営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて Vol.5
本記事は、2022 Adobe Marketo Engage Champion である GLナビゲーション 神田氏の実体験を基に、『営業プロフェッショナルにこそ読んでほしい営業DXのすべて』として連載記事を寄稿いただきました。
営業とマーケティングの壁は永遠のテーマですが、営業とマーケティングの協働がデジタルマーケティングを推進するために必要となっています。マーケティング部門の皆さんはもちろんのこと、対面する営業部門の皆さんにもぜひ本ブログをおすすめください。
もくじ
- 営業DXを推進して気がついた「売上以外」の3つの効果
- 営業 DX推進の効果1.データを基にすることでフィードバックの質が高まる
- 営業 DX推進の効果2.従業員のキャリア形成につながる
- 営業 DX推進の効果3.人的資本経営につながる
- まとめ:営業DX推進は良いことずくめ
- 本記事の執筆者
営業DXを推進して気がついた「売上以外」の3つの効果
人手不足やIT人材不足が課題として叫ばれる中、経営者や管理者は定着率・離職率といったHR(Human Resources)指標もマネジメントする重要度が高まっています。営業DX推進をしてきた中で、「人」の側面においても3つの効果があることに気がつきました。最終回となる連載第5回では、売上以外の効果についてお届けします。
営業 DX推進の効果1.データを基にすることでフィードバックの質が高まる
営業組織においてもフィードバックの種類から、「人への投資」に注力しているかどうかが分かります。フィードバックの観点を3つに分類すると以下のように整理できます。
・タスク遂行
・メンタル
・トレーニング/教育
3番目のスキルを伸ばす「トレーニング/教育」がおざなりになってしまっている営業組織のマネジメントは人材が成長しない、レベルが低いマネジメントと言い換えることができます。
DXを推進する上で一番重要なポイントは、業務マネジメントでもメンタルマネジメントでもなく、「スキルマネジメント」にあります。
営業DXは、ボトルネックを定量的に把握して改善する組織です。データを用いてフィードバックをすることができるようになります。マネージャーがスキルの育成に力を入れることで、おのずとフィードバック力の質が高まります。
例えばある従業員の売上が芳しくない場合、結果が出ない理由をデータを示しながらフィードバックするのです。フィードバックの根拠となるデータはマネージャーが提示してあげることが重要なのです。そうすることで、マネジメントする側のフィードバック力がおのずと高まることに気がつきました。
営業 DX推進の効果2.従業員のキャリア形成につながる
弊社ではインサイドセールスを中心として営業DXを進めてきましたが、単純な実行部隊というよりは、マーケティングと営業の両方の要素を兼ね備えたレバレッジ人材として位置付けています。前述したようにまず注力することが「スキルの育成」です。ツールの習得をしてもらい、データドリブンな仮説検証、数字を見る力を育成するという風に進めています。
レベルアップを重ねることで、セールス領域を極めていくことも、汎用性が高いジェネラリストになっていくことも、インサイドセールス自身が選べるようにしています。
新規のアウトバウンドセールスから始まり、ビジネスパートナーからのコンサルタント集客を行うプロジェクト提案、コンサルタント提案を行い、最後はデータを扱う戦術設計まで、ポジションを上げていく育成プロセスを敷いています。キャリアレベルを上げることによって、ネクストキャリアの選択肢も広がります。 アカウントセールスとして、顧客のニーズ発掘や深掘りを行ったクロージングを行うポジションに行くこともできます。
データとツールを活用しながら営業戦略や戦術に落とし込んだり、汎用性の高い施策を行って、営業活動をより生産性の高いものにしていくマーケティングのチームに行くこともできます。
マーケティング・営業に限らず、プロセス全体を把握した上で、どこにボトルネックがあるのか、どんな要因でボトルネックが起きているのか、ボトルネックを解消するためにどんな意思決定が必要なのかを明確にします。課題に合わせて、体制変更やシステムへのオペレーション実装、人員採用などの施策を推進する営業推進のチームに移動することも可能です。
弊社では、実際に以下のようなキャリアパスが開かれています。
営業 DX推進の効果3.人的資本経営につながる
人的資本経営とは、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」とされています。企業や組織で働く人材を経営資本の一つとして捉え、人材の価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を高めていくことを指しています。
経営環境の劇的な変化に対応し、企業を存続するためには、人材を「コスト」ではなく「投資対象」として捉え、従業員の価値を引き出す経営スタイルへの転換が求められています。投資家などステークホルダーは企業の将来性を判断する指標として、情報開示を強く求めるようになっていることから、経営者は無視できない概念と言えるでしょう。
セールスDXを推進することで従業員はおのずと「ツール活用」や「数字に基づいた仮説思考」、「課題把握・解決策を掲示するスキル」を磨くことができ、営業成績の向上や給与アップ、市場価値の向上といった効果を見込むことができます。
そして適切なマネジメントを受けた従業員はマネージャーの素質が身につきやすいです。マイクロマネジメントされた従業員は同じことを他の従業員に実施することができ、支配ではなく見守り型の感覚を持っているのでコミュニケーションを間違うこともありません。自身の成長過程がそのまま資産として将来の自分のキャリアに直結します。いわゆる「人的資本」の構築にも役立つと言えます。
営業DX組織で身につくスキルは、自社だけでなく、社会でも通用する一般的なスキルです。人的資本を形成して成果に結びつけることで、会社と従業員がWin-Winの関係になります。「人を資産として育てる」、まさに人的資本経営であることに気づきました。
まとめ:営業DX推進は良いことずくめ
全5回にわたり、コテコテ昭和の営業スタイルの私が営業DXを推進しようと思ったきっかけから始まり、推進することで気がついた重要なポイント、ぶつかった3つの壁などについてお届けしてきました。
初めは自分自身を変える必要があることに抵抗がありましたが、いざ進めて見ると良いことずくめだということに気がつきました。「最近DXが良いと聞くからやってみたい」「DXを進めたいけど何から始めれば良いか分からない」……そんな方のお役に少しでも立てれば幸いです。
本記事の執筆者