個の力を組織の力に!自走するマーケティングチームのつくり方とは?

もくじ

  • Marketo Engageの分科会でマーケティングを学んだ
  • 他社のベストプラクティスから学べば初心者でも怖くない
  • メルマガの見直しで案件化に近づく
  • 一番の成果はメンバーが自ら考えられるマーケターへと成長してくれたこと

2021年4月23日に開催した Adobe Marketo Engageのユーザー向けイベント「MUG Day Online」。ユーザーのみなさまにとって有益な情報がシェアされた数々のセッションの中から、本稿では株式会社セイノー情報サービスによる「実践から学べば数字は伸ばせる ~今からできるマーケ部門の成長法~」の内容をお届けします。

同社は西濃運輸グループのIT会社でありながらも、2015年のMarketo Engage導入以降、グループ外からの売上が右肩上がりに成長しており、今となっては全体の6割以上を占めるまでになっていると言います。ここに辿り着くまでの試行錯誤やマーケティングチームの育て方について、営業推進部 部長 西村 太志氏、大嶽 孝太氏、山本 晶子氏に披露していただきました。

マーケティング活動の伸長率

Marketo Engageの分科会でマーケティングを学んだ

セイノー情報サービスの商材は、物流・サプライチェーン関連のクラウドサービス。10年に1度しか売れないような高額商材です。そんな同社ではマーケティングのミッションを「案件の創出」と「ロイヤルティを高めてファンを増やしておくこと」に設定し、長期にわたるナーチャリングに重きを置いたマーケティング活動を進めてきました。

とはいえ、「Marketo Engageを導入する前は、ひどい状態だった」と西村氏は振り返ります。「展示会で名刺を集めても、『うちのブースに立ち寄ったかどうか覚えてもいない人に電話をかけてもしょうがないよね』と営業は電話をかけてくれないし、セミナーに人を集めても、その先へ進まないことが多々ありました。一応メールマーケティングはしていたものの、メールを送ることがゴールになっていて、中身のないメールをただ配信しているだけの状況でした」。

2015年にMarketo Engageを導入してから、グループ外企業からの売上が2倍へと拡大している同社ですが、導入当初から順調だったわけではありません。「スコアリングをしたリードをインサイドセールスに渡しても、全然脈がないと言われてしまう」「ステップメールをつくろうとしたものの、『そもそもコンテンツがないからステップメールなんてできません』と言われてしまう」「インサイドセールスからの期待度は低く、新しい取り組みを提案しても相手にしてもらえない」といった課題が山積していたのです。

頭を抱えた西村氏は、「詳しい人に教わるのが一番だ」と考え、Marketo Engageのユーザー会とその後の懇親会に参加。そこで同じ課題を抱えるマーケターとコミュニケーションをとる中で分科会を立ち上げて、各社の事例発表会を行うことになったのです。

しかし、どうもしっくりきません。それは「商材が違えば、マーケティング活動も当然違う」ことが原因でした。そこに気がついた西村氏は、IT関連の企業だけを集めた分科会「ITKETO」を新たに立ち上げます。

「私はもともとマーケターではありません。最初はみんなが何を言っているのかさえ、よくわからなかった。恥をかかないよう、必死で勉強するうちに、我々の意識も変わって、次第にマーケティングの世界観が見えてくるようになりました。ITKETOに集まるメンバーは、みんな同じIT業界で同じ悩みを抱えている。ITKETOのメンバーと失敗談を共有したり、行き詰まっていることを相談したりしていると、改善のヒントが山のように出てくるんです。それを社内に持ち帰って、『これを試してみようか』と次の施策に活かせるようになりました」(西村氏)

ITKETO設立

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/page-marketo-user-groups

他社のベストプラクティスから学べば初心者でも怖くない

山本氏は2年前にコンテンツ制作担当に就きました。産休・育休明けで初めてマーケティングチームに配属された初心者です。そのとき手元にあったのは、確度の低いコールド向けのコンテンツばかり。ウォームやホットに向けたコンテンツを補充する必要がありました。でも具体的に、どんなコンテンツをどうやってつくればいいのかわかりません。

「ベストプラクティスはMarketo Engageにあるはずだ」と考えた山本氏は、Marketo Engageのホワイトペーパーの分析を始めたと言います。「Marketo Engageのホワイトペーパーを分析してみると、とても網羅性が高いことがわかりました。新規顧客ひとつをとっても、『まだMAを知らない人』『MAのことはある程度理解しており、他社比較を始めている人』『Marketo Engageの導入に前向きな人』など、さまざまなターゲットに向けたコンテンツが用意されていたのです。当社もそれを参考に、具体的なターゲットを定義し、ソリューション別のコンテンツ一覧表を作成。優先順位を決めてコンテンツの制作に着手していきました」(山本氏)

ところが、いざコンテンツをつくろうとすると、大きく3つの壁があることで、自分ひとりではつくれないことに気づいた山本氏。それぞれの壁をどのように乗り越えていったのでしょうか。

1つ目の壁:知識がない
物流の知識が乏しいために、山本氏がひとりでコンテンツをつくるのは不可能でした。そこで自社の営業やコンサルタントに協力を仰ぎ、過去の講演資料などを再利用するなど、工夫を凝らしたそうです。

2つ目の壁:知識豊富なコンサルタントは忙しくて書いてくれない
「コンテンツを書いてください」とコンサルタントにお願いしても、忙しくて書く時間がとれません。「それならインタビュー形式で、私の質問に対する回答してもらおう!」とITKETOで学んだ山本氏は、コンサルタントに対するヒアリングをもとに新しいコンテンツを制作することにしました。

3つ目の壁:コンテンツ制作に割く時間がない
当時、山本氏はメルマガの配信やWebの制作・運営も兼務していました。コンテンツ制作だけに時間をかけているわけにはいきません。そこで、インタビューの文字起こしやデザインなど、外に出せるところはアウトソースすることに。今では専任の担当者をアサインして、コンテンツ制作に注力してもらっているそうです。

メルマガの見直しで案件化に近づく

一方、営業6年、販売戦略・セミナー運営3年を経て、1年前からマーケティング担当になった大嶽氏。メルマガの執筆は、大嶽氏と山本氏で分担しているものの、ふたりともマーケティング歴が浅く、独自のノウハウを持ち合わせてはいませんでした。

それでももっと読んでもらえるメルマガにするために、次の3つの改善を図ったと言います。

ポイント①:配信頻度の見直し
前任者の運用をそのまま引き継いで月1〜2回のペースで配信していたところから、週1回へと変更。ITKETOのメンバーから出た意見も参考にしながら、テーマを決めた読み応えのある内容へと進化させていきました。

ポイント②案件化に近いホットリードに向けたシナリオメールの作成
案件化に近いリードとは、「過去に案件化していたお客様」「資料請求・問い合わせのあったお客様」「セミナーのアンケートに、検討時期を明確に入れてくれたお客様」のことではないかと定義。こうしたリードをターゲットにした合計3回のシナリオメールを配信したところ、インサイドセールスから大変好評を得たそうです。

ポイント③チーム内で相互レビュー
メルマガの内容は文章表現も含め、チーム内で互いに相互レビューを行います。「このコンテンツを送るなら、次はこんなメールを送ったらいいのではないか」とアドバイスし合うことで、メルマガの内容をどんどん改善しているのです。

これらのメルマガの改善に加え、インサイドセールスとの連携強化にも力を入れています。具体的には、ミーティング頻度を月1から週1に増やし、インサイドセールスがコールしたいと思えるような提案をマーケティングからするように。インサイドセールスからもらったフィードバックを次の施策に活かすサイクルをつくることで、インサイドセールスからの信頼度も高まってきました。「インサイドセールスのチームメンバー全員の意見を取り入れられるよう、今ではミーティング以外にも、ほぼ毎日コミュニケーションをとるようになっています」(大嶽氏)

一番の成果はメンバーが自ら考えられるマーケターへと成長してくれたこと

次に、西村氏より「チームの成長に向けて、マネージャーとして大切にしていること」についてお話がありました。

① ディスカッション相手となり、違う視点を取り入れてもらう
メンバーが少ないと、個人の主観に偏りがちになってしまいます。そこで西村氏は「誰にどうなってほしいの?」「そのためにはどんなメッセージが必要?」「それを聞いた人はどう感じて、どんなアクションをするかな?」と質問を投げかけ、視野を広げるサポートをしています。

② 仮説から検証まで、施策はできるだけみんなで考えて議論する
個人の考えた施策をそのままやっているだけでは、どうしてもバラバラな動きになってしまいます。「このメールを打つ前に、こんなセミナーをやったらどう?」など、横の連携を意識したアドバイスによって施策の幅を広げるよう、意識しているそうです。

③ 個人のノウハウで終わらないよう、メモ書きでもいいから共有してもらう
企業組織では避けられない、異動や退職。西村氏がメンバーとのコミュニケーションを大切にするのは、異動や退職によるノウハウの喪失を避けるためでもあります。その人が抜けることで、これまでの活動レベルが低下してしまうのは、なんとしても避けたい。だからこそ「ノウハウはメモ書きでもいいから何か残してくれ。それを見た人が後で活かせるように」と、口を酸っぱくして伝えているそうです。

年度末に大反省会を行ったという同社。昨年行った施策の中で、何が良くて、何がダメだったのか、次年度に向けて振り返る会です。すると、各施策に対する担当者自らの考察だけでなく、「次はこんな施策をしたい」といった具体的なアクションプランの提案まで挙がってきたのだとか。「それぞれのKPI設定も終わっていて、私は後ろから見ているだけでいいくらいになっていたのが、何よりもうれしかった。アクセスやリードの数よりも、このメンバーの成長を見られたことが、一番の大きな成果だと思います」。

最後に、西村氏は「私たちはMarketo Engageユーザーという立場でつながっています。企業の枠を超え、マーケターとして共に成功していければ」と、視聴者のみなさんにエールを送り、セッションを締めくくりました。

まとめ

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003287-product-marketo-engage-jp

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003377-foresight-marketing-2023-jp