【ケーススタディー】カスタマージャーニーを作ってMarketo Engageに実装してみよう
「Marketing Nation B2C向けカスタマージャーニー作成セミナー」の後編です。前編でカスタマージャーニー作成に必要な理論を学びました。後編では、実際に自動車の顧客獲得に向けたカスタマージャーニーの作成と、ビジネススクールの学生獲得に向けたカスタマージャーニー作成(ここでの紹介は割愛します)、そしてAdobe Marketo Engageに実装する方法のデモンストレーションが行われた模様をご紹介します。
目次
- 輸入高級乗用車「P」の顧客獲得
- プラスαの施策とKPI設定
- カスタマージャーニーをAdobe Marketo Engageに落とし込む
輸入高級乗用車「P」の顧客獲得
自動車のマーケティング課題として、「新車発売キャンペーン」「平時の顧客獲得」「アフターマーケティング」が想定されます。なかでも今回は、「そろそろ車を買い替えようかな」というニーズを起点にして、ターゲットの買いたい気持ちを高め、販売店に送客する「平時の顧客獲得」を取り上げます。
ターゲットとしては、「中の上クラス以上の国産車に乗っているドライバーで、車にはスポーティーさを何より求めるが、同時にシックさも求める。年収1,000万円以上で社会的ステータスも高め」と設定しました。しかし、これだけでは不十分。パーセプションについても考える必要があります。
ここではP自体のパーセプションを形成、もしくは変更することは狙わないことにします。特に『Pのことは知っているつもりだけど、好きじゃないし買いたくない車の一つ』といったネガティブなパーセプションの払拭は、いくらお金を積んでもそう簡単にはできないし、消費者のイメージは頑固だから大抵失敗します。本当にこの課題にトライするには商品設計まで踏み込んだ本格的、かつ長期的ブランド戦略を行う覚悟が必要となります。
今回はP自体のパーセプションではなく、"Pと私"の関係のパーセプションチェンジを狙っていく方法をとると言います。
そのために必要なパーセプションチェンジの全行程は以下の通りです。
次に、それぞれのパーセプションチェンジに必要な遷移指標を定めていきます。
点線で囲われた「カタログ請求、eBook DL」以外は、Webサイト上の閲覧行動ですので、Cookieだけで追いかけることになります。個人情報は取れるに越したことはありませんが、B2Cの場合、一消費者として、そこまで企業と仲良くなりたいか疑問が残ると小川は指摘します
「企業としてはもっと近づきたくても、消費者としては煩わしい。"何か用事がある時はこちらから行くから、そのときに適切で気持ちの良い対応をしてくれればいい、それ以外は近づかないでほしい"という感覚があると思います。メールアドレスを取って、ベタベタにコミュニケーションをとるのではなく、ゆるやかなエンゲージメントの方がいいのではないでしょうか」(小川)
この遷移指標をもとに、手法をカスタマージャーニーに落とし込んだのが以下の図です。
そして、スポーティー指向男性のペルソナを次のように設定しました。
この人のパーセプションチェンジを促すために用意したコンテンツを投入すると、以下のカスタマージャーニーが完成します。
「この人にWebパーソナライズするのであれば、トップページはワインディングロードを駆け抜けるPのかっこいい動画やエンジンの開発者が自らの成功哲学を熱く語る動画をいきなり出すといい。相手の興味に対してダイレクトにぶつかっていきます。もちろん同じペルソナとは限らないし、みんなが同じ期待をしていないかもしれないが、そんなときはカスタマージャーニーの骨組みは変えず、コンテンツの内容にバリエーションをつけることでがんばりましょう」(小川)
プラスαの施策とKPI設定
いずれも行動を起こさない見込み顧客も多いことを念頭に置きながら、個人情報を取得したからこそ行える1to1コミュニケーションを用意しておくのも一策です。
- もっと性能やメカについて詳しく知りたい→開発主査が語る商品哲学と開発プロセス、逸話のeBook DL
- Webじゃなく紙の立派なカタログも欲しい→PXのカタログ請求
- 素敵なプレゼントが欲しい→キャンペーン申し込み
個人情報を取れることができれば、メールやスマホアプリのプッシュ配信でもコンテンツ提供ができるようになりますし、取得時のアンケートでニーズを明らかにできれば、より的確なコンテンツ配信を行えます。
また、Webページのコンテンツを差し替えるだけでなく、ポップアップでメッセージを表示させ、タイムリーにコミュニケーションを図ることも可能です。
- 価格ページを3回見た→「ちゃんと見積もってみませんか?」→見積請求画面へ
- 外観やインテリアページを2回見た→「世界の街角にシックに佇むPの写真集がダウンロードできます」→eBook DL画面へ
- 走行性能ページを5回見た→「実際にアクセルを踏んで体感してみてください」→試乗会申込画面へ
最後にKPIを策定しましょう。全体としてのKPIは契約数ですが、マーケターにとってはディーラーへの送客数の方が大事。何人(何UU)の見込顧客を獲得し、何人を今すぐ買ってくれそうな見込顧客としてディーラーに送客出来たか、その単価はどうかがKPIとなります。更に「マーケティング貢献度=送客起点の契約数÷全契約数×100」もKPIとして定めているところもあります。ディーラーから見ればメーカーから紹介してもらえる見込顧客だけが営業対象ではありません。自分達の顧客リストがあるためです。飛び込み客だってあるでしょう。
カスタマージャーニーをMarketo Engageに落とし込む
ここからはソリューションコンサルタントによるデモンストレーションです。先ほど作成したカスタマージャーニーをもとに、Marketo Engageへ施策を実装していきましょう。
パーセプションチェンジの全行程に対して、Web上の行動によって策定した遷移指標を追加していきます。すると、それぞれのパーセプションに何人滞留していて、次のパーセプションに移るまでに何日かかっていて、コンバージョンがどれくらいだといった数字を時系列で見られるようになります。
次はWebパーソナライゼーションについてです。あらかじめセグメントを設定しておき、その人に対して何を見せたいのか、コンテンツを設定していきます。今回は画像ですが、動画でも可能です。全画面でアピールする場合はダイアログ、自然に訴求したい場合はゾーン、動きを出したい場合はウィジェットを選びましょう。
そしてリターゲティングです。カタログを請求したけれど見積もりや試乗会の申込に至っていない方にリターゲティングをしていきます。
カタログダウンロードページのフォームもMarketo Engageで作成することができます。対象者を「フォーム入力完了:過去30日+予約日時:空」といった条件で設定したら、次にアクションを指定します。対象者をリアルタイムに書き出して、Marketo EngageのAdBridge機能でFacebookやDSPと連係して、リターゲティングをかけることができます。
他にもご紹介したい機能がいろいろあったのですが、時間の関係でデモンストレーションは以上となります。
6月26日に発売された小川氏の書籍では、今回ご紹介した以外にも健康食品、地方温泉街、ビジネススクール、メガネチェーン店、乳業メーカーの5つの事例が記載されているそうです。『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方 』(小川 共和著)もあわせてご参照ください。
次のステップ
MA分野のリーダーであるAdobe Marketo Engageについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。