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IBM、デジタルマーケティングのナラティブを変革

40以上のマーケティングテクノロジープラットフォームを5つに絞り込み
アカウントベースドマーケティングに移行し、1億5000万件のインタラクションに対し行動
アカウントベースドマーケティングに移行し、1億5000万件のインタラクションに対し行動
webページのグローバライゼーションの作業コストを72%削減

IBMが導入したソリューション:

Adobe Audience Manager

Adobe Consulting Services

Adobe Experience Manager Assets

Adobe Experience Manager Sites

Adobe Marketo Engage

Adobe Target

Adobe Workfront

Headshot

「データには人間的な要素があり、だからこそ魅力があります。単にアルゴリズムの問題を解くということではありません。データを使って、現実の世界につながるストーリーを伝えるということなのです」

アリ・シェンキン氏

IBM グローバル・エクスペリエンス・エンジン担当バイスプレジデント

データの言語を見つけ出す

かねてよりストーリーを伝えることを仕事としてきたアリ・シェンキン氏。キャリアを始めた頃、自主映画の制作に携わっていた彼は、テクノロジーによっていかにクリエイティブなプロセスが変化するかに強く関心をひかれていました。映画の編集や配給、宣伝は、デジタルで行われることが増えていました。こうした映画業界の変化に興味をそそられたシェンキン氏は、テクノロジーによって他にどんなチャンスが生まれるだろうかと考えるようになりました。

その後間もなく、シェンキン氏はIBMに入社。それから23年後の今、彼はグローバル・エクスペリエンス・エンジン担当のバイスプレジデントを務めています。映画業界と比べれば新しい領域ではありますが、彼は今もストーリーを模索し続けています。「私はずっとストーリーのことを考えてきました。人からは、私が映画から分析の世界へ、ストーリーテリングからデータの世界へ移ったと言われますが、まったく違います」とシェンキン氏。「別の言語を使って、ストーリーテリングの道を歩み続けているのです」。

IBMは100年近くにわたり情報技術の発展をリードしてきましたが、シェンキン氏は、IBMがストーリーを伝える言語としてデータの役割を強化したいと考えました。同社が扱えるデータは膨大にある一方で、別々のレガシーシステムの中に閉じ込められ、システム間の連携は確保されていませんでした。技術的な観点では、それで難なくデータを活用できていましたが、マーケティングやクリエイティブの担当者が、納得感のある顧客体験を作り出すための完成されたナラティブは、そこからは引き出されませんでした。

「顧客を中心に考えられているかを知りたければ、データを見ることです。自社のデータシステムで顧客を理解することができなければ、顧客中心の考え方ができているとは言い難いでしょう。IBMがそうでした。顧客を理解できていなかった。だからこそ、アドビとパートナーシップを結ぶことにしたのです」。

適切なプラットフォームで運用

シェンキン氏はまず、統合に取り掛かりました。彼が目指したのは、 Adobe Audience ManagerAdobe Experience Manager SitesAdobe Experience Maker Assets Marketo Engage Adobe Target, の5つのプラットフォームに加え、IBMが契約しているSalesforce CRMのインスタンスに、IBMのすべてのマーケティングテクノロジーを一元化すること。しかし、そこで終わりではありませんでした。当初のビジョンを振り返ってシェンキン氏が言うように、「素晴らしい製品が5つあったとしても、統合されたパッケージがあるのとは違う」のです。

根本として、IBMは社内のデジタルアセットを一元化する必要がありました。従来は40を超えるデジタルアセット管理レポジトリがあり、各レポジトリの中には数え切れないほどのボックスフォルダやデスクトップがありました。それらをすべて合わせると、コンテンツの格納場所は数千にものぼり、格納されたアセットの数は17万1000件を超えていました。「最良のコンテンツが、まだ顧客の目に触れていなかった。そこに最大のチャンスが眠っていました」。現在IBMは、社内のコンサルティング部門とも連携しながら、すべてのコンテンツをAdobe Experience Manager Assetsで管理しています。それによりマーケターは、アセットを自動で特定する機能を使い、適切なコンテンツを素早く見つけられるようになりました。

一元化されたアセットを活用するため、シェンキン氏率いるチームは、IBMの各webページの構成も考え直す必要に迫られました。コンテンツ管理プラットフォームとして従来使われていたDrupalでは、全社のマーケター全員が、ページ作成の権限を持っていました。その結果、IBMが持つテンプレートの数は、なんと1万500種類に。「マーケターにとっては裁量権を感じられて良かったのですが、顧客にとってどれだけ良くないことか考えられていませんでした。IBMという一つの組織だとは感じられず、数百に分裂しているように見えていました」。Experience Manager Sitesへの移行後は、繰り返し使えるテンプレートをシェンキン氏率いるチームが少量だけ作成し、IBM全社が伝えるメッセージに一貫性を持たせました。

IBMが現在使っているwebページのテンプレートは、一貫性のあるストーリーを伝えているだけでなく、マーケターの作成効率も向上しました。「テンプレートを絞れば自分たちのクリエイティブなプロセスがとんでもなく制約されると考えていたマーケターたちも、逆に驚くほど自由になることにすぐに気付きました。デザインに悩まずに済むし、IBMブランドとの一貫性も保てます」。従来はマーケターが3日かけて制作していたページも、今では45分で作れるようになりました。

とはいえ、ウェブページの作成は、卓越したオンラインエクスペリエンスをキュレーションする作業の一部でしかありません。新規ページでは標準テンプレートによってIBMのブランドを伝えることができていましたが、シェンキン氏率いるチームには、既存ページにおけるカスタマージャーニーに統一感を持たせる仕事が残っていました。webページの数は、IBM全社で4000万以上に膨らんでいました。「そこまで膨らんだ原因は、社内の組織構造をベースにサイトを構築していたからです。現在は、顧客のためのサイト構築に取り組んでいます」とシェンキン氏は語ります。ウェブサイトの再構築にあたりIBMは、分かりやすいナビゲーションと、より分かりやすく一貫性のあるページの作成を重視し、約6700ページにわたるwebサイト全体でのカスタマージャーニーの改善を目指しています。

そのジャーニーは、IBMが事業を運営する175カ国の顧客に関わります。現在IBMは、統合されたプラットフォームを活用し、世界各地の顧客のために7言語によるwebコンテンツのローカライゼーションをより効果的に行えるようになりました。シェンキン氏は次のように語っています。「当社のサイトがその地域に見事にローカライズされていれば、大きなインパクトがあります。翻訳とローカライゼーションの作業を同時に進めなければなりませんが、柔軟に調整できる標準テンプレ―トを起点に始められるので、現地のチームですべてを一から再構築する必要なく、ページの構成要素を自由に決められます」。

その作業は、成果につながりました。ページが英語で公開されると、プラットフォーム上で自動的にグローバライゼーションのプロセスに進みます。従来は14日かかっていた翻訳は今では3~5日でできるようになり、さらにグローバル規模でエクスペリエンスを展開する作業のコストは72%削減されました。

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デジタルアセット管理レポジトリの数を40から1に削減

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1万500件のテンプレートを、繰り返し使える簡単なテンプレートに絞り込み

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翻訳期間を14日から3~5日に短縮

ストーリーで伝える

IBMでは従来、顧客にリーチするチャネルといえばメールが基本でした。しかしシェンキン氏が言うには、それまで顧客に届けていたエクスペリエンスは理想的とは言えないものでした。

「当社のメールに対するエンゲージメントを理解するため、IBMが誇る最高のデータサイエンスを使って、あらゆる高度なモデリングを行いました。すると全体として、IBMがメールを送ると、当社への顧客エンゲージメントが下がることが判明したのです」。IBMでは従来、自社のテクノロジーであるUnicaを使って、データベースに登録された大勢の顧客にメールコンテンツを配信していました。同社が顧客との接点を持とうとすればするほど、顧客は各種メールの配信をまとめて解除していました。

シェンキン氏率いるチームは、IBMのコンサルティング部門と協力してわずか28日間でMarketo Engageを導入し、顧客と顧客体験に関連するテクノロジーを構築しました。「Marketo Engageのおかげで事業変革を実現し、プロセスを改善できました。当社ではMarketo Engageを使って、ガバナンスと組織変革のプロセス全体の構築に取り組んでいます。そうすることで、IBMとエンゲージメントを行いたい人々に、優れたコミュニケーションをお届けしようとしているのです」。

シェンキン氏のチームでは現在、セキュリティ、現代化、変革、予測、自動化という、IBMブランドのこれからを形作る主要な5つのストーリーに注力しています。また、これらのストーリーの顧客への伝え方についても、基準を策定。IBMがそれまで行っていた2800件のキャンペーンから、これら5つのストーリーが際立つ特に重要な100件を絞り込みました。

シェンキン氏らは、Marketo EngageとAdobe Targetをあわせて使うことで、コンテンツから件名、カスタマージャーニー、ナーチャリングキャンペーンまで、あらゆる要素における新たなメッセージのあり方をテストしています。それをもとに、Marketo EngageとAudience Managerによって、すべてのチャネルにおいて適切なエクスペリエンスが適切な顧客にだけ届けられます。

「Marketo Engageは、私たちが進める変革の基盤となる要素です。この時を心待ちにしていました。アドビは当社のコンサルティング部門とともに、28日間で導入を完了するという偉業を成し遂げてくれました。これは、新たな文化の幕開けです。また、昨年の成果の中で私が最も誇らしく感じる出来事の一つでもあります」とシェンキン氏は語ります。

この新しいエクスペリエンスで、顧客エンゲージメントはすでに上向きになっています。Marketo Engageの導入から数カ月で、メールにおけるクリック率は112%向上。また、さらにエンゲージメントを高めるため、顧客インタラクションのフォローアップにかける時間を1日~数日から2時間に短縮しました。

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「Marketo Engageは、私たちが進める変革の基盤となる要素です。この時を心待ちにしていました。アドビは当社のコンサルティング部門とともに、28日間で導入を完了するという偉業を成し遂げてくれました。これは新たな文化の幕開けです。また、昨年の成果の中で私が最も誇らしく感じる出来事の一つでもあります」。

アリ シェンキン氏

IBM グローバル・エクスペリエンス・エンジン担当バイスプレジデント

インタラクションを通じて顧客を理解

シェンキン氏は、デジタル変革の文化をもとに、新たなデジタル戦略の策定に取り組んでいます。アドビのテクノロジーの導入と同時に、IBMは顧客関係管理(CRM)プラットフォームをSalesforceに切り替えました。完全に統合された各種テクノロジーを活用する用意が整ったところで、シェンキン氏は、IBMにおける顧客ターゲティングのあり方を変えるチャンスだと考えました。

IBMが従来使っていたプラットフォームには、B2Bの顧客に説得力のあるストーリーを届けるために必要なパワーが欠けていました。マーケターが潜在顧客を見つける場所は通常、イベントへの登録や参加、トライアルのダウンロード、デモの利用などです。これらの場を通じて年間500万件のリード獲得につながっていましたが、一方で、年間1億5000万件を超える顧客インタラクションがありました。またIBMでは、エンゲージメントを個人単位で管理していたため、アカウント全体でもっとも響いたエクスペリエンスは何かというストーリーの全体像を営業担当者が把握することはできていませんでした。

統合後、IBMではアカウントベースドマーケティング(ABM)を通じて、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを構築できるようになりました。シェンキン氏らが「ABM Plus Plus」と呼ぶこの戦略は、2つの目標を重視しています。それは、特定の役職を狙うこと、また、需要がどこで顕在化しても獲得できる能力を生かすことの2つです。統合されたMarketo EngageとSalesforce CRMに、IBMマーケティング独自のデータサイエンスとアナリティクスを組み合わせることで、現在同社は膨大な数のインタラクションをアカウントインテリジェンスの各種ツールで一元管理できるようになりました。同じアカウントから3名がイベントに参加した場合でも、あるいは、また別のアカウントから17名がホワイトペーパーをダウンロードした場合でも、プラットフォームから営業担当者に通知が行き、関連するエクスペリエンスが確認された事業全体に対するフォローアップが行われます。営業担当者がアカウント単位でインタラクションの通知を受け取れるようになった結果、リードの価値は7倍に向上しました。

「皮肉なのは、マーケティング部門には今までもずっと年間1億5000万件のインタラクションがあったことです。Adobeのおかげでインタラクションの質は上がりましたが、もともとそこにあったものなのです。ただ生かされていなかっただけで。今は毎日、営業部門に送客されています」とシェンキン氏は語ります。

より完全なアカウント単位のストーリーがデータから引き出されるようになったことで、営業担当者は文化の変化を実感しています。間もなく始まるイネーブルメントプログラムでは、IBMを活用して変革を目指す企業への貢献を高めるために、アカウントそれぞれの行動を解釈する術を営業担当者が学びます。

「営業とマーケティング部門が一体となって学ぼうとしている新たな課題が多々あります。従来のデータ管理の方法では、アカウントへの理解を十分に深めることはできなかったでしょう。また、営業部門に情報を共有することもできなかったと思います。これは、私たちの仕事の中でももっともインパクトのある成果の一つです」。

本当のイノベーションはこれから

シェンキン氏は当初から、「これはテクノロジーのプロジェクトではなく、事業変革」と語っていました。変革を成功させるため、IBMの最高経営責任者(CEO)であるアービンド・クリシュナ氏は、シェンキン氏に2つの目標を課しました。一つは、プラットフォームの導入から運用開始までを1年以内に完了させること。それから、損はしないこと。1つ目の目標は、アドビとIBM各チームの密な連携により達成されました。そして2つ目についても、シェンキン氏らの進捗は順調です。プラットフォームの導入以来、マーケティングプロセスの整理や簡素化、自動化を通じて、プロジェクトのコストを1億2000万ドル以上削減することができました。

シェンキン氏は次のように語っています。「今は、巨大なデータセンターを維持するというより、事業のデジタル化を進めるための変革を目指しています。だからこそ、当社のコンサルティング部門はアドビと協力して、自動化とインテリジェントワークフローに取り組んだのです。彼らのおかげで、マーケティング変革を推進できました」。

IBMにおける新たなテクノロジープラットフォームの構築は、単なる「素晴らしい基盤」だったとシェンキン氏は言います。彼が今取り組むのは、その基盤をもとにさらに前に進むことです。シェンキン氏のチームでは、近いうちに Workfront を導入し、今よりもさらにシームレスに協働できるようになります。「みんな他のプラットフォームにも大きな関心を寄せています。仕事がしやすくなり、ユーザーエクスペリエンスも向上するのですから。Workfrontには人間的な面があります。次にWorkfrontを導入することで、会社にも顧客にもメリットになると確信しています」。

また、IBM自体のテクノロジーストーリーにイノベーションを起こす動きもあります。IBMのデータサイエンティストは、Marketo Engageのすべての機能を調査し、IBM Watsonや量子コンピューティングとの連携の可能性を検討しています。

「基盤の上に、本物のイノベーションを積み上げようとしているところです。それは、世界が未だかつて見たことのないものとなるでしょう」とシェンキン氏は言います。「アドビとIBMのパートナーシップは、それが叶う世界で唯一の場です」。

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