最適なオファーを、的確な場所で、タイミングよく
Swisscom AGは、スイス最大手の通信会社であり、同国有数のIT企業のひとつです。首都ベルン近郊のイッティゲンに本社を置く、1852年設立の伝統のある企業です。全世界で19,300人の従業員を擁し、2019年度の売上高は115億スイスフランを達成しています。同国のモバイルネットワークサービスにおいて、59%の市場シェアを占めています。
スイスの通信市場を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。デジタル化がいたるところで進み、急速に拡大を続けています。その一方で、急速に進む技術革新に合わせて、顧客のニーズが常に変化しています。同国の通信市場では、新興企業が従来のビジネスモデルを大きく変えるようなサービスを提供し、競争が激化しています。
同社では、単なる価格競争を目指すのではなく、オンラインとオフラインの顧客体験の垣根を取り払い、独自の高品質で優れたサービスを提供して差別化を図っています。では、そのようなエクスペリエンスはどのようにして生み出すことができるのでしょうか。
アドビ製品でデジタル基盤を構築
Swisscomの成功の基盤となったのは、Adobe Experience Managerの導入です。これにより、デバイス、プラットフォーム、言語を問わず、直感的な方法で顧客に対応できるようになりました。スイスのような多言語国家では、搭載されている多言語機能は根本的な優位性を生み出します。
「Adobe Experience Managerを使用して、製品、カテゴリ、ヘルプページからショッピングカートに至るまで、当社のwebサイト全体のフロントエンドのコンテンツを管理しています。「スイスの企業としては、あらゆるサービスをドイツ語、フランス語、イタリア語、英語でカバーしている多言語機能を特に高く評価しています。これにより、より効率的に作業を進めることができ、顧客に母国語で対応することができます」と、同社のシニアデジタルストラテジストを務めるNicolas Mériel⽒は述べています。
同社では、Adobe AnalyticsともにAdobe Experience Managerを実装し、訪問者の行動をよりよく理解するためのインサイトを獲得しています。「Adobe Analyticsは、私たちにとって不可欠なツールです。このツールにより、ポータル全体の訪問者数、売上、ダウンロード数を把握することができます。こうした情報を分析することで、オファーの最適化をさらに進めることができます。Analysis Workspaceは、詳細な分析と比較に特に役立ちます」、と同氏は語ります。Analysis Workspaceでは、任意の値とビューを簡単なドラッグ&ドロップ操作で組み合わせて、ほぼ無制限に分析や比較の結果を作成することができます。
こうした貴重なインサイトと顧客行動の詳細な理解は、Adobe Targetで直接活用することができます。「当社では、顧客にとって何が最も効果的なのかを知るために、Adobe Targetを使った簡単なA/Bテストから始めました。しかし今では、単純なA/Bテストの枠を超えて、Adobe Senseiを利用したマシンラーニング(機械学習)機能を使用し、幅広い顧客層に向けて関連性の高いニュースやエクスペリエンスを提供しています」とMériel氏は述べています。
同社では、Adobe Targetを使用することで、webサイトのコンテンツ、バナー、データをすばやく簡単にテストし、より優れたエクスペリエンスをリアルタイムで構築できるようになりました。初期のA/Bテストでは、主に顧客の行動データを分析して、社内の意思決定をサポートすることを目的としていました。たとえば、バナーで避けるべき色やCTAを配置すべき場所の決定などです。このようなテストを定期的におこなうことで、大きな成果がもたらされ、同社のwebトラフィックは平均で40%向上し、その取り組みが社内で高く評価されました。
現在、Adobe Targetでは、Adobe Senseiを利用したパーソナライゼーション機能の強化を進め、企業の売上向上につながる持続可能な付加価値を提供しています。Adobe Senseiにより、自動オファー機能やレコメンデーション機能が改善されたことで、同社では、手作業では得ることのできなかったインサイトを発見、獲得できるようになりました。自動オファー機能では、A/Bテストを自動化し、トラフィックをリアルタイムで、よりパフォーマンスの高いバージョンに導きます。その結果、テストデータを収集すると同時に、全体的な成果を高めることができます。
「Adobe Senseiを使用すれば、テスト段階でパーソナライズ機能を追加し、事前分析なしに顧客の行動パターンを特定して、より優れた結果を得ることができます」とMériel氏は述べています。同社では、Adobe TargetのAI(人工知能)機能とマシンラーニング機能を利用して、ワンクリックでパーソナライズされたエクスペリエンスを構築しています。
また、Adobe Campaignによるエクスペリエンスを一歩前進させました。「当初、Adobe Campaignの適用範囲は電子メールだけを考えていました。しかし、すぐにこのツールの可能性に気付きました。買い物客がショッピングカートに何か商品を入れてからwebサイトを離れても、Adobe Campaignを使用すれば、買い物かごに入っている商品を思い出してもらうための電子メールを買い物客に送信することができます」、とMérielは述べています。
Adobe Campaignでは、顧客情報、見込み客情報、ニュースレターの購読者情報など、あらゆる種類のプロファイルデータを単一のデータベースに統合します。Adobe Campaignを使用すると、マーケターはマーケティングキャンペーンのメッセージを一元管理して、顧客とのコミュニケーションをカスタマイズできます。
「Adobe Campaignは、単なる電子メールツールではありません。活用を進めることで、顧客一人ひとりのエクスペリエンスを調整するのに役立つようになります。Adobe Campaignで顧客プロファイルを活用すれば、オンラインとオフラインの顧客体験のギャップを埋めることも可能になります。将来、当社の顧客サービス担当者は、顧客がwebサイトで何を探していたのかを把握し、オフラインでシームレスに対応できるようになるかもしれません。また、顧客がスマートフォンを購入して一年を迎えたら、パーソナライズされた「バースデー」メッセージを送信するなど、Adobe Campaignを使用することで、顧客にサプライズを提供したり、喜んでもらうこともできます。現状では、こうした様々な取り組みをすべて実現したわけではありませんが、当社の歩むべき道は明確です」、とMériel氏は述べています。