行動セグメンテーション
行動セグメンテーションとは、カスタマージャーニーにおける行動にもとづいて、顧客をグループ化(セグメント化)することです。類似の行動プロファイルを有するグループをセグメントと呼びます。
ポイント
● 行動セグメンテーションを利用すれば、顧客行動の詳細なインサイトを獲得できます。これにより、特定のグループに対して効果的なマーケティングをおこない、個人とはパーソナライズされた関係を構築できるようになります。
● 行動セグメンテーションを実施する最も一般的な方法は、web閲覧行動によるものですが、店舗のトラフィックレポート、コンテンの親和性の追跡、製品エンゲージメントなどのデータからもセグメントを構築できます。
● 行動セグメンテーションが重要なのは、企業が貴重な時間とリソースを不必要なマーケティング戦略に費やすのを防ぐためです。例えば、ターゲティングしている顧客の行動を把握できれば、特定の製品に関するマーケティングを取りやめるタイミングが明らかになります。
● 他社とデータパートナーシップを結び、互いの行動データを交換することで、行動データを最適化して、共通の顧客に対してより効果的にマーケティングをおこなえるようになります。
● 行動セグメンテーションに最適なツールは、Adobe Real-time CDPなどの顧客データプラットフォーム(CDP)や、Adobe Audience Managerのようなデータ管理プラットフォーム(DMP)です。
行動セグメンテーションに関する様々な疑問に、Matt Skinnerが回答します。Mattは現在、アドビのシニアプロダクトマーケティングマネージャーとして、Adobe Real-time CDPとAdobe Audience Managerの製品開発とマーケティングを統括しています。5年前にアドビに入社する以前は、Levi Straussで需要創出担当シニアマーケティングマネージャーを3年間務めていました。Mattはマーケティングとコミュニケーションの分野で約15年の経験を有しています。
目次用
もくじ
- 行動セグメンテーション とは何ですか?
- なぜ行動セグメンテーションが企業にとって効率的なのですか?
- 行動セグメンテーションとサイコグラフィックセグメンテーションの違いは何ですか?
- 行動セグメンテーションは、購入と非購入の判断以外にも使用できるのでしょうか?
- 行動データはどのように収集して、マーケターはどのような種類のデータに注目する必要がありますか?
- 収集したデータをどのように最適化するのですか?
- 企業が遵守するべきプライバシーの境界線とは何ですか?
- 行動セグメンテーションによって、顧客ロイヤルティはどのように向上するのですか?
- 行動セグメンテーションにはどのような課題があり、どのように対処できるのでしょうか?
- 行動セグメンテーションに最適なツールは何ですか?
- 行動セグメンテーションは今後どのようになっていくのでしょうか?
行動セグメンテーションとは何ですか?
行動セグメンテーションとは、カスタマージャーニーにおける行動にもとづいて、顧客をグループ化(セグメント化)することです。類似の行動プロファイルを有するグループやクラスターをセグメントと呼びます。行動セグメンテーションを実施するといういことは、把握している行動にもとづいて、特定のセグメントに関する事柄を推測することを意味します。
行動セグメンテーションの最も一般的な例は、webの閲覧行動によるものです。ソーシャルメディアの広告からeコマースサイトを訪れた新規顧客が、商品をいくつか買い物かごに入れ、チェックアウトをクリックしたとします。顧客の中には、購入を完了して注文する人もいれば、買い物かごを放棄する人もいます。購入した顧客の行動セグメントと、購入しなかった顧客の行動セグメントがあり、これらのセグメントを利用すれば、それぞれのグループに異なるマーケティング施策を展開できます。
購入したグループの人々は、買い物かごの履歴にもとづいて、その他の商品を紹介するメールを受け取るかもしれません。購入した時点で、このグループはまだコンバージョンしていない人のセグメントではなくなり、商品A、商品B、商品Cを購入した人の各セグメントに属すことになります。セグメント化することで、ブランドに対する個々のエクスペリエンスに影響を及ぼすことができます。買い物かごを放棄したグループには、メールやwebなどの手段を通じて、購入プロセスを完了するように促します。このグループは、コンバージョンするまで非購入セグメントに留まります。
なぜ行動セグメンテーションが企業にとって効率的なのですか?
行動セグメンテーションを利用すれば、コンバージョン済みの優良顧客に費やす時間とコストを節約し、潜在顧客のコンバージョンのために費やすことができます。eコマースの例に戻ると、ブランドから購入済みの顧客は、非コンバージョンセグメントから、顧客が興味のある商品を反映したセグメントに切り替わります。新規顧客になったことから、このグループを対象としたマーケティングキャンペーンは、コンバージョンしそうな顧客を対象としたキャンペーンほど積極的に実施する必要はなくなります。顧客をグループ分けすることで、それぞれのグループにどのようなマーケティングが必要かを判断し、適切なメッセージを届けることができるようになるのです。
行動セグメンテーションは、時間と予算の適切な配分に役立つだけでなく、何が効果があって何を調整する必要があるのかを理解するのにも役立ちます。例えば、ある企業で、ランディングページを表示した新規顧客の50%が、クリックしてすぐページを離れてしまうことに気づいたとします。そのセグメントを分析することで、企業はランディングページの何が潜在顧客の注意を引かないのかを知ることができます。このように、行動セグメンテーションは、効率を高めるだけでなく、各顧客にパーソナライズされたオファーやメッセージを提供し、顧客体験を改善するためにも役立ちます。
行動セグメンテーションとサイコグラフィックセグメンテーションの違いは何ですか?
行動セグメンテーションでは、人がどのように行動するかを基準にしてグループ化しますが、サイコグラフィックセグメンテーションでは、人がどのように考えたり感じたりするかを基準にしてグループ化します。
例えば、あるニュース系webサイトが読者にアンケートを配布し、好みのニュースコンテンツを尋ねたとします。すると、多くの読者が「ビジネスコンテンツを好む」と回答しました。しかし、アンケート実施後に、どのようなコンテンツカテゴリーがよく閲覧されているかを確認すると、実際には、ビジネスコンテンツを好むと回答した読者が、スポーツコンテンツを最もよく閲覧していたのです。おそらく、読者がビジネスコンテンツを好むことは本当でしょう(サイコグラフィックデータ)。しかし、このニュースサイトで消費されているのはスポーツコンテンツなのです(行動データ)。
これらのデータはタイプが異なりますが、マーケターは両方を考慮し、これらがどのように重なり合うのかを考える必要があります。行動データは、サイコグラフィックデータのインサイトを提供することがあり、その逆もあります。
行動セグメンテーションは、購入と非購入の判断以外にも使用できるのでしょうか?
行動セグメンテーションは、他にも様々な目的で利用できます。例えば、ニュースサイトの例のように、コンテンツの親和性を判断するために使用できます。また、自動車を購入するために下調べする人などを対象に、商品やサービスに関するエンゲージメントの測定にも使用できます。
行動セグメンテーションを利用して、既存顧客のロイヤルティを判断したり、デモグラフィックに関するインサイトを深めたりすることもできます。あるいは、サービスから退会する方法を検索している顧客を特定し、引き留めるためのマーケティングを実施するようなことも可能です。
行動データはどのように収集して、マーケターはどのような種類のデータに注目する必要がありますか?
行動データを収集するには、Adobe Analyticsのような分析ツールを使用します。また、そのデータを他のデータポイントと一緒に取り込むことができるシステムが必要です。
どのようなデータに注目するべきかという点については、web解析だけでセグメント化をおこなうマーケターもいるかもしれませんが、あらゆる顧客がweb経由でブランドにアプローチするわけではありません。例えば、webサイトの他にいくつかの実店舗を有しているようであれば、web解析データと店舗のトラフィックデータを把握する必要があります。顧客はオンラインで閲覧し、店舗で購入するかもしれません。このような場合は、マルチチャネルのデータ収集が重要になります。また、その場合は、商品をオンラインで閲覧し、店舗で購入した顧客をターゲットから外すことができます。店舗のトラフィック分析データがなければ、商品を購入済みの顧客に、その商品を継続してマーケティングすることになるかもしれません。
マーケターが考えるべき最も重要なことは、実店舗やPOS、web、コールセンターなど、顧客がブランドと接する様々な接点について考え、できるだけ多くの接点からデータを収集することです。さらに、イベント登録やその他のエンゲージメント接点で収集されたデータをCRMに取り込むこともできます。
見識あるマーケターは、データ共有のためのパートナーシップを構築し、パートナーからもデータを収集します。クレジットカード会社と航空会社の提携がその例です。クレジットカード会社が航空会社のロイヤルティプログラムと連携していれば、そのデータが共有されるため、クレジットカード会社が適切な旅行関連のオファーを提供できるようになります。
その他にも、イタリアへの旅行を促進するキャンペーンを実施している旅行会社があるとします。旅行会社が航空会社と提携している場合、オーディエンスがサイト内で閲覧したページ(例えば「イタリアのローマでやるべきこと」)についての行動データを共有できます。旅行会社がこのデータを航空会社と共有すれば、航空会社はそのオーディエンスにローマ行きのフライトのマーケティングを実施して、チケットの購入を促すことができます。その後、フライトが予約された段階で、航空会社はその情報を旅行会社と共有し、旅行会社はマーケティングの対象から外します。
収集したデータをどのように最適化するのですか?
構築できるセグメントで最も基本的なものは、顧客が特定の行動を取るか否かを基準とした、二要素(YesまたはNo)から成るセグメントです。顧客がその行動を取るならこのセグメントに入り、取らないなら入りません。しかし、マーケターは、所有しているデータから有益な顧客セグメントを構築していることを確認する必要があります。Adobe Real-time CDPなら、リアルタイムの顧客セグメンテーションサービスを利用して、単純な二要素から成るセグメント化をはるかに超えた、堅牢なセグメントを作成できます。Adobe Real-time CDP を利用すれば、X 時間以内にアクション A、次にアクション B、続いてアクション C を実行するというように、時間的な条件にもとづいて顧客セグメントを構築できます。これにより、セグメントがより具体的になり、潜在的なマーケティングメッセージに関して、より詳細なインサイトを獲得できます。さらに、具体的なデータを利用することで、セールスにつながる可能性の高い、パーソナライズされたオファーを提供できるようになります。
企業が遵守するべきプライバシーの境界線とは何ですか?
企業がどの程度のパーソナライゼーションをおこなうかは、それぞれの判断によります。しかし、目安としては、健康情報などの個人情報や、webサイトで閲覧した内容に関する詳細情報(買い物かごに入れなかった商品など)は避けたほうが賢明です。[顧客とブランドの間に確立された関係がまだ存在していないときに]()、それを前提とした直接的なターゲティングをおこなうことも避けるべきです。
潜在顧客だけを対象に、特に顧客が提供していない個人情報を利用して積極的にターゲティングすることは、企業が進むべき道ではありません。企業の目的は、単に売上を上げることではなく、顧客との信頼関係を築くことであるべきです。
行動セグメンテーションによって、顧客ロイヤルティはどのように向上するのですか?
ブランドが行動セグメンテーションを利用することで、顧客は詳細にパーソナライズされたエクスペリエンスを受け取るようになり、ブランドとの結びつきが強くなります。また、顧客がパーソナライズされたオファーをより頻繁に受け取るようになれば、自分自身や生活環境に関連する、より多くの製品やサービスに目を向けるようになるでしょう。
行動セグメンテーションにはどのような課題があり、どのように対処できるのでしょうか?
行動セグメンテーションにおける課題のひとつは、特定のセグメントとの関係を構築することだけに焦点を当ててしまい、最もエンゲージメントの高いタイプの顧客に過度に働きかけてしまうリスクがあることです。そのセグメントに当てはまる顧客とやり取りすることだけに注力してしまうと、エンゲージメントが低い顧客のニーズに合わないものを構築してしまい、そうした顧客にアピールする機会を失うリスクがあります。このような傾向に対処するためには、顧客層のライフサイクルをまたいで多数のセグメントを構築します。ある特定の顧客層だけを狙い撃ちするのではなく、自社ブランドに新たに興味を持った人たちの行動セグメントをどのように構築するか、コンバージョンからロイヤルティに至るまでをどのように育成するか、成熟させるかといったことを検討するべきです。
もうひとつの潜在的な課題は、新製品の開発や新しい市場への参入、行動データが不十分な施策といった状況において、正しいマーケティングの意思決定をおこなうための十分なデータがないことです。そのような場合は、サイコグラフィックセグメンテーションなどの他の形式の収集データを活用するべきです。
行動セグメンテーションに最適なツールは何ですか?
Adobe Real-time CDPなどの顧客データプラットフォームや、Adobe Audience Managerなどのデータ管理プラットフォームは、行動セグメンテーションに最適なツールです。これらのシステムは、分析ツールからデータを取り込むだけでなく、CRMや広告キャンペーン、社内の顧客システム、様々なデータレイクなどの他のツールからもデータを取り込めるからです。マーケターが行動セグメンテーションに利用するツールには、データソースが多数存在していて、データのアクティベーションに利用できる宛先も多数存在している必要があります。そのようなツールを活用することで、あらゆるセグメンテーションを、複数の異なるシステムではなく一ヶ所で構築できます。
行動セグメンテーションは今後どのようになっていくのでしょうか?
今後、行動セグメンテーションが利用される大きな用途として、同意の要素が挙げられます。消費者のプライバシーに対する意識が高まり、場合によっては行動データの収集と利用に同意を得る必要が生じるため、行動セグメンテーションは進化していくでしょう。この進化は、パーソナライゼーションを許可することで得られる価値と、それがなぜ顧客の利益になるのかを説明する貴重な機会となります。
また、行動セグメンテーションのもうひとつの進化として、行動データと個人の属性データを組み合わせることができるようになります。これにより、ペルソナや潜在的なマーケティングの選択肢について、これまで以上に深いインサイトが得られるようになります。将来的には、オーディエンスセグメントは、単なるデバイスIDやメールアドレスのグループではなく、ブランドとやり取りしている人々をグループ化するためのインサイトに満ちたものとなり、新しいキャンペーン、製品、サービスの開発に役立つものとなるでしょう。