NBA ミルウォーキー バックス、Adobe Marketo Engageを活用してバスケットボールのデジタルファン体験を再構築

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ミルウォーキー バックスのマーケティングチームは、Marketo SDKを使って戦略的なタイミングでプッシュ通知を送信することで、注文を分散させ、試合中の安定した収益獲得を目指しています。

アメリカのプロバスケットボール、NBAのミルウォーキー バックスは今、絶好調です。NBAのイースタン カンファレンスでトップ争いを演じているこのチームは、2度のMVPを獲得したヤニス アデトクンボ(Giannis Antetokounmpo)選手のもと、今年もプレーオフに向けて準備を整えており、ファンの期待も高まっています。

とはいえ、COVID-19のパンデミックにより、バックスのファンはこれまでにない新しい方法でチームを応援しなければなりませんでした。ミルウォーキー バックスのデータベースマーケティング担当シニアディレクターであるベン コンラッド(Ben Conrad)氏にお話を伺った前回(英語)では、NBAの試合がすべて無観客で開催されている間、デジタルエンゲージメントモデルに軸足を移してファンとのつながりを維持しているとのことでした。

コンラッド氏のチームは、パーソナライズされたアプローチと、アデトクンボ選手が試合で着用したジャージが当たる大人気の懸賞を組み合わせて過去最高のオンライン売上を達成しました。その後、小売事業を拡大し、収益全体も昨年3月以降で50%増加しています。一方、ジャージコンテストで得られたリードは、メールマーケティングの実施に必要な、完全な顧客プロファイルの構築に役立ち、その結果、クリック率が36%、開封率が28%向上しました。

COVID-19下で2年目のシーズンを戦っている現在、バックスは本拠地であるFiserv Forumに徐々に、しかし確実に、再び観客を迎え入れています。そこでアドビは再びコンラッド氏に取材し、Adobe <u>Marketo Engage</u>を活用したリアルな体験を再構築する現在の取り組みについて伺いました。ひとつ確かなことは、彼らがデジタルの世界をアリーナに持ち込むつもりだということです。

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Marketo Engageによるアシスト

コンラッド氏は、ミルウォーキー バックスに関するすべての<u>マーケティングオートメーション</u>を活用したキャンペーンを統括しています。これには、バックスそのものに加え、オンラインストアのBucks Pro Shop、本拠地であるFiserv Forumとその敷地内のレストラン、ミルウォーキーのGリーグ(若手選手育成リーグ)チームであるWisconsin Herdなどが含まれます。しかし、このような多岐にわたる業務内容にもかかわらず、彼のチームは非常に小さい組織です。

「私のチームはかなり少数精鋭です。ですから、デジタルな顧客体験の構築とテストを大規模に実施できるプラットフォームを持つことは非常に価値があるのです。Adobe Marketo Engageがまさにそれです」と、コンラッド氏は語ります。

彼のマーケティングチームは、2020年にバックスのデジタル販売で好調な結果を達成したことを受けて、現在、リアルなファン体験を向上させるために、さらに高度なパーソナライゼーションを模索しています。彼らは現在、試合観戦、飲食、楽しむ方法を再定義するような、バックスのモバイルアプリに追加する新機能を開発しています。

「COVID-19は今でも、私たちの組織とファンにとって最も大きな懸念事項です。それを踏まえて、モバイルエンゲージメントは2つの意味で役に立ちます。第1に、個々のお客様とのコミュニケーションをパーソナライズすることができます。第2に、お客様がアリーナに足を踏み入れた瞬間から、安全を保つために必要な全ての情報を届けることができます」と、コンラッド氏は続けます。

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進化した「ビール注文ボタン」

人の心をつかむ道は胃袋から、という言葉がありますが、ミルウォーキー バックスモバイルアプリの初期アップデートではまさに、ファンが席を離れずに携帯電話でフードやドリンクを注文できることに重点が置かれていました。そして、その実装のために採用されたMarketo Engage SDKは、その後のさらなる活用範囲の拡大も可能にしています。

コンラッド氏は、次のように述べています。「アプリ内でのお客様の行動の全容を把握できるようになり、私たちにとって未開拓の領域が現れました。今シーズンは、Fiserv Forumを訪れるファンの数が限られているため、アリーナがフル稼働に戻る前に我々のアプローチを構築、テスト、改良できるまたとない機会となっています。」

この試みの初期段階の結果は、ファンだけでなく、Fiserv Forumで営業している飲食店にとっても非常に有望なものでした。顧客が商品の購入方法やタイミングをコントロールできるようになったことで、それまでハーフタイムやクォーターのインターバルで突出していた売店への観客の集中が緩和されたのです。

また、バックスのマーケティングチームは、Marketo SDKを活用して、戦略的なタイミングでファンにプッシュ通知を送り、注文を分散させて試合中の安定した収益につなげられるようになりました。飲食スタンドの混雑が軽減されたことにより、顧客がソーシャルディスタンスを保ちやすくなったのも重要な点です。

こうしたオンデマンドの注文方法は、特にビールの購入に効果的です。バックスの試合ではビールが一番の売上を占めていますが、その理由の1つは、ファンが携帯電話に「BEER BUTTON(ビール注文ボタン)」アプリをダウンロードして、観戦席から直接冷えたビールを注文できることにあります。パンデミックが去るまでは、売り子がアリーナを駆け回ってビールを届けることはできませんが、デジタルマーケティングチームは、バックスモバイルアプリのデータを使って「アルコールのみ」を購入する顧客を把握し、需要が落ち着いたタイミングでターゲットを絞った通知を送ることでビールの購入を促進し、都合の良い時間に受け取れるようにしています。

「これ以上のミルウォーキーらしさは考えられません」(ミルウォーキーは全米第一の「ビールの町」として知られています)と、コンラッド氏は笑顔を見せます。

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今後の展望

コンラッド氏は、これまでの成果に満足していますが、モバイル顧客体験の構築についてはまだ模索段階にあると認識しているそうです。現在は、フードとドリンクの注文だけでなく、Pro Shopのような他のバックスのサービスと連携させて、あらゆるレベルでデジタル体験を向上させる方法を自問しています。

コンラッド氏のマーケティングチームはまた、ミルウォーキー バックスの営業部門と緊密に連携し、カスタマーリレーション構築に役立つ情報を提供しています。Adobe Marketo Engageから得られるセールスインサイトと、営業チームのCRMシステムを連携させることで、部門間の情報の流れがスムーズになり、リードジェネレーションに弾みがつきました。

コンラッド氏は今後、デジタルとリアルのファン体験を橋渡しする機会が増えると見ており、ヒントを得るためにスポーツ界の外に目を向けています。「一消費者としては、駐車場での商品受け取りが当たり前になったように、サービスに求められる水準がこの1年で高くなっていると感じています。こうした他の業界での新しい動きは、顧客体験のスペシャリストである私たちにとっても同様に大きな課題です。全てのお客様が後戻りのきかない変化を体験している中、私たちだけが場当たり的な対処で満足するわけにはいきません。だからこそ今、長期的な視野に立ってファン体験を進化させるテクノロジーを構築しているのです。」

*本記事は、2021年4月28日にアドビが投稿したブログの抄訳です。