自分はチームのために、チームは成果のために——アドビが短期間で成果を上げる理由
アドビのコンサルタントが語る“My Experience”
アドビのコンサルタントが語る“My Experience”
ソリューションアーキテクト部は2017年12月にスタートした新しい部門。この部長を務めているのが、田口恭平です。若いながらコンサルティング経験は豊富で、日本におけるAdobe Audience Managerソリューションの礎を築いた社員です。
5歳からサッカーをプレーし、現在はアドビのフットサルチームにも所属している田口が、新しいチームで成果を出すために心がけていることや、さまざまなエクスペリエンスを通じて「これからデジタルマーケティングに取り組む企業に伝えたいこと」を話しました。
聞き手:フリーライター 岩崎 史絵
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デジタル広告代理店からアドビに転職、さまざまな業務を経験する
はじめまして。アドビのコンサルタントは比較的若い方が多いのですが、田口さんもかなりお若くてソリューションアーキテクト部の部長をなさっているんですね。すごい!
田口 ソリューションアーキテクト部は、米国では2017年6月に、日本では12月に立ち上がった新しい部門です。この部門では、営業部隊であるPSS(Professional Service Sales)と共に、課題を抱える企業やアドビのソリューションに興味がある企業とのファーストコンタクトに当たり、総合的な提案を行うことが主業務 となります。
私が部長になったのは、社歴が長くていろいろな分野でのコンサルティングの経験があったからでしょうね。たぶん、すごいということはないと思いますよ(笑)。
おそらく、そのコンサルティングのエクスペリエンスがすばらしいのではないかと思います。アドビに入社されたのはいつですか?
田口 2011年です。前職はネット系広告の広告代理店でした。これまでの経歴が少し変わっていて、最初からコンサルタントだったわけではないんです。
アドビに入社した当時、社内にデジタル広告分野に明るい社員がほとんどおらず、当初は広告に関わるソリューションの専任営業をやっていました。1年半ほど営業を担当していたのですが、私が入社して1年経ったころ、新しい広告製品の買収があり、クライアント企業が一気に増えたんです。
こういう経緯で、新たにアドビのクライアントになった企業さんを中心に、既存のアドビ製品を含めて全体的なサポートができる社員が足りなくなり、それでコンサルタントとして異動したんです。
業種、業界は関係なくいろいろな企業を担当なさったのですか。
田口 そうですね、業種業界や規模は関係なく、いろいろな企業を担当させていただきましたし、製品の技術的な部分のフォローやサポートも行なっていました。
そんな感じでコンサルタントとなり、1年くらい経過した時、今度はDMP(Data Management Platform)ソリューションの買収があったんです。いまの「Adobe Audience Manager」ですね。
DMPは特に広告に限定しているわけではないのですが、広告業界の知見があるとより活かせるソリューションです。なので、社内で「中心になってDMPのコンサルティングサービスを提供できる人はいないか」という話が出た時、自分から手を上げて異動しました。当時の日本担当PMと一緒に一から手探りでサービスを作り上げたんです。
自分の知見を社内に共有する理由
それが大きな成果になったわけですね。
田口 はい、最初は広告メインだったのですが、そこからデジタルマーケティング全般へと範囲が広がり、実際にクライアント企業のデジタルマーケティングをサポートさせていただくなかで、自身もソリューションのスキルやコンサルティングスキルが付いてきたと思います。
とはいえ、DMPが入ってきた当時はやはり苦労しました。もともと技術系のバックボーンがあるわけではなかったので、どういう技術でその製品が成り立っているか、動作するためにはどういう所作が必要なのかをUSのスタッフにヒアリングし、それを理解しなければならなかった。
当時、DMPに関しては日本とアメリカで5年くらいの差があったと思います。そうして理解したことを日本語化し、どういうことがリスクなのかを積み上げていって、ソリューションとして形にしていきました。
次にやったのは、このノウハウをすべて資料化し社内に公開したことです。自分だけの属人化したノウハウでは、もし自分に何かあったときに誰もフォローができませんし、ビジネスとしての広がりも望めません。
それを避けるために情報を公開し、みんなが同じソリューションを提供できる環境の土台を作りました。少なくとも、DMPソリューションが根付く最初の一歩には貢献できたと思います。
そのような経験を積んで、今度は製品関係なく大規模なお客様をマネジメントする立場でサポートすることになり、前回登場した鵜瀬のチームであるプロジェクトマネジメント部に移って、不動産会社や通信企業の担当になりました。
短期で成果を出すにはスケジュール遵守が鉄則
そうした経験を経て、ソリューションアーキテクト部の設立と共に部長として就任することになったわけですね。営業チームと一緒に、お問い合わせがあった企業のファーストコンタクトに当たるということは、これまでのコンサルティングとはちょっと異なるのでしょうか。
田口 通常ですと、特定のお客様と深く長いお付き合いになります。いまの部門は基本的に営業フェーズの提案なので、実際に案件化したら、これまでの提案を整理してコンサルティング部門にバトンを渡す役割になります。当然、お客様と向き合う期間も短いですし、多種多様な業界にお伺いすることになります。
最初のうちは、業界特有の用語や商習慣などの面で戸惑うこともありましたが、いまはかなり臨機応変に対応できるようになりました。
その理由の一つに、チームで 提案資料や素材の標準化・共通化をしている取り組み が挙げられます。一つ一つの資料や提案書を一からカスタムで作り上げるのは時間も労力もかかります。
様々なお客様にご提案した内容で共感して頂いた要素や資料を標準化することで、提案の効率と質の両方を高める ことができ始めていると感じています。
新聞やメディアの記事を読んでいても、以前なら「こういうやり方を、いまのお客様に適用するとどうなるだろう」と考えたのですが、いまは「この業界ならこういうやり方が合うかもしれないけど、あの業界では合わないな」と、視点がちょっと変わりましたね。
いろいろな業種、業界に属するさまざまな企業と向き合い、短期で成果を出すようになったわけですね。
田口 コンサルタントはお客様とやり取りのなかでボールを投げ、「いついつまでに返してください」とスケジュールをコントロールしますが、営業は立場上、やはりお客様の決定を「待つ」スタイルが多いですよね。先の決まっていない未来なので、仕方ありません。
ですが、私もPMやコンサルタントでの経験がありますから、先の決まっていない未来であれば、「この日に契約すれば、半年後にこんな成功が待っています」という感じで、主体的にタイムラインを引いて提案 しちゃうんです。
もともとソリューションアーキテクト部が立ち上がったのも、グローバルで「営業だけでは、どういうサービスをどれくらいのスケジュールやコストで提供し、どのような成果を得られるのか、総合的な提案が難しい」という課題があり、それを解決するために設立されました。
だから部内では、「具体的な期限や成果などを盛り込んで提案すること」と伝えています。
それはすごいですね(笑)。
田口 少し言い方が難しいのですが、「仕事だから割り切ってやる」という思いが根底にあるんです。だから期限を切って、それにしたがって着実に物事を進めていきたいんですよ。
実際に営業フェーズを進めるなかで、まだ案件化する前でも、課題発見に向かって定期的にミーティングを行うこともあります。
コンサルタント時代もそうですが、お客様にも「いつまでにお返事ください」「これだけの資料をまとめておいてください」と、次のステップを設けてお願いすることがありましたが、社内のスタッフと同じように、「次にすべきことはは何か」はやはり重視します。
**短期間で課題解決に取り組むのであれば、困難な内容でも工夫してスケジュールどおりに物事を進めることが必要なので、なあなあになると、いい成果は生み出せません。**お客様も、アドビを信頼しているからこそ、案件化前にも積極的にミーティングに協力いただいていると思いますので、その信頼に応えるよう、課題解決に向けてスケジュールどおりに立ち上がりフェーズを進めていきます。
フットサルでは仕事のときと違う面も
先ほどから田口さんのお話を伺っていると、ソリューションのノウハウや知見を共有化したり、仕事の進め方やスケジュールをしっかりコントロールしたり、チーム力を高めるスキルがすばらしいですね。
田口 ありがとうございます。
サッカーがお好きで、いまも社内のフットサルチームでご活躍と伺ったのですが、そういう背景も仕事を進めるうえで影響あるのでしょうか。
田口 うーん、どうでしょう。サッカーは5歳くらいからやっているので、サッカーというスポーツにある価値観は、自分の価値観に影響しているとは思いますが、普段はあまり意識していません。ただ、サッカーはチームスポーツなので、人と人が交わって仕事をして、生み出されるものの力を信じている のは確かです。
フットサルチームでは、どのポジションを担当しているのでしょう?
田口 フットサルでいうと、キーパー以外すべてですね(笑)。サッカーではボランチをやっていました。
ゲームメイクする重要なポジションですね! ふだん、フットサルチームではどんな活動をなさっているのでしょう?
田口 チームは現在15名くらいですが、なかなか全員が集まらないのが悩みなんです。年1回、IT業界で他社のチームと競技するフットサル大会があるので、その大会はアドビチームとして参加します。
普段の仕事では、あまり感情を表に出さず、淡々とこなしていくのですが、実はフットサルの時は感情爆発(笑)。仕事でかかわっている方が見れば、普段との違いにびっくりするかもしれませんが、自分のなかではそれが逆に息抜きになって、成果につながっているのかもしれません。
フットサルのチーム、あるいは社内のチームでよくかけている言葉や理念などはありますか?
田口 仕事面での話をしますと、私自身は、個人としてもチームとしても役に立ちたいと考えています。最初にお話ししたとおり、アドビ社内でデジタル広告やDMPについて詳しいのは私1人しかいませんでした。でも、そういう知見をオンリーワンで抱え込むのではなく、同じ分野の知見がある新しいメンバーが入ってきたとき、次に考えるべきは、「チームとしてどういう活動が会社の成長に貢献できるか?」ということになると思うんですよ。だから、「自分のスキルや知見、それにチームとしての力を考え、成果や成長にどう貢献できるかを常に意識しよう」と声をかけています。
デジタルマーケティングに取り組む前に必要なこと
これまでのご経験を踏まえ、これからデジタルマーケティングに取り組みたいと思っている読者の方に、田口さんだからこそ伝えたいエクスペリエンスや知見はありますか。
田口 これも言い方が難しいのですが、「テクノロジーではなく人を見よう」ということですね。デジタルマーケティングで「顧客体験を改善しましょう」というと、データをどう活用すればいいか、UXをどう設計するかという議論に行きがちですが、マーケティングの基本にあるのは、人と人のコミュニケーション だと思うんです。だから、「こういうコミュニケーションがあればうれしいよね」という思いを基本に置くことが必要だと考えています。
たとえば、日本式のおもてなしを大事にしているあるホテルでは、デジタルマーケティングを考えるとき、「Webサイトに訪問頂いた方を、ようこそ○○様、とお名前でお呼びしたい」ということからスタートしたんです。データを使って何かをしよう、ではなく、実際の接客と同じ考えでお客様とどういうコミュニケーションをしたいのかを主軸に する。それさえあれば、あとはデジタルでそれをどう実現するかは、私たちが考えます。
デジタルマーケティングだからといって、テクノロジードリブンで考えず、スタートは「こういうことができたらいいな」というアイディアを出発点にすればいいということですね。
田口 そうです。アイディアをテクノロジーでどう形にするかを考えるのが私たちの仕事なので、技術がわからなくても大丈夫。安心して、何でもご相談ください!
ありがとうございました! フットサルも頑張ってください(笑)。
今回インタビューした田口が、7月19日(木)11:00-12:00からウェビナーを行います。
ぜひご参加ください。