サイト改善のPDCAを高速化、目に見える顧客満足を実感

ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア

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創業

1993年

所在地:東京www.sie.com/jp

8倍

webサイト制作のスピードが向上

導入製品:

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課題

PCやゲーム端末に加え、スマートフォンからのアクセスが急増。サイトのマルチデバイス対応をさらに強化する必要があった

従来のシステムではサイト更新や改修に多大な時間がかかっていたため、リードタイムの短縮が求められていた

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成果

マルチデバイスに対応したサイト制作を迅速に行えるようになり、更新回数が増加。コンテンツの鮮度が保たれ、ユーザー満足度が向上した

Adobe Experience ManagerとAdobe Targetの連携によって、パーソナライズされたコンテンツの制作/提供が容易になった

利用されるデバイスが多様化し、サイト更新の負荷が増大

ソニーグループのゲーム事業を担う会社として1993年に創業し、「プレイステーション」に関する企画、開発、販売を展開するソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)。2013年/2014年には、家庭用ゲーム機の世界販売台数首位を獲得するなど、ゲーム市場をリードする存在となっています。

2016年4月の社名変更を機に本社機能を米国、本体の設計/製造機能を日本、マーケティングの中核機能を欧州に設置し、グローバルなビジネスを進めるための体制強化を果たしました。

同社は、初代「プレイステーション」を1994年に発売して以降、「プレイステーション 2」「プレイステーション 3」「プレイステーション 4」と、据え置き型端末を展開するのと並行して、いつでもどこでもゲームを楽しめる携帯型端末PSP®「プレイステーション・ポータブル」「プレイステーション ヴィータ」を発売。2016年10月には仮想現実を楽しめる「プレイステーション ヴィーアール」を発売するなど、常に新しいゲームのあり方を提案しています。

このように、ゲーム端末が進化してきたことで、ゲームの楽しみ方も変化していると、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(以下、SIEJA)の秋葉武宏氏は語ります。

「以前は、ゲームソフトを購入し、そのままエンディングまで遊ぶというシンプルな楽しみ方が一般的でした。しかし現在は、他のプレイヤーとのオンラインプレイが楽しめたり、追加のシナリオをダウンロードして楽しめたりと、ゲームの楽しみ方自体が多様化しています。ハードやソフトを提供するだけでなく、ネットワークサービスを通じて様々な遊び方ができることを、お客様にきちんとお知らせする必要性が高まっているのです」(秋葉氏)

ゲームの魅力を伝えるため、機動力やクリエイティブ面の柔軟性を重視

そこでSIEJAでは、新たなサイト管理システムの導入を検討。複数のシステムを比較した結果、「Adobe Experience Manager」を採用しました。

当初、候補に挙がったのは、管理性の高さを重視した他社ソリューションでした。しかし、「プレイステーション」の魅力や楽しさを伝えていくには、管理性よりも、自由度の高いサイト制作を、迅速に行える方が重要と判断。再度、検討を進めた結果、最終的にAdobe Experience Managerの採用に至りました。

「管理性重視のシステムは、事前にデータベースを構築し、それを基にサイト構築を進める必要があるなど、機動力やクリエイティブ面で制約が多い印象でした。これでは従来の課題を解決できないと考えたのです」(秋葉氏)

これに対しAdobe Experience Managerは、レスポンシブデザインのマルチデバイス対応テンプレートを用意することで、PC、プレイステーション本体、各社のスマートフォンに対応したサイト制作を、効率的に行うことが可能に。コンテンツの追加も、コンポーネントをドラッグ&ドロップするだけで直感的に行える利便性を備えており、マルチデバイス向けの魅力的なコンテンツを、迅速に制作できる点を評価しました。

さらに、Adobe Experience Managerは、イメージコンポーネントやフォームコンポーネントといった、サイト制作用のデジタル資産を一元管理する「アセット管理機能」を装備。既存コンポーネントを活用することで、画像のズーム機能などを備えたリッチなコンテンツも、容易に制作できます。

「加えて、SIEJAでは以前から『Adobe Analytics』と『Adobe Target』を導入していました。これらのソリューションと連携させることで、より高度なマーケティングが行える点も導入の後押しとなりました」(秋葉氏)

秋葉 武宏氏

「Webサイト制作が以前の8倍のスピードで実行でき、運営者は企画立案に集中することができます」

秋葉 武宏氏

マーケティングコミュニケーション部ウェブ推進課課長 兼 戦略企画部プラットフォーム&ネットワーク推進課 課長(CRM担当)

コンテンツ改善のPDCAサイクルを高速化。直帰率を5ポイント改善させる

このようにSIEJAでは、Adobe Experience Manager、Adobe Analytics、Adobe Targetという3つのソリューションを活用することで、マルチデバイス向けのコンテンツ配信の効率化と、マーケティングの高度化を実現しています。

まず、Adobe Experience Managerの導入によって、リッチなサイトコンテンツを、社内で容易に制作/更新できる体制を整備。作業のリードタイムを大幅に短縮しています。また、Adobe Analyticsでの分析結果を、サイト構成やコンテンツの改善に迅速に反映するサイクルも実現。Adobe Experience ManagerとAdobe Targetを連携させることで、ユーザー属性に応じたコンテンツの出し分けなども実現しています。

以下、同社がAdobe Marketing Cloudの活用によって得ている成果を、具体的に紹介していきます。

サイト更新のリードタイムを短縮

Adobe Experience Managerを導入したことで、マルチデバイスに対応したサイトコンテンツを、短期間で用意できるようになりました。

以前は、サイト更新や制作を行う際には、まずシステム開発会社に声をかけ、打ち合わせを設定。作業依頼、見積り取得、社内決裁を経てから開発を行うプロセスとなっていました。このため、先に述べた通り、トップページに新たなコーナーを追加するだけでも、最低でも約40日間、場合によっては2〜3カ月というタイムラグが発生。また、不定期で発生する特集コンテンツについても、制作に約30日、マルチデバイスに対応させるために、さらに約20日という時間がかかっていたのです。

しかし、Adobe Experience Managerを導入した現在では、社内のスタッフだけでサイトの更新/制作を行えるようになりました。

「これによって、Webサイトトップページへのコーナー追加は、約8倍のスピード感で実行でき、約5日間で完了することができます。特集コンテンツの制作も約30日間を約15日間に短縮。マルチデバイス対応についても、約10日間で作業を完了できるようになりました(図1)」(秋葉氏)

もちろん、これは平均的なリードタイムで、さらに短い期間で対応できるケースもあります。例えば、ある特集コンテンツの制作では、わずか2日間で作業を完了できました。これはAdobe Experience Managerの導入効果を端的に示すケースとして、社内でも話題になったといいます。

図1:Adobe Experience Managerのテンプレートを活用したマルチデバイス対応の例

プレイステーション端末向けのページでは、ワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK 4」で操作しやすいよう、 メニューを追加表示するといった対応も行われている

PDCAサイクルが高速化

迅速な作業が可能になったことで、サイト改善のPDCAサイクルも高速で回せるようになりました。

例えばトップページの更新は、Adobe Experience Manager導入直前の5カ月間では「大型タイトル特別訴求」を3回行っただけにとどまりました。これに対し、導入後の5カ月間では、「大型タイトル特別訴求」を6回、「コーナー追加/改修」を5回、「ユーザー属性によるターゲティング」を3回と、合計14回の更新を実施。以前の約5倍のペースでサイトの改善を実施できています。

「これによってコンテンツの鮮度を保つことができ、サイトを訪れるユーザーの動きにも変化が表れています。まず、トップページを訪問したユーザーが、他ページへ遷移せずにサイトを離れてしまう直帰率が、40%から35%に改善しました。頻繁なコンテンツの追加や見直しが可能になったことで、ユーザーの関心や興味を引くことができた結果だと分析しています」と秋葉氏は話します。

他にも、サイト内のブログコーナー「PlayStation.Blog」へのコメント数も、37%増加。サインイン回数についても、サインイン場所の配置を工夫することで、以前の8倍以上に増加しています。

以前は、Adobe Analyticsでの分析結果などから、ユーザー動向に関する何らかの仮説を立てたとしても、それをサイト上で検証するのに膨大な時間がかかっていました。その間に、ゲームを取り巻く環境などが変化する可能性もあり、仮説が本当に正しかったのか、妥当性を検証することも困難だったといいます。

「しかし現在は、迅速にPDCAサイクルを回せるようになり、Web上のコンテンツの質や運用効率も高まっています。デジタルチャネルがお客様との接点として非常に重要になる中、こうした社内体制を整備できた意義は大きいといえます」(秋葉氏)

コンテンツ制作への注力が可能になりNPSも向上

サイト更新やPDCAサイクルを回すことが容易になったことで、サイトコンテンツの検討にも、より多くのリソースを割けるようになっています。

「特に大きな成果を得られたケースとして、2015年6月に実施した『プレイステーション』オフィシャルサイトのリニューアルがあります。リニューアルは、総アクセス数のうち、約50%が集中するトップページから着手しました。ユーザーが本当に知りたい情報は何か、どのようなレイアウトが利便性が高いのかといったことを、Adobe Analyticsの分析結果と照らし合わせながらじっくり検討。最終的に、コンテンツ数を絞り込む方向でリニューアルしたところ、ユーザーの満足度を大きく向上させることができたのです」と秋葉氏は話します(図2)。

具体的には、ユーザー満足度を測るため、SIEJAではサイト訪問者に対して「他の人にこのサイトを推薦できますか」というアンケートを実施。その結果を基に、顧客ロイヤルティを「NPS(Net Promoter Score)」として数値化していますが、この値の平均が、リニューアル前はマイナス35%だったのが、マイナス26%にまで上昇したのです。

実は、コンテンツ数を絞ることについて、社内には「リンク箇所が減り、ユーザー満足度が低下するのではないか」という不安の声もあったといいます。しかし、サイト運営チームで様々な観点から検証し、その結論を踏まえてアドビのコンサルタントにも相談した結果、以前のトップページは情報量が多すぎ、目的の情報が探しにくくなっていると判断。リニューアルに踏み切りました。

「Adobe AnalyticsやAdobe Targetを導入したときもそうでしたが、アドビは単にソリューションを提供するだけでなく、どう使えば高い効果を得られるか、ユーザー視点に立ったコンサルティングも行ってくれます。今回のトップページリニューアルも、アドビのコンサルタントのサポートがあったからこそ、高い成果につながる判断ができたと思います」(秋葉氏)

図2:Adobe Experience Managerでリニューアルされたトップページ

表示するコンテンツを整理し、更新頻度を高めたことで、訪問回数が14%増大し、直帰率は5ポイント改善。また NPSも上昇し、顧客満足度の高いサイトへ改善することができた

より自由度の高いサイト制作が可能に

Adobe Experience Managerを導入したことで、サイト制作時の自由度が大幅に向上。以前は実現が難しかったプロモーション手法にも、挑戦できるようになっています。

例えば、コンテンツの追加が容易に行えるようになったことで、訪問者に期待を持たせるティーザー広告的なコンテンツを、段階的に追加していく「ストーリー仕立て」のプロモーションなども行えるようになりました。

「ユーザーの関心を徐々に高めていき、頃合いを見計らって購入ページや詳細情報ページなどをご案内することで、コンバージョン率の向上なども期待できます。こうした手法をとることは、以前のシステムではほぼ不可能でした。Adobe Experience Managerだからこそ実現できるプロモーションだといえます」と秋葉氏は話します。

「自由度の高いサイト制作が可能になったことにより、サイト改修を考える際にシステムの制約や開発コスト/リードタイムなどを気にすることなく、サイト運営者は企画立案にフォーカスすることができるようになりました。今後も順次、サイト改修を進めていきたいと考えています」(秋葉氏)

情報提供のパーソナライズを推進

Adobe Experience Manager とAdobe Targetを連携させることで、提供するコンテンツのパーソナライズも進められています。

具体的には、現在は「プレイステーション ストア」を訪問したことがあるユーザーと、それ以外のユーザーとでセグメントを実施。「プレイステーション ストア」を訪問したことがあるユーザーに対しては、「プレイステーション ストア」のキャンペーン情報や、会員専用の機能/特典が利用可能なメンバーシップサービス「プレイステーション プラス」の紹介、ストリーミングゲームサービス「プレイステーション ナウ」の紹介といったコンテンツを提示。この取り組みによって、トップページから「プレイステーション ストア」への送客率は、15%以上、上昇しているといいます。

さらに、トップページのリニューアル後はサインインするユーザー数が大幅に増えたこともあり、新たなパーソナライズ施策も視野に入れているといいます。

「例えば、『このゲームをここまで進めていただいているので、追加のコンテンツをお薦めしてみよう』といったレコメンド、『最近ゲームをしていただけていないので、リマインドメールを配信しよう』といったプロモーションに生かすことも可能です。このように、ユーザーごとに最適なコミュニケーションを実現することが、今後の目標の1つとなっています」(秋葉氏)

これからもSIEJAでは、アドビのコンサルタント、およびAdobe Marketing Cloudの力を借りながら、プレイステーションの魅力を広く発信するサイト運営を続けていく考えです。

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