geniusは、スマートフォンのカメラを鏡に変え、顧客は革新的なテクノロジーによってL’Orealのコスメ商品をバーチャルに試用することができます。そして、その情報をソーシャルメディアで知人と手軽に共有し、即座に購入できるようにしています。L’OrealはARを活用して、パーソナライズされた美容体験をオンラインで提供しています。これにより、顧客は購入する商品を決める前に複数のアイテムを試し、そのまま容易に購入できるのです。
テクノロジーこそが、大きな変革をもたらします。ジャーニーマッピングに関する記事によれば、「競争力のあるジャーニーの台頭を支えているのは、プログラミングやデータアクセスの新しい技術であり、かつてない方法で顧客の行動を追跡し、顧客とのやり取りをパーソナライズ可能にするUIテクノロジー」なのです。
HBRの記事は、「ジャーニーをカスタマイズされた魅力的なものに仕立て上げ、顧客体験の制約を解消することにより、企業は顧客を魅了し、ロイヤルティを獲得し、競争で優位に立てます。企業には、カスタマージャーニーを商品のように扱い、部門横断的なチームによって構築、サポートすることが必要になります」と論じています。
データの微妙なニュアンスを理解
Gainesは、「カスタマージャーニーのデータは、私が考える中で最も微妙なニュアンスを含んでいます。従来のビジネスインテリジェンスは、物事を数えることは得意ですが、顧客と企業がやり取りするための適切な間隔や、シークエンスの在り方といった行動の解釈は得意ではありません。しかし、これもカスタマージャーニーを構築するために必要となる側面です。それは、シークエンスという側面であり、顧客と企業でおこなわれるやり取りの間には、多くのニュアンスが含まれています」と語ります。
ジャーニーマッピングはテクノロジーの進化の先頭に立ち、あらゆる顧客接点やデジタル基盤全体で柔軟な顧客体験の管理、作成を支援します。すなわち、時間と場所を問わず、リアルタイムのデータを駆使して、顧客が購入に至る過程の中で、企業メッセージと顧客ニーズを同期させることができるのです。
Adobe Senseiが得意とするのは、まさにその部分です。カスタマージャーニーのデータに機械学習を応用し、顧客がコンテンツに消費した時間を詳細に分析して、顧客の意図を予測できるようにしたのです。Gainesは、「人の手による分析では、全く困難です。しかし、Adobe Senseiを活用すれば、恐らくほとんどの企業がまだ利用できていないデータソースを追加することができ、さらに多くのインサイトを引き出せます」と語ります。
今こそ、オンラインとオフラインを問わず、あらゆるチャネルから生み出される大量のデータをいかにして活用するか、考え始めるべきです。Adobe Senseiは、ジャーニーの詳細なデータから実効力のあるインサイトを得るために役立つツールです。
そこを起点に、あらゆる知見を生かす手段として、カスタマージャーニーマッピングが機能し、マーケティング戦略を微調整し、ターゲティングの課題を解決し、トレンドや機会の利用を促進することができます。
ジャーニーマッピングはテクノロジーの進化の先頭に立ち、あらゆる顧客接点やデジタル基盤全体で柔軟な顧客体験の管理、作成を支援します。すなわち、時間と場所を問わず、リアルタイムのデータを駆使して、顧客が購入に至る過程の中で、企業メッセージと顧客ニーズを同期させることができるのです。
Gainesは、「私たちは、このオムニチャネルのデータとパワフルな機械学習のテクノロジーを、既に手にしています。あらゆる要素をひとつに統合し、顧客ごとに何が効果的で、何がそうでないかを突き止められたなら、本当に素晴らしいことでしょう。アドビが目指すのは、まさにそこなのです」と述べています。