マーケティングオートメーションを活用するためのデータ設計とは
マーケティングオートメーション(以下、MA)を導入されている企業様も多いのではないでしょうか。MAはマーケティング活動を飛躍的に効率化できますが、導入しただけですぐに使える「魔法の杖」ではなく、導入に向けた設計が必要です。特に肝となるのがデータ設計です。そもそも顧客データがないとメール施策ができないだけでなく、パーソナライズ施策を行うには、ターゲットを絞りこむための属性データや行動データが不可欠です。
しかし、なんでもかんでもデータを入れれば良いというわけではありません。データ容量が増えることにより、データ量課金のMAでは余分なコストがかかる、大量なデータを処理することで管理画面や計算処理が遅くなり施策実施の効率が低下するなど、さまざまな問題が発生してしまいます。
そうならないためにも、必要なデータを過不足なく定義し、継続的に運用しやすくするための設計が必要です。
今回はMAを活用するために、どのような考え方でデータを設計していくか、重要な5つのポイントを説明していきます。
もくじ
- データの流れ(入出力)の整理
- データの種類(オブジェクト、テーブル)の定義
- データの項目(フィールド)の定義
- データの範囲(レコード)の定義
- データを利用可能な状態に
データの流れ(入出力)の整理
まず、MAを入れる前の状態と入れた後の状態の、システム間のデータの流れを明らかにします。
入れる前と後で、何がどのように変わるのかを明確にしておくことで、導入時に検討すべき課題が明らかになり、ステークホルダーとの認識齟齬を防止することができます。
ただしあまり細かくしすぎると図が煩雑になるので、以下のポイントを網羅しつつ、シンプルに記載するとよいでしょう。
- MAと連携する周辺システム
- データの方向
- データ更新頻度
- データ更新手段(手動、自動)
- データ更新担当(手動の場合)
- データ更新のきっかけ(特定のアクションをきっかけに更新される場合)
- データの流れの順序(順序が重要な場合)
- データ内容
例)
データの種類(オブジェクト、テーブル)の定義
MA施策を実施する際に必要となるのはどういったデータでしょうか。最低限必要なデータは、顧客の属性データ(メールアドレス、氏名、顧客ステータスなど)ですが、その他に顧客に付随するデータがあれば、それらも連携させることで施策を1to1に近づけることができます。また、1対多の関係でもたせるデータは顧客属性データとしては持たせられないため、別オブジェクトでの連携を検討する必要があります。(例:取引先情報や案件情報、BtoCの場合は購入履歴やお気に入り商品など。)
また、行動データを連携することも検討します。例えばアドビのMAであるAdobe Marketo Engageでは、「カートに入れる」などのMAの標準ではない行動データをカスタムで定義することも可能です。
MA側のテーブル数やフィールド数に上限がある場合は注意が必要です。既存のデータを統合または分割する必要が出てくる可能性があり、整理が必要になります。
データの項目(フィールド)の定義
次はオブジェクト、テーブルの各項目を定義します。
オブジェクトやテーブルにはいくつもの項目がありますが、マーケティング施策に必要な項目とそうでないものがあるはずです。
選定ポイントは大きく以下の4つです。
- セグメントの抽出に利用できるか
- メールに差し込みたいか
- フォームで獲得したいか
- システム連携上必要か
「4.システム連携上必要か」は具体的に、システム間のキーとなる情報(会員ID)や施策のトリガーとなるデータなどを指します。また、「なんか必要そう」「いつか使うかも」といった項目も出てくると思いますが、まずは現時点で必要な項目から定義することをおすすめします。あとになってから、「作ってはみたものの、結局使わなかった、、」なんてことを避けるためです。また、シンプルにしたほうがデータの網羅性が増し運用効率も高まります。
同義の項目が複数ある場合もこれを機にまとめることも検討しましょう。
データの範囲(レコード)の定義
データの範囲(レコード)とは、顧客データの場合は「顧客」です。つまり、レコード数=顧客データ数となります。すべてのレコードを入れるでも良いのですが、MA側に容量制限がある場合も多いですし、不要なデータが存在することで抽出に時間がかかったり、送ってはいけない顧客への誤送信リスクがあったりとさまざまな問題も出てきます。
そのため、マーケティング施策に必要なレコードに絞って入れる必要があります。特に、顧客のレコードについては、MA対象か(見込み顧客か、既存顧客か)、業者、パートナーではないか、メールを配信しても良いか(配信拒否されていないか、クレーム顧客ではないか)、などを検討し本当に必要な顧客のみ入れるようにします。
それでも絞りきれない場合は、ターゲット業種や直近活動のあった顧客に絞るなども一つの手です。
データを利用可能な状態に
MAを運用する際に、データを抽出しやすい形にすることも重要です。たとえば、都道府県のフィールドに「東京都」「東京」「とうきょう」などいろいろな形式で入っていると、東京の顧客を抽出したい場合に、全ての文言を指定する必要がでてきますし、もしかしたら他の表記(TOKYO、Tokyoなど)で入っているレコードがあった場合、抽出されなくなってしまいます。そういったことを避けるためにも、MAにデータを入れる前に、どれかに表記を統一しておく必要があります。
それだけではなく、今後そのような表記ゆれを許さないように、データの入力元の改善を検討する必要があります。例えば社内システムの入力画面や、Webサイトの問い合わせフォームなどの都道府県が自由入力になっているようであれば、選択肢に変更することで表記ゆれを防止できます。
その他にも、「各顧客がどういったところから獲得されたのか」も入れておくとよいでしょう。お問い合わせから来たのか、イベントから来たのかで顧客の温度差も違いますし、どの獲得ソースの顧客が商談に進む率が高いなどの分析にも後々活用できます。
また、MA導入前に別システムでメールを送っていた場合、配信を停止希望した、メールエラーが生じたなど、間違って送ってしまわないようにフラグをつけておくことも必要です。
ここまでMAを導入するに際してのデータ設計のポイントについて説明してきましたが、あくまでも重要かつ一般的なポイントに絞っております。実際は企業様ごとにシステムやデータの構成が異なり、導入MAに合わせた様々な調整が必要で、なかなか自社でデータ設計を1から実施することは難しいのが実情です。導入するMAの知識や様々なシステム間連携のユースケースを持ち合わせている専門家の意見を取り入れることで、スムーズに進めることができます。
アドビではアドビのMAであるAdobe Marketo Engageに精通した実績豊富なコンサルタントが企業様の現況とニーズに合わせて、データの種類、連携システム、運用体制などを考慮し、最適な形でご支援いたします。また、現在運用中で、データ活用にお悩みがある場合も、ぜひアドビにご相談ください。
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