顧客との関係性を強化すべき理由は?メリットや必要な行動8選
商品やサービスの売上アップに成功している企業の多くは、「顧客関係の構築」を重視しています。顧客と密な信頼関係を築くことで、競合企業への顧客流出の防止、商品やサービスの品質改善など様々なメリットが期待できるでしょう。
一方で、いざ顧客との関係を築こうとしても、どのような手段を取ればよいのかわからず、適切な施策を打ち出せていない企業も多いのが現状です。
この記事では、顧客との信頼関係を築くことの重要性や得られるメリットを解説します。併せて、具体的な顧客との関係の築くために必要な行動も8つ解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
企業と顧客の関係性構築が重要な理由
前提として、顧客はかかわったことのない企業のことは何も知りません。顧客の多くは商品やサービスを購入する際、まったく知らない企業よりもある程度情報を知っている企業を優先して選びます。
つまり、商品やサービスを顧客に売る前から信頼関係を構築しておくことで、選ばれやすくなる可能性があるのです。ただし、一度は購入してくれた顧客であっても、リピーターとして定着してくれるとは限りません。
現代ではオンライン/オフライン問わず、様々な企業の高品質な商品に触れられるため、品質だけを追求しても顧客をつなぎ止めるのは困難な状況といえます。
したがって、「選ばれる企業」になって商品を継続的に利用してもらうには、顧客との「信頼関係」の構築が欠かせないのです。顧客との強い信頼関係は、顧客を企業に惹きつけ、エコシステムのなかに留めることにつながります。
顧客との関係性を強化するメリット
続いて、顧客との関係性を強化することでどのようなメリットが期待できるのか、より詳しく解説します。
隠れたニーズや課題の把握
商品やサービスの売上を伸ばすには、顧客のニーズを正しく理解することが重要です。市場調査やアンケートでも意見の収集は可能ですが、顧客の本音を引き出すのは難しいケースもあるでしょう。
顧客と深い信頼関係を構築し、より密にコミュニケーションを取ることができれば、隠れたニーズや課題の発見、新商品の開発、サービスの改善などにもつながります。
また、把握した顧客のニーズがすぐに対応できる内容なら、適宜フォローすることでカスタマーエクスペリエンス(顧客体験/顧客体験価値)が高まります。その結果、さらに信頼関係が強化される好循環にもつながるでしょう。
顧客ロイヤルティの向上
「顧客ロイヤルティ」とは、特定のブランドや企業に対して愛着や親しみを感じることを指します。もともと、ロイヤルティ(Loyalty)は英語で「忠誠心」を表すものです。
例えば、商品のスペックや内容は同じ、もしくは他社により優れた商品があるにもかかわらず、いつも同じブランド/企業を選んでしまう経験はないでしょうか?これは、顧客ロイヤルティが高い状態の一例といえます。
顧客ロイヤルティを高めるには、以下のような施策が効果的です。
- カスタマーサービス(顧客サービス)での迅速な対応
- 顧客の誕生日に応じた声かけや、誕生月に利用できるクーポンの配布
- ポイントプログラムや会員制システムの導入による「お得感」「特別感」の提供 など
上記のような施策を通して誠意を示すことで、顧客はリピーターとしての定着やサービス解約率の低下、口コミによる拡散など様々な形で応えてくれるでしょう。
常に自社を選んでくれる長期的かつ愛着を持つ支持者が増えれば、貴重な意見をもらう機会も増え、商品/サービスの改善や新規商品開発にも活かすことが可能です。
顧客生涯価値(LTV)の向上
「顧客生涯価値(LTV)」とは、顧客が企業と取引を開始してから終了するまでの間、どのくらいの利益をもたらすのかを示す指標です。
顧客生涯価値はLTV(Life Time Value)と記載されるのが一般的ですが、ときにCLV(Customer Lifetime Value)と記載される場合もあり、いずれも同じ意味を持ちます。
LTVを向上させると、1人の顧客からより安定的に売上や収益を確保することができます。加えて、既存顧客の購買単価や購買頻度の向上、継続期間の延長を促すことで、より確実な収益モデルの構築にもつながります。
LTVを向上させる方法は、顧客ロイヤルティを向上させる、定期購入サービスの導入による購買頻度を上げる、など様々です。
これらの施策と並行してより良い商品、優れたサービスへの改善を図ることで、顧客はより多くの対価を支払い、信頼関係の構築と継続的な利用が期待できるでしょう。
マーケティングコストの低減
新規顧客を獲得するよりも、既存顧客との関係を構築、維持するほうが、発生するコストは低いとされています。
顧客獲得費用には「1:5の法則」というものがあり、新規顧客を獲得するために必要なマーケティングコストは、既存顧客の維持コストの5倍かかるとされているのです。
既存顧客であれば、すでに自社との関係を一度は構築済みのため、キャンペーンの実施など適切なアプローチにより、リピートの可能性を高めることができるでしょう。
既存顧客と深い信頼関係を築くことは、マーケティング費用を抑えるとともに、全体的な投資に対する収益率(ROI)の最大化にもつながります。
顧客との関係性強化に必要な行動8選
顧客関係を構築する方法は、企業や顧客の数だけ存在します。続いて、その一般的な戦略を8つ紹介します。それぞれの方法を試し、自社の顧客に対して最高の価値を提供できるようにしましょう。
1.顧客を把握する
顧客関係を構築するには、まず顧客について把握する必要があります。顧客が何を好み、何を動機としているかを知ることは、ニーズを満たすために非常に重要です。
顧客を把握するには、以下3つの手順を経るとよいでしょう。調査が必要なものの、その分、理想的な顧客への理解を深めることが可能です。
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- 手順1.ペルソナの構築
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ペルソナとは、商品やサービスを提供するうえで、おもにどのような顧客に向けているのかを具体的な人物像として設定するものです。顧客が自社を利用している理由や手段を特定する際に役立ちます。ペルソナを設定する際は、まず以下のような顧客の基本的な特性を加味しましょう。
【特性の例】
年齢、性別、職種、地域、学歴、収入、家族構成、趣味、利用するSNS、現在の悩み
また、顧客の心理状態についても調査することが大切です。例えば、インタビューやアンケートを実施して意見を集める方法がおすすめです。より具体的なペルソナ設定が可能になるだけでなく、顧客の購買動機の把握もできます。
ペルソナを設定し把握することで、顧客がどのタイミングで自社商品やサービスとの接点を持つのかが明確になるでしょう。
【関連記事】
ペルソナデザインとは?その作成方法やマーケティング活動方法をご紹介
- 手順2.カスタマージャーニーの作成
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を購入、もしくはサービスを利用し、継続や再購入するまでの道程のことです。カスタマージャーニーを作成し、購入前/購入時/購入後など顧客と企業のあらゆる接点を分析することで、顧客との関係改善策を練ることができます。
- 手順3.顧客プロファイルの作成
最後の手順として、ペルソナを超えて顧客プロファイルに移行します。様々な顧客の情報を収集、蓄積し1人の人間として統合し管理することで、実際の顧客と有意義な関係を築くための鍵になります。
2.優れたカスタマーサービスの提供
顧客関係の構築には、優れたカスタマーサービスを提供し顧客の満足度を高めることが効果的です。自社を競合他社と差別化することにもつながるため、顧客ロイヤルティの向上にも役立ちます。
優れたカスタマーサービスを提供する際は、以下のようなポイントに注目するとよいでしょう。
- 迅速な対応
- カスタマーサービスを常に稼働させるなど、顧客からの要望に迅速に応えられる体制を整えましょう。返答を待つ見込み顧客やサポートを待っている顧客の待機時間を減らし、「待たされるストレス」を防止できます。
- 丁寧な対応
- 顧客の悩み/問題に対して、自分ごとのように共感し対応しましょう。「親身になって対応してくれた」と顧客は感じ、満足度の高い顧客体験の提供につながります。
- 顧客が連絡しやすい環境づくり
- ホームページなどに具体的な問い合わせ方法を明記したり、お問い合わせフォームを設置する際は入力項目を少なくしたりなど、お問い合わせまでのハードルを下げることが効果的です。
上記に加えて、可能な限り先回りしてニーズを予測し、必要なサポートを提供するのもおすすめです。顧客インセンティブ(商品以外の価値)を提供することで、企業や商品/サービスに対する印象の向上にもつながります。
3.コミュニケーションのパーソナライズ化
パーソナライズとは、顧客の基本情報や興味関心、行動などを分析し、一人ひとりに合わせたサービスやコミュニケーションを提供することです。コミュニケーションのパーソナライズ化によって、顧客体験の向上や販売促進、売上の増加、顧客ロイヤルティの向上が期待できます。
コミュニケーションのパーソナライズ化では、以下のような手段を用いるとよいでしょう。
- パーソナライズされたおすすめ情報の提供
- 顧客データを利用して購買習慣を特定し、パーソナライズされた情報を提供しましょう。例えば、商品詳細ページやショッピングカートページで関連する商品を提示します。また、一度離れた顧客に対してリターゲティング広告を配信する、過去にカート落ちした商品に関する電子メールを送信するなどの方法も効果的です。
- 個人的な対応
- 例えば、コンタクトフォームに顧客から記入があったら、個人の電子メールから返信しましょう。連絡先に電話があれば、電話で対応します。また、webサイトにライブチャットウィジェットを設置し、顧客がまるで本物の人間と話すことができるようにするのも効果的です。
- 記念日の電子メールやパーソナライズされたインセンティブの提供
- 誕生日や入会記念日などの重要な日にパーソナライズされた電子メールを送信することで、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現できます。併せて、割引などのプレゼントも同封しましょう。
- Adobeの調査では、顧客の67%がパーソナライズされたプロモーションを希望し、61%がパーソナライズされたオファーによって購入の可能性が高まると回答しています。
4.期待を超える顧客体験の提供
購入する商品やサービス、分野や業界にもよりますが、顧客は商品やサービスを通してどのような体験ができるか期待を抱いているケースが多いでしょう。その期待を超えることで、顧客により印象的な体験を提供し、深い顧客関係の構築が期待できます。
例えば、以下のような取り組みを行うと、顧客の期待を上回る体験の提供につながるでしょう。
- ニーズの先取り
- 顧客からのフィードバックなどから改善できる点を探し、ニーズを先取りしましょう。加えて、競合他社の評価もチェックし、他社が失敗している点を先取りして改善するのもおすすめです。
- 信頼の構築
- 自社が顧客に対して提供できることや約束できることを明確にするとともに、期待以上のサービスを提供できるよう努めましょう。期待を上回る価値が提供されることで、自社に対する信頼度がより深まります。
- 適切な従業員教育
スタッフが自社のブランドメッセージを体現し、顧客の期待を超えられるように教育を行うことが重要です。例えば、接客マニュアルの作成および従業員への共有、顧客の不満に対する対応やスキル習得に関する講習の実施などが挙げられます。
- 適切な謝罪
ミスが発生したときは、迅速かつ誠心誠意謝罪を行うことが大切です。また必要に応じて、納期に間に合わなかった場合は送料の返金など、具体的な補償を行うのもよいでしょう。
多くの業界では、顧客の期待値はそれほど高くないとされます。誠実な対応に徹することで、競合他社との差別化を図ることができます。
5.付加価値の創造
顧客は購入を目的に訪れますが、顧客にとってさらなる価値を生み出すことができれば、より強固な信頼関係の構築につながるでしょう。
顧客への付加価値の提供を考える際は、まず自社の価値提案を明確にすることが大切です。自社と競合他社との差別化を図れない価値や、自社商品/サービスと関連性のない価値を付けても、効果的な付加価値の提供にはならないためです。
自社商品/サービスとの関連性を考慮しつつ、競合他社との差別化を図れる具体的な付加価値戦略としては、以下が挙げられます。
- 特定分野の専門家になる
ブログやYouTubeチャンネルを開設し、自社の商品やサービスに関する特定の分野について視聴者に情報を提供します。
また、フォーラムを主催して、顧客の課題に関するアドバイスを提供したり、コミュニティサイトなどで質問に答えたりするのも効果的です。顧客から信頼できる情報源として認められれば、必要なときに顧客から接触される可能性が高くなります。
- コミュニティを構築する
自社ブランドや商品に関するコミュニティを形成することで、企業と顧客双方の商品に関する理解を深めることが可能です。
例えば顧客間での意見交換を行えば、より効果的な使用方法や商品の不満点などを把握でき、企業は顧客のニーズやフィードバックを知る機会となります。
また、インフルエンサーに自社商品/サービスを紹介してもらうインフルエンサーマーケティングも、コミュニティ構築につながります。
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- 活動を支援する
サステナブルな商品を販売している企業は、環境問題に取り組む非営利団体と提携し、その活動をサポートしましょう。感動的な創業ストーリーがある企業であれば、下積みの起業家を支援する団体と連携することも可能です。
志が同じ人々が集まるコミュニティ内で、自社と潜在的な顧客との関係を構築することもできます。
6.ロイヤルティプログラムの導入
ロイヤルティプログラムは、購買単価が高い、サービスを多く利用しているといった優良顧客や長期顧客に対して特典を与える施策を指します。
多くの顧客は、「自分の購買行動が大きな目標達成に貢献している」と感じることを好みます。そのため、ロイヤルティプログラムを導入することは、顧客の自社商品やサービスに対する愛着を感じてもらえるだけでなく、購買意欲を刺激しLTVの向上や長期的なファン化にもつなげられるでしょう。
効果的なロイヤルティプログラムとしては、以下が挙げられます。
- 購入回数やサービス利用回数が多いほど、ポイントや現金の還元するサービスの実施
- 利用金額が多いほど新しい特典を受けられるサービスの実施
- 会員制を導入し、利用回数に応じた会員ランクの設定 など
Sephoraのロイヤルティプログラム「Beauty Insider」では、会員資格とそれぞれの特典が明記されています。上級会員になると、割引やイベントなどの特典をより早く、または独占的に利用することができます。
ここで紹介した取り組みとは別に、ロイヤルティの高い顧客には個別にギフトなどでサプライズを演出するのも、良好な関係を強化する方法として効果的です。
7.一貫性のあるコミュニケーション
商品や業界によっても変動するものの、一般的に売買に至るまでには電子メールやソーシャルメディアなどで3~9回の顧客との接点が必要だとされています。
これらの接点で一貫性のあるブランドメッセージを発信することで、円滑なコミュニケーションと深い信頼関係の構築が可能になるでしょう。
また発信する際は、「インバウンドマーケティング」と「アウトバウンドマーケティング」を適切に使い分けることも大切です。
- インバウンドマーケティング
インバウンドマーケティングとは、企業側から売り込むのではなく顧客側から主体的に見つけてもらうマーケティング施策のことです。
例えば、ソーシャルメディアでの発信やメールマガジンの配信、ブログコンテンツなどが挙げられます。インバウンドマーケティングでは接触する媒体によって認識の相違が生じないよう、それぞれのマーケティング資料を統一し一貫性のある内容にすることが重要です。
- アウトバウンドマーケティング
アウトバウンドマーケティングは、企業側から顧客へ積極的にアプローチを行うマーケティング施策のことです。
不特定多数に向けた施策が多いのが特徴で、TVCMやダイレクトメール、展示会の開催などが該当します。短期間で成果を見込める反面、コミュニケーションの頻度が高すぎるとかえって顧客に迷惑を感じられ避けられてしまう恐れがあります。
Databoxの調査によると、マーケターの33%が毎週電子メールを送っていることが明らかになりました。購読者数、開封率、クリックスルー率に注意を払い、それらが急に低下した場合は、ペースを落とす必要があるでしょう。
インバウンドマーケティング/アウトバウンドマーケティングどちらの手法を用いる場合も、常に主張に一貫性を保ち誠実で透明性のある対応を心がけることが大切です。
8.顧客の意見の汲み上げ
顧客はフィードバックを手軽に提供できると、企業をより身近に感じることができます。そのフィードバックに基づいて行動することで、緊密な顧客関係の構築につながります。
有益かつ顧客との関係構築に役立つフィードバックの収集方法は、以下のとおりです。
- レビュー
WebサイトやSNSなどは、多くの顧客にとってレビューやフィードバックを気軽に残せるツールの一つです。
自社や商品/サービスのwebサイトに、レビュー投稿欄など顧客がフィードバックを残せるツールが備わっているのを確認したうえで、利用を促すことが大切です。
- アンケート
電子メールなどでアンケートを実施すれば、多くの顧客からフィードバックを集めることが可能です。アンケートでは、顧客が実際に商品を使用して感じた意見や不満点など、顧客の本音を集めることができます。
アンケートを実施する際は、短くシンプルなフォームを作成するのがおすすめです。
- フォーカスグループとユーザーテスト
より詳細な情報が必要な場合は、フォーカスグループとユーザーテストを実施しましょう。フォーカスグループは顧客のグループを作成しインタビューなどを実施して情報を収集するもの、ユーザーテストは顧客に実際に商品を使用してもらい様子を観察するものです。
アンケートと並行してこれらの手段を用いることで、より正確な結果を得ることができます。
顧客との関係性強化に取り組みましょう
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顧客との関係構築の方法は、顧客の把握や優れたサービスの提供、パーソナライズ、付加価値の創造など多岐にわたりますが、なかには「何から始めるべきかわからない」と悩む方もいるでしょう。
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(公開日:2022/11/1)