プログラマティック広告とは?仕組みやメリット、成功のベストプラクティス

プログラマティック広告(運用型広告)とは、一言で表すと「自動化された広告、あるいはその仕組み」を意味します。企業が広告リソースを最大限に活用するうえで、プログラマティック広告は有効な選択肢です。

この記事では、プログラマティック広告の概要やメリット、課題、成功させるポイントなどを包括的に解説します。

目次

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プログラマティック広告(運用型広告)とは?

プログラマティック広告とは、ツールを利用してデジタル広告の売買を自動化することです。

具体的には、テクノロジーを活用したプラットフォームにより、事前に指定したターゲットや予算などの条件に沿って、デジタル広告枠の入札や最適化を自動的に行います。広告枠の入札は、リアルタイムのオークション形式で行われるのが通常です。

従来は、デジタル広告を出稿する場合、ターゲットに適した広告枠のリサーチ、買い付け、配信は自ら行うのが一般的でした。

しかし、プログラマティック広告ではほとんどのプロセスが自動化されるので、効率的なデジタル広告の運用が可能です。

なお、Statistaによると、米国のデジタル広告支出の8割程度が、プログラマティック広告に割り当てられています。また、Insider Intelligenceによれば、米国のディスプレイ広告の9割程度をプログラマティック広告が占めています。

出典:Statista「Programmatic advertising in the United States - statistics & facts

出典:eMarketer「Guide to programmatic advertising: Channels, ad types, service models, and players

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プログラマティック広告の仕組みによる分類

プログラマティック広告(運用型広告)は、仕組みによって以下の2種類に分類できます。

オープンオークションは、不特定多数の広告主と媒体社が存在し、広告枠の売値と買値が一致すると売買が成立して、広告が配信されるものです。オープンオークションの広告配信単価は、安い傾向にあります。

一方のプライベートマーケットプレイスは、広告主と媒体社が限定されたクローズドな取引市場で、「プライベートエクスチェンジ」とも呼ばれます。

プライベートマーケットプレイスの広告配信単価は高い傾向にありますが、webサイトや広告枠の指定ができるので、ターゲティングやブランディングを実現しやすいでしょう。

プログラマティック広告と純広告の違い

純広告は「予約型広告」とも呼ばれています。プログラマティック広告(運用型広告)も純広告(予約型広告)も、広告枠を買い付けて配信するという点では同じです。

ただし、プロセスが自動化されているプログラマティック広告に対し、純広告は人の手で広告枠の受発注をします。

また、プログラマティック広告は「1クリック◯円」といった契約形態が多いのに対し、純広告は「1か月◯円」「広告表示回数×◯円」といった形態で契約するのが特徴です。

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プログラマティック広告のプラットフォームの種類

プログラマティック広告(運用型広告)を配信するプラットフォームには、いくつかの種類があります。ここでは、各プラットフォームの特徴を解説します。

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DSP(Demand Side Platform)

DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは、広告主の広告効果を最適化するためのプラットフォームのことです。広告枠の買い付けや配信、クリエイティブ分析まで自動で行えます。

ただし、DSPが機能するためには、次の「SSP」との連携が必要です。DSPやSSPの片方だけでは、プログラマティック広告を配信できません。

SSP(Supply Side Platform)

SSP(サプライサイドプラットフォーム)とは、媒体社の広告枠販売や広告収益を最大化するためのプラットフォームのことです。

インプレッション(広告表示)が発生した際に、アドエクスチェンジによって最も収益率が高い広告をDSP内から選定します。

アドエクスチェンジとは、広告媒体のwebサイトを集めて形成された、個々の「アドネットワーク」を横断的に管理し、広告主と媒体社をつなげる仕組みのことです。

また、アドエクスチェンジにより、1インプレッションに対してリアルタイムで入札する「RTB(Real Time Bidding:リアルタイムビディング)」という仕組みも生まれました。

DMP(Data Management Platform)

DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは、オンライン上に蓄積されるデータを一元管理、分析し、広告配信を最適化するためのプラットフォームのことです。

DSPやSSPとDMPを連携することで、広告入札に関する戦略的な意思決定に必要なデータを保持できます。

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プログラマティック広告のメリット

プログラマティック広告(運用型広告)は、費用対効果が高い広告運用を実現します。ここでは、プログラマティック広告のメリットを詳しく見ていきます。

広告配信の効率化

一般的な広告の場合は、広告枠のリサーチや見積もり、交渉、配信などの一連の手続きに時間と手間がかかります。複数のプラットフォーム、複数のデバイスで広告運用をするとなれば、それだけ負担も増大するでしょう。

プログラマティック広告なら、広告の売買プロセスがリアルタイムで自動化されるので、あらゆる施策を把握できます。負担が軽減される分、戦略の策定や広告コンテンツの制作といった、より重要な課題に集中できるでしょう。

また、アドネットワークが活用しきれていない余剰の広告枠についても、効率的な活用が可能です。余剰の広告枠の有効活用は、広告主だけでなく媒体社にとってもメリットが大きいでしょう。

広告配信の柔軟性の強化

プログラマティック広告では、媒体社と事前に契約する必要はないので、予算や広告内容、配信頻度などの条件を流動的にコントロールできるのが特徴です。併せて、ユーザーの反応も把握しやすくなります。

そのため、例えばリアルタイムのデータをもとに、思うように成果を上げられていない広告施策を把握し、予算を配分し直すということができます。

また、プログラマティック広告は一般的な広告と異なり、同一ユーザーへのインプレッションを制限可能です。まずは最小インプレッション数で入札するなど、コストを抑えた広告運用にも柔軟に対応できるでしょう。

ターゲティング精度の向上

ParcelLabの調査によると、買い物客の49%が、デジタル広告のターゲティングが不適切であると回答しており、同じく42%が、不適切なマーケティングコンテンツを受け取った場合は直ちに登録解除すると回答しています。

出典:ParcelLab「Key findings of our emotional shipping experiences research

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このことは、ターゲティングを適切に行うことで、大きな機会を獲得できることを示唆しています。

プログラマティック広告は、年齢や性別、居住地といった属性情報や、リアルタイムの行動などを踏まえたターゲティングが可能です。ターゲティングの精度は、近年ますます高くなっており、パーソナライズした広告を配信するのに役立つでしょう。

同時に、迅速な効果測定によって、施策の成功率も高まります。

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プログラマティック広告の課題

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大きなメリットがあるプログラマティック広告(運用型広告)ですが、一方で課題も存在します。ここでは、プログラマティック広告の課題を2つの観点から紹介します。

ブランドイメージの毀損リスク

1つ目は、違法サイトや暴力的なコンテンツが掲載されたサイトなど、広告主が意図しないwebサイトに広告が出稿されることで、ブランドイメージが低下してしまうリスクです。

また、webサイト自体に問題はなくても、広告で取り扱う製品やサービスの内容とそぐわない場合、ブランドイメージに悪影響をおよぼすことがあります。

例えば、サプリメントを紹介する広告が、サプリメントの健康被害を紹介するサイトに掲載されるといったケースが想定されるでしょう。

アドフラウドに巻き込まれるリスク

2つ目は、アドフラウド(広告詐欺)に巻き込まれるリスクです。アドフラウドは、詐欺サイトなどで無効なインプレッションやクリック、インストールを発生させ、広告主から広告費用をだまし取る不正行為です。

国内だけでも、年間1,000億円以上のアドフラウドの被害が発生しているといわれています。手口は多様で、ユーザーから広告が見えないように表示させる「隠し広告」や、ボット(bot)プログラムを使ったクリック詐欺などがあります。

広告主は、意図せず成果が出ない広告に投資していることになるので、広告の投資効果が悪化します。加えて、自社の予算が反社会的勢力の収入源になる恐れもあるでしょう。

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プログラマティック広告を成功させるベストプラクティス

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プログラマティック広告を成功させるためには、以下で紹介するベストプラクティスを考慮しましょう。

目標とKPIの設定

目標とそれに応じたKPIを設定することで、進捗状況を追跡しながら目標の達成を目指すことができます。訪問者数やページ閲覧数、ログイン回数、CTAクリック数など、各KPIのレポートを正確に把握しましょう。

なお、プログラマティック広告に初めて取り組む場合は、小規模にスタートすることが重要です。小規模であれば、プロセスを把握し、各段階での目標の達成度合いを判断しやすくなります。

優れたDSPの選定

DSPを選定する際は、おもに以下の点を考慮する必要があります。

なお、広告枠の売買は、広告主側の需要と媒体社側の供給にもとづいています。AIを利用したツールを導入すれば、DSP、SSP、DMPの3つのプラットフォームを活用して、需要と供給のバランスを容易に取ることが可能です。

自動処理の管理

プログラマティック広告の利点は、施策を自動化できることです。しかし、施策を自動化できるからといって、放置してよいわけではありません。

アトリビューション分析などを活用して状況を追跡し、施策全体を管理しましょう。

不正防止の取り組み

「プログラマティック広告の課題」の章で、アドフラウドのリスクについて紹介しました。不正を防止するためには、セキュリティ機能が搭載されたDSPによって、トラフィックが本物で、広告の配置が有意義なものであることを確認しましょう。

また、顧客のプライバシーにも注意が必要です。Chapman Universityの調査によると、消費者の26%が自身と関連性の高い広告を望んでいる一方で、多くの消費者が自身の個人情報の使用方法に懸念を抱いていることが明らかになっています。

そのため、自社の広告がプライバシー規制を遵守していることも併せて確認しましょう。

出典:Chapman University「Privacy Considerations for Online Advertising: A Stakeholder’s Perspective to Programmatic Advertising

ターゲットを絞った質の高い広告制作

DSPのデータ処理能力とターゲティング機能を活用して、特定のオーディエンスに的を絞った広告を制作しましょう。

優れたDSPを利用すれば、属性情報や行動パラメーターを把握し、デバイスやプラットフォームに関係なく広告をパーソナライズできます。

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「Adobe Advertising」のDSPで広告効果を最大化

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プログラマティック広告を始める第一歩は、最適なDSPを選定することです。

アドビの「Adobe Advertising」のDSPは、ディスプレイ広告やデジタル音声広告など、あらゆるメディアをつなぎ合わせて管理できる広告プラットフォームです。メディアに加え、デバイス、データ、クリエイティブ施策も大規模に統合および自動化できます。

また、ブランディングとパフォーマンスに関するインサイトも連携可能です。アドビのDSPを活用すれば、一貫性のある顧客体験を提供できるでしょう。

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最適なDSPを選定し、プログラマティック広告を始めましょう

プログラマティック広告(運用型広告)は、広告配信の効率化や柔軟性の強化、ターゲティング精度の向上によって、費用対効果の高い広告施策を可能にします。

課題を踏まえたうえでプログラマティック広告を成功させるには、KPIによる追跡のほか、優れたDSPの選定が欠かせません。

Adobe AdvertisingのDSPを活用して、広告の新たな可能性を開拓してはいかがでしょうか。

(公開日:2022/10/17)