すぐに実践可能なB2C向けカスタマージャーニー作成法

2017年6月22日(木)、「Marketing Nation B2C向けカスタマージャーニー作成セミナー」と題したイベントを開催しました。

はじめに、弊社の代表取締役社長の福田 康隆が登壇。「Marketoが意識しているマーケティングは、比較的検討期間が長い顧客と、一生涯付き合うエンゲージメントと言われるコンセプトを重視して製品を提供しているからこそ、唯一B2B、B2Cの両方に対応しているマーケティングオートメーション(MA)になっている」と話し、B2BならITや製造、B2Cでは金融/不動産/人材/自動車/教育など、さまざまな業界で使われており、導入顧客はB2B:B2C→6:4の割合になっている現状を紹介しました。

「今回のテーマである"カスタマージャーニー"は定義がバラバラで、顧客の行動を洗い出そうとしても収拾がつかなくなることが多いなか、今回のセミナーの講師を務める弊社顧問 である小川氏の考え方は、Marketoの思想に最も合致していながら、非常に実践的なものであり、弊社の社内研修の一貫としてお話いただいている内容です。非常に充実した内容になると思うので、ぜひご期待ください」(福田)

今回は、顧問 小川 共和(掲載時点)による「マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方とは」の内容を抜粋してお届けします。

旧株式会社マルケト 顧問 小川 共和

電通在職時代に電通イーマーケティングワンに出向し、専務取締役としてデジタルを駆使した1to1のエンゲージメントマーケティングを経験。Webマーケティングやコミュニケーションマーケティング、リードジェネレーション、リードナーチャリングに目覚める。マーケティングコンサルティング専門の小川事務所を設立するほか、出資者としてマルケト立ち上げにも参画。

目次

  • カスタマージャーニーの目的
  • パーセプションに着目したカスタマージャーニー
  • 施策の検討と手法の策定
  • カスタマージャーニー作成の全体フロー

カスタマージャーニーの目的

小川が提案するカスタマージャーニーの目的は、次の3つです。

  1. 1to1のエンゲージメントマーケティングの設計図となる
  2. コンテンツ企画がしやすいフレームとなる
  3. MAに実装できる

マーケティングは大きく「ブランディング」と「アクイジッション」の2つに分けられ、さらに「アクイジッション」は「キャンペーン」と「エンゲージメント」の2つに分けられます。カスタマージャーニーがマーケティングの設計図として必要なのは、期間限定でリソースを集中投下して一気呵成に短期的販売成果を獲得する「キャンペーン」ではなく、一人ひとりの既存顧客や見込客と長期間関係を継続して顧客/上顧客/ファンを獲得する「エンゲージメントマーケティング」であると言えます。

その上で、1to1のエンゲージメントマーケティングが本領を発揮するマーケティング、つまりMAが本領を発揮するマーケティングとして、次の6つが提示されました。

  1. 高額商品:購入検討期間が長く、慎重な購買行動の時(B2B含む)
  2. CRM:じっくり顧客を上顧客に育成し、顧客生涯価値(LTV)最大化を図る時
  3. 敗者復活戦:契約獲得に至らなかった見込客へのアプローチ継続
  4. O2O:Webとリアルを一つのIDでまたいだ顧客獲得
  5. ファン育成:ファンとの、ファン同士の長く暖かい対話でファンを育成
  6. 人材獲得:学校の学生募集、企業の採用

また忘れてはならないのが、「消費者が目にするのは、戦略でもデータでもシステムでもなく、コンテンツであること」だと小川氏は強調し、コンテンツは作成すれば見てもらえるという想定は間違いで、"どうすれば見てもらえ、期待通りの心理や行動を引き起こせるコンテンツを作成できるのか"というところにマーケターは尽力しなければならないと説きます。

パーセプションに着目したカスタマージャーニー

では、どのようなコンテンツを用意すればいいのでしょうか? その答えとして、小川氏は電通のフレームワーク"TPCM"を紹介。ターゲットが現在抱いている当商品へのパーセプション(※)を、施策(コンテンツと手法)によって、望ましいパーセプションに変更させることがコミュニケーション課題であると規定し、この繰り返しによってターゲットを購買まで導こうというわけです。

※パーセプションとは、消費者が商品や企業等に対して抱く印象や態度のこと

しかし、このままではMA(マーケティングオートメーション)に施策を実装することができません。対象者が今どのパーセプションを抱いている段階なのか自動的に判別出来ないからです。そこで、パーセプションが次に移動した際の判断基準となる遷移指標を定めていきます。

遷移指標は、ログデータ、購買データ、特定行動(見積請求、無料体験申込、店頭相談予約等)データ、位置情報データ、ソーシャルメディアエンゲージデータ等の行動データで定義しましょう。

その際、小川が注意を促すのが、パーセプションチェンジと遷移指標を策定する上で存在する2つの難所です。

最初の「一歩手前の指標」は「マーケティングと営業のバトンタッチの場面になるため、非常に重要です。ホットリードの判別とも言えます。スコアリングより本気で買う気になった時に起こす行動で規定した方が営業部門と握り易いでしょう。見積請求、無料体験会申込、無料サンプル申込、説明会申込、店頭相談予約等何かあるはずです」 二つ目のパーセプションとログの関係捕捉ですが、最初は直接調査してみるかウェブ解析の経験則から仮説として設定するしかないでしょう。PDCA時には検証が必要ですが、それには調査等のアスキングデータとウェブ解析のログデータが対象者毎に統合されたデータが必要です。パーセプションはアスキングデータで、ログはログデータで検証するしかなく、両者がシングルソースで繋がっている仕組みがあれば検証出来ます。ロックオン社のアドエビスなら可能です」(小川)

以下は、こうして完成した健康食品Fのパーセプションと遷移指標の例です。

消費者「心理」変化と消費者「行動」変化をしっかり分けて、かつ、それぞれを紐付けることで、カスタマージャーニーの骨組みが完成しました。

施策の検討と手法の策定

次に、策定した心理変化や行動変化のプロセスを消費者に踏んでもらうにはどんな施策を打てばいいのか、打ち手の検討に入ります。

マーケティングの3つの手法である「マスメディア」「リアル」「デジタル」のうち、「デジタル」が主役でありながらも、それだけではマーケティングパワーが弱いため、特に初期段階の潜在顧客への幅広い訴求で選択肢の一つとして想起させるにはマスメディアが使えると良く、また最後の段階で確実にクロージングするには決定力のあるリアル手法(営業マンやコールセンター等による直接対話)が良いと説きます。「マスで立ち上げて、デジタルでつなぎ、最後はリアルで決めるのが最強のフォーメーションではないでしょうか」と小川は述べます。

またB2Bのように業務上の必要性が高くないので、メルアド取って密にコミュニケーションしても相手に鬱陶しがられる可能性があります。クッキーベースの緩やかなエンゲージメントがむしろ相応しいのではないでしょうか?リタゲが良く使われると思いますが、私はMAのウェブパーソナライズが良いと思っています。消費者がウェブサイトに訪ねて行った時だけ「ちゃんと私のこと分かってくれてる」「私が今欲しい情報を真っ先に見せてくれる」といった程よい距離感での心地良い対話となるのではないでしょうか。勿論相手の購入意向が高まってきた段階ではメールやスマホアプリも有効だと思いますが。

そしてコンテンツ企画に入ります。当然、"コンテンツは一人ひとりの消費者の情報ニーズに合致していること"が必要ですが、それだけでは不十分です。何かしらの「驚き」を与える"オリジナリティやクリエイティビティ"がないと、消費者の心には届かないと言います。
皆さん自身、毎日朝から晩まで数えきれない程のコンテンツを無視し続けていることを思い起こしてみて下さい。その中から無視されずに見てもらえ、しかも期待通りの心理変化を起こしてくれるコンテンツなんて極僅かでしょう?
「マーケティングの最後はコンテンツ勝負。コンテンツにお金と労力をもっとかけましょう」と小川は強調します。

この遷移指標と遷移指標の間に描かれた、オレンジの部分が「コンテンツ」、緑の部分が「手法」となっています。「相手が何を求めているか察して、それに真っ先に答えてあげる。人間対人間のコミュニケーションで普通にやっていることです。これが対話。Webサイトそのものが対話の場になるように設計していきましょう」(小川)

カスタマージャーニー作成の全体フロー

今回ご紹介した小川のカスタマージャーニー作成における全体フローは以下の通りです。

  1. 目標の策定:このマーケティングで獲得したい成果は何か?
  2. ターゲットとニーズの策定:どんなニーズを持ったどんな人が対象?
  3. スタート地点とゴール地点の策定
  4. 全体行程の策定:パーセプションチェンジの全体の流れ
  5. 遷移指標の策定:パーセプションチェンジの証を行動データで
  6. 手法の策定:行程ごとに打つべき手法
  7. コンテンツの企画:行程ごとにコンテンツを策定、ではなく企画
  8. KPIを策定

後編では、実際にカスタマージャーニーをケーススターディーで作成しつつ、Marketoに実装する方法をご紹介していきます。

次のステップ

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