リードスコアリング:データを活用したリードの育成
デジタル変革、オムニチャネル戦略、リアルタイムデータの活用が広がり、営業部門とマーケティング部門は、これまで以上に多くのデータを収集するようになっています。しかし、ビジネス機会とデータが急増したことで、多くの部門は負担が増大し、有意義なリード施策を展開するのに苦慮しています。
リードスコアリングは、決して新しい手法ではありませんが、自動化とAI(人工知能)を利用した基盤により、さらなる進化を遂げています。そのため、あらゆるデータを活用し、より多くの機会を商談につなげるための、最も効果的な戦略のひとつであると言えます。本記事では、リードスコアリングの概要と活用方法を解説します。
リードスコアリングとは?
リードスコアリングとは、見込み客に点数を付加して評価する、マーケティングおよびセールスの戦略のことです。 リードがターゲットペルソナにどの程度合致しており、企業とどのように接触しているのかに応じて、各リードに点数を付加します。リードスコアが高いほど、バイヤーズジャーニーが進んでいることを示します。
リードスコアリングには、さまざまな方法があります。明示的なスコアリングでは、通常、フォームを通じてリードから直接提供される情報にもとづいて、リードに点数を付加します。一方、暗示的なリードスコアリングでは、webサイトにおける行動、ソーシャルメディアでのエンゲージメント、電子メールの開封など、リードの行動にもとづいて点数を付加します。さらに、多くのマーケターは、特定のリードが理想的なペルソナにどの程度合致しているのかに応じて、点数を加算しています。
リードスコアリングが重要である理由
スコアリングシステムを確立することは、リード管理を強化するための最も効果的な方法のひとつです。しかし、そのメリットは、セールスファネルだけにとどまりません。
セールス部門とマーケティング部門の連携
リードスコアリングでは、マーケティング部門と営業部門の協働を促進する必要があります。両部門が連携し、購買段階に達しているリードの特徴を明らかにして、採点基準を確立することが、リードスコアリングの出発点となります。
スコアリングシステムが適切に運用されていることを確認するためには、定期的なフィードバックループを確立することが重要です。MQL(マーケティングクオリファイドリード)は、SQL(セールスクオリファイドリード)になった時点で、営業部門に引き継がれます。そのため、両部門は合同ミーティングを定期的に実施し、SQLの質について話し合い、スコアリングシステムが適切に運用されているかどうかを判断する必要があります。購買段階に達していないリードの割合が高い場合は、リードスコアリングのプロセスを見直しましょう。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/the-definitive-guide-to-lead-scoring
営業戦略とマーケティング戦略の強化
リードスコアリングシステムを確立するには、マーケティング部門が、見込み客と自社の個々のやり取りを慎重に検証する必要があります。自社サイトへのアクセス、ソーシャルメディアにおけるエンゲージメント、アプリや資料のダウンロードが、実際にどの程度価値があるのかを判断しなければなりません。これにより、マーケティング戦略を見直し、改善点を特定できます。
MQLとSQLの評価基準を確立し、セールス活動に適格なリード像を明らかにすることで、オーディエンスを目標に導くための新たなコミュニケーション方法の構築に取り組むことができます。これにより、新しい施策をスムーズに進めるための、シンプルで分かりやすいフレームワークを構築できます。
このように、営業部門とマーケティング部門は協力して、リードスコアリングシステムを定期的に見直し、SQLを獲得するための施策の効果についてフィードバックを共有することが重要です。営業部門に引き渡されたリードが不適格であれば、マーケティング戦略に改善の余地があります。また、クオリファイドリード数が減少した場合は、スコアリングは適切に実施されているものの、マーケティング施策を通じてリードを育成できていないことを意味します。
売上の増加
リードスコアリングでは、セールス活動の優先順位を付けることで、売上につながる可能性が最も高い商談に専念できるようにします。これにより、営業部門は、ファネル上で購買意欲が高いリードにリソースを割り当てることができます。
リードスコアリングは、セールス活動の効率化にも役立ちます。リードスコアリングを導入している企業は、不適格なリードに時間とリソースを浪費しないため、リードジェネレーションのROI(投資利益率)を大幅に向上できます。
リードスコアの計算方法
リードスコアリングが多くの利点をもたらすことは明白ですが、スコアリングシステムを構築して維持するのは、容易なことではありません。Openpriseのレポートによると、リードを効果的に獲得する能力に自信を持っているRevOps責任者は、わずか35%にとどまっています。
優れたリードスコアリングシステムを確立するには、試行錯誤する必要があります。次の手順に従うことで、そのプロセスを簡素化できます。
- 注目すべきデータポイントの特定: 明示的データ、暗示的データ、デモグラフィック情報、企業情報を組み合わせて、リードの全体像を把握します
- 過去の成功例の検証: 前年に商談成立したリードを検証し、類似点を特定します。これは、見込み客を顧客に転換するうえで重要な特性と接点を把握するのに役立ちます
- 過去の失敗例の検証: 失敗した商談を検証し、類似点を特定します。これにより、バイヤーズジャーニーにおける優先度の低い接点やデモグラフィックデータポイントを把握できます
- データポイントの重み付け: 重要なデータポイントに点数を付けます。コンバージョンにつながりやすい要因に、高い点数を割り当てます
このように、優れたリードスコアリングモデルを構築できるかどうかは、適切な要因を選択して重み付けできるかどうかにかかっています。リードスコアリングに役立つデータには、主に5つの種類があります。
1.デモグラフィック情報
リードのデモグラフィック情報を利用すれば、スコアリングを容易に開始できます。特に、新しいコンタクトをスコアリングする優れた出発点となります。
まず、既存のペルソナを分析することから始めます。また、営業部門が期待するSQLを詳細に把握する必要があります。そうしたデータの一部は、LinkedInなどで公開されているプロフィールや、ダウンロードフォームを通じて容易に収集できます。
例えば、特定の地域だけで販売する場合、その地域に居住していない見込み客に対して、低いスコアを割り当てることができます。また、上級役職のリードは、新入社員のリードよりも購買力が高いため、スコアが高くなります。
2.企業情報
企業情報は、容易に収集できるデモグラフィックデータポイントのひとつであり、リードジェネレーションの早い段階で有意義なスコアリングを実現するのに役立ちます。
例えば、B2B企業が消費者の見込み客に割り当てる点数は低くなります。自社の製品やサービスが複数の分野に対応している場合は、それらの分野におけるリードに対して、より多くの点数を割り当てます。
3.インバウンドエンゲージメント
サイトコンテンツのエンゲージメント状況は、セールスファネルとマーケティングファネルにおけるリードの進行状況を示す重要な指標です。過去データからのインサイトをもとに、各接触にスコアを割り当てます。
例えば、コンテンツへのエンゲージメントについて、次のように点数を付加します。
- リードがコンテンツページを閲覧するごとに5点
- リードが製品ページを閲覧するごとに10点
- リードがユーザー事例を閲覧するごとに10点
- リードがファネル上部でコンテンツをダウンロードするごとに10点
- 購買の意向を示す価格表や仕様書などをダウンロードするごとに20点
また、リードの行動に応じてスコアを減点することもできます。リードが一定期間、オファーのダウンロードやwebサイトへのアクセスといった行動を起こさなかった場合、そのリードは自社への関心を失っている可能性があります。減点対象となる休眠期間は、セールスサイクルの長さによって異なりますが、リードの関心の低下は、スコアに反映する必要があります。
4.ソーシャルメディアでのエンゲージメント
ソーシャルメディアにおいて、リードが自社とどの程度エンゲージメントしているのかを追跡することで、そのリードの価値を把握できます。投稿のクリック、コンテンツの共有、フォロー、購読などの行動に応じて、点数を付加します。
ターゲットオーディエンスがソーシャルメディアの利用者である場合は、フォロワー数の多いリードにより多くの点数を割り当てるようにしましょう。ソーシャルメディアで大きな影響力を有するリードは、購入品やエンゲージメントを他のオーディエンスと共有することが多いため、価値の高いコンバージョンをもたらしてくれます。
5.アウトバウンドエンゲージメント
過去データを検証する際には、アウトバウンドマーケティング施策において、リードのエンゲージメントがもたらす価値を考慮しましょう。メールマーケティングは、最も効果的なデジタルマーケティングチャネルのひとつであるため、その接点を慎重に検証する必要があります。
電子メールの開封、クリック、有料広告へのエンゲージメントに応じて、点数を付加します。また、減点対象となる休眠期間を設定しましょう。リードが数ヶ月後に電子メールを開かなくなった場合、それをスコアに反映させる必要があります。
リードスコアリングに役立つインサイトの獲得方法
過去データは、リードスコアリングに役立つインサイトをもたらす、優れた情報源です。営業部門とマーケティング部門は、常にデータを注視する必要があります。優れたリードスコアリングモデルを構築したら、次のような情報源も活用できます。
分析
マーケティングファネルの各段階を分析し、情報を収集します。リードが購買に至った理由だけでなく、そのリードを獲得できた理由も把握する必要があります。
第一印象は、リードの購買決定に大きな影響を与えます。そのため、自社の印象を把握することで、コンバージョン率に影響を与える要因を特定できます。
営業部門の経験
セールス活用を重視している企業では、あらゆる営業担当者が活躍できるように環境を整えています。営業担当者のスキルと知識は、オーディエンスを分析して把握するうえで欠かせないものです。リードの購買行動を理解し、最も効果の高いマーケティング資料や施策を特定するのに役立ちます。
マーケティング部門は、それらのインサイトを活用して、主要なコンテンツや情報へのアクセスに応じたスコアリングを改善できます。また、施策やコンテンツなどのマーケティング計画を強化することで、セールスサイクルの進行を促進できます。
顧客からのフィードバック
顧客と企業の間で、成約に貢献した要因に関する考え方が異なる場合があります。顧客から直接話を聞くことで、成約に至った要因について詳細に把握できます。
複数の顧客に、購買に至った理由を尋ねましょう。そうした情報をもとに、自社の製品やサービスを利用している顧客像とその理由を明確にできます。それらのインサイトは、自社の予想に反するものかもしれません。顧客の傾向を把握したら、それらの要因に点数を付けて、リードスコアに追加しましょう。
さまざまな顧客層からフィードバックを収集することが重要です。正確なデータを取得するには、セールスサイクルが長い顧客と短い顧客の両方を考慮する必要があります。
まとめ
営業部門とマーケティング部門は、リードスコアリングを利用して、リードが最終的にコンバージョンに達する確率を見積もることができます。スコアが高いほど、そのリードがファネルの下部に位置しており、購買意欲が高いことを示しています。営業部門はこれらのスコアを活用して、最も重要なリードを特定し、優先的にアプローチできます。
リードスコアリングは、デジタル変革とオムニチャネル戦略を推進している企業にとって不可欠なものです。しかし、その規模を拡大することは、容易なことではありません。リードスコアリングシステムを最適化する準備が整ったら、それを実現するためのツールを導入しましょう。
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