ペルソナデザインとは?作成方法やマーケティングでの活用方法などを紹介

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広告、コンテンツ作成、メール配信、セミナー/展示会の企画など、すべてのマーケティング施策をするうえで、顧客への理解を深めることは欠かせません。

顧客に選ばれるために、ペルソナを明確にデザインし、彼らのカスタマージャーニーに寄り添いながら、顧客とコミュニケーションをしていくことが求められています。情報や物があふれている現代だからこそ、一人ひとりの顧客に的確にアプローチする必要があるのです。

今回は、ペルソナデザインの概要を紹介したうえで、メリットや具体的な作り方を解説します。さらに、マーケティングにペルソナデザインを取り入れるときのコツや、ペルソナデザインの企業事例も紹介するので、ぜひご覧ください。

目次

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ペルソナデザインとは

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ペルソナ&カスタマ・エクスペリエンス学会が公表している定義によると、そもそもペルソナとは「企業が提供する製品やサービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデル」です。

ペルソナデザインとは、この顧客モデルを設定することを指し、ペルソナ設計とも呼ばれています。

通常のマーケティング活動では、以下の属性で顧客をセグメンテーションし、そのなかから標的とする的(マト)を定めるターゲティングのプロセスを踏みます。

  • デモグラフィック属性
    企業の場合:業種や業態、売上規模、地域 など
    個人の場合:年齢や性別 など
  • サイコグラフィック属性
    趣味や趣向、価値観、欲求 など
  • ビヘイビア属性
    購入頻度や来訪回数 など

一方、ペルソナデザインでは、通常のマーケティング活動よりもさらに踏み込んで、理想の顧客像を、あたかも実在しているような「人物像」として描き出します。

なお、ペルソナデザインは、ユーザーが目に触れるもの全般を指す「ユーザーインターフェイス(UI)」や、ユーザーが製品/サービスを通じて得られる体験を指す「ユーザーエクスペリエンス(UX)」の質を高めるためにも重要です。

ペルソナとターゲットの違い

ペルソナと同じくユーザー像を定義するマーケティング用語として、ターゲットがあります。

ターゲットの設定では、大まかな属性で定義することが特徴です。一方、ペルソナデザインでは年齢や居住地、職業といった情報のほか、趣味、価値観などの踏み込んだ情報も設定します。

例えば、BtoB企業のターゲティングでは「売上高1,000億円以上の製造業に勤める部長格以上の意思決定者」などと定義されます。しかし、ペルソナデザインの場合、以下のように人物の顔や生活が具体的に思い浮かぶレベルまで、顧客像をリアルに描きます。

【ペルソナデザインの例】

  • 売上高1,500億円のグローバル製造業に勤める50歳の男性
  • マネジメントスキルを買われて中途で入社し、様々なシステム開発プロジェクトを統括
  • プロジェクトマネジメントに関する業界紙を購読し、NewsPicksで情報を日々収集
  • 休日はアウトドア型で、趣味はゴルフとヨット

上記のように細かく人物像を定義するペルソナデザインなら、ターゲット設定で可視化しづらいユーザーの潜在的なニーズや悩みを掘り起こすことが可能です。その結果、製品やサービスの訴求力を高めるマーケティング施策を練りやすくなるでしょう。

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ペルソナデザインのメリット

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ペルソナデザインを行う際は、定性調査や定量調査などでデータを集め、社内で繰り返し議論をするなど手間をかける必要があり、一定の負担がかかります。しかし、ペルソナデザインに取り組むメリットは大きいとされています。

ここでは、ペルソナデザインの具体的なメリットを見ていきましょう。

1.顧客のことを深く理解できる

ペルソナデザインに取り組む最大のメリットは、なんといっても顧客への理解が深まることです。

マーケターによっては、ターゲット顧客のことを「大企業の人事担当者」「健康意識の高い主婦」など、大まかにしか把握できていないケースがあります。しかし、それでは効果的なマーケティングは実行できません。

ペルソナデザインに取り組み、ユーザーインタビューや行動観察、営業/カスタマーサポートへのヒアリングをするなかで、マーケターは顧客に対する理解を深めることができます。

特に法人企業の場合は、顧客と直接触れるのは営業やサポート担当者だけで、マーケターは直に顧客に会ったことがない、という場合も少なくありません。そのようなマーケターにとって、ペルソナデザインのプロセスは非常に有意義な機会になります。

2.意思決定が迅速になる

顧客のことを深く理解できていれば、どのようなチャネルで、どのようなメッセージやコンテンツを、どのタイミングで届け、どれぐらいの予算をかけるのか、といった判断を迅速にできるようになります。

意思決定が迅速になるメリットは、想像以上に大きなものです。特に、webサイトリニューアルや大きなキャンペーンを実施するとき、あるいは営業担当者や経営陣など複数人を巻き込みながら進めるプロジェクトに取り組むときには、大きな効果が期待できます。

マーケティング担当者の一存ですべてを決められない場合も、具体的な人物像が描かれた「ペルソナ」があることで、プロジェクトチーム内に判断軸が生まれ、意思決定やコミュニケーションのスピードは劇的に速くなります。

3.的確で刺さるマーケティング施策を打てる

的確でユーザーに届きやすいマーケティング施策を打てることも、ペルソナデザインのメリットです。例えば、何かの施策を企画する際、より効果的なマーケティングを行うには、以下AとBのどちらのパターンでユーザー像を設定すればよいのでしょうか。

【パターンA】

  • 大手企業のSNS運用担当者

【パターンB】

  • 年商1,000億円以上のグローバル製造業の宣伝部に所属している20代後半の男性
  • 自社のFacebookページのいいね!数を増やしたいと思っているSNS運用担当者

結論からいうと、パターンBのようなペルソナを作ることが理想です。

喜ばせる必要のある対象を明確にするのと同時に、喜ばせなくてよい対象も明確になります。結果として、深く刺さるメッセージを、適切なチャネルで伝え、顧客の興味/関心を喚起できるようになるでしょう。

ペルソナデザインは、マーケティング活動で成果を上げるために欠かせないプロセスです。

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ペルソナの具体的な作り方|4つの手順

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続いて、ペルソナデザインの具体的な作り方を、4つの手順で紹介します。

1.いくつかの顧客群に分ける

まずは、自社の顧客をセグメンテーションすることから始めましょう。例えば、既存事業であれば、既に保有している顧客情報(業種や規模、担当者の部署や役職)などをもとに、セグメントを行います。

新規事業であれば、定量/定性調査のデータから、ターゲットとなりそうな顧客をいくつかのグループに分けます。

2.ペルソナとなる顧客群を選ぶ

次に、ターゲットとなりそうな顧客群のなかから、ペルソナを作成するグループを決めます。明らかに際立った顧客群がなければ、そのなかで優先順位をつけ、いくつかのペルソナを作成します。

3.データを集める

続いて、ペルソナ作成のもとになる情報を集めます。参照するデータ例として、以下が挙げられます。

  • ユーザーインタビュー
  • ユーザー観察
  • アクセス解析データ
  • 購買履歴データ
  • 一般に公開されている公的な調査データ

場合によっては、顧客と接することが多い営業担当者やカスタマーサポート担当者、現場の販売員に話を聞きに行くのもおすすめです。視点と行動範囲を広げて、洞察のもとになる良質な情報を集めましょう。

4.データをまとめ、ペルソナを作成する

手順3で集めたデータをまとめ、顧客の行動や性格、属性の傾向を抽出し、ペルソナシートを作成します。

あくまで一つのフォーマットですが、以下のような項目について明文化し、ペルソナシートを完成させましょう。

<基本情報>

  • 顔写真
  • ペルソナの名前
  • 年齢
  • 勤務先(業種/売上高/従業員数/部署/役職)
  • 居住地
  • 家族構成

<ストーリー>

  • ペルソナが置かれている状況、感じている課題、どうしたいと思っているかをストーリー形式で記述する

<仕事上の情報>

  • 職務内容
  • 仕事への想い
  • 会社から与えられたミッション
  • 製品、サービスを利用する上での役割
  • 予算権限

<情報源>

  • よく見るメディア
  • ソーシャルメディアの利用状況

<ゴール>

  • 長期的な目標
  • 直近の目標

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マーケティングにペルソナデザインを取り入れるときのコツ

ここからは、マーケティングにペルソナデザインを取り入れるときのコツを3つ紹介します。

1.カスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーマップとは、彼ら(ペルソナ)が課題を認識してから、製品を比較/検討し、導入後に目的を達成するまでの流れを時系列で描いたものです。

カスタマージャーニーマップを作成し、ペルソナの動きを見える化することで、タッチポイントを洗い出し、適切なタイミングで適切な情報を伝えることができるようになります。

カスタマージャーニーマップの作成については、以下の記事をご覧ください。

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なお、カスタマージャーニーマップの例として、就職活動が始まってから入社が決まるまでの流れを以下に示します。

広告形態ごとの信頼度

出典:2時間で作るカスタマージャーニーマップ――実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ|顧客の行動パターンを理解するためのカスタマージャーニーマップ入門|Web担当者Forum

2.ペルソナのカスタマージャーニーに寄り添ったマーケティングを実施する

カスタマージャーニーマップが完成したら、以下のポイントを押さえつつ、自社の営業やマーケティング施策に落とし込んでいきましょう。

  • ペルソナにどうやったらリーチできるか
  • どのような情報、メッセージなら興味や関心を持ってもらえるか
  • ペルソナと継続的な関係を作っていくにはどうすればよいか

例えば、webサイトのマーケティング施策を行う場合は、ペルソナに該当するユーザーが訪問したときに「欲しかった情報が見つかった!」と喜んでくれるようなコンテンツを用意しましょう。

ニーズを汲んだ施策を実行することで、ユーザーとのエンゲージメントを強化していきます。

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3.ペルソナを定期的に見直す

ユーザー需要の変化を見逃さないように、ペルソナを定期的に見直すことが重要です。具体的には、口コミやアンケートに関する情報を継続的に収集し、そのデータをもとに、より精緻なペルソナへ改善していくとよいでしょう。

また、マーケティングの状況によっては、従来とは異なる属性のペルソナデザインを行い、市場にアプローチしたほうがよいケースもあります。

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ペルソナデザインの企業事例

ペルソナデザインの企業事例として、株式会社スープストックトーキョーと日立アプライアンス株式会社の2社を紹介します。

株式会社スープストックトーキョーの事例

ペルソナデザインの事例

出典:株式会社スープストックトーキョー

株式会社スープストックトーキョーのスープ専門店事業「Soup Stock Tokyo」のペルソナデザインは、特に有名な事例といえます。

同社は、1999年にお台場でSoup Stock Tokyo1号店を出店したことを皮切りに、着々と店舗数を増やし、2024年1月時点で52店舗まで拡大。2024年3月期の売上高は約109億円に上ります。

「Soup Stock Tokyo」のペルソナが生まれたのは、1997年に作成された一つの企画書がきっかけでした。

当時、三菱商事から日本ケンタッキーフライドチキン(KFC)に出向していた、スマイルズ創業者の遠山正道社長が「1998年、スープのある1日」と題した物語形式の企画書を作成。

KFC社内で起案した際に「秋野つゆ」という架空の女性(ペルソナ)を設定し、意思決定の基準にしていたといいます。

※起業の経緯などは第89回 株式会社スマイルズ 遠山正道 | 起業事例の記事に詳しく掲載されています。

【Soup Stock Tokyoのペルソナ】

  • 名前:秋野つゆ
  • 年齢:37歳
  • 性別:女性
  • 職業:都心で働くバリバリのキャリアウーマン
  • 特徴:
    ・独身か共働きで経済的に余裕あり
    ・社交的な性格
    ・自分の時間を大事にする
    ・シンプルでセンスの良いものを追求する
    ・個性的でこだわりがある
    ・装飾性よりも機能性を好む
    ・フォアグラよりもレバ焼きを好む
    ・プールに行ったら平泳ぎではなく豪快にクロールで泳ぐ

設立前の企画時点で、ここまで細かくペルソナが明確になっていました。これらが明確化されていたことで、商品開発、店舗デザイン、出店場所を議論する際に「これって、秋野つゆさんっぽくないよね」と方向性を決めることができたといいます。

同社がペルソナを重視していた一例として、秋野つゆが行かないであろう若者の街「渋谷」に、Soup Stock Tokyoは2017年まで出店していませんでした。このことからも、ペルソナにもとづいた意思決定を大切にしていることがわかります。

株式会社スープストックトーキョーの事例は、製品開発、ブランド構築、マーケティング戦略まで、ペルソナが効果を発揮した代表的な例といえるでしょう。

日立アプライアンス株式会社の事例

ペルソナデザインの事例

出典:日立アプライアンス株式会社

ペルソナデザインをマーケティングに活かした事例として、BtoCだけでなく、BtoBの企業の事例もご紹介します。

2社目の事例は、日立グループで年間4,000億円以上の売上を誇り、業務用の白物家電や照明/住宅設備機器、冷凍/空調機器を販売していた日立アプライアンス株式会社(※)です。

※2019年4月に、同社は日立コンシューマ・マーケティング株式会社と合併し、日立グローバルライフソリューションズ株式会社へ社名変更

日立アプライアンスは、ペルソナデザインの対象としては少し珍しい「設備店のペルソナ」を作成しました。そもそも同社の商流は「日立アプライアンス→特約店→設備店→エンドユーザー」という多段階の構造を持っています。

いわゆる「卸」にあたる特約店が、全国の中小規模の設備店に商品を流し、それを事務所や店舗などのエンドユーザーが購入する流れです。この商流の特徴から、日立アプライアンスは、日々接する特約店のニーズはわかっていました。

しかし、その先にある設備店が、日々どのような課題を抱えているのか、彼らにどのような情報を提供すれば販売が加速し、自社の製品シェアがアップするのかを掴みづらい状況にありました。

そこで、同社では設備店1,806社にアンケート調査を実施し、設備店のペルソナデザインに乗り出します。

アンケートに回答のあった設備店のうち、8割を占めた10名以下の設備店を、営業企画部のペルソナ作成プロジェクト担当者が営業担当者とともに訪問し、インタビューを実施したといいます。

インタビューで収集したデータをもとに、ペルソナである「旭立(あさひだち)信彦」を作成しました。

それまでぼんやりとしか設備店のニーズや課題を掴めていませんでしたが、ペルソナである旭立信彦が生まれたことで、どのような情報を求めているのかを把握できるようになり、あらゆる販促ツールをリニューアル。

また、ペルソナデザインによって「輪郭のはっきりしたコミュニケーション」が取れるようになり、同社の事務所や店舗向けのシングルパッケージ型のエアコン市場のシェアは、9.8%から11.1%に増加しました。

Soup Stock Tokyoの事例と同様、手触り感のあるリアルな人物像を設定したことで、マーケティングコミュニケーションを向上させた好例といえるでしょう。

参考:「ペルソナ」マーケティング(BtoB事例)|INSIGHT NOW!プロフェッショナル

参考:2007年10月号|日経情報ストラテジー

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マーケティングにペルソナデザインを取り入れて訴求力を高めましょう

ペルソナデザインを行うメリットとして、顧客の深い理解や、的確なマーケティング施策の実行につながることが挙げられます。ペルソナを作成する際の手順や、マーケティングに取り入れるときのコツを把握したうえで、ペルソナデザインを活用しましょう。

マーケティングにペルソナデザインを取り入れて訴求力を高めたいという方は、ぜひアドビの「Adobe Marketo Engage」の導入をご検討ください。

Adobe Marketo Engageは、高度な顧客プロファイルの作成/管理を一元的に行えるマーケティングオートメーション(MA)ツールです。このツールを利用すれば、オーディエンスを的確にセグメント化できるので、ペルソナデザインにも役立てられるでしょう。

さらに、チャネルをまたいで一貫性のあるキャンペーンを展開したり、AIを活用してパーソナライズされたコンテンツを簡単に作成したりすることも可能なので、ペルソナに向けたマーケティング活動にも活用できます。

Adobe Marketo Engageを導入して、精度の高いペルソナを効率的にデザインしたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-request-consultation-marketo-engage

(公開日:2020/10/13)