スクラムオブスクラムとは?概要やメリット、ベストプラクティスを解説
10人を超えるチームメンバーでプロジェクトを進める場合、一般的なスクラムミーティングでは、プロジェクトのニーズに対応できません。
しかし、複数のスクラムチームの代表者がミーティングに参加する「スクラムオブスクラム」なら、チームの俊敏性や生産性を高めつつ、柔軟なコラボレーション、調整を促進できます。
この記事では、スクラムオブスクラムの概要や歴史を紹介したうえで、メリットについて解説します。さらに、スクラムオブスクラムの基本ルールや、ベストプラクティスなども解説するので、ぜひご一読ください。
目次
スクラムオブスクラムとは?
スクラムオブスクラム(SoS)とは、大規模なプロジェクトに取り組む複数のスクラムチームにおける連携と作業効率の強化を目的にした、拡張されたアジャイルプロセス手法です。「スクラムオブスクラムミーティング」とも呼ばれています。
そもそもスクラムチームは、迅速なコミュニケーションや変化へのスムーズな適応、生産性の向上などを実現できるように、小規模で編成されています。そのため、スクラムガイド(※)では、10人以下のスクラムチームを編成することが推奨されており、優れたスクラムチームは4~5人で構成されることもあります。
プロジェクトが大きく、小規模なチームで対応できない場合は、複数の小規模なチームを構築するスクラムオブスクラムを採用するとよいでしょう。
特に、多くの人が関与する大規模なプロジェクトでは、ミーティングを成功させることが課題です。スクラムオブスクラムミーティングを導入すれば、各スクラムチームの代表者が一堂に会し、統合されたコラボレーションチームを構成できます。
ミーティングでは、最近の成果や今後の目標、現在の課題、現在実施されている解決策など、プロジェクトに関する様々な側面について話し合います。ミーティングの開催頻度は、対象となるチームが決定し、毎週または隔週で実施されることが一般的です。
なお、基本的にスクラムでは、プロジェクトを1か月以下のスプリント(スクラムにおける開発サイクル)に分割することが特徴で、これはスクラムオブスクラムの場合も同様です。
(※)出典:Ken Schwaber and Jeff Sutherland「The 2020 Scrum Guide」
【関連記事】
スクラムオブスクラムの目的
スクラムオブスクラムのおもな目的は、複数の小規模なチームの取り組みを統合し、スクラムの手法を大規模プロジェクト向けに拡張することにあります。
また、そのほかの目的として以下が挙げられます。
- 代表者で構成された統合グループ内で、各チームの活動と進捗状況を報告し、関係者全員が最新情報を入手できるようにする
- 緊急性の高い課題を特定し、すばやく対処する
- 小規模なスクラムチーム間のコミュニケーションを監視し、チームの連携を管理する
- すべてのチームに対する包括的な意思決定を行う
スクラムオブスクラムの歴史
スクラムオブスクラムは、1996年にプロジェクトマネージャーのJeff Sutherland氏とKen Schwaber氏によって考案された歴史があります。その目的は、複数のプロダクトラインを有する8つのユニット間の連携強化にありました。
Sutherland氏とSchwaber氏は、各スクラムチームがユニットを個別に運営することが、ユニット間のワークフローを混乱させていることに気付きました。この問題を解決するために、8つのプロダクトチームを統合し、各作業の連携を促進。
結果的にこの取り組みが、スクラムチームの規模を拡大するための革新的なアプローチである、スクラムオブスクラムにつながりました。
この試みの成功を受け、Sutherland氏は2001年に『Agile can scale: inventing and reinventing Scrum in five companies(アジャイルは拡張可能:企業5社のスクラムの考案と再定義)』と題した記事を発表します。
同記事の公開により、スクラムという言葉が一般に知られることになりました。また、主要なチーム管理手法のひとつとして、スクラム手法が広く認知されるきっかけにもなっています。
スクラムオブスクラムのメリット

スクラムオブスクラムの導入を検討している場合は、自社にもたらすメリットを把握することが重要です。スクラムオブスクラムのおもなメリットは、次のとおりです。
問題解決能力の向上
単一のアジャイルチームでプロジェクトを管理する場合、様々な問題へ対処するのが難しい可能性もあります。しかし、スクラムオブスクラムなら、ほかのチームから新たな視点とクリエイティブな解決策を獲得できるので、問題解決能力の向上が見込まれます。
また、スクラムオブスクラムを導入すれば、複数のチーム間の連携が強化され、複雑なプロジェクトをスムーズに進められることもメリットです。これにより、各チームの目標と、広範なプロジェクト目標を一致させたまま、プロジェクトを管理できます。
チーム間の連携強化
スクラムオブスクラムでは、オープンなコミュニケーションと集団的な意思決定により、プロジェクトに関与するすべてのチーム間での合意形成を促進することができます。その結果、チーム間の連携強化へとつながるでしょう。
加えて、特定のスクラムチームにだけ業務が偏るような、依存状態を回避できる点もポイントです。プロジェクトにおける進捗状況や最新の情報を共有することで、サイロ化の防止も期待できます。
リソースの最適化
スクラムオブスクラムを導入することで、プロジェクトが透明化されます。見通しが明確になるので、リソースの過不足を柔軟に調整しやすくなるでしょう。
また、最適なリソース配分を実現することで、プロジェクトの生産性の向上やメンバーのモチベーションアップにもつながります。
【関連記事】
スクラムオブスクラムの基本ルール
ここからは、スクラムオブスクラムの基本ルールを確認していきましょう。
スクラムオブスクラムの関係者と役割
スクラムオブスクラムの参加者は、単一のスクラムチームのメンバーに比べると、より柔軟にプロジェクトを進めることができます。
ただし、そのミーティング自体は、プロジェクトの規模に合わせつつ、従来のスクラムミーティングの構造と役割を反映している必要があります。
- プロダクトオーナー
スクラムオブスクラムミーティングに貴重な意見を提供する役割。プロダクトバックログに関する豊富な知識により、タスクの重複を防ぎ、様々なチーム間で一貫性のある「完了の定義(Doneの定義)」を行います。
- スクラムオブスクラムマスター
チームの進捗状況を追跡し、プロジェクトを適切な方向へ導く役割。最適な役職に就いているメンバーが、各チームの状況に関する情報を伝えます。
- チームメンバー
各チームの代表者が、独自のインサイトを提供し、見落としがちな特定のリスクを提起することができます。
なお、スクラムオブスクラムミーティングでは、従来のスクラムミーティングの役割だけでなく、プロジェクトのニーズによっては、品質保証の専門家などほかの役割が必要になる場合があります。
スクラムオブスクラムの実施頻度
スクラムオブスクラムミーティングのスケジュールは「毎日行う」「週に1回行う」など、柔軟に設定できます。ただし、ミーティング1回あたりの所要時間は、15分以内に収める必要があります。
また、スクラムオブスクラムミーティングは、通常のスクラムミーティングと同様の構造と期間を、遵守しなければならないことも特徴です。プロジェクトが進行するにつれて、ミーティングの実施頻度を減らすのは問題ありません。
さらに、プロジェクトに関する緊急性の高い問題が表面化した場合、早急にミーティングを開催する必要があることにも留意しておきましょう。
前述のとおり、スクラムオブスクラムミーティングの所要時間は、通常15分以内に収める必要がありますが、今後発生する可能性のある問題に対処するために、より多くの時間を費やすこともあります。
スクラムオブスクラムのアジェンダ
スクラムオブスクラムミーティングの生産性を確保するには、体系化されたアジェンダ(議題)を維持する必要があります。具体的にいうと、対処の必要があるトピックと質問が、アジェンダにすべて含まれていることが不可欠です。
また、各チームの代表者は、それらの質問に答える準備を整えなければなりません。スクラムオブスクラムミーティングで議論が必要な一般的な質問には、次のようなものがあります。
- 前回のミーティング以降、自身のチームはどのような成果を達成したか?
- 前回のミーティング以降、チームメンバーにどのような問題が生じたか?
- 次回のミーティングまでに、自身のチームが達成する必要がある目標は何か?
- ほかのチームが自身のチームの作業を妨げる可能性はあるか?
スクラムオブスクラムのベストプラクティス

ここでは、ミーティングから最大限の成果を得るための、スクラムオブスクラムのベストプラクティスと戦略をいくつか紹介します。
各チームの代表者の選出
各アジャイルチームは、チームの進捗状況や問題点に関する的確な報告や、チームの関心事項を伝えられる代表者を選出することが大切です。なお、各チームの代表者は、一定期間ごとに交代します。
ミーティングのスケジュールとトピックの設定
ミーティングの実施頻度や所要時間を、事前にスケジューリングします。ただし、実施頻度は多くても週2回を上限にしましょう。また、ミーティングで議論したいトピックに関して、チームメンバーの合意を得ておくことも重要です。
オープンなコミュニケーションの促進
各チームの代表者は、ミーティング中に最新の進捗状況を報告する必要があります。実態に即した報告ができるように、オープンなコミュニケーションを促進しましょう。
また、透明性の高い環境を構築し、チームメンバーが自身の成長や課題を率先して共有できるようにすることも重要です。
迅速な課題解決
なるべくチームメンバーが参加しているミーティング内で、プロジェクトの懸念事項を解決できるように努めましょう。解決できなかった場合は、ミーティングの終了後、できるだけ早く問題解決に向けた計画を立てる必要があります。
プロジェクトとタスクの所要期間の追跡
プロジェクトで発生した問題への対処にかかった日数と、プロジェクトが完了するまでの残り日数を追跡しましょう。プロジェクトとタスクの所要期間を追跡することで、生産性のモニタリングや、柔軟なリソース配分に役立ちます。
スクラムオブスクラムに取り組む際に有用な「Adobe Workfront」
ワークフローを効率化するには、チームが協力的かつ生産的なコミュニケーションを行えるようにすることが重要です。
アドビの作業管理アプリケーションである「Adobe Workfront」を利用すれば、作業が円滑に進むように調整できるうえ、より優れたコラボレーションを促進して、測定可能なビジネス成果の達成を目指すことができます。
Adobe Workfrontでは、ワークフローの一元管理により、チームの連携性の向上やプロセスの合理化などを促進可能な点が特徴です。
また、視覚性の高いワークボードは、スクラムはもちろん、アジャイルやウォーターフォールなど様々なフレームワークに対応できるので、共同のタスク管理で活用いただけます。
さらに、AIアシスタントを利用することにより、プロジェクトに関するトピックや製品ドキュメントなどを、迅速に取得することも可能です。
ツールの活用でスクラムオブスクラムの効果を強化
スクラムオブスクラムをプロジェクトに採用することで、問題解決能力の向上やチーム間の連携強化といったメリットが期待できます。
この取り組みの効果を最大化させるためにも「オープンなコミュニケーションの促進」「迅速な課題解決」といったベストプラクティスについても留意しておいてください。
ツールの活用によってスクラムオブスクラムの効果を強化したい方は、ぜひアドビの「Adobe Workfront」の導入をご検討ください。ワークフローの一元管理や、視覚性の高いツールにより、スクラムオブスクラムの強化を図りましょう。
(公開日:2023/7/17)