Walgreens Boots Alliance、100年以上にわたって積み重ねてきたサービスの経験を次世代のデジタル顧客体験へと変革する。
1億2,000万人
世界中の顧客数
10,000店
米国および英国の店舗数
80億
デジタルと実店舗を合わせた年間取引数
「パンデミックによる混乱の最中においても、より質の高い顧客体験を提供するために、アドビを導入しました。顧客が望むタイミングで適切な体験を提供するために、重要な役割を果たしています」
Vineet Mehra氏
Walgreens Boots Alliance、グローバル最高マーケティング責任者
Walgreens、最高顧客責任者
一般的に、最高マーケティング責任者(CMO)と最高情報責任者(CIO)が、同じページで紹介されることはあまりありません。同じ部屋で仕事をすることも、そうそうないでしょう。CMOやCIOと一緒に仕事をしたことがあれば、どちらの役割の人も、独自の考え方に従い、独特の専門用語を駆使して話すことを知っています。そのため、CMOとCIOはそれぞれ自分の領域を守り、必要に迫られたときにだけ連絡を取り合うものだろうと思われがちです。
しかし、Walgreens Boots Allianceは一般的な企業ではありません。そして、同社のCMOとCIOも、まったくもって典型的ではないのです。
同社は、世界最大級の小売および卸売ドラッグストア企業のリーダーです。そのグローバル最高マーケティング責任者(CMO)兼最高顧客責任者(CCO)であるVineet Mehra氏と、グローバル最高情報責任者(CIO)であるFrancesco Tinto氏は、歴史上他に類を見ない時期に仕事に取り組んでいます。2020年に発生したCOVID-19の世界的な大流行により、医療業界では既に何年も前から迫っていた課題、つまり他の業界と同等の顧客体験を提供することが、喫緊の課題となったのです。急速に高まる顧客の期待に直面した同社では、デジタルでの消費者とのつながり方を見直す必要がありました。1億2,000万人以上の顧客を抱え、米国と英国に10,000の実店舗を持つ同社にとって、デジタルテクノロジーが自社の継続的な成功に大きな役割を果たすことは明らかでした。
顧客の健康と幸福がかかっていることから、同社は、急激に増加したデジタル体験の管理に細心の注意を払う必要がありました。同社は、WalgreensとBootsという2つの象徴的なドラッグストア企業がそれぞれに築いてきた歴史を引き継ぎ、今や、地域社会にとって欠かせない存在になっています。Walgreensは、1901年に最初の店舗がシカゴでオープンし、創業者のCharles Walgreen氏は、どの顧客にも自ら接客をしていました。一方のBootsは、1849年、創業者のJohn Boot氏により、イギリスのノッティンガムで一軒の薬草店としてスタートしました。現在では、米国と英国の顧客のほとんどが、自宅から5マイル以内の距離にある同社の店舗を利用できているというほど大規模に事業が展開されています。また、WalgreenとBootが1世紀以上前に創業して以来、薬局は変化を遂げてきました。しかし、顧客との個人的な接点が必要であることに何も変わりはありません。
Mehra氏とTinto氏には、同社を新しい時代へと導き、高品質で詳細にパーソナライズされた顧客体験を、あらゆる顧客に、チャネルを問わず、世界規模で提供することが求められていたのです。
「CIOのTinto氏は私のデジタルソウルメイトだと、よく冗談で話しています」とMehra氏は言います。
Mehra氏とTinto氏は大きな課題に直面していましたが、彼らはコラボレーションという強力なツールを自由に使うことができました。典型的なCMOとCIOの関係とは異なり、ふたりは密接に協力してWalgreens Boots Allianceのデジタルプレゼンスを一新しました。顧客体験とテクノロジーの共生が進む中、このふたりのリーダーの関係性は、CMOとCIOの役割の間にあった溝が狭まりつつあることを示す好例です。今日のビジネスでは、顧客とのパーソナルなつながりを形成することが特に重要であり、その実現にはマーケティングとITの両方が必要です。
「今日のCMOは、データアーキテクチャーやテクノロジーなどに精通していないと、本当の意味で最先端を行き、体験を構築することはできません。その一方で、現代のCIOも、顧客体験の専門用語を駆使して話せるくらいに理解を深める必要があります」とMehra氏は述べています。
専門の分野は違っても、Mehra氏とTinto氏には多くの共通点があります。ふたりともそれぞれの分野におけるトップレベルのエキスパートで、どちらもCPG(消費財)業界の出身です。また、テクノロジーに精通しているMehra氏と、顧客体験に造詣が深いTinto氏ですが、両者とも相手の注力分野に強い関心を抱いています。Tinto氏は、「私たちに共通するスキルセットは、意欲的で協力的なことです。私たちには変革を推進したいという思いがあるのです」と述べています。同社の敷地を頻繁に散歩したり、家族で夕食を共にしたり、最近ではお揃いのネスプレッソマシンでいれたエスプレッソを片手にバーチャルコーヒーブレイクを楽しんだりと、リーダーたちはさらに共通の基盤を築き上げ、生産的な共同作業の維持に積極的に取り組んでいます。
「このパートナーシップの核となっているのは、たったひとつの共通の目標です。顧客体験の改革という目標を実現するために、自分たちの仕事をITとマーケティングに分割したりせず、チームとして、提供したいカスタマージャーニーと体験に取り組んでいます」とTinto氏は述べています。
「このパートナーシップの核となっているのは、たったひとつの共通の目標です。顧客体験の改革という目標を実現するために、自分たちの仕事をITとマーケティングに分割したりせず、チームとして、提供したいカスタマージャーニーと体験に取り組んでいます」
Francesco Tinto氏
Walgreens Boots Alliance、グローバルCIO
「ドラッグストアは、地域社会における医療の最前線です。私たちは、皆さんに必要な情報を、期待どおり迅速に提供する必要があるのです」
とMehra氏は語ります。
実のところ、ドラッグストアや店舗内での体験は、この数十年の間、それほど大きく変わってはいません。多くの人が慣れ親しんでいるにもかかわらず、処方箋の受け取りは依然として時間がかかり、不満を感じることもあります。運よく処方箋が初回で正しいドラッグストアに送られていたとしても、自分が受け取りに行きたい時間にはまだ準備ができていない可能性があります。また、9時から5時まで働いている多くの人と同様に、仕事を終えた後に処方箋を預けに行く場合でも、いつまで待つかわからない長蛇の列につくことになります。
2020年のパンデミックの世界では、オンラインで食料品を注文することや、リビングのテレビで新作映画を視聴することが可能になり、旧来の方法はもはや通用しなくなりました。健康が一般の人々の関心事になっている今、特にドラッグストアにおいて、そのことはきわめて重要な意味を持ちます。
幸いなことに、Walgreens Boots Allianceにはドラッグストア体験を向上させる方法を見つけ出してきた歴史があります。同社は、「ドライブスルードラッグストア」を全国レベルで展開したことで有名です。そして、2017年にリリースされた同社のWalgreensアプリは好評を博し、300万件近い評価を受けて5つ星のステータスを誇っています。2019年の時点で、同社は既に、サービスをよりパーソナルかつ便利なものにするための本格的なデジタル変革に向かっているところでした。しかし、パンデミックによりあらゆる企業がデジタル領域に本格的に進出し始め、さらにはソーシャルディスタンスのプロトコルを順守する必要も生じたことから、同社は顧客のためにさらに多くのことを迅速に進める必要に迫られたのです。
同社のグローバルマーケティング戦略および変革担当バイスプレジデントのMatt Harker氏は、「医療業界は、その他の多くの業界で見られるような便利さに、今まさに目覚めつつあると思います」と述べています。
そこで、Mehra氏とTinto氏の出番です。
ふたりのリーダーが目指したのは、これまでになく高度にパーソナライズされたオムニチャネルなドラッグストア体験を実現すること、つまり、対面でおこなう様々なことをデジタル化して、配送を可能にすること。そして、それらを、これまでにないレベルでパーソナライズして、世界規模で実現することです。例えば、顧客が、何年も愛用している商品がなくなる頃に、過去の購入履歴にもとづいてパーソナライズされたレコメンデーションを受け取れるようになります。さらに、これまでは処方箋の受け付けしかできなかったドライブスルーで、購入した商品の受け取りもできるようになりました。顧客がドライブスルーの窓口に到着すると、既に処方箋の薬が準備されていて、すぐに受け取ることができるのです。また、毎年のインフルエンザ予防接種の時期も知らせてくれます。
同社の使命は、患者が幸福で健康的な、より優れた生活を送る手助けをすることです。詳細にパーソナライズされた顧客体験を通じてその使命を達成できるとすれば、それこそが21世紀のあるべき姿だと言えるでしょう。Mehra氏は「健康は世界で最もパーソナルなものです。そして、顧客や患者一人ひとりのためにパーソナライズし、人間味のあるカスタマイズが求められるカテゴリーがあるとすれば、それは医療にほかなりません」と述べています。
「当社のように、1億2,000万人の顧客を抱え、世界中で莫大な量のデータや取引を実施している企業なら、優れたパートナーを直ちに探さなければなりません。それも、医療のようにプライバシーに敏感な分野で必要とされるレベルの顧客データや施策の連携、パーソナライゼーションといった業務に対応できる、高い実力を持ったパートナーが必要です。このような規模で持続可能なデジタル変革を推進するためには、その場凌ぎの応急処置では対応できません」とMehra氏は述べています。
Mehra氏とTinto氏は、「顧客を第一に考えることからスタートすれば、その他のことはすべてうまくいく」という考えで一致しています。この点を考慮して、Walgreens Boots Allianceは、企業規模でパーソナライズされた顧客体験を実現するために、マイクロソフトと提携しているアドビを選択しました。「マイクロソフトとアドビの間のパイプがうまく機能しているからこそ、シームレスで迅速な導入が可能だったのです」とMehra氏は述べています。同社は、Microsoft AzureやMicrosoft Dynamics 365、Microsoft Power Platformなど、マイクロソフトのクラウドコンピューティングインフラストラクチャによる安定した基盤の上で、Adobe Experience Cloudを使用して、自分たちが思い描くレベルのパーソナライゼーションを実現できました。アドビおよびマイクロソフトと提携することで、自分たちと共に進化し「手術のような正確さ」で顧客にアプローチできる長期的なパートナーを得たのです。
「顧客にとって重要なことは何でしょうか? 製品、サービス、 コンテンツ、それともメッセージでしょうか? そのようなことを考え始めると、当社のような数億人規模のパーソナライゼーションは、すぐに手に負えなくなってしまいます。コンテンツやメッセージを連携させて、コンテクストに即してタイミングよく、一人ひとりに届けられるようにするには、テクノロジーの助けが必要です」とHarker氏は述べています。
「コンテンツやメッセージを連携させて、コンテクストに即してタイミングよく、一人ひとりに届けられるようにするには、テクノロジーの助けが必要です」
Matt Harker氏
Walgreens Boots Alliance、グローバルマーケティング戦略およびトランスフォーメーション担当バイスプレジデント
Walgreens Boots AllianceはAdobe Analyticsを利用して、顧客層をより深く理解することで、幸先のよいスタートを切れました。同社には既に、1億人のロイヤルティプログラム会員から得られる豊富な顧客データを有していたため、容易にAdobe Audience Managerを活用できたのです。同社は、小売業務向けのインテリジェントな顧客セグメントを作成し、Adobe Campaignを通じて、あらゆる顧客に最適なメッセージを配信できるようになりました。また、Adobe Targetの使用により、新しいオムニチャネル小売体験を大規模にパーソナライズしたり、それぞれの体験が最適であることを確認するために必要なテストも実行することができます。さらに、Adobe Experience Managerにより、Mehra氏とTinto氏は新しい顧客体験の可視化を実現しました。今や、ドラッグストアと小売の取引において、あらゆるチャネルをまたいで、シームレスかつ一貫性のある適切な顧客体験を提供しているかどうかを確認できるようになりました。
これは、Mehra氏とTinto氏がまさに目指していたものです。現在、同社は顧客がどこにいても対応することができます。モバイルでもノートPCでも、ドライブスルーでも店舗内でも、顧客が必要とするときに必要な場所で対応できます。これ以上の対応は、たとえ自分専属の薬剤師がいたとしても、望めないことでしょう。
「パーソナライズされた医療は、社会を変革する真のチャンスであり、その方法を私たちは理解し始めたばかりです」とMehra氏は述べています。
テクノロジーは、特に医療業界において、治療方法や医療器具、ケアの方法など、個人の健康に大きな影響を与えています。Mehra氏とTinto氏、そしてWalgreens Boots Allianceは全社を挙げて、テクノロジーを利用して、ヘルスケアをよりパーソナルでアクセスしやすいものにするために、途方もない規模で取り組んできました。年中無休の薬剤師によるライブチャットや、健康面に関する的確な提案、処方箋の記入を簡単かつ迅速にすることなど、小さな一歩の継続が重要です。Mehra氏が推測するように、こうした進歩の積み重ねが、大規模なプラスの変化へと間違いなくつながっていくことでしょう。
COVID-19が蔓延する中、このことは特に重要です。COVID-19は、世界中に波紋を広げただけでなく、多くの企業がより健康的な地域社会の構築に向けて意欲と情熱を傾ける要因にもなりました。COVID-19は、人々にヒューマニティの共有を認識するよう呼びかけています。ヘルスケア業界に携わるあらゆる人々は、新しく刺激的な方法で協力し、連携することを求められています。リーダーであるMehra氏とTinto氏は、たとえ専門分野や視点が異なっていても、専門家たちが協力し合うことで、それぞれが単独で実行でじよりも強力で永続的なものを構築できるという重要な例を、自社および業界に示しました。
Mehra氏は、「従業員が自社の方針に自信を持てるような優れた企業であれば、重要な場面において、底力を発揮することができます。当社の従業員は、COVID-19の危機において、信念を持って行動し、顧客がどこにいても対応してくれました。期待を上回るすばらしい対応でした」と述べています。