スクラムオブスクラムとは?概要、利点、ベストプラクティスを解説
5人以上のチームメンバーでプロジェクトを進める場合、一般的なスクラムミーティングでは、プロジェクトのニーズに対応できません。では、どうすればよいでしょうか?
そこで、スクラムオブスクラムの出番です。スクラムオブスクラムでは、さまざまな部門の代表者がミーティングに参加し、チームの俊敏性、生産性、コラボレーション、調整を促進します。
この記事では、スクラムオブスクラムの概要、利点、ベストプラクティスを解説します。
- スクラムオブスクラムとは?
- スクラムオブスクラムの歴史
- スクラムオブスクラムの目的
- スクラムオブスクラムの利点
- スクラムオブスクラムの関係者
- スクラムオブスクラムの実施頻度
- スクラムオブスクラムのアジェンダ
- スクラムオブスクラムのベストプラクティス
- スクラムオブスクラムに取り組む
スクラムオブスクラムとは?
スクラムオブスクラムとは、大規模なプロジェクトに取り組む複数のスクラムチームが、連携と作業効率を強化するために、スクラム手法を拡張したものです。スクラムオブスクラムミーティングとも呼ばれています。
スクラムチームは、俊敏に対応できるように編成されています。小規模なチームは、コミュニケーションの促進、変化へのスムーズな適応、生産性の向上を実現できます。そのため、スクラムガイドでは、10人以下のスクラムチームを編成することを推奨しています。単一のチームで大規模なプロジェクトに対応できない場合は、複数の小規模なチームを構築することをお勧めします。
多くの人が関与する大規模なプロジェクトでは、ミーティングを成功させることが課題となります。スクラムでは、大規模なプロジェクトを1か月以下のスプリントに分割する必要があります。スクラムオブスクラムミーティングでは、各スクラムチームの代表者が一堂に会し、アジャイルソフトウェア開発宣言の価値に従って、統合されたコラボレーションチームを構成します。
各チームの代表者は、一定期間ごとに交代します。ミーティングでは、最近の成果、今後の目標、現在の課題、現在実施されている解決策など、プロジェクトに関するさまざまな側面について話し合います。ミーティングの開催頻度は、対象となるチームによって決定されます。通常、毎週または隔週で実施されます。
スクラムオブスクラムの歴史
スクラムオブスクラムは、1996年にプロジェクトマネージャーのJeff Sutherland氏とKen Schwaber氏によって考案されました。その目的は、複数のプロダクトラインを有する8つのユニット間の連携を強化することにありました。
Sutherland氏とSchwaber氏は、各スクラムチームがユニットを個別に運営することが、ユニット間のワークフローを混乱させていることに気がつきました。この問題を解決するために、8つのプロダクトチームを統合し、各作業の連携を促進しました。これが、スクラムチームの規模を拡大するための革新的なアプローチにつながりました。
この試みが成功したことを受けて、Sutherland氏は2001年、『Agile can scale: inventing and reinventing Scrum in five companies(アジャイルは拡張可能:企業5社のスクラムの考案と再定義)』と題した記事を発表しました。この記事により、スクラムという言葉が初めて一般に知られることになりました。
記事の公開後、スクラム手法は、主要なチーム管理手法のひとつとして、広く認知されるようになりました。
スクラムオブスクラムの目的
スクラムオブスクラムの主な目的は、共同プロジェクトに参加する、小規模なチームの取り組みを統合し、スクラムの慣行を拡張することにあります。それ以外の目的には、次のようなものがあります。
- 各チームの活動と進捗状況を、各チームの代表者で構成された統合グループに報告し、関係者全員が最新情報を入手できるようにする
- 喫緊の課題を特定し、すばやく対処する
- 小規模なスクラムチーム間のコミュニケーションを監視することで、チームの連携を管理する
- すべてのチームに影響を与える、包括的な意思決定をおこなう
スクラムオブスクラムの利点
スクラムオブスクラムの導入を検討している場合は、それが自社にもたらすことができる利点を把握することが重要です。スクラムオブスクラムの主な利点は、次のとおりです。
- スクラムを容易に拡張: 優れたスクラムチームは、4から5人で構成されています。スクラムオブスクラムにより、理想的な規模のチームを維持できます。一方、統合グループは、大規模なプロジェクトでコラボレーションする際に、各チームの足並みを揃えることができます
- 複雑なプロジェクトの調整を強化: 複数のチーム間の連携を強化し、複雑なプロジェクトをスムーズに進めることができます。これにより、各チームの目標を、より広範なプロジェクト目標と一致させることができます
- 問題解決能力の向上: アジャイルチームは、さまざまな問題に個別に対処するのに苦慮することもあるでしょう。スクラムオブスクラムを導入すれば、他のチームから新たな視点とクリエイティブな解決策を獲得し、共同での問題解決が容易になります
- チームのコンセンサスを促進: オープンなコミュニケーションと集団的な意思決定を促進することで、プロジェクトに関与するすべてのチーム間での合意形成を促進できます
スクラムオブスクラムの関係者
スクラムオブスクラムの参加者は、より柔軟にプロジェクトを進めることができます。ただし、そのミーティング自体は、規模を拡大しながら、従来のスクラムミーティングの構造と役割を反映している必要があります。
- プロダクトオーナー:スクラムオブスクラムミーティングに貴重な意見を提供します。プロダクトバックログに関する豊富な知識により、タスクの重複を防ぎ、さまざまなチーム間で一貫性のある「完了」の定義を確立します
- スクラムオブスクラムマスター:通常、チームの進捗状況を追跡し、プロジェクトを適切な方向へ導く必要があります。そのため、各チームの状況に関する情報を伝えるうえで、最適な役職に就いている従業員が担当します
- チームメンバー:各チームの代表者は、独自のインサイトを提供し、見落としがちな特定の懸念を提起することができます
スクラムオブスクラムミーティングでは、従来のスクラムミーティングの役割だけでなく、品質保証の専門家など、プロジェクトのニーズに応じて他の役割が必要になる場合があります。
スクラムオブスクラムの実施頻度
チームは、スクラムオブスクラムミーティングのスケジュールを設定できます(毎日、週に1回など)。ただし、ミーティング1回の所要時間を15分以内に収める必要があります。プロジェクトが進行するにつれて、ミーティングの実施頻度を減らすことができます。また、スクラムオブスクラムミーティングは、通常のスクラムミーティングと同様の構造と期間を遵守する必要があります。
考慮すべきもうひとつの重要な点は、プロジェクトに関する喫緊の問題が表面化した場合、早急にミーティングを開催する必要があることです。スクラムオブスクラムミーティングの所要時間は、通常15分以内に収める必要がありますが、今後発生する可能性のあるその他の問題に対処するために、それよりも多くの時間を要することもあります。
スクラムオブスクラムのアジェンダ
スクラムオブスクラムミーティングの生産性を確保するには、体系化されたアジェンダを維持する必要があります。アジェンダは、対処する必要があるトピックと質問を網羅している必要があります。また、各チームの代表者は、それらの質問に答える準備を整えなければなりません。スクラムオブスクラムミーティングで議論すべき一般的な質問には、次のようなものがあります。
- 前回のミーティング以降、自身のチームはどのような成果を達成したか?
- 前回のミーティング以降、チームメンバーにどのような問題が生じたか?
- 次回のミーティングまでに、自身のチームが達成すべき目標は何か?
- 他のチームが自身のチームの作業を妨げる可能性はあるか?
スクラムオブスクラムのベストプラクティス
ここでは、ミーティングから最大限の成果を得るための、スクラムオブスクラムのベストプラクティスと戦略をいくつか紹介します。
- 各チームの代表者の選出: 各アジャイルチームは、チームの進捗状況や問題を的確に報告できるだけでなく、自身のチームの関心事項を伝えることができる代表者を選出する必要があります
- ミーティングのスケジュールとトピックの設定: ミーティングの実施頻度と所要時間を事前に決定します。ただし、実施頻度は週2回までとします。また、ミーティング中に議論したい質問について、チームメンバーの合意を得ることも重要です
- オープンなコミュニケーションの促進: 各チームの代表者は、ミーティング中に最新の進捗状況を報告する必要があります。また、透明性のある文化と、チームメンバーが自身の成長や課題を率先して共有できる環境を醸成することも重要です
- 迅速な問題解決: チームメンバーがミーティングに参加している場合は、ミーティング中に懸念事項に対処するように努めましょう。そうでない場合は、ミーティングの終了後、できるだけ早く問題を解決する計画を立てる必要があります
- プロジェクトとタスクの所要期間の追跡: 問題に対処するのにかかった日数と、プロジェクトが完了するまでの残り日数を追跡します
スクラムオブスクラムに取り組む
ワークフローを効率化するには、チームが協力的かつ生産的なコミュニケーションをおこなえるようにすることが重要です。
準備ができたら、スクラムオブスクラムミーティングに参加する、各チームの代表者を選出し、最初のミーティングを計画しましょう。
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