マーケティング戦略の立て方と実践例をご紹介

ピーター・ドラッカーは「企業において価値を生み出す活動はマーケティングとイノベーションの2つだけで、その他はすべてコストである」と言いましたが、企業活動においてマーケティングは決定的に重要です。そして、最大の成果を出すためには、なによりも良いマーケティング戦略が欠かせません。

マーケッターの日々の活動はもとより、企業が生み出す価値を決める「マーケティング戦略」。具体的なステップに沿って、どのように立てれば良いかをご紹介します。

目次

  • マーケティング戦略とは何か
  • マーケティング戦略立案の4ステップ
  • 手法やフレームワークは戦略があってこそ
  • マーケティング戦略の実践例
  • マーケティング戦略を立案する習慣を

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マーケティング戦略とは何か

マーケティング戦略とは

を定めることです。

マーケティングの教科書では、『誰に』は「セグメンテーション」と「ターゲティング」、『どんな価値を』は「ポジショニング」と「バリュープロポジション」、『どのように提供するか』が「4C」に当たりますが、具体的な手順に沿って、それぞれを説明していきます。

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マーケティング戦略立案の4ステップ

マーケティング戦略立案の4ステップ

ステップ1.内部・外部環境分析

伝説的な軍事思想家・孫子は「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と言いましたが、戦略の第一歩は、顧客や市場、競合、そして自社を理解することです。

顧客Customer、競合Competitor、自社Companyの3つを分析する3C分析や、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因を分析するSWOT分析。さらに、AIやシェアリングエコノミー、ブロックチェーンなどの新しい市場を作っていく事業のマーケティングであれば、政治Politics、経済Economy、社会Society、技術Technologyのマクロ環境を分析するPEST分析など、内部・外部環境分析に有用なフレームワークを使いながら、自社が置かれている環境を分析します。

もちろん、マーケッターたるものフレームワークや市場調査などのデータに頼るだけでなく、「事件は会議室で起きてるんじゃない現場で起きてるんだ」の精神で、自ら顧客と接する現場に出向き、生の情報を収集することが何よりも大切です。

良い戦略立案には、良い分析が欠かせません。自社に都合の良い分析になってしまったり、実態とかけ離れた妄想になっていないか、経営陣・マーケティングチーム内で厳しい目でチェックしましょう。

ステップ1.内部・外部環境分析

ステップ2.誰に、を定める

次に、対象とする顧客を定めます。まずは、セグメンテーション市場の細分化を行い、ターゲットを定めるために市場の構造を把握します。

業種や業態、売上規模、地域、年齢や趣味趣向、過去の行動データなど、様々な軸が考えられますが、無限に考えられる軸の中から、どう市場を細分化するかによって、最大の成果を出せるターゲットを見つけ出せるかどうかが決まります。

まさにマーケティング戦略の肝になる部分。マーケッターのセンスとスキルが問われます。社外の第三者の意見を取り入れたり、マーケティング活動の結果からより良い軸を定義し直したり、セグメンテーションには細心の注意と最大のエネルギーを割くことをおすすめします。

そして、納得のいくセグメンテーションができたら、いよいよ標的とする的マトを定める「ターゲティング」のプロセスです。課題感が強く、自社の強みを用いて最高の成果を提供でき、競合に比べて明確な優位性を持てるターゲットを見極め、そこにリソースを集中させましょう。

ステップ2.誰に、を定める

ステップ3.どんな価値を提供するか、を定める

標的とする顧客が定まったら、彼ら・彼女らにどのような価値を提供するかを定義します。

市場が成熟し、様々な製品・サービスが溢れる中で、顧客はなぜ、あなたの会社の製品・サービスを選ぶのでしょうか。

自社の製品・サービスは顧客のどのような課題を解決するのか、購入するとどのようなメリットがあるのか、そして、競合製品・サービスと比べ、どのような違いがあるのか。競合優位性のあるポジショニングを定め、自社が提供する価値をバリュープロポジションとして宣言します。

バリュープロポジションは、マーケティングだけでなく、セールスやサポート、製品開発など、企業活動の指針となるもの。多くの場合、経営陣を巻き込んで検討していくことになりますが、その際にマイケル・ポーターが提唱する競走戦略の類型、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」はとても参考になります。

「コスト・リーダーシップ戦略」は業界の最安値を狙い、「差別化戦略」は競合と比較してユニークな価値やより高い付加価値の提供を目指し、「集中戦略」は業種や顧客、用途に絞って、特定の層に対して資源を集中させることを目指す戦略です。マイケル・ポーターは「3つの戦略の中から、どれか一つを選ばなければならない」と言っていますが、定めたバリュープロポジションが経営資源を分散させるものになっていないか、マーケッターは常に問いかける役目を持っています。

ステップ3.どんな価値を提供するか、を定める

ステップ4.どのように提供するか

誰に、どのような価値を提供するかを定めたら、次はその価値を顧客に届ける方法を考えます。

従来は、アメリカのマーケティング学者、ジェローム・マッカーシーが1960年代に提唱した、製品Product、価格Price、流通Place、販促Promotionの4Pが使われていましたが、1990年代にアメリカの学者、ロバート・ラウターボーンが顧客の視点から4Pを捉え直し、4Cを提唱しました。

4Cは、顧客価値Customer Value、顧客にとってのコストCost、顧客利便性Convenience、顧客とのコミュニケーションCommunicationの頭文字を取った理論です。

顧客価値Customer Valueは、「②どのような価値を」に相当しますが、コストCostは、製品・サービスを導入することで発生するコスト金額だけでなく、時間や手間、心理的な負担、顧客利便性Convenienceは、顧客が製品・サービスを手にするまでの手軽さや利便性を指します。販売店やカタログ、訪問販売、インターネットなどの顧客が製品・サービスの購入に訪れる場所を考えるだけでなく、Webサイトのユーザビリティやアクセシビリティ、さらには決済手段や受け取り手段まで、あくまで顧客の視点に立って、手にしやすい経路を考えます。最後のコミュニケーションCommunicationは、企業のPR・プロモーション活動にあたり、イベントや、カタログ、Webサイト、プレスリリースなどで、顧客にどのようにメッセージを伝え、なにを感じてもらいたいか、どのような関係性を築いていくかを定めるものです。

4Cのフレームワークで、顧客へ価値を提供する方法を考えたら、誰に、どのような価値を、どのように提供するか、が完成します。

ステップ4.どのように提供するか

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手法やフレームワークは戦略があってこそ

内部・外部環境を分析し、誰に、どんな価値を、どのように提供するかを定めたら、戦略を実現するための作戦・戦術として、リードナーチャリングコンテンツマーケティングなどのマーケティング手法を活用していきます。

例えば、リードナーチャリングをマーケティング活動の中に取り入れる場合、戦略が不在だと、獲得した全ての名刺に自社の新製品情報をメールで配信する、という非効率な活動をしてしまうことになります。逆に、明確な戦略があれば、対象とする顧客や伝える情報、伝える方法メール、営業パーソン、Webサイトなどは自ずと定まります。戦いを略す、という戦略の語源通り、効率的なマーケティング活動が可能になるのです。

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マーケティング戦略の実践例

今回はユーザー企業であるSchool Dudeとアドビが自社で実践するマーケティング戦略の事例をご紹介します。

1 SchoolDudeの事例

SchoolDudeのサイト

教育期間向けに管理機能ソリューションを米国、カナダ、ヨーロッパ、中東、オーストラリアの6,000を超える機関に導入しているSchool Dude社。BtoBマーケティングの世界で急速に拡がっているABM(Account Based Marketing)のフレームワークを用いたマーケティング戦略で成功を収めました。

同社は、以下のようなマーケティング戦略を立案しました。

【誰に】
30ものグループにセグメントした高等教育と既存顧客
【どんな価値を】
高等教育業界向けに、業界の最新情報、ブログやビデオなどの様々なお役立ちコンテンツ、School Dudeからのお知らせ情報
【どのように提供するか】
Marketo Engageの Webパーソナライゼーション を使い、訪問者に応じて、Webサイト上で異なるコンテンツを表示。ウェビナーや年次ユーザーカンファレンスに登録してもらう

結果として、500件のウェビナーの登録者のうちの30がこの戦略から得られ、さらに東海岸でのユーザーカンファレンスの登録数が400名以上増加しました。

2 アドビ本社の事例

アドビでは教育業界への進出を開始する際、以下のようなマーケティング戦略を立てました。

【誰に】
教育業界のある特定グループ場所、規模、現在使用しているマーケティングオートメーションツールでセグメント。さらに、その対象企業内のインフルエンサーと意思決定者
【どんな価値を】
リード獲得からアドボカシーに至るまで、顧客との中長期的な関係の発展を支援
【どのように提供するか】
メッセージとコンテンツをパーソナライズしたターゲティングメール、コンテンツをパーソナライズしたWebサイトとランディングページ、メッセージを顧客グループごとに変えたFacebook広告、Googleディスプレイネットワーク、LinkedInのディスプレイ広告を通して、シームレスなマルチチャネル体験を提供。お問い合わせやeBookのダウンロード、ウェビナーへの登録をしてもらい、営業チームが対応。製品導入につなげる

結果として、マーケティングチームが目標達成に必要な3倍以上の認知を獲得し、営業チームは目標を上回ることができました。

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マーケティング戦略を立案する習慣を

「戦略」は戦いを略す、と書きますが、自分たちが勝てる場所・方法をしっかり見極めることで、マーケティングの成果は得られます。しかしながら、自社のマーケティング戦略と合わないにも関わらず、流行りの手法を導入してしまったり、顧客のニーズや競合の動きが変わっているのに戦略が見直されていなかったり、「戦いを略す」意識が低い企業はまだまだ少なくありません。今回ご紹介したように「マーケティング戦略」は「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を定める、とてもシンプルで基本的なもの。ぜひ、何かのマーケティング施策を実行する際、戦略を立案する習慣をつけてみてください。

次のステップ

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