ビジネス目標の達成に役立つマーケティング戦略とは
マーケティング戦略の重要性を耳にしたことはあっても、それが何を意味するのか、何から始めれば良いのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。マーケティング戦略に取り組むのが初めての場合や、より優れた戦略の策定を目指している場合、マーケティング部門向けに文書化された戦術的なアプローチを構築するのは容易ではありません。
しかし、マーケティング戦略について、しっかりと理解することで、ビジネスを優位に進める施策を成功に導くことができます。
この記事では、マーケティング戦略とは何か、どのように構築すればよいのかについて解説します。また、マーケティング戦略を推進し、最大の投資効果を得るための方法についても解説します。
主な内容:
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、企業が自社の製品やサービスを宣伝し、潜在顧客にリーチするための包括的なアプローチのことです。つまり、測定可能なビジネス成果を生み出すために利用するマーケティングのプレイブックのようなものです。
マーケティング戦略の目的は、企業やブランドの認知度を高め、顧客との関係を育み、リードを顧客にコンバージョンすることです。マーケティング戦略の最終的な目標は、ビジネスシェアを拡大し、より多くの売上を生み出すことです。
通常、マーケティング戦略は、企業のかなり上位レベルに位置付けられる戦略です。マーケティング戦略は、企業の目標とマーケティング部門の目標を結びつけ、施策の戦略的方向性を示します。
重要なポイント
文書化されたマーケティング戦略は、企業の将来の方向性を決定するのに役立ちます。マーケティング戦略は時間の経過とともに調整されます。調整は、リソースを最大限に活用するために必要なことです。
マーケティング戦略の主な利点には、次のようなものがあります。
- 顧客が誰で、購入に至る動機をより深く理解できる
- 自社の価値提案や独自性をより明確化できる
- 製品の位置付けや価値の伝達方法を把握し、競合他社をリードする
マーケティング戦略がなければ、間違った機能をプロモーションしたり、間違った顧客に販売したり、競合相手を誤認したりするリスクがあります。
マーケティング戦略は、企業の規模や種類にかかわらず、リソースを最大限に活用し、マーケティングから得られる結果を最大化するのに役立ちます。
マーケティング戦略の基本
効果的なマーケティング戦略には、顧客調査、製品のポジショニング、プロモーション計画が必要です。あらゆるビジネスは、マーケティングの4Pに合わせた独自のマーケティング戦略を備える必要があります。 [4P = Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)]
4Pが揃えば、それを土台にマーケティング戦略を構築することができます。優れたマーケティング戦略には、次のような特徴があります。
- マーケティングの一般的な方向性を決定する(具体的な詳細については決定しない)
- 自社のあらゆる製品やサービスのマーケティング施策に情報を提供する
- 長期的かつ測定可能である
マーケティング戦略とマーケティングプランの違い
これらの用語は似ていますが、マーケティング戦略とマーケティングプランは別物であることを覚えておく必要があります。
マーケティング戦略
- 長期的かつ大局的な計画
- 企業がミッションを遂行し、マーケティング活動がビジネス目標をサポートすることを保証
- マーケティングプランの構成要素であり、企業の上位レベルの目標を明確化
マーケティングプラン
- 短期的な計画
- マーケティング戦略や上位レベルのマーケティング活動を含むドキュメント
- 包括的なマーケティング目標やビジネス目標とともに、通常、1年間の施策を記載
たとえば、マーケティング戦略で、SaaS製品の契約者を増やすことに重点を置いているとします。マーケティングプランでは、コンテンツマーケティング施策、情報提供のためのウェビナー、LinkedInのインフルエンサーなどの戦術によって、契約者を獲得することを支援します。
しかし、マーケティングプランだけでは、あまり実用的とは言えません。そこで、戦略を一歩踏み込んで、マーケティング戦術に落とし込むのが賢明な方法です。戦術とは、計画を達成し、結果として戦略を達成するための実行可能なステップのことです。たとえば、インフルエンサーマーケティングプラットフォームに登録し、インフルエンサーにSaaS製品を宣伝してもらうことで、より多くのSaaS契約者を集めるという戦略を達成することができます。
マーケティング戦略の重要性
計画や戦術は重要ですが、効果的な戦略なしには機能しません。実際、適切なマーケティング戦略はビジネスを成功に導くことができます。
CoScheduleの調査レポートによれば、物事を組織立てるマーケターは674%も成功しやすくなります。また、マーケティング戦略とプロジェクト管理ソリューションを組み合わせて活用するマーケティング部門は、成功する可能性が426%も高くなります。
マーケティング戦略は、顧客のニーズを把握し、自社製品についてよりよく伝えるために重要です。また、マーケティング戦略を策定することで、部門の方向性が明確になり、マーケティング活動が統一されるため、全員が同じ目標に向かって進むことができるようになります。
しかし、Smart Insightsの調査によれば、45%の企業がデジタルマーケティング戦略をまったく備えていないにもかかわらず、デジタルマーケティングに投資していることが明らかになりました。デジタルマーケティングを実施するかどうかにかかわらず、マーケティング戦略の文書化を怠ると、次のようなさまざまな点でビジネスに支障をきたします。
- ビジョンの実行のための予算を十分に確保できない
- 数週間ごとに戦略の方向性が変わるので社内の混乱を招く
- マーケティング活動に対する投資対効果をほとんど期待できない
- マーケティングのオポチュニティを逃してしまう
- 顧客のニーズや期待を誤解してしまう
最初のマーケティング戦略は完璧でなくてもかまいません。不完全な戦略は、存在しない戦略よりも優れています。なぜなら、不完全な戦略でも、実施しながら改善していくことができるからです。
マーケティング戦略の策定方法
マーケティング戦略を策定する準備ができたら、次の7つのステップに従って、有意義かつ実行可能な戦略を立てましょう。
1.ビジネス目標の設定
マーケティングは、主なビジネス目標を実現するものでなければなりません。そのためには、まずビジネス目標を把握し、次にそれをサポートするマーケティング戦略を立てる必要があります。
企業を問わず、一般的な目標には次のようなものがあります。
- 企業/ブランド認知度の向上
- 利益の拡大
- 収入源の多様化
- 市場シェアの拡大
- 従業員の維持
- 市場競争における勝利
- 顧客関係の強化
たとえば、ビジネスの目標が売上を10%増やすことであれば、マーケティングプランはその目標をサポートするものでなければなりません。売上を10%伸ばすためのマーケティングでは、リードの獲得やターゲット層の拡大に重点が置かれるでしょう。
まず、ビジネス全体の目標を把握することで、ビジネス全体にとって最も重要なことに焦点を当てたマーケティング戦略の軸ができます。
2.ターゲット市場の特定と調査
顧客について把握する前に、ターゲット市場の状況を把握する必要があります。それにより、どのようにビジネスを推進するべきか、貴重なインサイトを得ることができます。
ターゲット市場を把握することで、いくつかのオポチュニティが明らかになるかもしれません。また、綿密な市場調査をおこなうことで、売上規模や収益性を予測することができます。
市場で調査すべき側面には、次のようなものがあります。
- 競合他社
- 規模
- トレンド
- 経済的要因
- 政治的要因
たとえば、法案が成立することで市場が大きく変わるのであれば、ビジネスの進め方にも大きな影響があります。また、市場に多くの競合他社が存在することがわかれば、製品のマーケティングをおこなう際に既成概念にとらわれない発想が必要になってきます。
しかし、こうした調査結果にくじけてはいけません。市場調査の目的は、市場の現状を把握し、課題を克服し、オポチュニティを活用できるようにすることです。
3.バイヤーペルソナの構築
マーケティングは、ビジネスソリューションと顧客のニーズを結びつけることで成立します。確実なビジネスソリューションがあったとしても、方程式のもう一方の側、つまり顧客のことを忘れてはいけません。
目標とターゲット市場が決まったら、ペルソナ(B2C向け)または顧客プロファイル(B2B向け)を構築するステップに進みます。ペルソナや顧客プロファイルによる描写は、マーケティング部門がターゲットオーディエンスについて理解し、共感を示すためのツールだと考えてください。
ペルソナや顧客像には、デモグラフィック、興味、悩みなどを含める必要があります。このデータは、メッセージ、マーケティングチャネル、戦略的方向性などに役立つ情報を提供します。
また、顧客プロファイルはひとつに限定する必要はありません。多くの企業では、さまざまな顧客を対象としているため、3~7種類のペルソナや顧客プロファイルを構築することは珍しいことではありません。
4.独自の価値提案の特定
独自の価値提案、つまりユニークセリングポイント(USP)は、消費者が自社のソリューションを選ぶ理由を示すものです。また、製品やサービスの主な利点を詳しく説明するものです。
自社の製品、サービス、あるいは企業自体をユニークなものにしているものは何でしょうか?他社よりも優れている点は何でしょうか?なぜ顧客は自社から購入するのでしょうか?
マーケティング戦略では、自社の製品やサービスをすべてリストアップし、それぞれの利点を文書化しましょう。マーケティング部門は、これらの利点から、より説得力のある広告コピー、メールメッセージ、コンテンツを制作し、より多くのリードをコンバージョンにつなげることができます。
5.ポジショニングとメッセージングの構築
ここからは、独自の利点をもとに、ブランドメッセージの作成に入ります。
ターゲットオーディエンスに対する、自社の製品、サービス、ブランドの位置付けについて、マーケティング部門がすぐに使えるように、定型文やテンプレートでメッセージを作成します。
製品の利点と購入者の悩みを融合させ、できるだけ魅力的なメッセージにしましょう。また、メッセージを文書化することで、マーケティング施策やチャネルを通じて、一貫したストーリーを維持することができます。
6.マーケティングチャネルと戦術の決定
次に、全体的なマーケティング戦略を具体的にどのように達成するかを決める必要があります。そのためには、チャネルと戦術を選択しなければなりません。
必ず、オーディエンスが利用するチャネルを選びましょう。たとえば、オーディエンスの大半がFacebookを利用している場合、TikTokに多くのエネルギーとリソースを投入することは、おそらく意味がありません。企業によってアプローチは異なりますが、まずは次のチャネルや戦術を検討してみてください。
- Twitter、Facebook、Instagram、TikTokなどのソーシャルメディア
- ペイパークリック(PPC)広告
- ソーシャルメディア広告
- インフルエンサーマーケティング
- オーガニック検索エンジン最適化(SEO)
- メールマーケティング
- ブログ、ポッドキャスト、動画などのコンテンツマーケティング
- アフィリエイトマーケティング
マーケティングチャネルを選んだら、それぞれのチャネルについて、マーケティング戦略に沿った戦術を選びます。たとえば、B2Bのリードがメールマーケティングによく反応するのであれば、メール購読者リストを増やすための戦術を立てたり、季節ごとのメール施策を事前に計画したりすることができます。
7. 進捗状況の測定
マーケティング戦略は常に進行形です。戦略には、成功したかどうかを評価する指標やKPIが必要です。
マーケティング戦略には、どのような指標やKPIを追跡するか、またどのような基準で設定するかを記載する必要があります。そして、全体的な事業目標やマーケティング目標に関連付ける必要があります。たとえば、顧客獲得数を増やすことが目標であれば、生成したリード数値解や解約率などの指標を追跡する必要があります。
進捗は、次のような指標で計測してみてください。
- 解約率
- 購読者数
- 閲覧数とクリック数
- コメント数と共有数
- コンバージョン率
- SEOランキング
- クリックスルー率
- ソーシャルメディアのフォロワー数
- メール購読者数
どの指標を採用しても、少なくとも年に1回かそれ以上の頻度で進捗状況を評価する必要があります。初めてのマーケティング戦略であれば、毎月または四半期ごとに会議を開き、調整しながら進めていく必要があるかもしれません。
マーケティング戦略の種類
マーケティング戦略には、組織全体のマーケティング戦略に適用できるものと、単一のチャネルにのみ適用できるものがあります。企業によっては、あらゆるチャネルを融合させたオムニチャネルマーケティング戦略を構築しているところもあります。規模が小さい企業であれば、メール、ソーシャルメディア、コンテンツマーケティングなどに対して個別の戦略を持っていることもあります。
マーケティング戦略には、いくつかの種類があります。
1.インバウンドマーケティング: インバウンドマーケティングでは、企業が顧客に働きかける(アウトバウンドマーケティング)のではなく、顧客に自らの意志で企業、製品、サービスを発見してもらいます。インバウンドマーケティング戦略では、自社ブランドに興味を示したリードとつながるためのプレイブックを作成します。これには、メールマーケティングやコンテンツマーケティングなどの戦術が含まれます
2.検索エンジンマーケティング: 検索エンジンマーケティング戦略は、企業が検索エンジンで目立つようにwebページを最適化することを支援します。この種類のマーケティング戦略では、キーワード、ランキング、バックリンクに重点を置きます
3.コンテンツマーケティング: コンテンツマーケティングは、インバウンドマーケティングと似ていますが、この戦略ではコンテンツの制作と配信にのみ重点を置きます。ブログ、ポッドキャスト、動画、レポート、ケーススタディ、顧客の声など、さまざまなコンテンツが含まれます
4.ソーシャルメディアマーケティング:ソーシャルメディアマーケティング戦略では、利用するソーシャルネットワーク、それぞれのソーシャルネットワークでの投稿や交流の戦略などについて詳しく記述します
5.メールマーケティング:メールマーケティング戦略は、企業がメールリストをより効果的に活用するためのものです。この戦略をもとに、リストをセグメント化し、最適なメッセージを作成し、的確なタイミングでメールを送信します
単一の包括的なマーケティング戦略を選ぶ企業もあれば、複数の戦略を構築し、それぞれの戦略をより深く掘り下げていくことを好む企業もあります。自社のビジネスにとって最適なものを選んでください。
マーケティング戦略を策定する
マーケティング戦略は、自社の価値提案を明確化し、顧客をより詳細に把握し、競合他社よりも優位に立つために役立ちます。
このガイドの7つのステップに従って、独自のマーケティング戦略を策定し、その効果を把握しましょう。まずは、ビジネス目標を定め、市場を調査してください。優れたマーケティング戦略を策定するために、ペルソナ、USP、メッセージ、マーケティング戦術、KPIを駆使することを忘れないでください。
戦略を実行するとなると、大規模なマーケティング部門でも、大局的なマーケティング目標の意味を把握するのに苦慮することがあります。そのため、多くの企業が、計画の立案、戦略の策定、戦略の実行を支援するAdobe Campaignのようなソリューションを活用しています。
Adobe Campaignは、あらゆるチャネルをまたいで、パーソナライズされたカスタマージャーニーを視覚化し、結びつけることを容易にします。Adobe Campaignなら、オンラインとオフラインの両方の顧客体験を管理し、一人ひとりに合わせた体験を提供できます。電子メール管理をベースにあらゆるチャネルをカバーするAdobe Campaignは、キャンペーン要素を単一の管理可能なワークフローに同期します。
Adobe Campaignを利用して、マルチチャネルマーケティングを、統合された顧客体験に変換しましょう。
Adobe Campaignについて詳しくは、動画をご覧ください。
Adobe Marketo Engageは、B2Bマーケティング部門がリードを育成し、複雑なB2Bバイヤージャーニーに合わせて顧客エンゲージメントを強化するのに役立ちます。
Adobe Marketo Engageの詳細については、インタラクティブな製品ツアーで実際に体験するか、概要ビデオでご確認ください。