デジタルマーケティングトレンド:金融業界編[2022年版]
金融業界におけるデジタルマーケティングは複雑です。保守的な側面が多く、コンプライアンスが重視される一方で、デジタルに精通したマーケターは、ターゲットとする顧客の関心を惹きつけるために、優れた顧客体験を提供する革新的な施策の創出に取り組んでいます。
しかし、金融業界のような飽和状態にある市場においても、マーケティングは常に変化しています。デジタル変革が進む中で、ブランディング、商品、サービスで差別化を図るためには、最新のトレンドを把握する必要があります。
本記事では、2023年以降も競争力を向上させるための、金融業界における最新のマーケティングトレンドを解説します。
- デジタルの重要性
- コンテンツが引き続き重要
- データドリブン型マーケティング
- 顧客体験のパーソナライゼーション
- 差別化が成功の鍵
- AI(人工知能)とマシンラーニング(機械学習)
- チャットボット
- オムニチャネルマーケティング
- ブランドの一貫性
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金融業界のマーケティングトレンド
金融業界のように、規制が厳しくセキュリティを重視する業界であっても、顧客体験(CX)を重視し、最適化することが求められます。ここでは、金融業界における重要なマーケティングトレンドを9つ紹介します。これらのトレンドは、今後のマーケティング施策の効果を高めるための、有益なインサイトをもたらします。
1.デジタルの重要性
顧客は、時間、場所、利用するデバイスを問わず、いつでも自身の財務情報にアクセスできることを望んでいます。多くの金融機関はデジタルに対応し、顧客がPCとモバイルデバイスの両方でこうした情報にアクセスできるようにしています。Vericastのレポートによると、現在、金融機関の82%が、オンラインおよびモバイルバンキング機能に投資しています。
企業が競争力を維持および向上するためには、ソーシャルメディアの積極的な活用が不可欠です。金融機関の顧客対応は、人間味のない画一的なものになりがちです。そのため、ソーシャルメディアを通じて顧客と直接やり取りし、コミュニティを構築することが重要です。McKinseyのレポートによると、消費者の45%が、ソーシャルメディアが自身の購買決定に影響を与えていると回答しています。自社の商品やサービスと関連性の高いインフルエンサーと提携し、人とのつながりを感じられる親しみやすいコンテンツを配信することで、より広範な顧客に訴求することを検討しましょう。

Bank of Americaでは、インフルエンサーマーケティングを通じて人間味のあるブランディングを促進し、ソーシャルメディアで新たなターゲットオーディエンスにリーチしています。
2.コンテンツが引き続き重要
多くの金融機関は、コンテンツマーケティングを重視しています。Content Marketing Instituteの調査によると、B2Bマーケターの71%が、コンテンツマーケティングの重要性が増していると回答しており、このトレンドは衰える兆しを見せていません。
有益なコンテンツは、SEO対策やメールマーケティング施策だけでなく、営業施策にも役立ちます。企業理念やサービスの利点を明確に伝えることができなければ、顧客の混乱を招くことになります。わかりやすい教育的なコンテンツは、顧客のエンゲージメントを促進し、企業としての権威と信頼を構築するのに役立ちます。実践的なアドバイスを提供することで高い専門性をアピールし、商品のメリットを強調することで、顧客が財務上の目標を達成できるようサポートすることが大切です。
また、ブログ記事やランディングページに動画を追加し、競合他社との差別化を図りましょう。Wyzolのレポートによると、マーケターの87%以上が、動画がマーケティング施策のROIを向上させていると回答しています。
3.データドリブン型マーケティング
金融業界のマーケターには、直感や従来のベストプラクティスに頼る余地はありません。業界の状況、顧客の期待、デジタルマーケティングテクノロジーは急速に変化しています。そのため、金融機関も他の企業と同様に、データドリブン型マーケティングツールに投資するようになっています。
McKinsey & Companyは最新の記事の中で、データドリブン型マーケティングが「次のニューノーマル」であると主張しています。また、アドビの調査レポート『Digital Trends』では、データを利用してテクノロジーとデジタル戦略を適応させ、変化し続ける顧客のニーズに対応できている企業は、そうでない企業に比べて、年間売上が6倍以上増加していることが明らかになっています。
多くの金融機関は、社内のさまざまな部門やシステムにデータが分散していることに苦慮しています。しかし、顧客の個人情報に関する厳格な規制により、そうした状況を解消することは容易なことではありません。コンプライアンスに対応しながらデータを一元管理する仕組みを構築することで、パーソナライゼーションやオムニチャネル体験など、データドリブンなマーケティング施策を促進します。
金融業界のマーケティングは、自社の顧客データと分析ツールだけでなく、業界データや一般公開されているデータにも大きく依存してます。そのため、データドリブン型マーケティングでは、顧客の平均収入や地域に合わせてオファーを調整したり、デモグラフィック情報にもとづいて、さまざまなソーシャルチャネルでメッセージを配信したりします。
4.顧客体験のパーソナライゼーション
業界を問わず、マーケティングにおいて、パーソナライゼーションは重要です。金融業界のように、顧客一人ひとりに応じたサービスを提供することが求められる場合、その重要性はさらに高まります。パーソナライゼーションの必要性は、Capcoの調査においても明らかになっています。回答者の72%が、金融サービスにおけるパーソナライゼーションを「非常に重要」と評価しています。金融業界では、パーソナライゼーションは、より大きな安心感を生み出すのに役立ちます。匿名の利用者ではなく、ひとりの人間として顧客を扱うことで、信頼を獲得することができます。
金融業界のマーケターは、パーソナライズされた顧客体験を構築することが求められています。多くのマーケターは、パーソナライズされたメッセージを通じて、顧客に財務上のサポートとガイダンスを提供するという、独自の役割を担っています。例えば、顧客がサイトの記事を読んだり、LinkedInの投稿を閲覧したりするなどして、長期投資に関心を示した場合、適切な口座や関連する戦略、財務管理の専門家を提案します。
パーソナライゼーションを実現するためには、膨大な顧客データが不可欠です。AIを搭載したパーソナライゼーションツールを利用すれば、顧客データを自動的に収集して統合し、それを活用してメッセージをパーソナライズすることで、見込み客や顧客の共感を得ることができます。
5.差別化が成功の鍵
金融業界は、多くの企業が金融口座、金融サービス、クレジットカード、ローンなどを提供し、飽和状態になっています。金融機関の多くは、デジタル環境に既に適応しています。今後も競争力を維持し、成長し続けるためには、コンテンツと顧客体験を通じて、顧客に独自の価値を提供する必要があります。そのためには、単純な広告施策にとどまらない、革新的なデジタル施策を打ち出さなければなりません。
成功を収めている企業は、あらゆるチャネルで優れたコンテンツ、カスタマーサービス、顧客中心の体験を提供することで、長期的な信頼関係を構築し、顧客の期待に応えています。従来のパーソナライゼーションからさらに進んだパーソナライゼーションへ移行するか、競合他社がまだ利用していないソーシャルメディアの導入を検討しましょう。データドリブン型マーケティングなら、トレンドを掴んで新たなアイデアを創出し、その効果を実証できます。
6.AI(人工知能)とマシンラーニング(機械学習)
AIとマシンラーニングは、規模を問わず、あらゆる金融機関で活用されるようになっています。これらのテクノロジーは、顧客データにおける重要な傾向の特定、マーケティング業務と施策の自動化、さまざまな情報源から収集した顧客データの統合、パーソナライゼーションの改善などを通じて、データドリブン型マーケティングを最適化するのに役立ちます。
多くの金融機関では、社内のさまざまな領域で既にマシンラーニングとAIを導入しています。そのため、容易にこれらのテクノロジーを利用して、インテリジェントなマーケティングインサイトの獲得、顧客行動の予測、プログラマティック広告を実現できます。
また、マシンラーニングとAIはどちらも、大規模なパーソナライゼーションを実現するうえで大きな役割を果たします。消費者とバイヤーは、特に財務や投資を扱う企業に対して、よりレベルの高いパーソナライゼーションを期待しており、その傾向は今後も続くでしょう。そのため、企業は、顧客一人ひとりに寄り添うメッセージを大規模に配信できる能力が必要になります。それを実現する唯一の方法は、マシンラーニングとAIを搭載したスマートなツールを導入することです。
7.チャットボット
AIを活用したチャットボットは、顧客が必要なときにいつでもサポートを提供できる、利便性に優れた効果的なツールです。チャットボットが登場した当初、一部の顧客は機械による対応に抵抗感を示していました。しかし、それは過去のものとなりつつあります。
- Signifydによると、消費者の48%が、タイムリーな問題解決は、顧客体験に影響を与える最も重要な要因のひとつであると回答しています
- Insider Intelligenceのレポートでは、インターネット利用者の40%が、仮想エージェントよりも チャットボットとのやり取り を望んでいることが明らかになっています
チャットボットはいつでも利用でき、多くの顧客からの問い合わせに素早く対応できます。また、カスタマーサービスやテクニカルサポートの負担も軽減されます。
チャットボットの「性格」とトラブルシューティングの複雑さは、詳細にカスタマイズできます。また、チャットボットをサイトに統合することで、顧客を適切な解決策に誘導できます。例えば、顧客を商品ページやFAQページに誘導して詳細を確認できるようにしたり、支払いや技術の問題に関するサポートチケットを生成したり、アドバイザーや銀行員との面談を予約したりできます。
8.オムニチャネルマーケティング
ターゲットオーディエンスは、さまざまなオンラインプラットフォームを利用しているため、チャネル間のシームレスなフローを構築することは、マーケティング施策の強化に役立ちます。Omnisendのレポートによると、3つ以上のチャネルを利用しているマーケターは、ひとつのチャネルで施策を展開しているマーケターに比べて、注文率が494%高くなっています。
複数のマーケティングプラットフォームをまたいで、スムーズなカスタマージャーニーを構築するには、一貫性のあるトーンとメッセージを通じて、利用するチャネルでプレゼンスを確立することから始めましょう。
ただし、優れたオムニチャネルマーケティングを実現するためには、それだけでは不十分です。リアルタイムで更新できる、一元化された顧客プロファイルが必要です。これにより、顧客一人ひとりに寄り添い、1対1の対話を促進できます。例えば、顧客がソーシャルメディアを通じてサポートを求めたあと、電話で問い合わせてきた場合、カスタマーサービス部門は、一連のやり取りを把握している必要があります。見込み客が自社サイトの商品ページを閲覧した場合、関連するフォローアップメールをすぐに配信する必要があります。
9.ブランドの一貫性
金融業界における顧客対応は、堅苦しくよそよそしい印象を与えがちです。そのため、機械ではなく人間とやり取りしていることを感じさせるようなブランドボイスを確立し、維持することが重要です。企業が顧客の財務管理やサポートをおこなうためには、一定レベルの信頼関係が必要です。
真正性、透明性、倫理などの価値観は、顧客の金融資産を扱う際には特に重要です。顧客はまた、前向きな変化をもたらす企業を応援したいと考えています。例えば、Vericastのレポートによると、金融機関の顧客の54%が、環境の持続可能性と倫理的な商慣行への取り組みを実践している金融機関に対して、ロイヤルティを維持する可能性が高いことが明らかになっています。
最新のマーケティングトレンドに対応する方法
金融機関にとって、競合他社との差別化を図り、デジタルマーケティングの能力とトレンドの両方で最前線に立ち続けることは、非常に重要です。顧客の期待に応えられなければ、商機を逃すことになります。
顧客が何を求めており、効果的にリーチするにはどうすればよいのか、アドビの最新レポート『Digital Trends』で確認しましょう。アドビは毎年、世界中のビジネスパーソンを対象に調査をおこない、大きな混乱の中で企業がどのように変化に適応し、成功を収めているのかを明らかにしました。
今後、金融業界でどのようなトレンドがマーケティング施策の原動力となるのか、アドビの調査レポートでご確認ください。