顧客体験を社内の共通言語に変えたマーケティングプラットフォーム
パナソニック コネクト株式会社
パナソニック コネクト株式会社
「短期的な
営業成果だけで なく、 中長期で 自社製品や サービスの ロイヤル 顧客に なってもらうには どう いった マーケティングが 必要か 考えた とき、 顧客起点の 取り組み、 顧客 エクスペリエンスを 中心と する ことが 必須であり、 アドビ 製品の コンセプトが ピタリと はまりました」
デジタル
「現場」の課題を解決するB2Bソリューションを提供する企業として誕生したパナソニック コネクト株式会社では、複数の事業分野を統合したことが影響し、共通のマーケティング基盤を持てていなかった。2018年から同社でデジタルマーケティングをリードする関口昭如氏は、顧客体験重視の企業カルチャーを浸透させることに奮闘しているという。そのために選んだデータドリブンマーケティングのための基盤とは。
パナソニック コネクトは、パナソニックグループの中でB2B事業を担う企業である。サプライチェーン(製造、物流、流通)、公共(学校、警察、自治体)、インフラ(航空、鉄道、エネルギー)、エンターテインメント(スタジアム、放送、イベント)の4分野にわたってハードウェア、ソフトウェアを開発/販売している。
同社 デジタルカスタマーエクスペリエンス統括部 統括部長の関口昭如氏は、多岐にわたる事業領域に対して、全社のデジタルマーケティング統括、IT部門での顧客体験(CX)変革の推進、加えて法人向けノートPCなどを扱うモバイルソリューション事業部のリーダーとして複数の役割を担っている。一見すると複数の部門を兼任しているようだが、それには意味があるという。
「デジタルマーケティングを支える全社共通のIT基盤とマーケティング組織を作り、お客様に一貫した顧客体験を提供するという意味では、縦(深堀り)と横(組織横断)の動きを一体で進めることが必要です。三遊間のポテンヒットのようにならないように気を配るのも、私の役割だと思っています」(関口氏)
関口氏は、同社におけるB2Bマークティングのポイントについて、次のように語る。
「B2Bマーケティングは、B2Cと共通の部分もありますが、いくつか違いがあります。最も大きな違いは、法人の場合、購入の意思決定を担う人が1人ではないことが多い点です。また購入決定者と、実際に利用するエンドユーザーが必ずしも同じとは限らないことにも注意しなければいけません。複雑なステークホルダーの力関係が企業ごとに異なるため、ある企業の成功パターンを他社にそのまま展開するというのは難しいと思います」
デジタルカスタマーエクスペリエンス統括部 統括部長
関口
個別最適化が重要なB2Bマーケティングにおいて、関口氏は、webサイトによる情報発信など、デジタルのタッチポイントは非常に重要だと考えている。
「これまでのB2Bマーケティングは、営業部員が対面でお会いしているお客様に対するものがメインのタッチポイントになっていました。しかし、会えていないお客様やセルフサービスを望まれるお客様には、webサイトなどのデジタルチャネルが重要な役割を担います」
デジタルのタッチポイントでは、顧客のリクエストに即座に対応できること、コミュニケーションに連続性、一貫性があることが求められる。
「日本におけるB2Bマーケティングは、デマンドジェネレーション、リードジェネレーションやwebサイト最適化などが語られることが多いです。今後、顧客データを収集し、データを活用することで価値の種を創るプロダクトマーケティングや、顧客価値を維持し拡大するリレーションシップマーケティングなど、より広い範囲に広がると思っています」
そんな関口氏は、前職の時代からアドビのマーケティング製品を活用していた。同社に入社後、様々な製品が使われていたマーケティング環境をアドビ製品に統合。その背景を次のように語る。
「B2Bのマーケティングは、B2Cと比べると1件の成約までに時間が長くかかります。また関係するステークホルダーも多岐にわたるため、非常に細かい対応が必要です。例えばwebサイトを訪れていただいたお客様の解像度を可能な限り高めるため、より高度なデータ基盤に移行する必要がありました」
しかし、データ基盤の構築には同社独自の事情もあった。同社は、かつて別々に運営されてきた事業の集合体であったため、事業ごとにwebサイトの構造やサーバーの形態もすべて異なり、分断されていたという。
最初に手を付けたのは、webサイトのアクセス分析だった。実質的に1名の担当者がすべての作業を行うこととなり、限られた工数でマーケティングに関するデータを得るためには、Adobe Analyticsを選択するのがベストだった。
その理由を関口氏は、「簡易なツールでも、ユーザーによっては十分な場合もあります。しかし、私たちはツールによって思考を縛りたくありませんでした。可能な限り仮説の幅を広げて検証したいと思ったとき、アクセス解析ツールはAdobe Analyticsしか選択肢がありませんでした」と語る。
高機能でありながら、分析のコードをwebサイトに実装する際の工数が少なく済むことも、Adobe Analyticsのメリットだった。
「サービスの種類によると思いますが、ほぼ単一のサービスを提供する企業が、そのページを計測するのであれば、単機能のアクセス解析ツールでもいいと思います。しかし、当社のようなある意味分断された環境に対応するには、実装の柔軟性が非常に重要です」
加えて「他のツールと比べても、導入/運用までのトータルコストで考えると、とてもコストエフェクティブです。内部で設計/運用もできるということもメリットでした。すぐに変更できるという点も満足しています」と関口氏は語る。
同社では、Adobe Analyticsの計測結果を生かしながら、webサイトの改善やマーケティング施策の改善を進めるために、A/Bテストや多変量テストなどが可能な「Adobe Target」を利用している。
「マーケティング部門にとって、定量評価と定性評価はどちらも必要。お客様インタビューなどを通じて得た仮説を定性的に作り、それをA/Bテストで定量評価し、改善のサイクルを回すことが重要です。そのツールとしてAdobe Targetは当社のニーズに合致しています」
さらに、マーケティングオートメーション(MA)製品として、Adobe Marketo Engageも利用しているという。
「セールス強化を主眼にしたMAは、どうしても短期視点で成果を求める活動になってしまいます。短期的な数字の獲得も重要ですが、一方で当社が大切にしているのは、即効性がなくともリードの種になるお客様のデータを集め、商品企画のヒントにするといった長期的な発想です。言ってみればお客様に『売る』のではなく、お客様の側から『選んでいただく』ためのマーケティングを目指しています」
製品導入と並行して、関口氏が社内のマーケティング変革に向けて取り組んでいるのが「ブループリント」の推進だ。従来は製品ができてから、どうプロモーションするかを先行しがちであった。それを今は、誰に向けた製品で、何を訴求しなければいけないかを議論するプロセスを経なければマーケティングを始めないなどのルールを定めているという。
その他にも、以前は98%がweb未経験のマーケターであったが、マーケター自身がアナリストとして自己解決できるようになったことで、ユーザーからの問い合わせに対するサポート負荷を低減。R&Dや人事部門などもAdobe Analyticsを活用し、自分でデータを見ながら改善のPDCAを回しており、「会社のカルチャーが変わった」という実感につながっているという。
アドビ製品をプラットフォームにし、マーケティングを強化する同社の活動による成果はすでに表れている。現在、同社には約300名のAdobe Analyticsユーザーが存在するが、関口氏は現場にデータ起点の顧客理解が進んでいる状況を強く感じているという。
「Adobe Analyticsを活用して施策を実施するかしないかの判断や、データを取得しない施策はそもそもとして行わない、といったことが社内での普通の文化となりました。また、細かい粒度の仮説をデータからアウトプットすることで、顧客の反応を確認し、そこから顧客を起点とした議論をすることができるようになりました」
顧客起点の観点では、Adobe Targetを用いたA/Bテストも効果を挙げている。「従来はどうしても企画担当者の経験値に押し切られ、プロダクトアウト的なメッセージになることが多くなっていました。A/Bテストの分析結果を見せることで、客観的にコンバージョンが高くなることを示し、変わらなければいけないと説得がしやすくなりました」。
今後の課題は、顧客データに基づく社内の各部門との連携強化だと関口氏は話す。特に、営業とマーケティングの情報の連続性は重要だと考えている。
「営業担当者はリードを受け取ると、あとは任せろという感じで自分流の営業を進めてしまいます。しかし、商談の途中でもお客様は当社のwebサイトに戻ってくることがある。そのときに、営業と対話を踏まえたメッセージの連続性が無ければ、正しい顧客体験を提供できているとは言えません。これが推進できている企業はまだ本当に少ないと思いますが、チャレンジしていきたいと思っています」
特に関口氏が注目するのが、製品やサービスを顧客が購入してからのデータ活用によるアップセル、クロスセルにつながるマーケティング活動だ。
「これまでのマーケティングは、ブランディングやアウェアネス(認知)にはじまり、そこから購買までのプロセスをいかに効率よくしていくかの部分が中心でした。一方、カスタマーセンターなどへの入電情報は、製品の機能回復や修理にしか使われておらず、マーケティングからは遠い存在でした。これからは、製品を使っているお客様の声をマーケティングや商品企画に生かすことが、力になっていくと考えています」
かつてのB2B商材は、最初の段階から100%の性能を求められていたが、最近では利用を続けることで顧客の声を生かして改善されていくケースが増えてきている。「当社のノートPC『レッツノート』のお客様に許可をいただいて、バッテリーの使用状況を計測し、寿命が近づいたときに交換時期をお知らせするといったサービスはすでに実施しています。この例のように、商材やサービスを接点としたマーケティングにも力を入れています」。
アドビ製品とサポートを効果的に活用しながら、マーケティング志向を強めてきたパナソニック コネクト。複数のプロダクトを抱える難しいB2Bマーケティングを乗りこなし、次の段階を目指す。
※掲載された情報は、取材当時(2024年1月)のものです。
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