行動セグメンテーションとは、カスタマージャーニーにおけるユーザーの行動にもとづいて、特定のオーディエンスをグループ化(セグメント化)することです。類似の行動プロファイルを持つユーザーのグループをセグメントと呼びます。
本ガイドの情報は、アドビのプロダクトマーケティング担当シニアマネージャーを務めるMatt Skinnerに行ったインタビューをもとにしています。Skinnerは、Adobe Real-Time Customer Data Platformの製品開発およびマーケティングを監督しています。
この記事の内容:
- 行動セグメンテーションとは
- 行動セグメンテーションが重要な理由
- 行動セグメンテーションが企業にもたらすメリット
- 行動データの収集方法
- 行動セグメンテーションの様々な種類
- 行動セグメンテーションに最適なツール
- 企業が考慮すべきデータプライバシーの要因
- 行動セグメンテーションの将来像
行動セグメンテーションとは
行動セグメンテーションとは、ユーザーの行動や行動にもとづいて、特定のオーディエンスをグループ化することです。類似の行動プロファイルを持つユーザーのグループやクラスターをセグメントと呼びます。セグメント化を行うことは、特定の行動にもとづいて、特定のユーザーセグメントについて何らかの推測を行うということです。
行動セグメンテーションの最も一般的な例は、webの閲覧や購入行動です。たとえば、ソーシャルメディアの広告からeコマースのwebサイトにアクセスした新規ユーザーが、買い物かごにいくつかの商品を入れ、チェックアウトをクリックしたとします。ユーザーの中には、購入手続きを進めて注文する人もいれば、買い物かごを放棄する人もいます。この場合、購入したユーザーと購入しなかったユーザーで、2つの行動セグメントが作成されます。これらのセグメントを使用して、それぞれのグループに異なるマーケティングエクスペリエンスを計画できます。
購入手続きを進めたユーザーには、買い物かごの履歴にもとづいて、その他の製品を紹介するメールが送信されるかもしれません。購入した時点で、そのユーザーは、まだコンバージョンに至っていないユーザーのセグメントには属さなくなり、製品X、Y、Zを購入したユーザーのセグメントに属することになります。新しいセグメンテーションは、そのユーザーの企業に対するエクスペリエンスに影響を及ぼすことになります。
買い物かごを放棄したグループには、メールマーケティング、広告、その他の手段を通じて、購入プロセスを完了するように促します。このグループは、コンバージョンするまで非購入セグメントに留まります。
行動セグメンテーションが重要な理由
- セグメントの特定: 消費者の要望やニーズに応じてセグメントを分類できます。そうすることで、同じような興味を持つ人々をターゲットにできます。つまり、同じセグメントに属する顧客は、特定のキャンペーンや戦略に対して同じような反応を示す可能性が高いということです。
- 製品の関連性の把握: 製品が特定のセグメントに適しているかどうかを、より的確に判断できます。
- 製品やサービスのカスタマイズ: 製品の関連性を高め、セグメントのニーズを満たし、ブランドロイヤルティを促進するための製品のアップデートを行うことができます。
- カスタマイズされたマーケティングキャンペーンの作成: 特定のセグメントに焦点を絞り、パーソナライゼーションの精度を向上させることで、売上につながる可能性が高まります。
- 最適化する機会の特定: カスタマージャーニーの各段階は、セグメントの特徴にもとづいて調整、改良する必要があります。
- 競合の特定: 自社と同じ顧客層をターゲットにしている競合他社を特定し、その成功要因を分析します。
- 強化されたマーケティング戦略の策定:行動分析を利用して、顧客基盤を拡大するための戦略を策定できます。
行動セグメンテーションの利点

- ターゲティング精度の向上: 同様の購入習慣や行動を持つ顧客を見つけ、マーケティング部門とセールス部門が連携して行動計画を立てることができます。
- 購買意欲の高い顧客の特定: 主要なセグメントに対してクロスセルやアップセルに時間、資金、リソースを集中させることができます。これにより、購入頻度や購入額が少ない顧客に時間を無駄に費やすことを避け、有意義な顧客エンゲージメントの推進に注力できます。
- 高度にパーソナライズされた体験の提供: 今日のオンライン消費者は、パーソナライゼーションを期待しています。パーソナライゼーションにより、カスタマージャーニーがスムーズで魅力的なものとなり、顧客の心をつかむことも可能です。
- 成果の追跡が容易: マーケティングキャンペーンのパフォーマンスを通じてセグメントを継続的にモニタリングすることで、セグメントの行動に関する詳細なインサイトを獲得できます。
行動セグメンテーションのリスク
- 偏見: 最もエンゲージメントの高い顧客を過度に優先すると、見落としが生じる可能性があります。このセグメントに過度に焦点を当てると、新たなオーディエンスを見逃したり、声は少ないが高価値の顧客への投資が不十分になったり、市場動向の変化に対応できなくなったりする可能性があります。その結果、事業の停滞、機会の損失、顧客基盤全体の認識の歪みが生じるおそれがあります。
- データの不足: 正しいマーケティングの意思決定を行うのに十分なデータが揃っていない場合があります。これは、新製品を開発したり、新しい市場に参入したりする場合に当てはまります。サイコグラフィックセグメンテーションやその他のデータ収集手法など、他のセグメンテーション手法を活用することをお勧めします。
- 消費者行動の変化: 消費者は本質的に予測不可能なため、行動パターン、データ、セグメントはすぐに時代遅れになる可能性があります。
- 特定の仮説に依存: セグメントは、確認された事実ではなく、顧客のニーズ、性格、行動の認識にもとづく参照の枠組みを提供するものです。
- 複雑なデータ基盤: セグメンテーションは複雑なアプローチであり、最初のうちは必ずしも容易に理解できるわけではありません。その仕組みを完全に理解するには、時間がかかる場合があります。
行動セグメンテーションが企業にもたらすメリット
行動セグメンテーションにより、既にコンバージョンを達成したロイヤルティの高い顧客に費やす時間と費用を節約できます。このリソースは、他の潜在的な顧客をコンバージョンに導き、コンバージョン率を高めるために活用できます。
eコマースの例に戻ると、購入済みの顧客は、コンバージョンを達成していないセグメントから、顧客が興味のある商品を反映したセグメントに移動します。新規顧客になったことから、このグループを対象としたマーケティングキャンペーンは、コンバージョンしそうな顧客を対象としたキャンペーンほど積極的に実施する必要はなくなります。顧客を様々なグループに分類することで、それぞれのセグメントに必要なマーケティングの種類を判断し、適切なメッセージを届けることができます。
行動セグメンテーションは、時間と予算の適切な配分に役立つだけでなく、何が効果があって何を調整する必要があるのかを把握するのにも役立ちます。
たとえば、ある企業で、ランディングページを表示した新規顧客の50%が、クリックしてすぐページを離れてしまうことに気づいたとします。そのセグメントを分析することで、ランディングページの何が潜在顧客の注意を引かないのかを把握できます。つまり、行動セグメンテーションは効率の向上だけでなく、顧客体験の向上にもつながります。なぜなら、各顧客がその企業からパーソナライズされたオファーやメッセージを受け取るからです。
行動セグメンテーションで顧客ロイヤルティを向上させる方法
組織が行動セグメンテーションを利用することで、顧客は詳細にパーソナライズされたエクスペリエンスを受け取るようになり、ブランドとの結びつきが強まります。また、顧客がパーソナライズされたオファーをより頻繁に受け取るようになれば、自分自身に関連する、より多くの製品やサービスに目を向けるようになるでしょう。総じて、これにより顧客満足度が高まり、リピーターや顧客維持につながります。
行動データの収集方法
行動データを収集するには、Adobe Analysisなどの分析ツールを使用する必要があります。また、そのデータを他のデータポイントと一緒に取り込むことができるシステムが必要です。
注目すべき行動データについては、一部のマーケターは、セグメンテーションにweb分析のみを用いているかもしれません。しかし、すべての顧客がwebを通じて企業にアプローチするわけではありません。たとえば、ハイテク機器を販売する企業は、webサイトと複数の実店舗を運営しているかもしれません。つまり、顧客はオンラインで商品を閲覧しても、実店舗で購入する場合があるため、web分析データと店舗のトラフィックデータを追跡しておく必要があります。
このような場合は、マルチチャネルのデータ収集が役立ちます。これにより、その企業は、オンラインで閲覧したが実店舗で購入した顧客をマーケティングの対象から外すことができます。店舗のトラフィック分析データがなければ、商品を購入済みの顧客に対して、その商品のマーケティングを継続してしまう可能性があります。
見識あるマーケターは、データ共有のためのパートナーシップを構築し、パートナーからもデータを収集します。その一例として、航空会社と提携しているクレジットカード会社があります。クレジットカード会社が航空会社のポイント特典制度を採用している場合、そのデータはクレジットカード会社と航空会社の両方に共有されます。これにより、顧客の旅行や金融に関する興味に関連するオファーを顧客に提供することができます。
収集したデータの最適化方法
データを最適化するには、データをセグメント化する必要があります。最も基本的なセグメントは、はい/いいえの基準にもとづく、二要素から成るセグメントです。これは、ユーザーが特定のアクションを実行したかどうかによって決まります。実行した場合はこのセグメントに入り、実行しなかった場合は入りません。マーケターは、手持ちのデータから価値のある顧客セグメントを構築する必要があります。
Adobe Real-Time Customer Data Platform(CDP)には、単純な二要素から成るセグメント化をはるかに超える、堅牢なセグメントを作成できるリアルタイムの顧客セグメンテーションサービスがあります。Real-time CDPを利用すれば、X時間以内にアクションA、次にアクションB、続いてアクションCを実行するというように、時間的な条件にもとづいて顧客セグメントを構築できます。
また、より具体的なセグメントにより、潜在的なマーケティングメッセージについて詳細なインサイトを獲得できます。さらに、こうした具体的なデータを活用すれば、販売につながる可能性の高いパーソナライズされたオファーを配信できます。
行動セグメンテーションとサイコグラフィックセグメンテーションの違い
行動セグメンテーションは、人々の行動にもとづいてグループ分けします。一方、サイコグラフィックセグメンテーションは、人々の考え方や感情にもとづいてグループ分けします。
たとえば、あるニュース系webサイトが読者にアンケートを配布し、好みのニュースコンテンツを尋ねたとします。すると、多くの読者が「ビジネスコンテンツを好む」と回答しました。しかし、アンケート実施後に、どのようなコンテンツカテゴリがよく閲覧されているかを確認すると、実際には同じ読者がスポーツコンテンツを最もよく閲覧していたことがわかりました。
おそらく、読者がビジネスコンテンツを好むことは本当でしょう(サイコグラフィックデータ)。しかし、この特定のニュースサイトでは、消費されているのはスポーツコンテンツなのです(行動データ)。
これらのデータはタイプが異なりますが、マーケターは両方を考慮し、これらがどのように重なり合うのかを考える必要があります。行動データは、サイコグラフィックデータのインサイトを提供することがあり、その逆もあります。
行動セグメンテーションの様々な種類

- オケージョン基準: 冠婚葬祭など、特定の状況においてのみ製品が購入される場合。
- 使用率基準: 消費者が製品を使用する回数にもとづきます。
- ロイヤルティ基準: ブランドロイヤルティが高いほど、新規顧客の獲得について心配する必要が少なくなります。
- ベネフィット基準: 製品のベネフィットを最大化したい顧客向けです。可用性、多様性、価格など、様々な形で製品のベネフィットを引き出すことができます。
行動セグメンテーションに最適なツール
Adobe Real-time CDPなどの顧客データプラットフォームや、Adobe Audience Managerなどのデータ管理プラットフォームは、行動セグメンテーションに最適なツールです。これらの特定のシステムは、分析からデータを取り込むだけでなく、他のツールからもデータを取り込みます。ツールには、CRM、広告キャンペーン、社内顧客システム、様々なデータレイクなどが含まれます。
行動セグメンテーションは、選択できるデータソースが最も多く、データのアクティベーションに利用できる宛先が最も多いツールを使用して実行する必要があります。これにより、セグメンテーションが複数の異なるシステムに分散することなく、1か所にまとめられます。
企業が考慮すべきデータプライバシーの要因
パーソナライゼーションのレベルは、各自の判断によります。ただし、次のような事項は避けることをお勧めします。
- 健康情報の収集または要求。
- Webサイトでの閲覧内容に関する詳細情報(買い物かごに入れられなかった商品など)。
- 顧客とブランドとの間に確立された関係があることを前提とした、あらゆる種類の直接的なターゲティング。特に、そのような関係がまだ確立されていない場合。
- 潜在顧客のみに対する積極的なターゲティング、特に顧客が提供していない個人情報を使用したターゲティング。
企業の目標は、単に売上を上げることではなく、顧客との信頼関係を構築することであるべきです。
行動セグメンテーションの将来像
今後の行動セグメンテーションの焦点は、データに関する同意になると考えられます。消費者のプライバシー意識の高まりに伴い、行動セグメンテーションは進化していくでしょう。場合によっては、消費者は自分の行動データの収集と利用について同意を求められるようになります。これは、パーソナライゼーションの価値と、それがなぜ顧客の利益になるのかを顧客に説明する貴重な機会となります。
行動セグメンテーションのもう一つの将来的な進化は、行動データと個人の属性データを組み合わせる機能です。これにより、ペルソナや潜在的なマーケティングの選択肢について、さらに詳細なインサイトを獲得できます。
将来、ターゲットオーディエンスセグメントは、ターゲットとするデバイスIDやメールアドレスのグループではなく、ブランドとやり取りする人々をグループ化するインサイトに満ちた方法となり、新しいキャンペーン、製品、サービスの開発に役立ちます。
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