アドビの2020年オンラインホリデーショッピング予測

2020年のホリデーシーズンには、『クリスマスを我が家で』や『ホーム・フォー・ザ・ホリデイズ』といった名曲をこれまでになく実感することになるのではないでしょうか。

世界的なパンデミック、店内でのソーシャルディスタンスの要請、そして多くの人々がリモートワークに切り替わったことから、今年のホリデーシーズンはいつにも増して自宅で過ごすものとなることは間違いありません。本日アドビが発表した『2020 Holiday Predictions(要登録)』(2020年ホリデーショッピング予測)の調査結果もそれを裏付けています。

この年次レポートは、米国を拠点とする小売サイトへの1兆回の訪問をAdobe Analyticsを使って調査し、商品のトレンド、価格、取引、配送や返品のデータを分析、2020年11月から12月末までのオンライン消費やその他のトレンドを予測したものです。また、米国の成人消費者1,000人以上を対象に2020年10月に実施した関連調査も、今年は史上最もデジタルなホリデーシーズンになる可能性が高いという予測を裏付けています。

アドビのマーケティング兼カスタマーインサイト担当バイスプレジデントのジョン コープランド(John Copeland)は、次のように述べています。「今年のホリデーショッピングシーズンは、例年になく早く始まっており、記録的なオンライン売上高が見込まれます。これは、COVID-19の感染状況の先行きに不安を感じる多くの消費者が実店舗を避け、代わりにオンラインショッピングを選択しているからです。このことは、小売企業にとって顧客インテリジェンス(英語)、つまり顧客が購買ジャーニーのどの段階にあるのかを個人レベルで理解することが、さらに重要度を増したことを意味します。これにより、企業はパーソナライズされ、コンテクストに沿った関連性のある顧客体験を提供できるのです。」

コンテキストに沿った関連性が最も重要です。「このジュエリーショップ、ダイヤのネックレスに合うからってイヤリングのプロモ送ってくるね。そんなもの持っていないけどなぁ?」

今年のホリデーシーズンのショッピング予測のなかで主要なものを以下にご紹介します。

1.COVID-19がホリデーシーズンのオンライン消費を促進、Eコマースの記録的な増加をもたらす

アドビは、ホリデーシーズンのオンライン消費が1890億ドルに達し、前年比で33%の伸びを示すと予測しています。

「私たちは、今年のホリデーシーズンのEコマース売上高を1890億ドルと予測していますが、これは同時期のEコマースの成長率2年分に相当します」とコープランドは、述べます。

データによると、インフルエンザの影響で消費者がさらに店舗利用を敬遠する場合は、オンライン消費がさらに上乗せされ、2,000億ドル(前年比47%増)に達する可能性が示されています。

2.小売業者にとって配送オプションが成功のカギに

配送、在庫、物流の課題を軽減するために、小売業者は11月初旬に配送料の割引を開始し、購入を早期に誘導する需要喚起をおこなうとコープランドは予測します。

調査対象となった消費者の大多数は、配達を早めるための料金を支払うつもりがないと答えています(64%)が、これは11月と12月に送料無料サービスが提供されることを期待しているのが理由だと考えられます。また、75%の消費者は、オンラインショッピングをする際に送料無料は重要な検討項目であると答えています。アドビのデータによれば、ホリデーシーズンには通常、送料無料の発注割合が8.6%増加します。

「送料無料サービスを提供し、その締切日を前もって伝えれば、小売業者は売上の機会をシーズンの早い時期に前倒しし、配送に関する課題を軽減できます」と、コープランドは付け加えます。

アドビは、一部の消費者は配送の遅れを避けるために早めに買い物をすると予想していますが、調査によれば、36%の消費者は、たとえ送料を払ってでも、より迅速な配送を選択する可能性があると回答しています。この期待に応えることは、小売業者にとってさらなるプレッシャーとなるでしょう。

「期日どおりに到着しない荷物の代金を払いたいと思う人はいませんし、ホリデーシーズンならなおさらです。配達遅延が予想される場合に重要なのはコミュニケーションで、それにより顧客の不満を軽減することも可能です。今年は家族揃って家を空ける人が減っており、小売業者から直接ギフトを配達するケースが増えると予想されるため、この点の重要性はますます高まっています」とコープランドは、続けます。

有料のお急ぎ便を選択した顧客が期日通りに荷物を受け取れなかった場合は、配送料を免除することをお勧めします。「悪い子リストに載ってる子には石炭を配る代わりに配達遅延するのさ。」(アメリカでは、悪い子にはサンタがプレゼントの代わりに石炭を置いていくとされる)

ギフト商品の発送数は今年も18%の増加が予想されます。ギフト関連の顧客体験には、おすすめギフトのリストやギフト包装オプションが含まれます。

3.ブラックフライデーがサイバーマンデーに取って代わる

COVID-19の影響で、今年のブラックフライデーでは例年のように店頭に顧客が殺到するようなことはないでしょう。一方で、今年のブラックフライデーのオンライン売上高は100億ドルに達すると予測されます(昨年の80億ドル弱から増加)。

混雑しそうな日に消費者が店舗利用を避けると予測している小売業者は、実店舗におけるセールを前倒しで実施するとともに、ブラックフライデーに相当するセールを11月と12月の2か月にわたって継続することを告知しています。

消費者を対象とした調査では、49%がブラックフライデーとサイバーマンデーにオンラインで最も安価な買い物ができると考えていることがわかりました。以下に、カテゴリ別の最大割引日の予想を示します。

「実店舗に行くと決断した顧客がいたとしても、入店人数に制限があるため長い待ち行列が発生するでしょう。結果として、店側としては入店をお断りする消費者が数多く出ることになります。そのような場合、彼らに商品のオンライン販売を案内するといった対策も必要です。この、通常はオフラインで行われる消費のオンライン化により、今年のデジタル版ブラックフライデーの売上はサイバーマンデーを超えるほどまでに達すると予測します」とコープランドは、述べています。

4.BOPISのブームは継続

パンデミックで大幅に増加したBOPISの注文が、2020年のホリデーシーズンにはさらに増加することが予想されています。 「今年は煙突から入るのやめてBOPISにしない?」

オンライン注文した商品を店頭で受け取るBOPIS(英語)(Buy online, pick up in-store)オプションを提供する小売業者は、2019年のサイバーウィークを制しました。2020年のホリデーショッピングシーズンにおいても、彼らはその恩恵を受け続けることになるでしょう。実際、パンデミックが最初に発生した今年の4月から5月にかけて、BOPISの注文は前年同期比で120%成長しています。

昨年のホリデーシーズンのBOPIS注文の伸びは、オンライン売上高の22%を占めるまでになりました。アドビは、今年のホリデーシーズンにはBOPISが前年同期比40%以上の成長率に達すると予想しています。

コープランドは、「今年のホリデーシーズンは、店頭で商品を受け取る長蛇の列ができるでしょう」と付け加えます。

興味深いことに、消費者の71%がBOPISで商品を受け取るついでに店頭で追加の買い物をするだろうと答えています。2019年の82%から減少していますが、これはCOVID-19への懸念から、今年は店頭での滞在時間を減らしたいという意向の反映だと考えられます。

5.自宅でのモバイルショッピングは今後も成長の見込み

在宅勤務により、自宅でパソコンを使う消費者が増えているにもかかわらず、今年のホリデーシーズンは、オンライン消費に占めるスマートフォンとタブレットの割合が昨年よりも高くなると予想されています。

「通勤時間の減少に加えて、在宅勤務でパソコンを使用する人が増えていることから、ショッピングデバイスとしてのスマートフォンの普及が停滞するのではないかとの見方もありました。しかし、スマートフォンによるショッピングの成長は加速しつつ継続しています」とコープランドは、述べます。

アドビは、今年のホリデーシーズンには買い物の42%がスマートフォン経由になると予測しており、スマートフォン経由の消費は2019年のホリデーシーズンよりも今年の方が280億ドル多いと予測しています。

6.オンライン販売促進に重要なのは検索エンジン最適化

調査結果によると、今年のホリデーシーズンは、検索によるオンライン購入の割合が昨年よりも9%増加し、総売上高の46.5%を占めると予測しています。

コープランドは、こう説明します。「検索は、高いEコマース購買意欲の反映です。サイトにたどり着く前の段階で、人が何を探しているのかを教えてくれるのが検索ですから、オーガニック検索がショッピング増加の最大要因に踊り出たのは自然なことです。小売業者は商品リストの活用、ホリデーシーズンの買い物客のために再配置したコンテンツの提示に加え、最も検索が集中しているものを反映したカテゴリページやランディングページを作成する必要があります。」

今シーズン最大の打撃を受けるマーケティングチャネルのひとつがメールで、シェアは8%減少すると予想されています。また、認知度は高まっても直接購入に繋がりにくいことが知られているソーシャルネットワークは、Eコマース流入のシェアとしては昨年より14%増加しながらも、今年のホリデーシーズンには購入全体の3%をわずかに超える程度に留まると予測されます。

コープランドは、今年はデータ駆動型のキャンペーンオーケストレーションがカギになるとアドバイスしています。

データを整理し、顧客の全体像を把握して、ホリデーシーズンにタイムリーに顧客のニーズを満たしましょう。 「プレゼントは間に合わなかったけどさ、アップセルのメールとかリターゲティング広告とか製品アンケートなんかはタイムリーに届いてたよね。」

「適切な相手に適切なメッセージを適切なタイミングで届けることが必要です。そのようなエンドツーエンドの顧客体験は、関連性があり、シームレスで、正確な順序である必要があります。消費者は確かにホリデーシーズンの熱気の中にいますが、だからといってオンラインショッピングの顧客体験が悪くても気にならないという人はいないでしょう」と、コープランドは結びます。

*本記事は、2020年10月28日にアドビのエンタープライズソートリーダーシップエグゼクティブエディターのジゼル アブラモビッチ(Giselle Abramovich)が投稿したブログの抄訳版です。