データモデリングとは?概要、種類、利点を解説
膨大なデータを収集することは、業種や規模を問わず、企業の目標を達成し、競争力を高めるのに役立ちます。
しかし、それらのデータを活用するためには、データがどのようにつながっているのかを可視化する方法を把握する必要があります。これにより、データを適切に整理および保管し、容易にアクセスできるようになります。そこで重要となるのが、データモデリングです。
この記事では、データモデリングの概要、種類、データをより効果的に活用するためのヒントを解説します。
データモデリングとは?
データモデリングとは、記号とテキストを用いて、ソフトウェアシステム全体で情報がどのように関連付けられているのかを可視化する手法です。このプロセスでは、既存のソフトウェアソリューションを改善したり、効率的な新しいデータベースを設計したりするためのロードマップを作成し、システム内でデータがどのように使用および保存されるのかを把握できます。
データベース全体のデータの流れを把握することで、潜在的なボトルネックを特定し、情報管理戦略を強化できます。さらに、データの使用と保存の経路を最適化することで、より正確な分析が可能になり、ビジネス成長を促進するためのインサイトを獲得できます。
データモデリングの目的
データモデリングの主な目的は、より効率的で優れたデータ管理を促進することです。企業は、データ収集に膨大な時間とリソースを投資していますが、それらの投資から大きな利益を生み出すには、データを効果的に管理、使用、保存する必要があります。これが、データモデリングの前提です。
より堅牢なリアルタイムのデータモデルを作成することで、各プロセスや部門に必要な情報を特定できます。ビジネスの発展に伴い、データモデルと情報管理も進化させる必要があります。それができなければ、可視性の欠如、データの分断、ビジネス全体の低迷につながります。
データモデルの種類
データモデリングでは、ビジネスワークフローを可視化するために、3種類のデータモデルを使用できます。各データモデルは、社内のデータの流れについて独自のインサイトを提供します。また、3つのデータモデルを組み合わせて使用することもできます。
ここでは、各データモデルを詳しく解説します。
1. 概念データモデル
概念データモデルは、企業のデータを詳細に可視化します。多くの場合、プロジェクトの早い段階で使用するため、他のタイプのモデルよりも先に作成する必要があります。概念データモデルは、表現されるエンティティとその特性、エンティティ間の関係に焦点を当てます。
概念データモデルは、他のモデルタイプとは異なり、特定のテクノロジーやデータベースと関連付けられていません。これらのモデルは、プロジェクトの開始時またはデータを整理する初期段階で、関係者や経営陣によって作成されます。部門間の関係や自社とベンダー間の関係を包括的に把握できます。
2. 論理データモデル
論理データモデルは通常、概念データモデルを関係者に提示した後に作成します。企業のエンティティやデータの流れを、具体的かつ詳細に説明します。
論理データモデルでは、技術的なシステム要件ではなく、重要なデータ構造やデータ型を定義します。これにより、技術担当者は、データモデルを使用して、データベースの設計要件を把握できます。
3. 物理データモデル
物理データモデルは、データベース内でデータが物理的にどのように保存されるのかを示すスキーマを提供します。多くの場合、このモデルにはシステム固有の要件とプロパティが含まれるため、3つのモデルの中でデータを最も詳細かつ具体的に説明できます。
物理データモデルは、企業が導入するアプリケーションソフトウェアやデータベース管理ソリューションに特化して作成されます。物理データモデルで定義されるソフトウェア要素には、次のものが含まれます。
- フィールド
- 列
- インデックス
- トリガー
- 制約
物理データモデルは複雑で、作成に時間と労力を要します。しかし、新しいデータベースを開発したり、既存のソリューションを再構築する際の重要な基盤となります。
データモデリングの例
ここでは、最も一般的なデータモデリング手法を5つ紹介します。
関係データモデリング
関係データモデリングは、1970年代にIBMによって開発された、複数のテーブルに格納されたデータ要素の関係をマッピングする手法です。物理データの格納状況を詳細に把握する必要がないため、多くのモデラーが採用しています。
ERデータモデリング
ER(エンティティ関係)データモデリングは、エンティティをマッピングし、これらのエンティティに関連する特定の属性を識別するための、より複雑な関係データモデルです。エンティティには、顧客データ、従業員データ、製品情報、請求書などが含まれます。属性には、顧客のメールアドレス、従業員の姓、製品価格、請求書の作成日などが含まれます。
階層型データモデリング
階層型データモデルは、データの親子関係をツリー状に表現したものです。IBMのIMS(情報管理システム)は、階層型データモデルの典型的な例であり、多くの企業で導入されています。しかし、多くの階層型データモデルは、関係データモデルに置き換えられています。IMSの代わりに、XML(拡張可能マークアップ言語)が使用されることもあります。
次元データモデリング
次元データモデリングは、主にBI(ビジネスインテリジェンス)アプリケーションのデータマートやデータウェアハウスで使用されます。このモデルは、企業がデータウェアハウスに保存された情報に効率的にアクセスできるように、データ検索スピードを最適化するように設計されています。次元データモデルでは、製品の購入などのイベントやトランザクションに関する情報を格納するファクトテーブルを使用します。
オブジェクト指向データモデリング
オブジェクト指向データモデリングは、ERモデリングと類似していますが、エンティティをオブジェクトとして抽象化します。同じ属性を共有するオブジェクトをクラスに移動し、階層的に分類できます。オブジェクト指向データベースでは、テーブルを組み込むだけでなく、より複雑なデータ関係にも対応できます。多くのハイパーテキストやマルチメディアデータベースが、オブジェクト指向モデリングを使用しています。
データモデリングのプロセス
データモデリングは、企業のニーズに合わせて調整できる柔軟なプロセスです。多くの場合、最初に概念データモデルを作成し、次に論理データモデル、最後に物理データモデルを作成します。これにより、データを詳細に可視化してから、データベースの技術要件を指定できます。
確立されたデータモデリングプロセスに従うことで、自社のデータ処理とストレージのニーズに関する議論をスムーズに進めることができます。意思決定者は通常、次のワークフローに従って議論を進めます。
- エンティティの特定: 社内のさまざまなエンティティや部門を特定し、リストアップします
- 各エンティティの主要なプロパティを特定: 社内の各エンティティを区別する属性を特定します
- エンティティ間の関係を特定: 相互に関連するエンティティを提示し、それらの関係を可視化するモデルを開発します
- モデルに追加するデータ属性を特定: モデルに含める必要のある特定の属性(顧客のメールアドレスや名前など)をリストアップします
- 属性のマッピング: データ属性を作成し、各エンティティにマッピングします
- 最終確認と正確性の検証: データモデルを確定する前に、意思決定者はその正確性を検証し、初期のフレームワークに関連するエンティティと属性がすべて含まれていることを確認します
この再現可能なプロセスに従うことで、効果的なテクニカルデータモデルを作成し、ビジネスデータのニーズを明確に特定できます。
データモデリングの利点
適切なテクノロジーに投資し、チームメンバーがデータモデリングスキルを活用できるようにすることで、収集したデータをより効率的に整理することができます。これにより、データを最大限に活用し、重要なビジネスプロセスをサポートすることができます。
データモデリングのその他の利点には、次のようなものがあります。
- データの一貫性: データモデリングは、あらゆる部門、システム、データベースをまたいで、収集した情報の一貫性を確保し、分断を解消します
- データ品質の向上: チームが情報を容易に共有およびアクセスできるようにすることで、全体的なデータ品質と使いやすさが大幅に向上します
- 効率的なデータベース設計: データフローの停滞リスクを把握し、これらのボトルネックを排除して、より効率的なデータ管理システムを構築できます
- エラーと冗長性の低減: データモデリングを通じてワークフローを最適化し、冗長な手作業を削減して、コストの増大につながるデータ入力エラーのリスクを低減できます
- 企業全体の透明性の向上: 企業全体でデータの透明性を向上し、意思決定者に必要な情報を提供することで、新たな機会を獲得できます
データモデリングを通じて、情報の可視性、アクセシビリティ、使いやすさを最適化することで、ビジネスの可能性が飛躍的に拡大します。
データモデルを実現するための基盤の導入
自社のデータがどのように関連付けられているのかを可視化することは、データを整理し、自社のニーズに対応するうえで重要です。データモデルの設計を開始する前に、データを収集および保存するための堅牢なデータ基盤を導入する必要があります。
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